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正統派ヒロイン

مؤلف: ねこ沢
last update تاريخ النشر: 2026-08-04 15:06:57

「シロノ様からしたら、わたくしの所作が気になるのは、仕方ありませんわ。わたくし、貧しい庶民の家で育ち、子のいない男爵様に養女にしていただきましたの」

 アスナがそう言って笑う。

 可愛いな。素直そうな笑顔。

 おぼつかないステップも可愛い。こう……何というか、庇ってあげたくなる。

 それとなく、ゆっくりリードして、アスナが踊りやすいように工夫する。病弱な俺だけど、ダンスくらいは貴族の端くれとしてマスターしている。

 アスナは、俺が気を使いながらリードしていることに気づいたのか、小さな声で、ありがとうございます、とお礼を言ってくれる。

「そうですか。俺の父グスタフ・エルグとて、貧しい農奴の出身です。私達兄妹も、とても胸を張って貴族だなんて言える家柄ではございません。妹は、ああやって気を張って生きることで、自分を守っているのです。許してやってください。仲良くしてやって下さいね」

そう俺が言って頭を下げれば、

「はい!」

と元気よくアスナが返事をしてくれた。

 正統派ヒロインだ。健気で謙虚だ。たぶん、アスナみたいな健気な子がヒロインの小説があったら、俺は夢中になって読んでいるに違いない。

 ふ、不覚にも、ちょっとドキリとした。

「アスナちゃん、可愛いよな!」

 マキノが、合同授業の終わりに、俺に駆け寄って開口一番のたまう。

 攻略されるの、早いな。お前。

 チョロい。チョロすぎるぞ。

 慣れないステップで一生懸命踊る姿にキュンときたそうだ。

「シロノちゃんとは、対照的な感じ? シロノちゃんの前ではちょっと緊張するけど、アスナちゃんの笑顔には、なんか癒されるんだよね~♪」

 マキノはずっとデレデレしている。

 一生言ってろ。

 他にも、アスナに攻略されてしまった男子生徒は多数。合同授業後の教室では、癒し系のアスナと完璧美女シロノの感想で、大騒ぎだった。

 俺の可愛い妹、シロノ。シロノほど完璧な美女はいない。アスナと人気を二分する方がおかしいのだが、アスナ、確かに心惹かれる不思議な子だった。

 しかし、大丈夫なんだろうか? これ。もし、アスナがセシルを好きになって、セシルに近づいたら、あっというまにセシルも攻略されてしまうのではないだろうか?

 口下手で、ついきついことを言ってしまうシロノに、勝ち目はあるのだろうか?

 願わくば、セシルがM気質で、言葉攻めにグッとくるタイプであることを。

 考え込む俺に、

「リオス? 焼きもち? 大丈夫、俺の本命は、リオスだから!」

なんて、余計な冗談をマキノが付け加えていたので、放っておいた。

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     どうして俺の妹は、あんなに可愛いのか。 風になびく柔らかな白い髪、艶やかな肌、長い睫毛の下の瞳は、雪解けの湖を思わせる清らかな青で輝く。小さな唇は、淡いピンク色……。 窓の下を歩くのは、入学したての制服に身を包んだ妹シロノ。数人の友達と歩いている。 教室の窓からそれを見かけた俺は、つい見惚れてしまって、そうつぶやいた。「それ、ほぼお前だからな。そっくりな顔しやがって」前の席に座るマキノが、俺の顔を見ながらそう釘を刺す。「うるさいな。全く違うだろうが。お前の目は節穴か? そうか、目ではなく節穴が付いているのか?」 双子といえども、俺とシロノでは、美貌には雲泥の差があるだろうが。もはや、同じかどうかを検証するのもおこがましい。 軍司令の息子マキノとは、入学してすぐ仲良くなれた。同室だから、仲良くなれないならば、面倒なことになるから助かる。「しかし、まあ、シロノちゃんは可愛いな。俺らが卒業プロムに出る時に、誘ったら一緒に行ってくれるかな?」「無理だね。シロノは、もう想う人がいる。それに、そんな先のことはどうでもいい」 俺の目的は、あくまでシロノの恋を実らせてやること。シロノを王太子セシルの目に留まるようにすること。 それ以外のことなんて、どうでもいい。目的を達成してから考えればいいのだ。「……じゃあ、さ。俺とお前両方とも相手がいなかったらさ、お前が俺と一緒に行ってくれよ?」 じっとマキノが俺を見つめる。なんだ、その熱い眼差しは。「は? なんだよ、それ」 でも、そうだな。男女ペアの多い卒業プロムにマキノと一緒に行く……。 皆、びっくりするだろう。面白そうだな。「そりゃ、面白そうだ。両方相手がいなかったら……」 俺がOKしようとしていると、「そんな軽く返事する性質のものではない」と、背後から叱られる。 ? ただのジョークに何を本気で? どんな堅物かと思って振り返れば、最悪だ。 そこにいたのは、シロノの想い人、王太子セシルだった。「セ、セシル様……」 びっくりして声が裏返る。 まずい、これからセシルと仲良くなって、『友人の妹が可愛いと、つい目がいってしまいますよね』という王道乙女シチュエーションを作り出そうとしているのに、セシルに嫌われたら困るんだ。「あの……」 俺は慌てて言い訳しようと口を開く。「軽薄な!!」 

  • 俺の妹が悪役令嬢?そんなの兄の俺が許さない!   入学

     ここは、由緒正しき王立の学園。 十三歳から十五歳の貴族の子息が、この学園に通うのだ。国王の子息が通う学園、当然のように入学するためには、家柄、教養、剣術などの基本的能力に加えて、礼儀作法などのたしなみも要求される。 裏口入学なんて許す訳もない親父。俺はシロノの恋心を知ったその日から、必死で努力して、堂々と、表からこの学園への入学資格を得たのだ。 入学早々、「あれが、悪名高いグスタフの息子……」「リオス・エルグ、フンッどうせ裏口だろ?」「一体いくら積んで入れてもらったんだか」なんて、噂が飛び交っているが、俺は気にしない。 陰でコソコソ何かいう奴に、関心を払うなんて、無意味だ。俺は、忙しい。 そこら辺の貴族がこぞって陰口を叩いているのだから、当然俺の評判は最悪。 王太子セシルだって、俺のことは心から警戒しているはずだ。状況は最悪だ。 だが、この最底辺から、王太子セシルに近づかなければならない。 ……それに、俺のことよりも、姉妹校として併設されている隣の学園に通う妹が気がかりだ。 こちらは、淑女を育てるべく、少女達を集めた学園で、俺の通う学園と合同授業などもある間柄なのだが、双子の妹のシロノは、そっちに通っている。 シロノもきっと、同じように酷いことを言われているに違いない。 あの可憐で麗しい天使のようなシロノが、そんな目に遭っているなんて可哀想でならない。 心から心配だ。 まぁ……気になるなら、許可さえもらえれば、出入りは出来るし、合同授業も頻繁に行われているから、どうしても気になるならば、見に行けばいいのだが。 ……入学して初日だが、見に行こうかな。さすがにまだ早いか……。 聡明なシロノの事だから、きっと気高くそんな言葉は跳ね返しているだろうが、あの子は本当は繊細な子なんだ。親父譲りのキツイ言い方で、世間から誤解されているが、本当は優しい子なんだ。  願わくば、シロノに、シロノの良さを理解してくれる友達が出来んことを。 ◇ ◇ ◇ 寮室に入れば、同室のマキノ・エルデが、「よろしく」と握手を求めてくる。 俺よりも背が高くがっしりと恵まれた体躯。 ……マキノ・エルデ、確か軍司令が親父だったな。 陽気そうなマキノ。悪い奴ではなさそうだ。「こちらこそ、よろしく」俺が、握手に答えようとすると、手にはべったりと油がつく。 

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