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2-74.釜を掘る(2/3)

last update Terakhir Diperbarui: 2025-09-20 11:00:41

 釜場を掘り終わり、冬凪とあたしが担当した水溜まりの水が捌けて最初の休憩になった。

冬凪とハウスに戻りながら、

「なんか疲れた」

「あたしも」 

江本さんとの作業は別の意味でエネルギーを吸い取られるので倍疲れるのだった。

エネルギーヴァンパイアとはこういう人のことをいうのだろう。

冬凪とあたしはハウスの日陰に座って排水作業があらかた終わった爆心地を眺めていた。

すると赤さん初め調査員の人たちがワタワタと白い防護シートの外に出て行くのが見えた。

なんだろうと見ていると、

「お客さんが来たみたいね」

江本さんがそちらを眺めながら教えてくれた。

それからすぐ、赤さんに誘導されてマットブラックのゲレンデが爆心地に浸入してきた。

ゲレンデがハウスの前まで来ると停車して、中から黒い日傘を差した黒服サングラスの一団が出てきた。

その中に守られている赤い服の女性は、「帰ってきた」辻川町長だ。

黒服サングラスのSPたちは辻女の時より人数が二人多かった。

この真夏の太陽の下、日光を避けるのは相当大変だろうと思われた。

「辻川町長が何の用かな」

「ここの元請けは辻沢町だから町長が来てもおかしくはないけれど、今までこんなことはなかった」

辻川町長を中心に置いた黒い亀甲陣形は、赤さんと少しやりとりすると一緒ににユンボが置いてある土山どやまの所へ向った。

そして何か指示を出しているらしく赤さんはしきりに頭を下げていた。

亀甲陣形は再びゲレンデに戻ってくると、そのまま中に収まって爆心地を出て行ったのだった。

赤さんが不機嫌そうな顔をしてハウスの所に戻ってくると、

「皆さん。午後まで待機してください。土山をどかして地面を晒すことになりましたので」

赤さんは調査員の佐々木さんと曽根さんに土山をどかす先を指示してハウスの中に閉じこもってしまったのだった。

「辻川町長は人柱をブッコ抜くつもりだ」

冬凪に言うと、

「きっとそうだね」

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