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第635話
Pinakabagong kabanata
スウィートの電撃婚：謎の旦那様はなんと億万長者だった！ 第638話
「イタズラだと思ってたが。見に来るくらいなら損もないし......それで来てみたんだ。まさか君たちとここで会うなんて思わなかった。でもどうしてここが分かったの？」「それを言う？」水子が憤慨した様子で言う。「小清水を探しに来たのに、なんで華恋に黙ってたの？しかも出張に行くなんて嘘までついて」「私と華恋、また何か変なことが起きたんじゃないかって、本気で心配したのよ！」時也は華恋を見て、申し訳なさそうに謝った。「ごめん、華恋。君に言わなかったのは......心配させたくなかったから......」その言葉を聞いて、水子はようやく自分が誤解していたことに気づいた。浩夫は、賀茂爺を死に追いやった張本人だ。そして、華恋はその一部始終を目撃していた。彼女はまだ、その出来事のトラウマから抜け出せていない。そんな彼女に、浩夫を再び見せるなんて......それは、事件現場に戻らせるのと同じことだ。水子は今になって、連れ出したことを後悔した。最初から家にいさせればよかった。そしたら、時也にも会わずに済んだのに......華恋は水子の後悔を感じ取り、そっと声をかけた。「私は大丈夫よ。心配しないで」本当は、浩夫から受けた傷は、「おじい様が自分のせいで殺された」という事実によって、心の奥底に埋もれていた。華恋は浩夫に近づき、睨みつけた。できることなら、彼を引き裂いてしまいたいほどの怒りがこみ上げていた。「小清水、まさかまだ生きてるとはね。もし人を殺しても罪に問われない世界だったら、あんたなんてとっくに何百回も死んでるわ」そう言いながら、拳をギュッと握りしめる。だが、体は小刻みに震えていた。彼女の中には確かに恨みがあった。ときには浩夫を、そしてときには、あの時の銃弾が自分の心臓を撃ち抜かなかったことすら憎んだ。浩夫は「ううっ」と呻きながら、必死に時也の方を見ている。「お前の夫は、賀茂哲郎の叔父なんだぞ！」そう何度も伝えようとしたが、口はテープで塞がれているため、どうしても伝わらない。水子はもう、ここにいたくなかった。華恋は「大丈夫」と言っていたけど、長年の親友としては、それがただの強がりだと分かっていた。「華恋、もう出ようよ。ここは時也に任せよう？」華恋は時也を振り返る。「華恋、水子の言う通りだ。先に行
スウィートの電撃婚：謎の旦那様はなんと億万長者だった！ 第637話
華恋がドアを押し開けた瞬間、運転手の顔が真っ青になった。その別荘は......華恋は運転手を無視し、視線を室内へと移した。この別荘は古いままで、まだリフォームされていない。あちこちにホコリが積もっていて、床にはくっきりとした足跡が残っていた。それも、最近ついたばかりのようだ。華恋は足跡を見下ろす。大きさは、時也の靴とほぼ一致していた。続いて入ってきた水子も床の足跡に目を留める。「華恋、時也はやっぱりここに入ったの？」「たぶんね」華恋は深く息を吸い、無理やり気持ちを落ち着かせながら足跡の向かう先へ歩き出した。間もなく、地下室の扉が開いているのを見つけた。水子は不安げに華恋の腕を引っ張った。「華恋、なんかこの場所......すごく変じゃない？危ないかも。やはりここで待ってようよ」華恋は少し考え、こう答えた。「じゃあ、水子はここで待ってて。もし30分経っても私が出てこなかったら......」「ダメ！」水子はきっぱり遮った。「私も一緒に行く」華恋が何か言おうとしたその時、中から「ううっ、ううう......」という声が聞こえてきた。まるで誰かの呻き声のようだった。華恋はその声に反応し、すぐさま地下に駆け下りる。水子もすぐに後を追った。地下室もまた、上と同じくリフォームされておらず、ホコリが舞い散っていた。二人は中に入った途端、むせかえるような咳をし始める。その時、暗闇の中から驚いたような男の声が響いた。「華恋、なんでここに？」続けざまに「パチッ」という音と共に、地下室の照明がついた。瞬く間に、地下室全体が明るく照らされる。華恋はようやく、目の前の光景をはっきりと見ることができた。時也は、電気のスイッチのそばに立っていた。彼の少し離れたところには、手足を縛られ、椅子に縛りつけられた小清水浩夫の姿があった。「......なんで彼がここにいるの？」華恋は一瞬、時也に騙されたことすら忘れてしまった。水子も驚きの表情で浩夫を見つめる。まさか、あれだけ探されていた浩夫がこんな場所にいるなんて......「僕にも分からないんだ」時也はスマホを取り出し、華恋に見せようとする。「誰かがメッセージを送ってきて」だが、華恋の目はスマホではな
スウィートの電撃婚：謎の旦那様はなんと億万長者だった！ 第636話
「時也、今どこにいる？」電話越しに商治が尋ねた。時也は足を止め、目の前の建物を見上げながら低い声で答えた。「古い別荘の方にいる」「古い別荘」と聞いた瞬間、商治はすぐに場所が分かった。そこは、彼が耶馬台国に戻ってきてから購入した物件で、厄介な問題を処理するために用意した場所だった。小清水浩夫が捕まったあとも、そこへ連れて行かれていた。今、時也がそこへ行くということは、小清水に会いに行った可能性が高い。商治は慌てて言った。「ちょっと待って！今は小清水に会いに行くな！実は俺、今日華恋と五月花広場で待ち合わせしてたんだけど、渋滞でルート変更したらしくて、まだ来てないんだ。事故とかに巻き込まれてないか心配でさ......」「......なんだって？」すでにドアを開けようとしていた時也は、ハッとして振り返った。その瞬間、遠くから警備員の声が聞こえてきた。「お嬢さん、だから言ったでしょう？ここに誰も入ってきてませんよ」「そんなはずありません！さっき確かに友達の旦那が入っていくのを見たんです！」女性の声が聞こえてきた。時也は一瞬で、その声が水子だと気づいた。彼の心臓がドクンと跳ねた。すぐにドアを開けて別荘の中に入った。外の足音が近づいてくる。「おじさん、もう一回ちゃんと思い出してください！私たちのすぐ前に、確かに車が入っていったんです！」水子は制服を着た警備員の老人を引き止めており、その隣には華恋がいた。時也の瞳孔が縮まり、心が一気に乱れる。ちょうどその時、華恋がこちらの方向に顔を向けた。時也は反射的に後ろに身を引き、呼吸を止めた。彼女にこの場所を知られては困る。なぜ小清水をここに拘束しているのか、それを説明する術がない。外の足音は少しずつ遠ざかっていく。ほっとしかけたその時、また水子の声が聞こえてきた。「おじさん！この車なんだけど、どこの家のですか？」時也は窓からゆっくり覗いた。水子が指差している車は、まさに彼が乗ってきたものだった。しかも、運転手がまだ車内にいた。案の定、次の瞬間、「華恋！！」水子が叫び、華恋もぼんやりと顔を上げた。水子はすでに車に駆け寄り、運転手を車外に引っ張り出していた。運転手は華恋を見て、明らかに驚いていた。「さっきあ
スウィートの電撃婚：謎の旦那様はなんと億万長者だった！ 第635話
水子は、華恋を揺さぶりたい衝動をどうにか抑えたが、その様子は華恋にすぐにバレてしまった。「水子、どうしたの？さっきから黙り込んで......」そう言って、華恋が水子の方を見た。水子は慌てて手を上げて視線を遮ろうとしたが、もう遅かった。車は急ブレーキをかけて止まった。華恋が茫然とした表情で固まっているのを見て、水子は慌てて言った。「ちょ、ちょっと待って、まずは落ち着いて。きっと何か事情があるんだって......」そう言いながら、もう一度時也の方を見ると、彼はすでに別の車に乗り込んでいた。「追いかけようよ、どこに行くのか見てみよう。前みたいに誤解だったら困るし......」水子は華恋の袖を引っ張って、懇願するように言った。華恋は唇をキュッと結び、しばらく黙っていたが、やっと口を開いた。「あいつを捕まえたら、どんな理由があっても、今度こそボコボコにしてやる！止めないでよね！」「もちろん止めない！絶対に！」水子は華恋の精神状態を心配して言った。「運転は私に任せて」華恋は無言で車のキーを水子に投げ渡し、自分は後部座席に移動した。水子は一瞬華恋の顔を見たが、何も言わず、急いで運転席へ。エンジンをかけて、時也の車を追いかけ始めた。車は南の方へ進み、どうやら郊外に向かっているようだった。水子は不安な華恋をなだめるように言った。「絶対に浮気とかじゃないよ。それだけは間違いないわ」華恋は何も言わなかった。水子は空気を和らげようとして言った。「音楽でもかけようか。なんか、シーンとしすぎ......」それでも華恋は無言。水子は仕方なく自分でプレイリストを開いて、ランダムで曲を再生。......が、まさかの失恋の歌が流れ始めた。水子は心の中でスマホを罵倒し、ついでに時也のことも罵倒した。男ってどうしてこう......少し優しくされたらすぐ調子に乗るのよ！華恋がようやく時也を許して、少し元の関係に戻ってきたばかりなのに......また嘘をつくなんて、ほんと最低！ちょうどそのとき、水子のスマホが鳴った。表示を見ると、商治からの電話だった。赤信号で停車している間に、水子は通話を取った。「何の用？」その声はとても不機嫌だった。商治は何かまた彼女の怒りを買ったのか
スウィートの電撃婚：謎の旦那様はなんと億万長者だった！ 第634話
「じゃあ、五月花広場の北門で待ち合わせにする？」「わかった。今すぐ向かう」商治との待ち合わせを決めた華恋は、すぐに出かける準備を始めた。それを見た村上が慌てて声をかけた。「若奥様、どこへ行かれるんですか？」「買い物よ」「どちらでお買い物を？」華恋は少し眉をひそめた。「五月花のあたりだけど......どうかしたの？」「いえ。ただ、通り道かと思って」華恋の目に浮かんでいた警戒の色がすっと消えた。「どこか行くの？ついでに送っていこうか？」「いえ、大丈夫です。逆方向なので、私はバスで行きます」「そう。じゃあ、先に行くね。いってきます」「行ってらっしゃいませ」華恋を見送った後、村上はすぐに時也へメッセージを送り、華恋の行き先を報告した。華恋は水子を迎えに行き、そこから二人で五月花広場に向かう。だが、途中で渋滞に巻き込まれてしまった。「え、嘘でしょ？」水子が顔を出して前方を覗く。「今ってラッシュの時間じゃないよね？なんでこんなに混んでるの？」隣の車の運転手も同じように顔を出し、彼女の言葉に応じた。「なんか前の方で事故があったらしいよ。ホントかどうか知らないけどね」それを聞いた水子は顔を戻し、華恋に言った。「華恋、この車列じゃ、すぐには抜けられそうにないよ。別の道に変えない？」華恋はナビを開いて確認した。「うーん、別ルートだとかなり遠回りになりそう......」「いいよ、遠回りでも。ここで待ってるよりマシでしょ」「わかった。じゃあそうしよう。水子、商治に電話して、遅れるって伝えておいて」華恋が車をバックさせてUターンし始めたため、水子はしぶしぶ商治に電話をかける。すぐに通話がつながった。電話の向こうから、商治の嬉しそうな声が響いた。「もう着いた？」水子は高鳴る胸を抑えながら答えた。「まだ道中よ。すごく混んでる場所に当たっちゃって、今別の道で行こうと思って、着くまでに1時間はかかるかも」「大丈夫、待ってるよ」商治の声は柔らかく、まったく焦りや苛立ちは感じられない。水子は小さくつぶやいた。「誰も待ってって言ってないし......」電話を切ると、華恋がニヤリと笑った。「水子って意外とツンデレだったのね」「わ、わ、私は......
スウィートの電撃婚：謎の旦那様はなんと億万長者だった！ 第633話
華恋は電話を切った後、水子から届いた長い音声メッセージを再生した。「ははははは、華恋ちゃん、マジで死ぬほど面白かった！さっき病院で母さんのお見舞いに行ったんだけど、誰に会ったと思う？哲郎よ！しかも、全身ミイラみたいに包帯ぐるぐる巻き！看護師と医者が言うには、あの怪我、賀茂家の年長者にやられたらしいんだって！うける！本当に様見ろっての！誰かわかんないけど、その賀茂家の者、マジグッジョブ！」華恋は一通り聞き終えても、水子には何も返さなかった。もしかしたら、それは賀茂家当主が彼女のために、銃弾を受けて亡くなったからかもしれない。彼女は賀茂家のことも、哲郎のことも今でも好きにはなれない。だが、哲郎が賀茂家当主の孫である以上、素直に笑うこともできなかった。画面の向こうで、水子は「相手が入力中......」と表示され続けるのを見ると、恐る恐る訊いた。「華恋ちゃん、私、何かまずいこと言った？」華恋はそのメッセージを見ると、少し呆然とした表情を浮かべ、それからほろ苦く微笑んだ。「ううん、悪いのは私だよ」「どうしたの？」「おじい様は、私のために命を落としたの。本来なら、昔哲郎にされたことを思えば、恨んでも恨み足りないはずなのに......人間って本当に不思議。おじい様が私を助けてくれた。それなのに、昔の恨みも、感謝の気持ちもまだここにある、何一つ消えなかった。この複雑な気持ちのせいで、哲郎や賀茂家にどう接したらいいのか、わからないの......」水子は、華恋の立場になって考えてみて、頭がパンクしそうになった。「じゃあ、今は考えるのやめて。明日のことは明日の自分に任せなよ」華恋は微笑んだ。そうだ。明日のことは、明日考えればいい。賀茂家当主が最期に残した言葉は、華恋と哲郎が一緒にいるのを見届けられなかったことが、唯一の心残りだった。しかし、少なくとも、葬式が終わるまでは、そのことを考えなくてもいい。「ねえ、ちょっと出かけない？買い物でもしに行こうよ」水子は、華恋が一人で家にいると色々と考え込んでしまうのを心配していた。華恋は聞いた。「今日は仕事じゃないの？」「今日はお休み」水子は休暇届を書きながら、華恋に返事した。「ねえ、それなら時也も呼ぼうよ！そしたら荷物持ちに困らないし
スウィートの電撃婚：謎の旦那様はなんと億万長者だった！ 第632話
彼は突然顔を上げて言った。「まさかもう哲郎のプロポーズを受けて......君と離婚して、彼と結婚するって言ったんじゃないだろうな？」時也は依然として目を閉じたままだった。「いや、どんなことがあっても僕と一緒にいるって言われた。離れることはないと思う」「じゃあ、何をそんなに心配してるんだ？」華恋は気が迷っていなければ、それでいいじゃないか。時也はゆっくりと起き上がり、商治をじっと見つめた。彼が口にした一言一言は、骨の髄まで冷たく染み渡った。「そんなこと言って、彼女は楽になれると思うか？」商治は一瞬、何も言えなくなった。そうだ。たとえ華恋が今、時也と一緒にいたとしても、心の奥に刺さったそのトゲを取り除けなければ、不安は消えない。「もうM国の臨床心理士を手配した。すぐに来るはずだ」これ以上の慰めの言葉が見つからず、商治はできるだけ早く専門家に頼るしかなかった。「ありがとう」「兄弟なんだろう。そんな礼はいらないよ」商治は時也の傷の手当てを終えると、続けた。「で、華恋さんにはどう説明するつもりだ？この傷のまま会いに行くつもりか？」「もう考えてある」「じゃあ、俺はこれで」商治は時也を一度不安そうに見てから、オフィスを出ていった。去る前、今は時也を放っておけばいいと、小早川に特に念を押した。小早川は思わず聞き返した。「時也様は本当に若奥様とケンカしたんですか？」「いや、ケンカじゃない。でも今回はケンカより厄介だ。気をつけたほうがいい」そう言い残して商治は去って行った。小早川は完全に事態が把握できず、ぽかんと立ち尽くした。その頃、オフィスに残った時也は気持ちを整え、華恋に電話をかけた。電話はすぐに繋がった。「時也、どうして電話に出なかったの？」華恋は目覚めた時、時也が帰っていないのに気づき、何度も電話をかけたが応答がなく、メッセージを残すしかなかった。もうすぐ昼になるというのに、彼からはまだ何の連絡もなく、華恋は賀茂グループまで直接行こうとしていたところだった。ちょうど車を発進させようとした時に、彼からの電話がかかってきた。何というタイミングだろう。「ごめん、華恋」時也の声は低く抑えていたが、それでも華恋には彼の疲労がはっきりと伝わってきた。「今、
スウィートの電撃婚：謎の旦那様はなんと億万長者だった！ 第631話
翌日。小早川がオフィスに到着すると、入口の数人の清掃員のおばさんたちに呼び止められた。「小早川さん！」「どうしました？」小早川は足を止め、清掃用具を手に持っているおばさんを見て思わず口にした。「掃除がまだ終わってないんですか？」「社長が中にいるんです。私たち、怖いから入れなくて......」「社長が中に？！」小早川は自分の耳を疑った。こういうことは、北米にいた頃はよくあった。だが、時也様が華恋と結婚してからは、めったになかった。みんなで残業しているときくらいだ。「ええ、下の警備員の話では、社長は昨夜ひとりで戻ってきて、一晩中ここにいたそうです。それに、顔に傷があるみたいで......」この言葉を聞いて、小早川の心臓は一気に喉元までせり上がった。まさか......また夫婦喧嘩をしたんじゃ......？小早川はおそるおそるドアを押し開け、ソファに横たわり目を閉じている時也の姿を見つけた。よく見ると、彼の顔にはいくつかのひっかき傷や擦り傷があり、それは女性がつけたものとは思えない。「出て行け！」時也が突然声を上げ、小早川は驚いて飛び上がった。「時也様......ご無事ですか？」時也は立ち上がり、冷たい目で小早川を見つめた。小早川は思わず首をすくめた。時也がなぜ急にそんなに怒っているのか、まったく見当がつかなかった。華恋に関する出来事を思い出しながら、小早川は恐る恐る訊いた。「若奥様のことでしょうか？時也様、安心してください。あの明るい性格の若奥様なら、きっと立ち直れますよ......」時也から鋭い視線を投げかけられた小早川は、それ以上話すことができず、慌てて外に出て、商治に電話をかけた。この状況では、医者でもあり友人でもある商治に頼るのが最善だった。時也が怪我をしていると聞き、商治も驚いた。すぐに医療バッグを持ってSY支部へ向かった。商治を見るや否や、時也は横目で小早川を見た。小早川はその視線に気づかないふりをするしかなかった。商治もまた、時也の目にある拒絶を無視し、小早川を下がらせると、消毒用アルコールとガーゼを取り出して時也の傷を消毒し始めた。「その顔の傷、どうしたんだ？」時也は唇を引き結び、黙っていた。仕方なく、商治は華恋の名前を持ち出した。
スウィートの電撃婚：謎の旦那様はなんと億万長者だった！ 第630話
時也は以前にも何度か賀茂家の旧宅を訪れたことがあったので、ナビなど使わずに車を旧宅の前まで走らせた。車から降りるとすぐに警備員が近寄ってきて、彼を止めようとした。だが時也だと気づくと、慌てて数歩下がり、丁寧にお辞儀をした。「時也様」時也は彼を一瞥もせず、大股で庭を通って客間へと入っていった。その物音を聞きつけた哲郎は、すでに立ち上がり玄関に向かっていた。「おじさん......」彼が口を開いた瞬間、時也の拳が容赦なく彼の顔面に打ち込まれた。哲郎は苦痛の叫び声を上げ、何が起こったのかと問おうとしたその瞬間、時也の二発目の拳が、今度は彼のもう一方の目に直撃した。両目を押さえて悶絶する哲郎は言った。「おじさん、気が狂ったのか！？俺は哲郎だよ！」その甥という言葉が出た途端、さらにもう一発、しかも前のどの一撃よりも強烈なパンチが彼の顔面に振り下ろされた。哲郎は苦痛に息を吸い込んだ。「おじさん、もうやめてくれ！目上だからってこんな勝手なことは許されるはずがない！これ以上するなら、もう容赦しないぞ！」「できるもんならしてみろよ！」時也は彼を突き放し、冷ややかな目で睨みつけた。まるで彼を喰らいつくすかのようだった。哲郎は震え上がりながらも言い返した。「俺は恐れてるわけじゃない。敬ってるから手を出さないだけだ！」「必要ない！」時也は拳を握り締め、その関節が鳴る音が静かな部屋に響いた。「今夜は男と男の勝負だ。情けも、年功序列も関係ない」「なぜだ！？」哲郎は混乱しきっていた。自分が何をしたのか、本当にわからなかった。ここ数日は、葬儀のためにずっと奔走してきたのに。「黙れ！」時也はただただ殴りたかった。殴らなければ、気が済まなかった。もし死者に敬意なんて概念がなければ、今すぐにでもあの亡き賀茂家当主まで引きずり出して殴ってやりたいくらいだった。そう思いながら、時也はさらに一発、哲郎の腹に向かって拳を打ち込んだ。哲郎の反応は遅れ、まともにその一撃をくらってしまう。呻き声をあげながら、反撃する間もなく、顔と胸にまたもや数発食らってしまった。その数発で、さすがの哲郎も堪忍袋の緒が切れた。「理不尽にもほどがあるぞ！もう容赦しないから！」そう叫んで反撃に出た。しかし、速度も力も時也には到底及
