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第5話

Auteur: イチゴエッグタルト
再び目を覚ました時、目に刺さるような白い光に、陽葵は不快そうに目を細めた。

「ようやくお目覚めになりました!」看護師が安堵の息を漏らした。「通りがかりの方が運んでくださったんですよ。もう命に別状はありません。ご家族に連絡しましょうか?」

陽葵は力なく首を振り、かすれた声で答えた。「いいえ……家族はいませんから」

両親はとうの昔に亡くなり、夫とも離婚した。結局のところ、自分はたった独りではないか。

看護師は不思議そうに首を傾げた。「でも、カルテには結婚して五年とありますが……旦那様は?」

「離婚しました」声は弱々しかったが、そこには決意が籠もっていた。

その言葉が終わるが早いか、病室のドアが乱暴に押し開かれた。

「離婚だと?」

白衣を身にまとった理翔が、冷徹な表情で足を踏み入れてきた。「誰が離婚するって?」

看護師は気圧されるように部屋を後にした。陽葵は唇を噛み、視線を逸らす。「……友達の話よ」

理翔は鼻で笑った。「てっきり、お前のことかと思ったよ」

陽葵の全身が強張った。彼女はゆっくりと彼を見据える。「……もし、本当に私だったら?」

理翔は滑稽なジョークでも聞いたかのように、嘲りを含んだ声を上げた。「陽葵、お前にそんな真似ができるはずがないだろう。親を丸め込み、反吐が出るような手段を選ばず俺に結婚を強いたのは、どこのどいつだ」

陽葵の目元がわずかに赤く潤んだ。彼女は、どうしても一つの答えを求めたかった。

「もし、私が今、本気で離婚したいと言ったら?」

理翔が不快そうに眉根を寄せ、何かを言いかけたその時、背後から看護師の声が響いた。「先生!青木さんがお目覚めです。泣きながら先生を探していらっしゃいます!」

彼の表情が一変した。すぐさま背を向けて駆け出そうとしたが、出口の間際で足を止め、冷たく言い捨てた。「お前が離婚を切り出すなんて、これっぽっちも期待していない。ただ、余計な真似をして場をかき乱すのはやめろ。柚乃にも、二度と近づくな」

言い残すと、彼は大股で去っていった。

陽葵はその背中を見つめ、視界を滲ませながら自嘲の笑みを浮かべた。

しばらくは理翔の顔を見ずに済むだろう。そう思っていた。

だが翌日、彼は再び病室の入り口に現れた。その背後には、いかにも痛ましげに青白い顔をした柚乃を連れている。

陽葵はすっと視線を外し、二人など最初から存在しないかのように無視した。

「陽葵!」理翔はその冷淡な態度に触れ、瞬時に顔を険しくした。「柚乃がせっかく善意で見舞いに来てやったんだぞ。その態度はなんだ」

陽葵はふっと鼻で笑った。「なら、私はどう振る舞えば満足なの?床に膝をついて、三つ指でもついてお出迎えすればいいかしら?」

理翔の顔が、これ以上ないほど不快そうに歪んだ。「柚乃が、あの日自分を突き飛ばして救ってくれたのはお前だと言い張るから、わざわざ連れてきてやったんだ。そうでなければ、誰がお前の顔など見に来るか」

陽葵は冷ややかな視線を柚乃へと向け、一字一字を叩きつけるように言い放った。「あなたは妄想癖でもあるのかしら。悪いけれど、私は道端の犬なら助けるかもしれないけれど、あなたを助けることなんて万に一つもありえないわ」

理翔の瞳に激しい怒火が宿り、声を荒らげようとした瞬間、柚乃がその手をそっと制した。「理翔……お願い、陽葵さんと喧嘩しないで」

柚乃のしおらしい姿を目にした途端、理翔の怒りは霧散した。彼は彼女の頬を愛おしそうになで、慈しむような溜息をついた。

「柚乃、君のそのお人好しも大概にしろ。そんな無防備な善意は、いつか自分を滅ぼすぞ」

柚乃は彼の袖を掴んで甘えるように揺らした。

「理翔、私は平気。それに、陽葵さんが助けてくれたのは本当だもん。彼女はただ口が悪いだけで、本当は根が優しいんだよ。ねえ、お詫びに陽葵さんも誘って、隣の海を回るクルーザーに乗りに行かない?」

理翔が答える前に、陽葵が冷たく突き放した。「行かないわ」

柚乃の瞳がみるみる赤くなった。「陽葵さん、私の気持ち、受け取ってくれないんだね……でも、そうだよね。私があんな……」

「お芝居はもう十分よ」陽葵は冷酷にその言葉を遮った。「気が済んだなら、今すぐ私の前から消えてよ」

理翔の額に、怒りで青筋が浮かび上がった。

「お前に行くか行かないかを選ぶ権利などない!これは柚乃の厚意だ。四の五の言わずに従え!」

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