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第005話

Author: CHUE
last update Petsa ng paglalathala: 2026-06-23 23:02:46

「どう?

 家族の借金は少しあるけど、学校の先生だ。

 悪くないだろ?」

 何が「どう」なのか。

 ドヒョクはソンミンの手から酒瓶を取り上げ、自分でグラスへ酒を注いだ。

 そして、一気に飲み干す。

 少し酒が入れば、昨夜と同じ状態になるかもしれない。

 そんな考えが頭をよぎる。

「今までとはちょっと違うタイプを集めてみたんだけど?」

 だが、ドヒョクの隣へ座った相手は、目を合わせることすらできず小さく震えていた。

 別にここで誰かと関係を持つつもりで来たわけではない。

 ドヒョクはグラスを置き、小さく息を吐く。

 一晩だけ。

 それで確かめられれば十分だった。

 彼は、自分をちらちらと窺っている者たちと、一人ずつ視線を合わせていく。

「…………」

 そのとき、ふと思った。

 ――俺はここで、何をやってる。

 昨夜のことは、ただのハプニングで終わらせると決めたはずだった。

 それなのに、こうして確かめようとしている。

 こんなことをするくらいなら、気になっている相手に電話をかけたほうが早かった。

「ちょっと失礼」

 ドヒョクは部屋を出ると、スマートフォンを取り出した。

 そして、一日中頭から離れなかった十一桁の番号を押していく。

 名前も登録しないまま、覚えてしまった番号を。

 だが。

 呼び出し音が鳴るより早く、その理由は分かった。

 着信拒否されていた。

「…………」

 一日中悩んでいたことが、急に馬鹿らしく思えた。

 どうせ最初から、繋がるはずなどなかったのだ。

 ドヒョクはそのまま部屋へ戻ると、一直線にソンミンの前まで歩いていく。

「な、何だよ?」

 大柄なドヒョクに見下ろされ、ソンミンは思わず肩を震わせた。

 脅されるような間柄ではない。

 それでも、あまりにも身体が大きく、しかも表情まで険しいものだから、反射的に身構えてしまう。

「スマホ」

「は?

 俺の?」

 ドヒョクは答えず、わずかに眉をひそめた。

 ソンミンはぶつぶつ文句を言いながら、ポケットからスマートフォンを取り出す。

「そんな近づかなくても聞こえるだろ……」

 そんな文句など意に介さず、ドヒョクは昨夜手に入れた番号を入力した。

「この番号の持ち主。

 身元を全部調べて送れ。

 写真はいらない」

「うわぁ……。

 誰だか知らないけど、気の毒だな」

 ソンミンは番号を見つめながら、小さく呟いた。

 ドヒョクは否定しない。

 ソンミンはきっと、哀れな女か、それとも誰かが脅されている場面でも想像しているのだろう。

 わざわざ訂正する必要もなかった。

 説明できるような関係でもない。

 結局ソンミンは、その番号を『気の毒』という名前で保存した。

「日付が変わる前に送れ。

 終わったらすぐ消せ。

 行くぞ」

「えっ!?

 日付が変わる前!?

 あと二時間もないぞ!?」

「仕事しろ、ホン・ソンミン」

「おい!

 待て!

 俺、酒飲んで……!」

 最後まで聞かず、ドヒョクは店を出ながらテギュへ電話をかけた。

 テギュはまだ駐車を終えたばかりだったらしく、突然の着信に慌てて応答する。

「戻れ」

「は、はい!?

 今ですか!?」

 普段なら、こんな聞き返し方は絶対にしない。

 あまりにも突然で、思わず口をついて出てしまった。

 さっき飲みに来たばかりなのに、数分で呼び戻されるとは誰も思わない。

 いつもなら最低でも二時間は経ってから電話が来るはずだった。

「三分」

 それだけ言う。

「ひぃっ!?

 すぐ行きます!」

 テギュが悲鳴のような返事をすると、ドヒョクは続けて命じた。

「本家に全員集めろ」

 一瞬、

 ――えっ、今ですか?

 と言いかけた。

 だが今度はどうにか飲み込む。

「……分かりました」

 そう答えた瞬間、電話は切れた。

 最近はこんな横暴な命令も少なかっただけに戸惑ったが、考えてみれば珍しいことではない。

 ドヒョクは昔から傍若無人で、自分の思うままに動く組のボスだった。

 命令されたら従うだけだ。

 テギュはすぐ部下たちへ連絡を回し、それから急いでドヒョクのもとへ車を走らせた。

 すでに二分が過ぎていたからだ。

     ◇

「……何なんだ?」

「静かにしろ……」

 深夜。

 突然呼び出された組員たちは、集めておきながら何も話さないドヒョクを見て、小声でざわついた。

 とはいえ、それも長くは続かない。

 この時間に呼び出されること自体が久しぶりだった。

 皆、ただならぬ空気を感じ取っている。

 肝心のドヒョクは、一枚の紙をじっと見つめたまま微動だにしない。

 何か重大なことが起きたに違いない。

 誰もがそう思っていた。

 静寂の中、三十分以上が過ぎる。

 ようやくドヒョクが顔を上げたのは、その頃だった。

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