Mag-log in「私、負けたことないの」
美女ディーラーが微笑む。俺も笑った。
「奇遇ですね」
「なにが?」 「俺も今日から負ける予定ないんで」 「ぷふーーー! えふっえふっ」 「そこまで笑う!?」 「失礼しました」所詮、自分は3枚目のひょうきん属性の高校生男子だ。決まった台詞を吐いたつもりでも、相手から見れば滑稽に映るのであろう。
気を取り直して、美女ディーラーと並んでテーブル席につく。緑の芝が目に眩しい。美男子ディーラーがこちらの様子を気にせずカードをシャッフルしている。
美男子ディーラーは次に伏せた状態のカードをこちらと美女ディーラーに2枚配る。配られた2枚のカードをお互いに確認する。
「ポーカーのルールはご存じ?」
「なんとなく」 「よかった。見た目そのままお子ちゃまじゃなさそうね?」自分の手札はスペードのA、スペードのK。この状態でまず最初のベット(賭け金)を選ばなければならない。
「とりあえ
第3王子は繩でぐるぐる巻きにされて、まるでミノムシのようになっていた。だが、その状態でもやかましい。いっそ、腹に蹴りでも入れて、無理矢理黙らせてやろうかとさえ思えてくる。 だが、それを静止してきたのは大魔導士ミカであった。「人質に手をあげるのはご法度でございまする」 「そんなルールでもあるわけか? この世界には」 「はい、ありまする。人質や捕虜の扱い、あとはその交換に関する国際ルールが制定されておりますのじゃ」 「中世ナーロッパのくせに……」 どうにももやもやとしてしまう。ミノムシ状態にしなければよかったとすら思えてくる。完全に拘束してしまったことが裏目に出てしまった。「吾輩をどうする気でしゅか! このまま親父との交渉に使うでしゅか!」 「ああ、全くその通りだよ!」 「くーくくっ。浅知恵にもほどがあるのでしゅ」 「どういう意味だ?」 「まずひとつ。吾輩を背負ったまま、無事に国王である親父のとこにまで到達できないのでしゅ」 「やってみなきゃわからんだろ」 「さらにもうひとつ。この城にお前たちが探している聖騎士はいないのでしゅ」 「なん……だと!?」 聖騎士シャインはこの城に囚われているままだと思い込んでいた。しかし、実際は違った。急いで、聖騎士シャインをどこに移送したのかを第3王子に詰問した。「クククッ。邪龍が住まう神殿でしゅ。聖女が生贄になるのを拒んだから、今年は代わりに聖騎士シャインを生贄にすることにしたのでしゅ」 「どういうことだってばよ!?」 「おや? そこの聖女様から聞いてないのでしゅか?」 恐る恐る聖女ヴィオレッタの方へと視線を向けた。聖女は「あはは……」と苦笑していた。怒りが湧いてきた。「おい、ヴィオさん。あんたは俺に本当のことを隠していやがったのか!」 「隠してたわけじゃないわよ。話す機会がなかっただけ」 「くっ! 俺がそんなに信用できないってのか!」 「そうじゃないわ。これ以上、私のことで巻き込みたくなかっただけよ」 「どういう
だが、本当の地獄はここからだった。牢屋を抜けだしたはいいが、城のそこら中に警備兵が巡回していた。 彼らに見つかれば、また牢屋に戻される。ここで光ったのが自分の透視能力だった。城のどこに警備兵がいるのか壁越しでわかる。 皆の先頭を自分が率先して歩く。網目のように張りめぐらされた警戒網をゆっくりと進んでいく。 皆が緊張感に包まれていた。そして、緊張感がMaxに届いた時、事件が起きた。誰かがプゥ~~~とオナラをしたのである。「なんだ今の音!?」 警備兵たちが一斉にこちらへと振り向いてきた。急いでリリーを抱き寄せる。次の瞬間には透明化を行い、自分とリリーの姿を相手から見えなくさせた。「おっとぉ? お客さんたち。どこへ行く気かな?」 警備兵たちから見えるのはゲイルとヴィオレッタ、そしてミカの3人だ。自分とリリーは透明化で姿を消している。 こちらの3人に向かって、警備兵がゆっくりと近づいてくる。自分はリリーの口に手を当てて、声を出させないようにした。 そのままの体勢でゆっくりと、警備兵の後ろへ回る。素早く彼の右腕を絞り上げ、その手から武器を取り上げた。「なんだ!?」 警備兵が素っ頓狂な声をあげた。手に持っていた武器をリリーに投げ渡す。その後、警備兵の足をひっかけて、彼を転ばせた。 それを合図にゲイルが警備兵の頭頂部にチョップを喰らわせた。警備兵は「ぐぇええ」とカエルのような声をあげて、失神してしまう。 警備兵の残りは二人だ。こちらの動きが流れるように鮮やかだったためか、呆けた顔をしていやがった。 その隙を見逃さない。急いで時間停止を行い、警備兵から武器を取り上げる。それをまたしてもリリーに投げ渡しておく。「これはみね打ちよ」「ひでぶっ!」「あべしっ!」 聖女ヴィオレッタと大魔導士ミカが素早く動き、警備兵たちの股間を目掛けて膝を入れている。倒れた警備兵たちが口から泡を吹いていた。ゾゾ……と背筋に冷たい汗が流れ落ちてくる。「お前ら、どこがみね打ちなんだよっ
自分たちは襲撃に会いながらも、どうにか城門にまでやってくる。城門を守る衛兵がこちらに槍の穂先を向けてきた。「何の用でこの城にやってきた」 どこまでも冷たい声だった。こちらを邪魔者としか感じていない。そんな雰囲気を発していやがった。 ムカッとしたのでその怒りをそのまま声に乗せそうになった。だが、口から言葉が飛び出す前にリリーがこちらの手を引っ張ってきた。「ダメですぅ。喧嘩を売りにきましたけど、買いにきたわけじゃないのですぅ」 「ハハッ。リリーは上手いことを言いやがる。そうだった。俺たちはカチコミにやってきたんだったな」 さすがはリリーである。こちらの手綱をしっかりと握ってくれている。心が軽くなった。衛兵とのやり取りをトラブルメーカーの聖女ヴィオレッタに任せることにした。「この城のどこかに私の従者が囚われているってのは知っているの。白状しなさいっ」 「おいっ。何をおかしなことを言ってやがる。そもそも、お前は誰なんだ」 「私? 私は聖女ヴィオレッタ様よっ!」 「そんな……バカな!?」 衛兵がおおいに戸惑っている。彼はただの衛兵だ。情報を処理しきれなくなっていた。こちらはニヤニヤと悪い顔になっていた。 衛兵の事情など、お構いなしにずけずけと用件を伝えてこいと命じる聖女であった。衛兵は「グヌヌ……」と唸っている。 衛兵は門を守る仕事を忠実にこなすか、それとも伝令役になるかの二択を迫られていた。しばらく聖女とやりとりをしていたかと思えば、急にあちらが折れることになった。「わかったわかった。上に伝えてくる。だが……その結果がどうなろうが俺の知ったことじゃない」 「気にしなくてもいいわ。モブはさっさと引っ込んでね。話が進まないもの」 「ぐぬー――! 言わせておけばっ!」 さすがはトラブルメーカーの聖女である。ついに堪忍袋の緒が切れたのか、衛兵は聖女に向かって槍の穂先を突き付けてきた。 だが、その槍の中ほどを手で掴んで止めた男が出てきた。その男はもちろん、頼もしい我らがゲイルである。「淑女に失礼だぞ。
盗賊に襲撃されてから三時間後、王都の入り口の門が夕日に照らされて見えてきた。自分たちはようやく王都の門の前に立つことになる。 一気に王城まで行きたいところだったが、夕暮れに差し掛かっている。「どうする?」 大魔導士ミカの方に顔を向けて、そう聞いてみた。大魔導士はコクリと頷き、こちらに返答してくる。「今から王都で宿屋を探すくらいなら、王城で寝泊まりさせてもらいましょうぞ」 「あくまでもイケイケでいいわけだな? 後悔はないんだな?」 「時間をかければかけるほど、聖騎士シャインの立場が危うくなりますゆえ」 「わかった。皆、このまま王城へかちこみだ!」 大魔導士の指示に従い、王都内を馬車で突っ切る。さすがは王都だ。どこに行っても、人だらけである。人の波が途切れることが無い。 リリーがこちらの腕に手を回してきた。彼女は心細さを感じているのかもしれない。回された手にこちらも手を添える。「リリーは必ず俺が守るから」 「はいっ。期待しているのですぅ」 「あらあら、お熱いこと! アルト、私たちも守ってね!」 「ヴィオさん? からかうところじゃないと思いますよ」 「超真面目に言ってるんだけどにゃぁ?」 ぷいっと聖女ヴィオレッタから視線を外す。そうした瞬間、嫌な予感がした。自分が動く前にギルド長のゲイルが動いた。彼は腰に佩いた剣を素早く抜刀する。 カキーンカキーンという甲高い音が聞こえた。さすがのゲイルである。四方八方から飛んできた矢を剣で叩き落してくれた。馬車の幌がゲイルの剣裁きによって四散する。「サンキュ。ゲイル」 「アルト殿も気づいておられたご様子。お節介でしたかな?」 「いいや。何かが来るとは感じたけど、迎撃体勢にまでは移れなかった。さすがはゲイルだよ」 「ふっ。これはご謙遜を」 ゲイルはこちらの実力を過大評価しすぎている。今の襲撃に対応できたのはゲイルがいてくれたおかげである。これは嘘偽りのない自分の評価だった。 だが、ゲイルはこちらと視線を合わす前に次の行動へと出た。馬車の荷台の後
国王側にこちらの動きは筒抜けのようであった。やれやれ……と肩をすくめるしかない。冒険者ギルドの内部をキレイに掃除したつもりであった、しかし急激な改革は反対者を生む。これは身から出た錆でもあった。裏切者を炙り出すのは後にして、まずはじっくりと捕らえた盗賊から情報を引き出した。盗賊たちは協力的で、聞いてないこともべらべらと喋ってくれる。なんとも可愛げのある連中だ。「じゃあ、縛ってその辺に転がしておけ」 「こんなところに放置されたら熊に襲われちまうよー!」 「じゃあ、やっぱり撫で斬りにしてやろうか?」 「ひぃーーー! 繩だけでお願いしまーす!」繩でがんじがらめにした盗賊たちをその場に残して、自分たちは馬車に乗り込む。リリーが何か言わんとしていたが、こちらは先んじて、リリーのご機嫌を取る行動に出た。「別に殺すつもりでやってるわけじゃないから」 「むぅ……襲ってきたあちらが悪いのわかるんですけどぉ」 「リリーは優しいなあ。でも、その優しさを俺以外に向けると、俺が焼きもちを焼いちゃいそうになる」 「んもう。アルトさんったら」リリーが頬を赤らめて、俯いてしまう。周りはニヤニヤとしぱなしであった。リリーのご機嫌も取れたということで、馬車が出発する。向かうは王都だ。あと3時間程度で着く予定である。その3時間を使って、こちらも王都に乗り込んだ際にどう動くかを話し合う。先に口を開いたのは大魔導士ミカだった。彼女は軍師らしく、自分たちがどう動くべきなのかを示してくれた。「王都内ではなるべく固まって動きますように。こちらが人質作戦を取ることもバレていると考えた方がいいかと」 「俺たち5人でしか、話してない内容だぜ!? それはおかしくない?」 「壁に耳あり、ジョージにメアリーという言葉があります。ギルド長室といえども安全とは限らないかと」 「なるほどなぁ~。俺、もしかして冒険者ギルドの職員に甘く見られてるぅ?」 「甘くは見られていないじゃろうて。むしろ毛嫌いされているかもしれぬのう」 「そっちのほうが悲しくなっちゃう。俺、キレイな冒険者ギ
聖騎士シャインを取り戻すための策は決まった。ならば、次にするべきことは王都に行くことである。 王都は今滞在している街から西に馬車で三日ほど行ったところにある。善は急げとばかりに皆が動き出す。 駅馬車に向かい、そこで王都行きの乗合馬車に乗り込んだ。荷台に8人が乗り込めるほどのビッグサイズである。「8人乗りの乗合馬車を貸し切りって、ほんとアルトはお金持ちね」 聖女から軽く嫌味を言われた。しかしながら、気にもしない体で言い返す。「そりゃ腐っても冒険者ギルドのオーナーだからね」 「そんなにお金が余ってるなら、私に無条件でお金を貸してくれればよかったのに」 「そりゃ御免被る。俺は聖女様に追放されたことを未だに恨んでいるからね」 「器の小さい男で困るわ」 嫌味には嫌味で返す。醜い争いが馬車の上で展開されていた。隣に座るギルド長のゲイルがヤレヤレ……と肩をすくめていた。 ゲイルの気持ちはわからないでもない。聖騎士シャインを助けにいく仲間だというのに仲違いしてどうすると言いたげな仕草を取っている。 ゲイルはさすが大人であった。水筒を取り出し、キャップを外す。そのキャップを湯呑みにして、中身を注ぐ。それを聖女の方へと手渡すのであった。「あーーー。うちのオーナーがお子ちゃまで済まない。仲直りの印として、この杯を受け取ってくれないかな」 「くんくん。なんかアルコールっぽい匂い」 「身体を温める用に常備している酒だ」 「もらってもいいの?」 「もちろん」 今の季節は陽気な春だ。だとしても、吹く風はどこか肌寒さを感じる。そこで酒を取り出したゲイルであった。聖女は聖女らしい微笑みを顔に浮かべつつ、コクコクと湯呑み代わりのキャップに注がれた液体を飲み干すのであった。 ほんのりと聖女の頬が赤くなっている。どきりと鼓動が跳ね上がる。いかんいかんと思いながら、頭を軽く振る。(ったく、さすが聖女様だ。いちいち画になりやがる。うっかりしてると、惚れそうになっちまう。リリーに申し訳が立たなくなるわ) お酒が入って上機嫌になった
如月有人は今の状況にうろたえるしかなかった。下半身丸出しで居て良い場所ではないことは一目瞭然だ。 貴族と思わしき人々の中でも、一番に目立ついかつい身体をしている壮年の男が真っ赤な顔で「おい、この不埒者が!」とこちらへと詰め寄ろうとしてきた。 ひっ! と情けない声をあげてしまう。しかし、そんな自分といかつい貴族の男の間に割って入ってくれる人物がいた。 その人物は女性だった。真っ白な身体をこれまた真っ白なローブで包んでいる。金髪碧眼縦ロール。彼女がニッコリとほほ笑む。 その笑顔だけで怒り顔の貴族の顔が破顔してしまった。何をしたのかと疑ってしまうレベルだった。「皆
赤、ピンク、紫といったいかがわしいネオンが眩しいデカすぎる建物の前に自分は立っていた。さらにこの建物がカジノであることがこれまたデカすぎる看板で示されていた。 正直、怖気付いてしまいそうになる。女神に自分はダメンズではないことを証明しようとして、ひとりでカジノの前までやってきた。「当
この世界で一番手っ取り早く稼げる方法。それはどこの世界でも変わらないようだった。女神が妖艶な笑みを浮かべる。「カジノで荒稼ぎするのよ」 「犯罪じゃないですよね!?」 「バレなければね」 「女神ぃぃぃっ!?」 バレなければ犯罪じゃない。なんとも甘美な言葉だった。またしても女神はこちらを堕落させようとしてくる。(この女神様。ダメンズ製造機なのでは?) 目の前で踏ん反り返っている女神に対して、こちらはおどおどと情けない姿を晒してしまっている。 確かに金を稼ぐ方法を聞いたのは自分だ。今
「ボストンバッグ発見! 第1調査隊の如月有人、突貫します!」 高校1年生の如月有人は学校の帰り道、河川敷にポツンと置かれていた黒革のボストンバッグを発見した! 彼はお宝の匂いに敏感だ。きょろきょろと辺りを見回す。犬と一緒に散歩しているお爺ちゃん。運動不足を解消するために走っているジャージ姿の青年。 彼らはまったくこちらに気付く様子もない。しめしめと思いながら、ボストンバックのチャックを開く。「うひょぉ~♪ 俺が睨んだ通り、お宝の山だ! この湿り気具合。捨てたのは昨夜……っぽいな?」 有人はボストンバックの中身を吟味する。ざっと見た感じでは30冊はある。どれもこ