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第2羽:ヴァンパイアとティッシュ(下)

last update Tanggal publikasi: 2026-04-08 18:14:40

“この仕事はね、本能的に「感じる」ことのできる人間にしか続けられない。ただエッチが好きなだけじゃダメ。相手によって感覚が鈍るような、ただの女には無理。「ビッチ」になるの。身も心も「ビッチ」になりなさい。長く続けたいならね”

初日の講習で、そう言われたことを思い出す。ああ、やはり自分には、この仕事が向いていたのかもしれないという気持ちになる。

「気持ちいい?」

「ああ、はい、気持ちいい、です」

「うそ。初めてなのに、わかる?」

まだ少し戸惑うような表情の客を見ながら、キヨミはイジワルを言う。それも、講習で習ったテクニックの一つだ。

「わか、わかると、思います」

「ほんとうに? 変な感覚でしょ。自分と他人の体がつながっているなんて。そういうの、気持ち悪くないの?」

「いや、そんな、気持ち悪く、なんかないですよ」

「本当にそう思う?」

くちゃくちゃと小刻みに腰を動かしながら、さらにイジワルな質問を重ねる。

「気持ち悪くなんか、ぅ、あっ、ないですよ。う、うれしいです、こんな、アカリさんみたいな、きれいな人とつながれて、あっ」

アカリ。それがキヨミの源氏名である。まだ耳馴染みのない、新しい名前。一瞬、誰の名前だろうかと戸惑いさえする。

「嬉しい。ありがとう」

「あっ、ああっ、好きです、アカリさん、あっ」

「うれしい、テラダさん。んっ」

唇を重ねる。上の方でも、深くつながる。「好きです」と言われ、「私もです」なんて言葉は使わない。相手を惚れさせるには手っ取り早い言葉だが、同時に自分が「惚れやすい女」だと安く見せる言葉でもある。ただの疑似恋愛でも、駆け引きは普通の恋愛同様に必要だ。否、普通の恋愛以上だろう。体を許す分、心まで許してしまってはいけない。肌が無防備な分、心には鎧を着なければならない。

それから、腰を上下に動かす。

動かし方には2パターンある。パン、パン、パン、パン。激しく上下にピストンし、男根を上から下まで幅広く擦るパターン。

「はぁっ、はぁっ、あっ、あっ」

もう一つ。ズブッ、ズブッ、ズブッ、ズブッ。やや斜めに浅く動かし、男根の先端を膣の奥にぐいぐいと導くよう短めに擦るパターン。

「ひっ、ひっ、ふっ、ふっ」

最初は前者で行い、徐々に後者に変えていく。早漏の相手ならこれを1分、遅い男でも5分かけると大概射精する、そう教わった。

しかし、この日の客はなかなかそれに至らない。キヨミには、むしろだんだん男根が縮んでいるようにも感じた。

「ごめん、ちょっと小さくなっちゃった?」

キヨミはそう言って、一旦、客の一物を体から抜く。ゴムごしに手でソレをつかむと、やはり少し柔らかくなっている。ゴムを外し、直接、口でする。

「ご、ごめんなさい。なんか、緊張しちゃって」

「ううん、初めてだもん。よくあるから。気にしないで」

ちゅぱっ、ちゅぱっ、と男根をしゃぶる。少しだけ大きさを取り戻したように感じられたが、もう少しか。

「気持ちいい?」

「あっ、はいっ。あっ、やば」

キヨミはその言葉にドキリとしたが、もう遅かった。

「あ、だめ、いかないで」

「ごめんなさい、も、もう!」

どくっ、どくっ、と男根の先から、白濁した液があふれ出る。キヨミの頬に少しだけかかる。多くは、男根を伝って落ちていきながら、客の股間の茂みへ染み込み、そこから溢れたものがシーツを汚す。客は、慌てて言う。

「ご、ごめんなさい。スイッチが、へんなタイミングで入っちゃって」

「ううん、気にしないで」

事務的にティッシュを大量に取りながら、キヨミは溢れた精液を拭い取る。これもよくあることだから、というセリフを口にしかけて、言葉を飲み込む。これは男を傷つけてしまうワードだ。

「気持ちよかった?」

代わりにそう言って笑いかける。もちろん頬についた客の体液はそのままで。その笑顔が自然かどうかはわからない。一応、鏡ではもう何度も練習している表情ではある。

「はい、ありがとうございました。初めてがアカリさんで、幸せでした」

泣きそうになりながら、客は言う。いや、もう声は震えて、少し涙が混じっている。キヨミはその客のぼさぼさの頭を、よしよし、と撫でてあげる。

ただキヨミは、そこまで手をかけてやりながら、ああ失敗だったなとも考えている。初体験で運悪く外で果ててしまった客は、それがトラウマになってもう店に来なくなってしまう場合が多いと聞く。しっかり中での射精に導いてあげられた客は、リピーターになってくれる。

初めての客はデリケートなのだ。気を遣いすぎてもいけないし、とにかく扱いには重々注意しなければいけない。頭ではわかっていても、実際にやると、このようにうまくいかないものだ。

ただ、最終的には仕方ない話だ。相性だってある。せめて最後に書いてもらうアンケートだけは好評価をもらえないと割に合わない。そう思いながら、「私も気持ちよかったよ。次は中で出してね」と甘い声をかけながらキスをする。

客の細い指で、小さな胸を触らせながら。その直後に部屋の電話が鳴り響き、終了の5分前を告げる。

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