Share

第683話

Author: 魚ちゃん
「以前、どこかで聞いたことがあるんだけど」明里は少し躊躇いながら言った。「怜衣さんって、あなたの初恋の相手だったって……」

「だから、それは絶対に違うって何度も言ってるだろ!」潤は途端に焦ったように身を乗り出した。

「わかってるわよ」明里は苦笑した。「ただ、火のない所に煙は立たないって言うじゃない?何かそういう誤解が生まれるような、何か思い当たる節があったのかなって。でなければ、どうしてあんな噂がまことしやかに囁かれているの?」

潤は少し考え込んでから、正直に答えた。「たぶんな、学生時代、女子にひっきりなしに告白されて、正直鬱陶しかったんだ。でも、怜衣がたまたま近くにいると、他の女子が遠慮して寄ってこなくなる。それで、そのうち周りが勝手に『あいつら付き合ってるんじゃないか』って誤解し始めたんだと思う」

「彼女が、いつもあなたの傍にいたの?」

「変な想像はするなよ」潤は慌てて否定した。

「当時、怜衣の親戚の男と俺は結構仲が良くてね。そいつを訪ねるという名目で、怜衣がよく遊びに来てたんだ。たぶん、そこから尾ひれがついて広まったんだろう。

俺自身はまったく気にしてなかったけど、
Continue to read this book for free
Scan code to download App
Locked Chapter

Latest chapter

  • プライド崩壊の夜~元妻、二人目の妊娠~   第862話

    あの頃の裕之は、今よりもずっと多忙だった。現在は一定の高みに立ち、多くのことを自分の裁量で動かせるようになっているが、当時はまだ長く険しい坂の途中にいたのだ。上層部との人間関係を慎重に維持しながら、同時に部下たちをまとめていかなければならない。それでも裕之にとっては、そういった仕事のすべては難なくこなせる範囲だった。この人生で唯一、心底手こずると思ったのは朱美だけだった。周囲の目から見れば、裕之は子供の頃から文武に秀でた模範的な学生であり、親たちが「我が子もあんな風に」と望むような理想的な人物だった。政界に入ってからも、確かな実力に少しばかりの運が味方し、着実に自らの道を切り開いてきた。誰もが口を揃えて「将来が楽しみだ」と高く評した。誠に勝手ながら、そんな自分の優秀さも、朱美の前ではすっかり霞んでしまうような気がしていた。家柄や能力といった条件を抜きにしても、朱美という人間そのものが、男を強く惹きつける魅力を持っていたのだ。外見の美しさ以上に、際立っていたのは、頭の回転の速さ、人に対するさりげない優しさ、そして絶妙なユーモアのセンス。一緒に仕事をした人々は皆、その魅力的な人柄に自然と惹きつけられていった。裕之が初めて朱美を見たのは、ある格式ある料亭でのことだった。朱美は個室へ向かう途中だったようで、廊下では小さな子どもが走り回っていた。急ぎ足の仲居が料理を乗せたお盆を持って角を曲がってきたとき、飛び出してきた子どもをとっさに身を挺して抱き止めたのが朱美だった。子どもは無事だったが、仲居の持っていた料理が朱美の服にこぼれてしまった。最初は朱美と子どもが親子なのかと思ったが、慌てて駆けつけてきた両親が朱美に平謝りしているのを見て、そうではないとわかった。こぼれたのが冷たい料理で本当によかった。もし熱い汁物などだったら、考えるだけでぞっとする。裕之はその場で、この女性は心の美しい人だと思った。だからといって、美しい女性を見るたびにすぐに心を奪われるわけではない。ただ、ちょうど近くにいたから、自分のハンカチを無言で差し出した。朱美はちらりと顔を上げて短く礼を言うと、その場を後にした。その後、互いの素性を知る機会があり、朱美が独身だとわかって、初めて彼女を一人の女性として強く意識するようになった。正確には、そ

  • プライド崩壊の夜~元妻、二人目の妊娠~   第861話

    「でも、君は『気持ちが傾いた』と言ったじゃないか」「だから言葉の綾で違うって言ってるでしょ!」朱美は思わず彼を軽く叩いた。「本気で傾いたんじゃなくて、悪くないと思っただけよ!」それでも、裕之の不機嫌の虫は収まらなかった。「傾いた」というその言葉が、頭の中にこびりついて離れないのだ。朱美がそんな甘美な言葉を自分に向けてくれたことは、ただの一度もなかった。なぜその美しい言葉を、他の男に平然と使うのか。「それでもダメだ」「もう、あなたって人は本当に……」朱美は呆れて力が抜けた。「わかったわ。あなたがどうしても行きたくないって言うなら、私ひとりで会ってくるから」「君も行っちゃダメだ!」「もう会うと言ってしまったのよ」「本当は、君自身が彼に会いたいんだろう。あの頃気持ちが揺れた相手が、今どんな顔をして帰ってきたか、気になるんだろう」朱美は静かに裕之を見つめた。「それは、ただの言いがかりよ」裕之は黙り込み、むっとしたままだ。朱美はため息をつき、両手で彼の顔を掴んでこちらを向かせた。「おかしな嫉妬はもうやめてちょうだい。ふたりで一緒に行けばいいじゃない。先方は奥さんとお子さんも一緒に連れてくるんだから、単なる家族ぐるみの食事会よ」「何年も会っていないなら、それぞれ自分の生活を続けていればいいだろう。わざわざ会う意味がどこにある」「一度だけ会って、それでおしまいにするから」朱美は宥めるように言った。「ラインの交換はしたのか?」「してないわ。電話だけ」「連絡がきても返さないでくれ」「わかったわ、しないから」朱美は笑いながら彼を見つめた。「……まだ怒ってる?」「食事は一度きりだ」裕之は強い口調で断言した。「連絡は一切なしだ」「はいはい」朱美はもともとそのつもりだった。これだけ長く音信不通だったのだから、昔の縁などとっくに薄れている。ましてその縁は、友情以上のものになったことはないのだ。「傾いた」というあの言葉は、本当にただの言葉の綾であり、言い間違いだった。口からとっさに出てしまっただけなのだ。だが、その一言に裕之がどれほど深く嫉妬していたかに気づいたのは、夜半を過ぎてからのことだった。求める勢いは、いつもと変わらず激しかった。思わず朱美は息も絶え絶えに口に出した。「明日、朝から……

  • プライド崩壊の夜~元妻、二人目の妊娠~   第860話

    シャワーを浴びて浴室から出てきた裕之に、朱美は切り出した。「昔の知り合いが外国から戻ってきたんですって。久しぶりに食事でもどうかって誘われたの」裕之はタオルで髪を拭きながら、短く「行っておいで」とあっさり答えた。「あなたも一緒に行くのよ」それを聞いて、裕之は手を止めて、朱美の顔を見た。「俺もか?」結婚して以来、朱美の大切な友人たちとは一通り顔を合わせて挨拶を済ませていた。でも朱美の交友関係は広く、裕之がまだ会っていない人のほうが多い。「そんなに仲がよかったのか?」「若い頃はね。でも、向こうが外国に行ってからは、それきり会ってなかったのよ」「それなら」裕之はスケジュールを確認した。「明後日の夜なら、なんとか時間が作れそうだ」「じゃあ、そう伝えておくわね」「ところで」裕之はようやく、一番気になっていたことを尋ねた。「そんなに長く会っていなかったのに、なんで今になって急に?」朱美は隠すつもりなどなく、事実をそのまま話した。「実は昔、その人にかなり熱心にアプローチされてた時期があったの。もう少しで気持ちが傾きかけたこともあって。でも、向こうに事情ができて外国に行ってしまって、それきりになったのよ」「……気持ちが傾いた?」裕之の声のトーンが、露骨に低く硬くなった。朱美の気持ちを動かしかけた男のことを聞き、警戒心を抱いたのだ。「熱心だったし、いい人そうだったから、少し考えてもいいかなって思っただけよ。本気で『傾いた』っていうより、まあ悪くないかなって感じ」裕之は朱美の目の高さを誰より知っている。長い間、自分が苦労して追いかけてきたのだから。「悪くない」と言わせるほどの男なら、相当な人物に違いない。潤が言っていた「脅かされるような気持ち」というものが、今になって少しわかった気がした。「でも、なんで今さら連絡がきたんだ?ずっと音信不通だったんだろ。番号はどこで手に入れたんだ?」言葉の端々に、かすかな嫉妬の棘が混じっていることに朱美は気づき、くすりとした。「変に勘繰らないでよ。私も知らない番号だったし、共通の知り合いが多いから、そっちから調べたんじゃないかな。おかしくないでしょ」「共通の知り合いがいるなら、もっと早く連絡がきてもおかしくないだろう。これだけ長い間、お互いの近況も知らずにいたのか?」「昔の出

  • プライド崩壊の夜~元妻、二人目の妊娠~   第859話

    リビングに誰もいないのをいいことに、彼は気兼ねなく甘えてきた。孫世代と同居している以上、家の中でもやはり人目は気になってしまう。朱美も誰かに見られたら気恥ずかしいと思い、足早に寝室へ向かった。裕之がすぐ後ろをぴたりとついてくる。ドアを閉めるなり、彼は待ってましたとばかりにキスを迫ってきた。「もう、焦らないでよ」朱美は手でやんわりと制した。「まだ早いし、もしアキに呼ばれでもしたら困るじゃない」「あの子はそこまで空気が読めない子じゃないさ。ふたりとも部屋に戻ったのに、わざわざ来ないって」「もしものことがあるでしょ」朱美は窘めるように言った。「先にお風呂に入ってちょうだい。十時を過ぎたら話は別だけど」「じゃあそれまで、俺はどうしていればいいんだ」裕之は手を取り、自分の体へと強引に引き寄せようとする。「あなたねえ、その歳でよくそんなに元気が余ってるわよね。少しは自重できないの?」「君を目の前にして、どうやって自重しろって言うんだ」裕之は悪びれずに言った。「これまでの空白を取り戻さないといけないんだから」「もう本当に……」「ねえ」裕之は朱美の耳元に顔を寄せ、低く囁いた。「来週、出張に一緒についてきてくれないか?」「また出張?」「向こうで会議があるんだ。会議の時間以外は、ずっと一緒にいられるから」「嫌よ」朱美はきっぱりと断った。「行ったら行ったで他にすることもないし、一日中あなたに振り回されるだけじゃない」「夜は思いきり甘やかしてあげるし、昼間はゆっくり眠れる。悪くないだろ」「もう、いい加減にして!」朱美は呆れて彼を睨んだ。「どうして二人きりだとこんなにだらしないのよ」「妻と一緒にいて、妻を欲しいと思う。それのどこがいけないんだ」「こんなことなら……」「こんなことなら、何だ?」「こんなことなら結婚なんてしなければよかったわ、なんてね。普通、歳を取るほど枯れていくものじゃないの?男は二十五を過ぎたら下り坂だって言うじゃない。あなたはなんで逆に上り坂なのよ」「それは人によるんだよ」裕之は事もなげに言った。「何しろ俺には、二十年近くの空白期間があったんだからな。それ以前のことはチャラだ」裕之が前の妻を亡くしたのは、まだ三十に満たない若い頃だった。それからずっと、彼は独り身を貫いてきたのだ。今さ

  • プライド崩壊の夜~元妻、二人目の妊娠~   第858話

    明里はそっと手を伸ばし、潤の柔らかな髪を撫でた。「私の方こそ、あなたの気持ちをちゃんと考えてなかった。後で大輔に電話して、ゆうちっちに会いたいなら、連れて行ってもらうから」「いいんだ」潤は顔を上げて言った。「明里ちゃん、俺はお前を信じてる。食事に行ってきていいよ。誰と友達になるか、その権利はお前にあるんだから。……正直に言うと、あいつと会うって聞いて胸がざわつくのは本当だけど、お前が俺を裏切るはずないってことも、俺は誰よりもわかってるんだ」「あなたが嫌な思いをするのは、私だって嫌なの」潤は立ち上がり、明里をその温かい腕の中へと力強く引き寄せた。「大丈夫、本当に。一人でちゃんと考えたら、俺のほうがただ器が小さかっただけなんだって気づいたよ」病院で大輔の姿を突然見たとき、潤は本当に驚いていた。その一瞬、頭の隅で「もしかして、明里と示し合わせて病院に来たんじゃないか」という黒い疑念さえよぎってしまったのだ。でも、今こうして冷静になって考えれば、それが自分の完全な考え過ぎだとわかる。明里という人間の誠実さは、そんな疑いを挟む余地もないほど信頼に値する。彼女は絶対にそんな器用な真似ができる人じゃない。自分が、ただ心の狭い振る舞いをしていただけなのだ。「私も、あなたの立場になって考えてなかった。ごめんね」この言葉を聞いて、潤は胸が温かくなると同時に、ひどく切なくなった。こんな優しい明里に謝らせるなんて、俺はどうかしている。潤は彼女の頬にそっと口づけて囁いた。「俺が悪かったんだ。もう二度としない」明里は嬉しそうに潤を見上げた。「俺たち三人――いや、お腹の子も入れて四人で、一緒に食事に行こう。それでいいだろ?」「うん」潤はふと思い出した。病院で、自分がどれだけ幸せかを見せつけたくて、大輔に余計な期待を抱かせたくなくて、明里の妊娠をあんな形で口にしてしまったことを。今となっては、その浅はかな行動を本当に後悔している。俺はいつから、こんなに器が小さく、こせこせした人間になっていたのだろう。あのマウントを取るような行動には、少しも大人の余裕がなく、少しの品さえなかった。明里ちゃんとここまで数え切れないほどの試練を乗り越えてきて、ようやくこうして一緒になれた。二人目の子どもまで授かろ

  • プライド崩壊の夜~元妻、二人目の妊娠~   第857話

    それだけ長い付き合いになって初めて、朱美は知ったのだ。あの寡黙な裕之が、これほど情熱的な人だったのかと。朱美は、怒ったからといって子どものように連絡先を消したり、着信を遮断したりするようなタイプではない。裕之からのメッセージに返信しないことはあっても、送られてきた言葉には必ずすべて目を通していた。正直なところ、朱美は裕之に強く惹かれていた。正式な恋人として世間に認めていなかったとはいえ、こうして何度も体の関係を持った以上、それはもう「彼を選んだ」という揺るぎない事実なのだ。それなのに、そんな相手が見当違いな嫉妬で心を乱し、あんな心ない一言までぶつけてきた。もうこんな面倒ごとにはうんざりしていたし、いっそのこと別れてしまえばいいとも思った。ひとりのほうが、こんなに心をすり減らすこともなく、ずっと気楽に生きていける。でも、裕之は決して引き下がらなかった。少しでも時間ができるたびに朱美のもとへ足を運び、真剣に向き合おうとした。徹底的に話し合うことで、裕之もようやく自分が間違っていたのだと気づいた。そうして半年ほど経って、ようやくふたりは元の関係に戻ることができたのだ。腹を割って話し合ったとき、朱美ははっきりと彼に伝えた。「もし他の誰かを好きになったなら、きちんとあなたと別れてから動く。二股をかけるような卑怯な真似は絶対にしない」と。そもそも、もし他の人に少しでも気持ちが向いていたなら、とっくに彼とは別れていたはずだ。これだけ長い間ずっと誰とも付き合わずひとりでいたのは、そういうことなのだ。自分の条件が特別いいと自惚れるつもりはない。ただ、裕之は仕事が忙しすぎて、彼女のそばにいられる時間が圧倒的に少ない。もしそれを不満に思っていたなら、最初から裕之を選ぶはずがなかった。話し合いを経て、裕之は深く頭を下げて謝った。自分の嫉妬が見当違いだったと、素直に認めたのだ。でも同時に、彼はこうも言った。「嫉妬するのは、自分でもどうにも止められないんだ」と。朱美を追う男性の中には、二十代や三十代の野心に満ちた若い男もいた。朱美と一緒にいれば将来は楽ができると打算があるのか、一回り以上の年の差などまったく気にしない。しかも、朱美には四十代とは思えないほどの若々しい美しさがある。朱美はそれでも、

  • プライド崩壊の夜~元妻、二人目の妊娠~   第463話

    どれくらいの時間が経っただろうか。明里の動きが止まった。潤が体勢を変えようと軽く体を動かす。明里の顔が彼の胸から離れた。眠っている。泣き疲れて、そのまま眠ってしまったのだ。長いまつ毛には、まだ涙の粒が光っている。潤はたまらなく愛おしく、そして胸が痛んだ。そっと指先で目尻の涙の跡を拭ってやる。どうしてこんなにも悲痛な泣き方をするのか、どうしても理解できなかった。家族のことだろうか?だが彼女の両親は、もう彼女を失望させる余地もないはずだ。今さら何をされても、ここまで深く傷つくことはないだろう。自分のせいではないはずだ。彼と明里の間には、もう誤解もわだかまりも

  • プライド崩壊の夜~元妻、二人目の妊娠~   第474話

    朱美は、頭では理解していた。だが理解することと、一刻も早く娘に会いたいというはやる気持ちは別だった。それでも潤には冷静に答えた。「分かりました」潤との通話を終えると、すぐに別の番号にかけた。コール音がしばらく続いてから、ようやく相手が出た。姪の優香の、まだ寝ぼけた声だ。「もしもしぃ……誰?」着信画面も見ずに出たらしい。「優香、私よ」朱美が言った。「叔母さん?」優香がベッドの上でゴロゴロと寝返りを打つ音。「こんな朝早くに何?まだ寝てるのにぃ……」「優香、前に『朝ランニングを始める』って言ってたじゃない」「眠いんだもん……」優香がむにゃむにゃと言い訳する。「

  • プライド崩壊の夜~元妻、二人目の妊娠~   第477話

    「分かんない。上手く言えないけど、とにかく変なのよ」明里は不思議に思ったが、朱美のことはよく知らないため、それ以上は考えなかった。一方、トイレに駆け込んだ朱美は、個室の中で込み上げる感情を抑えきれずにいた。今は事業も成功し、誰もが羨む地位と権力を手に入れた。だが亡くなった恋人を想い、愛しい娘が目の前にいるのに、母親だと名乗ることさえできない現実に、胸を掻きむしられる思いだった。数分後、優香のスマホが鳴った。メッセージを見て、彼女は驚きの声を上げた。「えっ、叔母さん帰っちゃったみたい!」明里も驚いた。「え?」優香が画面を見せる。「急用ができたから先に失礼するって。私た

  • プライド崩壊の夜~元妻、二人目の妊娠~   第452話

    昼時になり、病院のスタッフが食事の注文を取りにやってきた。だが胡桃は、何を食べても戻してしまう。それどころか、匂いを嗅ぐだけでも吐き気がしてしまう。明里は軽々しく食事を注文することもできず、かといって自分だけ病室で食べるのも気が引ける。スタッフに断りを入れ、ベッドサイドに腰を下ろす。ようやく冷静に思考を巡らせる余裕ができた。胡桃が投下した爆弾を、少しずつ受け入れられるようになってきた。彼女はこの子を一人で育てるつもりだという。かつて明里が宥希を産もうと決めた時のように。だが、二人の状況はまるで違う。明里の場合は、潤が自分を愛していないと思い込んでいたから、覚悟を

More Chapters
Explore and read good novels for free
Free access to a vast number of good novels on GoodNovel app. Download the books you like and read anywhere & anytime.
Read books for free on the app
SCAN CODE TO READ ON APP
DMCA.com Protection Status