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第013話

Author: CHUE
last update publish date: 2026-06-27 23:06:55

「それでも駄目そうなの?」

 ヘジンは心底驚いたように言った。

 駄目どころか、余計に面倒なことになるのは目に見えていた。

 あの男なら、間違いなくそうなる。

 お金じゃない。

 もっと別の方法が必要だった。

「それじゃなくて、その……性的に引くような方法とかない?」

「それなら、九八・三パーセントくらいの確率で逃げ出す方法があるよ」

 妙に具体的な数字だった。

 だからこそ妙な説得力もある。

 ……とはいえ。

 あの男は、残り一・七パーセントのほうへ平気で入りそうな気もした。

 普通じゃない、というのはそういう意味だ。

「何?」

 とりあえず聞くだけ聞いてみよう。

 どうせ今のジュハには、どんな方法でも試すしかなかった。

「自分が挿れる側だって言えばいいの」

「……私には、ないけど」

 一瞬意味が分からなかった。

 だがすぐに察し、ジュハはそう答えた。

 もしそういう意味なら、自分には"それ"がない。

 自然と、ドヒョクのものを思い出す。

 あの、とんでもなく大きかったものを。

 もちろん、自分には似たようなものすらない。

 何となく自分の指先を見下ろく。

 ……これじゃ、どう考えても無理だ。

「ペニバン使えばいいじゃん」

 何それ、と聞くより早く、ヘジンはスマートフォンの画面を見せてきた。

 ジュハは思わず顔をしかめる。

 こんなものを脚の間へ付けたいとは、とても思えなかった。

 説明されなくても用途くらいは分かる。

 それくらい分かりやすい形だった。

 どこか凶器みたいにも見えた。

「実際にやる必要なんてないって。

 これ見せて、『今度は私が挿れるね』って言うだけで逃げるよ」

 そうなのだろうか。

 ジュハは少しだけ心が揺れた。

 そして、ドヒョクとの最初の出会いを思い返す。

 あれほどしつこく「最後までしたい」と食い下がられ、結局二度も手伝う羽目になった夜を。

 普通、初対面の相手へあんなことを言う人間なんているのだろうか。

 もちろん、酔った勢いとはいえ応じてしまった自分も十分おかしかった。

 ……でも。

 服の上からでも分かるほどだった、あれが少しだけ気になってしまったのだ。

 あんなもの、一生のうちでそう何度も見られるものじゃない。

 そんな予感があった。

 だから、自分の目で確かめたかった。

 全部、あの妙な好奇心のせいだ。

 ……いや。

 やっぱり一番悪いのは酒。

 それから、あの顔。

 最後に、自分の好奇心。

 その三つが重ならなければ、こんなことには絶対ならなかった。

「失うものはないでしょ」

 いや。

 それは全然違う。

 もしあの頭のおかしい男が、本当に「挿れてください」と言い出したら話は別だ。

 それでも。

 何となく、そうはならない気がした。

 あれだけ自分へ入れたがっていた人間だ。

 逆のことなんて考えたこともないだろう。

 ……まあ、言われなくても、そんなことを想像するタイプには見えなかったけれど。

「でもさ、プライドくらいあるでしょ?」

「…………」

 その一言で、ジュハの自信は一気になくなった。

 プライド。

 そんなものが欠片もなさそうなドヒョクの姿が浮かんだからだ。

 八歳年下の女を「ご主人様」と呼び、何のためらいもなく跪いた男。

 最初に会ったときとは別人すぎて、戸惑うほどだった。

 初めて果てたあとも、急に人が変わったようだったけれど。

 ……とはいえ。

 試してみる価値くらいはある。

 プライドがあろうとなかろうと、一瞬くらいは動揺するはずだし。

 もし本当にそういう流れになったとしても、途中で逃げ出すかもしれない。

「でも……どこに挿れるの?」

 自分にないように、ドヒョクにもない。

 ジュハは素朴な疑問を口にした。

 作るにしたって、限界があるだろう。

「言葉で説明するより早いよ。

 ほら、動画」

 ヘジンが再生した映像を、ジュハは一分も見ていられなかった。

 ドヒョクのプライドどころではない。

 逃げ出したいのは自分のほうだった。

 だが、ヘジンは驚くほど粘り強かった。

「一億ウォンでも駄目なら、これしかないって」

 そう言われ。

 ジュハは半ば泣きそうになりながら、十五分の動画を最後まで見る羽目になった。

 新しい世界を知ってしまったのかどうかは、自分でも分からなかった。

     ◇

「脱いで」

 ドヒョクのご主人様は、そんな言葉さえ平然と口にする。

 もちろんドヒョクも、何のためらいもなく全部脱いだ。

 ジュハから連絡が来るまでの三日間が、どれほど長かったのか。

 彼女は知らない。

 下着まで脱ぎ終えたドヒョクを見ても、ジュハの表情はまったく変わらなかった。

 ただ淡々と、

「後ろ向いて」

 と言うだけだった。

 ドヒョクはその視線を受けながら、おとなしく背を向ける。

 ジュハは大きく描かれた背中の獣の刺青には目もくれず、その下へ視線を落とした。

 ……本当に、この大きな尻に挿れることなんてできるんだろうか。

 そんなことを考える。

 けれど、すぐに首を振った。

 そのために、ここまで来たのだから。

 三日間、散々悩んだ末に。

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