Masuk「私、負けたことないの」
美女ディーラーが微笑む。俺も笑った。
「奇遇ですね」
「なにが?」 「俺も今日から負ける予定ないんで」 「ぷふーーー! えふっえふっ」 「そこまで笑う!?」 「失礼しました」所詮、自分は3枚目のひょうきん属性の高校生男子だ。決まった台詞を吐いたつもりでも、相手から見れば滑稽に映るのであろう。
気を取り直して、美女ディーラーと並んでテーブル席につく。緑の芝が目に眩しい。美男子ディーラーがこちらの様子を気にせずカードをシャッフルしている。
美男子ディーラーは次に伏せた状態のカードをこちらと美女ディーラーに2枚配る。配られた2枚のカードをお互いに確認する。
「ポーカーのルールはご存じ?」
「なんとなく」 「よかった。見た目そのままお子ちゃまじゃなさそうね?」自分の手札はスペードのA、スペードのK。この状態でまず最初のベット(賭け金)を選ばなければならない。
「とりあえ
カジノを出るとすっかりと夜は更けていた。治安も悪くなる一方だろう。勝ち誇っていた気分がだんだんと萎んでくる。 カジノ系列のホテルが近くにある。だが、こちらはそのカジノでやらかしまくったという自負がある。心臓に毛が生えているわけではないので、そのホテル群を利用できなかった。 急ぎ足で台車を動かし、カジノからかなり離れた場所にあった安宿に泊まることにした。だが、ここで急遽、女神が降臨してくることになった。「ちょっと!? アルトくん、まさかこんなセキュリティも何もない安宿に泊まるつもりなの!?」 「そ、そ、そんなこと言われても……俺、どうするのが正解なんですか!?」 「カジノ系列のホテルに堂々と泊りなさいよっ」 「そんなことできるかっ! 明日には川で浮かんでるわい!」 「カジノ側はそんなことしないわよぉ。一度目まで……ならねっ☆彡」 「二度目は無いってやつですね。わかります」 女神のお勧めもあって、やはりセキュリティがしっかりしているカジノに近い場所にあるホテルに泊まることになった。 部屋に着くなり、女神様に深々と頭を下げる。そして、借りていた2万ゴリアテをさっそく返すのであった。「んもう。もっと借りてていいのよ? リボ払いなんだしっ」 「いえ……返せるときに一気に返したほうが……」 「現金大事っ。リボ払いを引き続きご利用を~♪」 思わず苦笑するしかなかった。こちらは530万ゴリアテ持っているというのに2万ゴリアテをリボ払い(40回)することで押し切られてしまう。少しでも利息が女神様に入ればいいと思えてしまう。 やはり金の力は偉大だ。金があるだけで安心感が買えるとはよく言ったものである。ふかふかのベッドの上に身体全体を預ける。すると、女神がこのベッドに腰掛けてきて、こう尋ねてくる。「次はどうするつもり?」 「次……そうか、俺は次を考える余裕ができたのかっ!」 「ちなみに今日1日、わたくしの方で聖女たちを説得してみたけど……状況はかんばしくないわね?」 「くそお! この大金を使って、ざまぁ! してやりたいよぉ! ほっぺたを札束
女神アテナは言っていた。バレなきゃ犯罪じゃない。確かにその通りだ。イカサマも同じである。バレなきゃ何やってもいいのである。 そして、今自分がすることは相手のイカサマを暴くことではないっ。自分もバレないイカサマをすることである。 美女ディーラーの手札ばかりに注目していた自分も悪い。先ず疑わなければならないのはカードを配っている美男子ディーラーの方である。 美女ディーラーは何もしていない。バニー服姿のどこかに隠しカードを仕込んでいないことは透視で確認済みだ。 そこで安心していた自分をぶん殴ってやりたい。ついでに美女ディーラーの乳首の色を確認していたのだ。そんなところに力を割いていたのだから、3連敗して当たり前だった。 ここには人生を賭けて勝負しにきたのだ。桜色の乳首にうほっうほっ言っている場合ではなかった。 注目すべき相手を美男子ディーラーに変える。すると、体のあちこちに隠し札を隠し持っていやがった。 袖の中はもちろん、胸ポケット、尻の谷間、さらには靴の中に隠しカードを仕込んでいるという徹底ぶりだった。 なぜ見逃していたのかと、マジで自分の手で自分自身をぶん殴ってやりたくなってしまう。 しかし、これは終わった話だ。自分は相手のイカサマを越えなければならない。 共通カードが配られる。その上で美女ディーラーがベットしてきた。その額2万メダル。このゲームでこちらを素寒貧にするつもりなのが伝わってくる。 だからこそ、こちらも乗ってやった。手札はゴミ。共通札3枚と絡むことすらできない。役無しの状態でも、さらに賭け金を増やしていく。「甘ちゃんなのよ、坊やは」 「それはどうかな? オールイン!」 「ふふっ。ブラフだって見え見えなのにっ。んもう。かわいいっ! お姉さんもオールイン♪」 手持ちの7万メダルを全て賭けた。共通カードは5枚、場に提示されている。そして、自分の手札2枚と合わせても役無しだ。それでもオールインしてやった。自分には時間停止というトンデモチートスキルがあるからだ。「では、手札を公開してください」 美男子デ
「私、負けたことないの」 美女ディーラーが微笑む。俺も笑った。「奇遇ですね」 「なにが?」 「俺も今日から負ける予定ないんで」 「ぷふーーー! えふっえふっ」 「そこまで笑う!?」 「失礼しました」 所詮、自分は3枚目のひょうきん属性の高校生男子だ。決まった台詞を吐いたつもりでも、相手から見れば滑稽に映るのであろう。 気を取り直して、美女ディーラーと並んでテーブル席につく。緑の芝が目に眩しい。美男子ディーラーがこちらの様子を気にせずカードをシャッフルしている。 美男子ディーラーは次に伏せた状態のカードをこちらと美女ディーラーに2枚配る。配られた2枚のカードをお互いに確認する。「ポーカーのルールはご存じ?」 「なんとなく」 「よかった。見た目そのままお子ちゃまじゃなさそうね?」 自分の手札はスペードのA、スペードのK。この状態でまず最初のベット(賭け金)を選ばなければならない。「とりあえず1万メダル」 スロットで稼いだ11万メダルを11枚の1万メダルに交換してもらった。その内の1枚を惜しげもなく、緑の芝へと放り投げる。「あらあら、ずいぶん強気ね? コール」 お互いに1万メダルづつ、場に出す。これで勝負はとりあえず成立した。次に美女ディーラーは二人の間に3枚の共通カードを広げる。 この配られ方は『テキサスホールデムポーカー』だ。場に公開されている最大5枚のカード(共通カード)と手札2枚のカードを組み合わせて役を作る。 現在の共通カードはスペードのJ、スペードの10、ハートの5だ。 これで共通カードにスペードのQが来てくれればストレートフラッシュが完成する。「さらに1万メダルをベット」 「うふふ……強気すぎて、お姉さん濡れちゃいそう。コールよ」 美女ディーラーも負けじと付き合ってくれる。テーブルの向こう側にいる美男子ディーラーが共通カードの枚数を1枚増やす。 大当たりだ。スペードのQが出てきた。これでこちらの手は完成した
赤、ピンク、紫といったいかがわしいネオンが眩しいデカすぎる建物の前に自分は立っていた。さらにこの建物がカジノであることがこれまたデカすぎる看板で示されていた。 正直、怖気付いてしまいそうになる。女神に自分はダメンズではないことを証明しようとして、ひとりでカジノの前までやってきた。「当カジノ:当たるも八卦、当たらぬも八卦にようこそ。身分証の提示をお願いします」「嫌なカジノ名だなおい!?」「冗談です。本当の名前はここのオーナーの名前を文字ったものです」 入口のドアの横に燕尾服を着た青年が礼儀正しくこちらにコンタクトしてきた。冗談交じりのところが憎い。誘われるようにマイナンバーカードを提示する。「おや? 当店に入場するには18歳以上でなければいけませんが……保護者の方などいらっしゃいますか?」「ええ!? もしかして、俺ひとりだと、入店すらできない!?」「はい。国法でそう定められていますので。って、ちょっと待ってください!?」 黒服の従業員が慌てている。何が起こったのか自分でもよくわからない。だが、黒服の従業員は咳払いをした後、「失礼し
この世界で一番手っ取り早く稼げる方法。それはどこの世界でも変わらないようだった。女神が妖艶な笑みを浮かべる。「カジノで荒稼ぎするのよ」 「犯罪じゃないですよね!?」 「バレなければね」 「女神ぃぃぃっ!?」 バレなければ犯罪じゃない。なんとも甘美な言葉だった。またしても女神はこちらを堕落させようとしてくる。(この女神様。ダメンズ製造機なのでは?) 目の前で踏ん反り返っている女神に対して、こちらはおどおどと情けない姿を晒してしまっている。 確かに金を稼ぐ方法を聞いたのは自分だ。今更、何ビビってやがると尻に蹴りを入れられても仕方ないくらいに及び腰となっていた。 これではいかんと、ごほんっ! とひとつ咳払いをする。そして、女神に向かって背伸びをして出来るだけ悪い男を演じてみせる。「俺のエスパーの力が火を噴くぜ? ってことですよね」 「そうそう。透視、透明化、時間停止とやりたい放題できるじゃない♪」 「具体的には?」 「そこはあなた自身が考えなさい。と言いたいところだけど、能力を上手く使うためのきっかけは教えてあげる♪」 女神はそう言った後、どこからともなく手のひらに収まるサイズのカードを取り出してきた。それをこちらの手に乗せてきた。そのカードの左上にはこちらの顔イラストが描かれている。 さらには生年月日と16桁の番号が書かれているカードであった。ゴクリ……と息を飲むしかない。「えっと……身分証明書ってやーつ?」 「もっとはっきり言えば、マイナンバーカードよっ!」 「この世界、すごいなぁ!? 戸籍を管理してるだけでも驚きだっていうのにさぁ!? 本当にここって中世ナーロッパなんですかね!?」 つい錯乱してしまった。技術の進歩と文明の進捗はイコールで結ばれないとはいえ、ここまで乖離してるものなのか? と訝しんでしまう。 とりあえず、この世界のその辺は置いといて、マイナンバーカードで身分を証明できるのは便利である。 今から自分が向かう場所はカジノである。身分を証明できなければ、そもそもその
とりあえず合わせて2万ゴリアテを手に入れた。女神が言うには日本円に換算して20万円だそうだ。身分がしがない高校生である自分にとっては大金に感じてしまう。「俺……20万円もリボ払いで返すって、人生詰んだんじゃないですかぁ!?」「安心して? たったの20万円だからっ。月々5000円+手数料で約40回払い。スマホ本体を48回払いするよりも簡単に返せちゃう!」「ははっ……俺、腹が減って思考能力が落ちてるせいか、20万円を天文学的数字に思っちまった。てか、スマホの48回払いって今更にとんでもないな!?」 スマホの話はさておき、女神から手に入れたお金で何か食べたい。こちらの気持ちを汲んでくれたのか、女神がそっとコッペパンと瓶入り牛乳を差し出してきた。 こちらは失礼なことにジト目で女神を見てしまうことになる。「……いくらですか?」「失礼ねっ! 今回は無料なんだからっ」「今回は……ってところがひっかかるぅ!」 女神の気が変わらぬうちにコッペパンを削るようにかみ砕き、さらに瓶入り牛乳で口の中を洗い流す。ふぅ~~~と息をついて、もう一度、コッペパンをしゃぶろうとする。 しかし、つい、その手を止めてしまった。女神がにっこにこの満面の笑顔をこちらに向けてきたからだ。 気恥ずかしさで顔から火が出そうになってしまう。つい、食べる手を止めて、顔を俯かせてしまった。そこに追い打ちをかけるように女神が声をかけてきやがった。「かわいい~♪ 照れてる照れてる」「んもう! からかわないでくれよ! 俺は純情Maxの童貞高校生なんだぜ!?」「その童貞、ぱっくんちょしていい?」「いひぃ! 耳に吐息を吹きかけないでぇ!?」 空腹が少し満たされたところに性欲が刺激されたために、感情がぐちゃぐちゃになってしまう。いっそ殺してくれと願いたくなってしまう。しかし、女神のからかいはそこでストップしてしまった。 こちらは手持ちぶたさになりながら、コッペパンと牛乳を平らげる。腹を満たした自分に対して、女神がよしよしと頭を撫でてくれた。「女神様。なんでそんなに俺に優しいんですか?」 当然の疑問だった。自分は女神が望んでいた立派な勇者様ではない。それどころか、ハズレスキルだらけのエスパーを選んだ身である。優しくされる謂れがないと思えてしまう。 気おくれしている自分に対して、女神がこちらの
「さてと……そろそろ真面目な話をするわよ?」 女神がピシャリと場を整えてくれた。その身から威厳と神々しい光を溢れさせる。いよいよかと思われる瞬間がやってきた。 周りにいる貴族たちが姿勢を正す。聖女パーティの3人も女神に向かってひざまずく。自分はどうしたものかと考えていると、女神がこちらの両肩に両手を乗せてきた。「勇者アルト・キサラギが聖女の旅を助けてくれます。彼はハズレ職業のエスパーですが、それでもきっとたぶん聖女のためにその命を捧げてくれるでしょう!」 「……えっと、女神様」 「はい? なんでしょうか、勇者アルト・キサラギ」 「キャラクターシートでエスパーをお勧めしてくれてまし
如月有人は今の状況にうろたえるしかなかった。下半身丸出しで居て良い場所ではないことは一目瞭然だ。 貴族と思わしき人々の中でも、一番に目立ついかつい身体をしている壮年の男が真っ赤な顔で「おい、この不埒者が!」とこちらへと詰め寄ろうとしてきた。 ひっ! と情けない声をあげてしまう。しかし、そんな自分といかつい貴族の男の間に割って入ってくれる人物がいた。 その人物は女性だった。真っ白な身体をこれまた真っ白なローブで包んでいる。金髪碧眼縦ロール。彼女がニッコリとほほ笑む。 その笑顔だけで怒り顔の貴族の顔が破顔してしまった。何をしたのかと疑ってしまうレベルだった。「皆
「ボストンバッグ発見! 第1調査隊の如月有人、突貫します!」 高校1年生の如月有人は学校の帰り道、河川敷にポツンと置かれていた黒革のボストンバッグを発見した! 彼はお宝の匂いに敏感だ。きょろきょろと辺りを見回す。犬と一緒に散歩しているお爺ちゃん。運動不足を解消するために走っているジャージ姿の青年。 彼らはまったくこちらに気付く様子もない。しめしめと思いながら、ボストンバックのチャックを開く。「うひょぉ~♪ 俺が睨んだ通り、お宝の山だ! この湿り気具合。捨てたのは昨夜……っぽいな?」 有人はボストンバックの中身を吟味する。ざっと見た感じでは30冊はある。どれもこ