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三十の蝶〜記憶の深淵にふれるまで〜

last update Last Updated: 2025-12-24 17:52:13

 「水鏡さま、あたし迎えにきたんだよ」

 「秋華、わらわの心は夕月夜さまのモノ。それは貴方も……わかっている事でしょう?」

 「いいえ、こんな所にいたら闇に染まってしまうわ!」

 水鏡さまはその言葉を受けると、睫毛を伏せた。そうして哀しみの色を帯びた瞳で、あたしに視線を向けたの。

 「秋華、もう帰った方がいいわ」

 「そんな事言わないで……! あたし、水鏡さまが人じゃなくてもいいんだよ! またあのお屋敷で、一緒にごはん食べたり、丸くなってお昼寝したり。春は縁側で桜を愛でて、秋は虫の音色をゴロゴロしながら聞いていたいの!」

 「秋華……」

 「迎えにきたんだ。あたしね、諦めないから……っ!」

 シュン────

 あたしと水鏡さまの間を、刀が割って入った。

 「させないわ。水鏡さまはもう、夕月夜さまの姫君」

 あたしと千年さまに刃を向けたのは、夏妃さんだった。

 「覚悟」

 「ちくしょう……っ、どうしてだよおおおおおおおおおおおおお!!!!」

 千年さまが悲痛な咆哮をあげる。

 ごめん、今は戦うしか術がないよ!

 夏妃さんの大きな剣が、舞う。

 冷たく潤んだ表情で、夏妃さんは確実に、あたし達がいる方向に刃をブンブン振ってくる。ヤバイ! こんな速さじゃ、全力で避けるのが精一杯だよ! もしもあの大きな刃が刺さったら、体なんて真っ二つになるかもしれない……っ!

 「オンアビラウンケン!」

 安倍晴明さまが、2本の指を刀のように構える。

 そそうして下から斜めに、一気に斬り上げた!

 ザシュ──────

 花蓮が同時に飛ぶ! 夏妃さんの手首をパアンと叩くと、空中に真紅の残像を描いた。

 カラン……カラン……

 夏妃さんは大きな剣を床に落とし、そのまま呆然と立ち尽くしている。そのままガクンと膝から崩れおちた。あれ、なんか様子が変じゃない……?

 「思いだした……」

 「え……?」

 夏妃さんは、紫の花を背にゆっくりと立ち上がる。

 背後に揺れる藤のしだれが、紫の海のさざなみのようだわ。彼女の指は、千年さまを真っ直ぐに指し示す。大きく見開かれた瞳、その唇から言葉がほろりと零れおちた。

 「千年……あなた……なのね?」

 「夏妃……?」

 まさか記憶が戻ったの──────

 今、こんな時に?

 「あたし、どうして此処にいるの? あれ、死んだんじゃ……なかったっけ?」

 「嘘だろ
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Comments (1)
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百鬼じゅん
こういう話、大好き!! 仮面ライダーカブトの『自分がワームだということを忘れてしまった神代剣』とか サザンアイズの『自分自身が三只眼パールバティだと思い込んでいたホウアシヲ(化蛇)』とか 切ないし、やるせないし、あー!! この後、どうなるんだーーーーー!?
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