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第1羽:ヴァンパイアとティッシュ(上)

last update publish date: 2026-04-08 17:46:30

【2019年3月下旬】東京都・新宿区

その日の最初にキヨミを指名した客は、自らの名をテラダマコトと名乗った。身長は高く、全身がやたら白い。もうすっかり桜も満開の時期なのに、雪を思い出させるような色だ。ひょっとしたらこの日も、店へ足を運ぶまで一歩も外出しなかったのではと思うほどに。ただ、そのように日の光を避けて生きるヴァンパイアのような人種は、ここ歌舞伎町ではそう少なくはないと聞く。

「ごめんなさい、こんなガリガリのみすぼらしい裸で」

湯船から上がってバスタオルを腰に巻いた客は、キヨミに視線を向けられているのを恥じてか、両腕を胸の前で組んで体を隠すような仕草を取っている。キヨミは「大丈夫ですよ」となだめながら、ベッドの淵に客を腰かけさせた。筋肉がほとんど無いようにすら思える胴体は、かつらむきした大根の皮を連想させた。胸のあたりからペキリと折れそうなほど、体が薄い。

せてる人、好きですよ」

社交辞令で述べただけのキヨミのセリフで、少し客は安心したのか、腕をほどく。現れた客の乳首はレーズンのように黒く、白い肌の上でよく目立った。

「私の体も見てください」

そう言いながら、キヨミは客の手を取り、自分の体に巻いたタオルに触れさせる。客は恐る恐るといった様子でタオルに触れた手を引いた。ファサッ、と床に落ちるタオル。露わになったキヨミの肌を前にして、客は眩い光でも見たように目を細める。

「そのまま、私に委ねてくださいね」

裸になったキヨミは、そう囁きかけながら客の胸に顔を近づけ、その乳首を舌でなぞる。「あっ」と声を漏らす客に、「ごめんなさい、ここ、苦手でした?」などと、言葉だけの謝罪を口にした。大概の男はいいえと否定するもので、その客も同様、「気持ちいいです、うっ、続けて、くださ、はぁっ」と懇願した。

しばらく乳首を舐め、薄い胸板をなぞりながら首に向かっていく。やや髭の剃り残しのあるザラザラした顎を舌で撫でてから、唇に軽くキスをする。

キヨミはそこで、やや上目遣いに客を見た。興奮のあまりか、客は目を閉じてしまっている。童貞らしいなと思いながら、キヨミは客の両手を取り、そのまま覆いかぶさるようにして客の上体をベッドに倒した。

仰向けの体勢になる客。その薄い唇を自らの唇で覆い、舌を深く潜り込ませる。緊張に縮こまっている客の舌を引きずり出し、互いの唾液をかき混ぜた。呆れるほどに、何度も何度も。

ベッドの上に投げ出されている客の、遠慮深げな手を取り、キヨミは自らの小振りな胸にあてがう。ぎこちなく揉み始める客の仕草にも、敏感に感じているのを装い、「ああっ、んっ、ふあっ」とカン高い喘ぎ声を漏らした。

スッと客の股間に触れると、早くもその先端は硬く尖っていた。キヨミの手の感触にさらに興奮したのか、客のそれはビクンビクンと震えた。

「すごぉい、ビンビン。んふっ」

自分で口にしながらまるでAVアダルトビデオのようだなと思い、照れ笑いというわけではないが、妙な声が漏れてしまう。しかし聞こえ方によって、それは喘ぎ声にも近かったかもしれない。

いずれにしても客の心を奪うのには成功したようで、客の口からは「んんんっ」とうめき声が漏れる。その四肢もビクビクと震え、男根は硬さを増した。

もういいかもしれない。初体験の客をあまり焦らし過ぎると、このままで果ててしまいそうだ。「ゴム付けるね」と言い、キヨミは床に転がしていたポーチを手に取る。チャックを開けてややヘコんだ箱を取り、さらに箱の中より袋を一枚出して、封を切った。

一旦、客の男根の先にゴムを置き、口を近づけ、唇で巻かれた部分を固定しながら少しずつ下げる。要はしゃぶりつくような感覚で、ゴムを付けていく。手でするより喜ぶ男性客は多いが、なかなか修得の難しい技だ。

そもそもこのゴムというもののが、口にするにはやたらと苦い。なるべく口に入れないよう、あえて苦く作ってあるのかもしれない。だとすれば、それでも口にふくむというのは、冷静に考えればすごく馬鹿げている。だが今は冷静ではない。冷静であれば、この仕事は勤まらない。

まだまだぎこちないキヨミのテクニックを見ながらも、「ふぁ、うわ、すごい、あっ」と、いちいち客は感嘆する。

「じゃあ、入れるよ」

キヨミの声に、泣きそうな顔になりながら客はうなずく。そんな客の顔に微笑みかけながら、「んふっ、かわいい」と言うのも忘れない。仰向けの客の先端を手で固定しながら、騎乗位の体制で、自らの体を沈み込ませていく。

「ああっ、んっ、くぅっ」

挿入時の衝撃にはまだ慣れず、言葉が出ない。すべてただの喘ぎ声になる。まるで水の中で溺れているような感覚に近い。

「はいっ、はいったよ」

無理に単語を形成しようとして、セリフを噛んでしまう。体の欠落したところが満たされ、胸の底から何やらムズムズと揺さぶられるような気持ちがこみ上げ、膣の中がじゅくじゅくと愛液で満たされていく。

たとえ相手がどんなお年寄りでも、毛深くて体臭のキツい相手でも、キヨミはこの瞬間「感じて」しまう。

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