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第917話

Auteur: 魚ちゃん
優香には知る由もなかった。その無自覚な一言が、啓太の胸の中でどれほど激しく心を掻き乱しているか。

もう、他のことなんて一切考えられない。頭の中には、目の前で文句を言っている優香の艶やかな唇だけが焼き付いている。

――キスしたい。

これまで何度、そう狂おしいほどに思ったかわからない。

深夜の暗闇の中、彼は彼女の名前を狂おしく呼びながら、体の奥底から突き上げる欲望を解き放っていた。

それでも昼間に明るい場所で会えば、その思いをずっと胸の奥底に抑え込んできた。大切な彼女を、自分の身勝手な欲望で絶対に汚したくなかったからだ。

なのに今日、あろうことか彼女の方から、こんな無防備に話題を持ち出してくるなんて。

啓太は喉の渇きを潤すように、またフルーツティーを一杯飲み干した。

優香がさらに何か言いかけると、啓太が手で制して遮った。「お願いだから、もうやめてくれ」

「やめない!」優香は子供のようにむくれた。「どうせいろんな女の人といっぱいキスしてきたんでしょ。ちょっとくらい私に教えてくれたっていいじゃない。別に変なことを聞いてるわけじゃないし、キスの話もできないくらい私って子供なの?
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