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Todos los capítulos de シルヴァア・スワロウ: Capítulo 1 - Capítulo 4

4 Capítulos

プロローグ:空から落ちてきた手紙

【2010年7月23日(金)】静岡県・三島市“我慢強く生きる覚悟を わたしにください――”そこまでのフレーズを書いた後、キヨミは顔を上げる。アズサと目が合う――その日の数週間前、三島市立の図書館で初めて言葉を交わしたばかりの先輩である、彼女に見られている。「アズサ」鏡を見たら恐らくクマだらけのやつれた表情で、キヨミは年齢が一つ上の彼女を呼び捨てする。そうするよう彼女が言ったからだ。“アズサでいい。ううん、それ以外許さない。もしアズサさんとか、アズサセンパイなんて言うなら、殺すから――君の首を絞めたあとで、その可愛らしい舌と、可愛らしい両目をとって、ずっとホルマリン漬けの宝物にしちゃうんだから。どう、うれしい? それとも、キモイ?”――(キヨミはもちろん、「キモイ」と答えた)アズサは微笑む。微笑んだときだけ、彼女は聖母のようになる。いったいその聖母の口から、いつ「殺す」なんて言葉がつむがれたのか。ひょっとしたらすべて幻聴だったんじゃないか。そう思わせるような表情になる。「また貴重な時間をつぶして、なにくだらないことやっていたの。まさかとは思うけど詩を書いていたとか?」キヨミの行いは、ぜんぶバレている。こういうとき、ヘタに「ごめんなさい」なんて謝らない方がいい。謝られることは、「さん」や「センパイ」付けで呼ばれることの次にアズサが嫌うことだ。「まさかと思われた、その通りのことをしていました」「ふうん。やっぱり。じゃ、お仕置き」「あっ」アズサがキヨミの腋をくすぐる。キヨミは必死に声を抑えようとする。けれど、漏れる。あ、あひゃっ。変な声が出る。「かわいい。君はこうしてるときが一番かわいい」優しい声でアズサは言う。そしてキヨミの頬に、チュッ、と口づけする。周りで生徒が見ていたなら、ちょっとした騒ぎになっているだろう。けれど放課後の図書室には、彼女らしかいない。誰もいなくて良かったと言うより、誰もいないからこそアズサは、こんな行為をしているのだろうか。「や、やめてっ」「やめない」「いひっ、あひゃっ」そうやって、いつものようにじゃれ合う。まるで幼いころからずっと仲良しだった友同士のように。姉妹のように。そうではない、「恋人同士」。たしかそう、二人の間で約束が交わされたはずだ。ひとしきりくすぐり終えた後、ようやく
last updateÚltima actualización : 2026-04-08
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第1羽:ヴァンパイアとティッシュ(上)

【2019年3月下旬】東京都・新宿区その日の最初にキヨミを指名した客は、自らの名をテラダマコトと名乗った。身長は高く、全身がやたら白い。もうすっかり桜も満開の時期なのに、雪を思い出させるような色だ。ひょっとしたらこの日も、店へ足を運ぶまで一歩も外出しなかったのではと思うほどに。ただ、そのように日の光を避けて生きるヴァンパイアのような人種は、ここ歌舞伎町ではそう少なくはないと聞く。「ごめんなさい、こんなガリガリのみすぼらしい裸で」湯船から上がってバスタオルを腰に巻いた客は、キヨミに視線を向けられているのを恥じてか、両腕を胸の前で組んで体を隠すような仕草を取っている。キヨミは「大丈夫ですよ」となだめながら、ベッドの淵に客を腰かけさせた。筋肉がほとんど無いようにすら思える胴体は、かつらむきした大根の皮を連想させた。胸のあたりからペキリと折れそうなほど、体が薄い。「痩せてる人、好きですよ」社交辞令で述べただけのキヨミのセリフで、少し客は安心したのか、腕をほどく。現れた客の乳首はレーズンのように黒く、白い肌の上でよく目立った。「私の体も見てください」そう言いながら、キヨミは客の手を取り、自分の体に巻いたタオルに触れさせる。客は恐る恐るといった様子でタオルに触れた手を引いた。ファサッ、と床に落ちるタオル。露わになったキヨミの肌を前にして、客は眩い光でも見たように目を細める。「そのまま、私に委ねてくださいね」裸になったキヨミは、そう囁きかけながら客の胸に顔を近づけ、その乳首を舌でなぞる。「あっ」と声を漏らす客に、「ごめんなさい、ここ、苦手でした?」などと、言葉だけの謝罪を口にした。大概の男はいいえと否定するもので、その客も同様、「気持ちいいです、うっ、続けて、くださ、はぁっ」と懇願した。しばらく乳首を舐め、薄い胸板をなぞりながら首に向かっていく。やや髭の剃り残しのあるザラザラした顎を舌で撫でてから、唇に軽くキスをする。キヨミはそこで、やや上目遣いに客を見た。興奮のあまりか、客は目を閉じてしまっている。童貞らしいなと思いながら、キヨミは客の両手を取り、そのまま覆いかぶさるようにして客の上体をベッドに倒した。仰向けの体勢になる客。その薄い唇を自らの唇で覆い、舌を深く潜り込ませる。緊張に縮こまっている客の舌を引きずり出し、互いの唾液をかき混ぜた。呆れる
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第2羽:ヴァンパイアとティッシュ(下)

“この仕事はね、本能的に「感じる」ことのできる人間にしか続けられない。ただエッチが好きなだけじゃダメ。相手によって感覚が鈍るような、ただの女には無理。「ビッチ」になるの。身も心も「ビッチ」になりなさい。長く続けたいならね”初日の講習で、そう言われたことを思い出す。ああ、やはり自分には、この仕事が向いていたのかもしれないという気持ちになる。「気持ちいい?」「ああ、はい、気持ちいい、です」「うそ。初めてなのに、わかる?」まだ少し戸惑うような表情の客を見ながら、キヨミはイジワルを言う。それも、講習で習ったテクニックの一つだ。「わか、わかると、思います」「ほんとうに? 変な感覚でしょ。自分と他人の体がつながっているなんて。そういうの、気持ち悪くないの?」「いや、そんな、気持ち悪く、なんかないですよ」「本当にそう思う?」くちゃくちゃと小刻みに腰を動かしながら、さらにイジワルな質問を重ねる。「気持ち悪くなんか、ぅ、あっ、ないですよ。う、うれしいです、こんな、アカリさんみたいな、きれいな人とつながれて、あっ」アカリ。それがキヨミの源氏名である。まだ耳馴染みのない、新しい名前。一瞬、誰の名前だろうかと戸惑いさえする。「嬉しい。ありがとう」「あっ、ああっ、好きです、アカリさん、あっ」「うれしい、テラダさん。んっ」唇を重ねる。上の方でも、深くつながる。「好きです」と言われ、「私もです」なんて言葉は使わない。相手を惚れさせるには手っ取り早い言葉だが、同時に自分が「惚れやすい女」だと安く見せる言葉でもある。ただの疑似恋愛でも、駆け引きは普通の恋愛同様に必要だ。否、普通の恋愛以上だろう。体を許す分、心まで許してしまってはいけない。肌が無防備な分、心には鎧を着なければならない。それから、腰を上下に動かす。動かし方には2パターンある。パン、パン、パン、パン。激しく上下にピストンし、男根を上から下まで幅広く擦るパターン。「はぁっ、はぁっ、あっ、あっ」もう一つ。ズブッ、ズブッ、ズブッ、ズブッ。やや斜めに浅く動かし、男根の先端を膣の奥にぐいぐいと導くよう短めに擦るパターン。「ひっ、ひっ、ふっ、ふっ」最初は前者で行い、徐々に後者に変えていく。早漏の相手ならこれを1分、遅い男でも5分かけると大概射精する、そう教わった。しかし、この日の客はなかなかそれに至らな
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第3羽:亡霊とWebライティング(上)

【2019年1月】東京都・港区キヨミが自分自身を、おそろしく醜悪な存在であると認め始めたのはいつからだろう。まだ純な乙女であるべき中学時代、とある留学生の男子と情事を重ねてからか。その恋は彼の帰国と共に終わりを迎え、深い喪失を味わった。あるいはそれより前、無垢な童女でいた小学生のころ、友達だと思っていた女の子に、アパートの屋上から突き落とされたときからか。藪に落ちたおかげで、奇跡的に大怪我は免れた。原因そのものは、幼少期にありがちな些細な気持ちのズレだった。物事の始まりを思い返してみてもキリがないことは、キヨミ自身もわかっている。ある宗教でも“人間は生まれながらに罪な存在である”と言っているが、別に宗教的な見解や哲学な問題にこの疑問を発展させるつもりはない。もっと個人的な話だ。キヨミが生まれ、物心ついてから、2019年1月にいたる短い期間において。キヨミという存在を大きく決定づけた出来事は何だったのか。キヨミはときどき考え直す。通勤中・入浴中・就寝前などタイミングもバラバラで、考え直すたび導き出される答えもさまざまだが、中でも思い出す頻度が高いのは2010年の6月。しかしその日に何が起きたのか、記憶はおぼろげだ。きっと何か大変なことが起きたに違いないのに、思い出そうとするたび、ひどい頭痛に見舞われる。頭痛にも耐えられる範囲で辛うじて思い出せるのは、通学中の電車の中の光景。鬱陶しい梅雨の季節、キヨミは雨に濡れた窓の外を見ている。電車はホームに停まっていて、入口の扉は開いている。けれどキヨミが待っている人物は現れず、扉は閉まってしまう。あの駅で、キヨミは誰を待っていたのか。そしてその人物は、なぜ現れなかったのか。深く記憶を掘り起こそうとするほどに、ガンガンと、まるで金槌で内側から打ち付けられているような酷い頭痛で意識を失いそうになる。2010年の6月に17歳だったキヨミは、この2019年の1月、25歳になってしまった。9年も経てば、重要でない過去の出来事などほとんど忘れ去られる。けれど、思い出そうとするたび頭痛を引き起こすこの記憶は、「9年の月日を経て忘れてしまった」のではない。自らの人格形成をする上であまりに重要な出来事の一つだったのに、「9年もの長きにわたって封印されている」。そう表現する方が正しい。単なる物忘れではなく、記憶喪失か。それと
last updateÚltima actualización : 2026-04-09
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