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第4話

Penulis: イチゴエッグタルト
翌日、陽葵が宴会場に到着したときには、綾子がすでに主賓席で彼女を待っていた。

陽葵の姿を見るなり、綾子はすぐに立ち上がって彼女の手を引き寄せ、隣に座らせた。その表情は申し訳なさで溢れている。

「陽葵、本当にごめんなさいね。理翔があんな無体な真似をするなんて……すべては私の教育不足だわ。あの子が来たら、私からきつく言い聞かせてやるから」

そう話している最中、会場の入り口がにわかに騒がしくなった。

二人が目を向けると、そこには白いワンピースを身にまとった柚乃が立っていた。

おどおどと周囲を伺うその姿はいかにも垢抜けない小娘といった風情で、陽葵の凛とした気品には、その足元にも及ばない。

綾子の顔色が瞬時に険しくなった。「誰かその女を今すぐつまみ出しなさい!ここは、どこの馬の骨とも知れない卑しい女が足を踏み入れていい場所じゃない!」

柚乃が顔を青ざめさせ、立ち往生していると、背後から現れた理翔が彼女の手を力強く握った。

「お母さん、紹介するよ。俺の恋人の柚乃だ」

妻のための謝罪の宴に、夫が別の女を連れて現れる。それは、どこからどう見ても目を覆いたくなるような修羅場でしかなかった。

陽葵は、爪が掌に食い込むほど拳を固く握りしめたが、顔には微塵も動揺を見せなかった。

理翔は柚乃を連れて堂々と歩を進めると、わざとらしく陽葵の真向かいの席に腰を下ろした。その挑発的な視線は、あからさまに彼女を辱めることを愉しんでいるかのようだった。

その後の宴席は、言うまでもなくいたたまれない沈黙に包まれた。

綾子は怒りで全身を震わせ、ものの三分も持たずに席を蹴って立ち去った。それを見た賓客たちも、次々と適当な理由をつけて中座していき、賑やかだったはずの会場はあっという間に静まり返った。

広大な宴会場に、ついに陽葵、柚乃、理翔の三人だけが取り残された。

理翔は満足げに口角を上げると、愛おしそうに柚乃の髪を撫でた。「興醒めだな。柚乃、ここで待っていろ。車を回してくるから、別の場所へ遊びに行こう」

柚乃は甘えるように微笑んだ。「ええ」

陽葵は視線を外すと、背を向けて出口へと歩き出した。

だが数歩も行かないうちに、柚乃が追いかけてきた。その声は低く、勝ち誇ったような響きを帯びている。

「陽葵さん。聞いたわよ?理翔と結婚して五年、一度も子宝に恵まれなかったんですって?」

陽葵は相手にせず、足を止めることもしなかった。

だが、柚乃はしつこく食い下がり、さらに距離を詰めると、隠しきれない優越感を声に滲ませた。

「ねえ、陽葵さん、結婚してこれほど長い間、彼に何度抱かれたの?一回、二回……それとも、一度もなし?先日、彼のポケットにこっそり忍ばせたあの丸まったティッシュ、見てくれたかしら。あれ、彼が黙認してくれたのよ。

彼はね、私の方が若くて可愛いし、陽葵さんよりずっと彼を喜ばせるのが上手だって言ってたわ。私のために命を懸けてもいいって」

陽葵の足が、ぴたりと止まった。「……あの汚物を仕込んだのは、あなたなの?」

「そうよ、わざとやったの」柚乃の瞳には、歪んだ勝利の光が宿っていた。「今、理翔に愛され、慈しまれているのは私。陽葵さんなんて、彼の目には汚らわしい細菌か何かにしか見えていないわ。指一本触れるのも、手が汚れるから嫌だって言っていたもの」

陽葵は冷たく鼻で笑い、反撃しようと口を開きかけた。その時――頭上の巨大な広告看板からギギッと不吉な軋み音が響き、今にも崩れ落ちそうなほどに揺れ始めた。

陽葵は直感的に身の危険を感じ、咄嗟にその場を離れようとした。しかし、その手首を柚乃に力任せに掴まれ、看板の真下へと無理やり引き戻された。

「陽葵さん……今日ここで確かめてみましょうよ。理翔の心の中で、本当はどちらが大切なのかを!」

言い終える間もなく、柚乃は落下してくる看板を避けるように激しく後ろへよろけ、凄惨な悲鳴を上げて地面に叩きつけられた。

ドォォォォン!

凄まじい衝撃音とともに、重厚な看板が陽葵の背中を直撃した。鮮血が瞬時に噴き出し、純白のドレスを無慈悲に赤く染め上げていく。

全身を突き抜けるような激痛に、陽葵はその場に膝から崩れ落ちた。

朦朧とする意識の中で、遠くの車から理翔が必死の形相で駆け寄ってくるのが見えた。

彼は血まみれの陽葵には目もくれず、真っ先に柚乃を抱きかかえると、取り乱した様子で彼女の怪我を確認し始めた。柚乃に傷一つないことが分かってようやく安堵した彼は、彼女を自分の背後に庇い、陽葵に向けて凍てつくような眼差しを向けた。

「陽葵、お前……柚乃に何をしようとしたんだ!」

激痛で声も出ない。背中の傷よりも、心臓を直接抉られるような痛みの方が、はるかに鋭かった。

柚乃は瞳に涙を溜め、理翔の袖を弱々しく引いて見せた。「理翔……違うの。陽葵さんが私を突き飛ばして、助けてくれたのよ」

柚乃が何を企んでいるのか、陽葵には分からなかった。ただ、一言の反論を口にする力すら、今の彼女には残っていなかった。

理翔は柚乃の言葉に一瞬動きを止めたが、すぐにその瞳にどろりとした嫌悪の色を浮かべた。「柚乃、騙されるな。彼女が君を助けるはずがないだろう。あんな反吐が出るような真似ができる女なんだぞ」

陽葵の胸の奥を、言葉にできないやるせなさが突き上げた。

「本当なの!本当に陽葵さんが助けてくれたのよ!」柚乃は地面に広がる鮮血を見て、瞳を激しく揺らした。「理翔、お願い。早く彼女を病院へ!このままじゃ、死んじゃうわ!」

だが理翔はその場を動こうともせず、突き放すように言い放った。「今の彼女は血まみれで、汚らわしい。触れる気にもなれない。救急車を呼べば済む話だ」

陽葵の心臓が、見えない手に力任せに握りつぶされたかのように軋んだ。呼吸をすることさえままならない。

遠くから、救急車のサイレンが近づいてくる。

駆けつけた救急隊員が陽葵を担架に乗せようとしたその時、柚乃の身体がふらりと揺れた。みるみるうちに血の気が引き、その顔が真っ白に染まる。「理翔、私……っ」

言い終える前に、彼女は目の前が真っ暗になったかのように、理翔の腕の中へ力なく倒れ込んだ。

「柚乃!」

理翔は彼女を抱き留めると、焦燥に満ちた顔で救急隊員に向かって怒声を上げた。「その女を降ろせ。先に柚乃を病院へ運ぶんだ!」

看護師が困惑した表情で訴える。「ですが、近藤さんは大量出血しています。次の救急車を待っていては、命の保証はできません……」

「救急車を呼んだのは俺だ!それに俺はこの病院の外科部長、瀬戸理翔だぞ。万が一のことがあっても、責任はすべて俺が取る。いいから代われ!」

理翔は強引に言葉を遮ると、陽葵が乗せられていた担架から彼女を無理やり降ろさせ、代わりに柚乃を丁寧に横たえた。

彼はそのまま、一度も陽葵を振り返ることなく救急車に乗り込んだ。終始、彼女を視界に入れることさえしなかった。

その直後――意識を失ったはずの柚乃が、誰にも見えない角度でふっと目を開けた。そして陽葵に向かって、勝ち誇ったように眉を上げてみせた。

遠ざかっていくサイレンの音を聞きながら、陽葵はついに耐えきれず、深い闇の中へと意識を失った。
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