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第六十六話

Auteur: 水沼早紀
last update Date de publication: 2026-02-09 00:18:12

棗さんはどうやらそれを察してくれているようで、ニオイの少ない低刺激のシャンプーを買ってきてくれていた。

妊婦は人によって個人差があるけど、刺激にも弱い人もいるみたいで、刺激の少なくてニオイもかなり少なめのシャンプーを選んでくれていたみたいだ。 それを知って、とても嬉しかった。

「棗さん、あのシャンプー。結構ニオイ少なくて良かったです」

「本当か?なら良かった。 店員に聞いて買ってきたから、どうなのか分からなかったけど。聞いて正解だったな?」

「はい。本当にありがとうございます。 洗った感じも良かったです。あれなら、ずっと使えそうです」

「そうか。良かった」

棗さんは頭をぽんと撫でながら優しく微笑んでいた。……その表情を見て私は、棗さんもきっと嬉しいんだろうなって思った。

棗さんの優しさは世界一だなって思った。 こんな私のために色々なことを調べてくれていたし、少しでもわたしが楽になるようにと、私はもうありがとうしか言えない。

「ううっ……」

夜中寝ている時、急なつわりに襲われ気持ち悪くなり、吐きそうになってしまう。 寝ている時にいつでも使えるようにと、棗さんがエチケット袋を用意し
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    「はい。赤ちゃん、抱いてあげてください」助産師さんが私たちのところへ子供をを連れて来てくれた。「いいん……ですか?」「もちろんよ。……さ、あなたたちの赤ちゃんよ」「はい……。ありがとうございます」私は今まさに産まれたばかりの赤ちゃんを、優しく抱いた。思ったよりずっしりとしているのに、手や足がすごく小さくて……すごくすごく可愛かった。でもふわふわしていて、ふにふにしていて、これが赤ちゃんなのかと思い知らされる。「……どうしよう、すごく可愛い」「ああ、可愛いな」棗さんと二人、赤ちゃんを見つめながらずっと微笑みが止まらなかった。 私たちの赤ちゃんは、こんなにも可愛いんだと知り、幸せな気持ちになった。「男の子かぁ……。嬉しいな」「はい。……赤ちゃん、すごく可愛いです」棗さんにも似てるし、私にも似ている気がする。 私たちの赤ちゃん、ずっと会いたかった。ずっとずっと、この手で抱きしめたかった。 赤ちゃん、私たちをパパとママにしてくれてありがとう……。私たちは、あなたに出会えて本当に幸せだよ。   「……聖良、産んでくれて本当にありがとう。俺は本当に、幸せだよ」可愛い我が子を見つめながら、棗さんはそう言ってくれた。「……はい。私も、幸せです」「ああ。これからは、俺たちは家族になるんだな」家族か……。すごくいい家族になりそうな予感しかないな、この子がいれば。「はい。私たちは、この子のママとパパです。 ちゃんと……家族です」こうして産まれてきた子供と、棗さんと三人で、今日から私たちは家族としての生活をスタートさせる。そう言えば棗さん、この子が産まれた時、少し泣いてたな……。棗さんが泣いていたところ、初めて見た。そんな棗さんの涙は、とてもキレイな涙だった。美しい、涙だった。「そうだ。子供の名前、決めないとな」「はい。そう言えばまだ、棗さんには赤ちゃんの性別言ってなかったですね。 産まれてからのサプライズにしてしまいました……すみません」教えてあげれば良かったかな……。「いいんだよ。女の子でも男の子でも、産まれてきてくれたら、それでいいんだよ」棗さんは私のその言葉にも、優しくそう言ってくれた。子供を見つめながら、「可愛いな、本当に」と言っていた。「はい。……本当に、天使みたいに可愛いです」「ああ。本当に可愛いな」   「

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    「な、棗さん……。どうしよう……」「どうした聖良!?」「は、破水……してしまってます……」マタニティワンピースから水が出ていた。恐らく破水してしまっているみたいだった。「何?本当か……? 待ってろ。すぐにバスタオルを持ってくる!」「は、はいっ……」棗さんは慌てたようにバスルームへ行くと、バスタオルを何枚か持ってきてくれた。「聖良、もうすぐ車が到着する。もう少しの我慢だからな」「は、はいっ……」棗さんが優しく背中を擦ってくれる。社用車が到着してすぐ、私は運転手さんが運転する車で病院へと運ばれた。 棗さんは車の中で、私のことを励ましながら私の手をずっと握ってくれていた。とにかく痛みが強いけど、棗さんのおかげで少しだけ安心感があった。「大丈夫か、聖良……?」「は、はいっ……なんとか……」   「奥様、奥様は破水していますので、病院に着いたらまず先生に見てもらいましょう」「はいっ……」痛みに耐えながら、私は病院に着くのをひたすら待っていた。 だけどその間も陣痛は来ていて、痛みが強くて我慢できそうにないし、何にも話せない。それから十分後、私は病院に到着した。 痛みと闘いながら病室に運ばれると、すぐに先生が来て子宮口を確認した。だけど子宮口がまだあまり開いてないため、出産までにはいきつかなそうだった。  「はぁっ……。い、痛いっ……」「大丈夫か?辛いだろ?」棗さんは腰を擦りながらそう言ってくれた。 続けて棗さんは「聖良、こんな時なのに何もしてやれなくてごめんな?」と私の頭を撫でる。「い、いえ……。そばにいてくれるだけで、今は嬉しいです……」ずっと腰を擦ってくれる棗さんは、優しく手を握ったままそばにいてくれた。「もう少しだ。……頑張れ、聖良。安心しろ、俺が付いてる」   「っ……はい。ありがとうございます」それからどれくらい経っただろうか……。前にも増して、間隔が変わったような気がした。調べると、陣痛の間隔がニ分から三分くらいの間隔になってきた。 そろそろだと思い、ナースコールで先生を呼んだ。先生は子宮口を確認すると、「うん。子宮口かなり開いてきたね。 では、出産準備に入りましょうか」と言って準備を始める。助産師さんも来てくれて、助産師さんの指示でいきんだり緩めたり、すごく大変だった。 激しい痛みに襲われて、何度も泣き

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    「こんな姿、他の誰にも見せたくない」棗さんがそう言うなんて、思ってもみなかった。 でもそれでも、それが棗さんの本心なのか、私には分からなかった。「……棗さん。ムリして褒めなくても、大丈夫ですよ?」本当はすごく嬉しい。すごく嬉しいと思ってる。だけどその言葉に甘えてしまったら私は本当に彼のことを……。え? なんで私、こんなこと思ってるんだろう……? どうして……? どうして……?「聖良、君はどうしていつもそういうことを言うんだ」「どうしてって……それは……」私はそれ以上、口をつぐんでしまって、何も言えなくなってしまった。「……聖良、俺はお前のことを大事にすると言ったし、幸せにす

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