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ep38.黄金を斬れ!

مؤلف: 理乃碧王
last update تاريخ النشر: 2026-05-19 22:30:23

 理性を失い、獣魔ゴルトアヌビスと化したベルタ。

 黄金の毛並みは燃え盛る屋敷の炎に照らし出される。

 それは怪しく、そして悲痛に輝いているようだった――。

「怪物め! この魔法剣で切り裂いてくれるわ!!」

 夜気を震わせる咆哮を上げ、残された美しい夜咲きの花々を無惨に散らしながら黄金獣ゴルトアヌビスが襲いかかってくる。

 ゼイクは深緑の片刃剣を構え、再び風の魔力を込めた。

「――烈風円舞刃ボレアス・ロンドッ!!」

 必殺の魔法剣。

 暴風が幾重もの刃となって広範囲を薙ぎ払う。

 しかし、真空波が直撃した瞬間、硬質な金属音が夜空に響いた。

 魔獣の強固な黄金毛皮は風の刃を容易く弾き返し、致命傷を与えるどころか毛一本すら断ち切ることができない。

 ベルタ――否、ゴルトアヌビスは喉の奥で低く不気味な唸り声を漏らしながら、鋼を擦り合わせるような音を立てて鋭い爪を砥ぐ。

 黄金の怪物はゼイクをしっかりと見据えていた。

「ぬ

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  • 偽典のダーク・ブレイブ   ep38.黄金を斬れ!

     理性を失い、獣魔ゴルトアヌビスと化したベルタ。 黄金の毛並みは燃え盛る屋敷の炎に照らし出される。 それは怪しく、そして悲痛に輝いているようだった――。「怪物め! この魔法剣で切り裂いてくれるわ!!」 夜気を震わせる咆哮を上げ、残された美しい夜咲きの花々を無惨に散らしながら黄金獣が襲いかかってくる。 ゼイクは深緑の片刃剣を構え、再び風の魔力を込めた。「――烈風円舞刃ッ!!」 必殺の魔法剣。 暴風が幾重もの刃となって広範囲を薙ぎ払う。 しかし、真空波が直撃した瞬間、硬質な金属音が夜空に響いた。 魔獣の強固な黄金は風の刃を容易く弾き返し、致命傷を与えるどころか毛一本すら断ち切ることができない。 ベルタ――否、ゴルトアヌビスは喉の奥で低く不気味な唸り声を漏らしながら、鋼を擦り合わせるような音を立てて鋭い爪を砥ぐ。 黄金の怪物はゼイクをしっかりと見据えていた。「ぬぅ……」 ゼイクの顔に焦りの色が浮かぶ。「き、効かないのか。鋼の鎧をも切り裂く我が『緑鱗風牙』の太刀が――」「ゼイク、避けろ!!」 俺の制止も虚しく、黄金の巨体がブレた。 瞬きすら置き去りにする恐るべき跳躍。 動揺したゼイクが剣を盾にするよりも早く、ゴルトアヌビスの凶悪な爪が横薙ぎに一閃された。「ぬぐっ……!!」 皮鎧ごと肉を深くえぐられ、胸から鮮血がほとばしる。 ゼイクはたまらず足元から崩れ落ちた。「大丈夫か!」 俺は直ぐさまゼイクの元へ駆け寄る。「鋭く速い斬撃だ。そこいらの獣人とは比べ物にならん!」 ゴルトアヌビスは再び天を仰ぎ、耳を劈くような雄叫びを上げる。 そこに妖美なサキュバスの面影は欠片も残っていない。「早くここから離れて! あいつ、魔法を撃つ気よ!!」 ラナンの叫びと同時だった。

  • 偽典のダーク・ブレイブ    ep37.黄金獣

    「今の魔王である、あの『勇者』もそうさ。何であいつは王道的に冒険を進めなかったんだ? 与えられた完璧なシナリオに逆らわず、お人形みたいに歩いていればよかったのに」 「……シナリオ……お前はさっきから何を言っているんだ?」 俺の追及に、ベルタは自嘲気味な笑みを浮かべた。  燃え盛る屋敷の炎が、彼女の顔に濃い影を落としている。  その瞳の奥には、長年抱え込んできた『世界のバグ』としての絶望が渦巻いていた。「あんたら、本当に何にも知らないようだね。滑稽なほどに盤上の駒を演じきっている。いいわ……教えてあげる。そもそも、この世界も魔王ドラゼウフも――」 俺は息を呑み、次の言葉を待った。  この歪んだ世界の根幹。  勇者が魔王になり、俺のような凡人が呪いの武具で戦場に立つ、この現実の真実が明かされる。  ベルタが重い口を開きかけた、その時だった。「お喋りが過ぎるぞ。役割を外れたエラーコードめ」 夜の冷気を凍らせるような、無機質で平坦な声が庭園に響いた。  振り返ると、そこにはターバンを巻いた異国風の男が立っていた。  足音など全く聞こえなかった。  まるで、空間の歪みから唐突に『発生』したかのような、ひどく不自然な現れ方だ。「この男……覚えている……」 俺はこの男に見覚えがある。  屋敷の地下で、あの忌まわしい選別試験が行われていた時、バルザットの執事の傍に控えていた人物だ。「お、お前は……ッ! なぜ、ここに……!」 ベルタは目を見開き、驚愕と恐怖の入り混じった表情で男を見ていた。  先程までの妖艶な余裕も、死を覚悟した達観もそこにはない。  あるのは、ただ絶対的な捕食者を前にした小動物のような純粋な『恐怖』だけだった。  どういうことだ? この男は一体何者なのだ。  単なる人間の護衛などではないことだけは、肌を刺すような異様なプレッシャーから理解できた。「なぜ、だと? 愚問だな。中ボスがまともに戦わずに倒され、あろうことかプレイヤー側に舞台裏の仕様を暴露するなど……大聖師様

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     沙帝夢楼の誰もいない食堂。 レッサーデーモンのマージルが、白いテーブルに置かれたグラスに静かにワインを注いでくれる。 その白い椅子に座っているのは、他でもないボクだ。「イオ様、ワインをお持ち致しました」「ありがとう」 マージルに笑顔で礼を述べ、ワインの入ったグラスを口に運ぶ。 今日は黒いフィッシュテールのドレスを着込み、藤色の髪も後ろで上品にまとめてみた。 偶には正装もいいものだ。いつまでも、この物語の役者を演じているがボクはボクさ。「これが魔王城周辺に自生する、ディアボログレープで作ったワインか」「なかなか甘美な味わいでしょう?」「うん、酸味も効いているね」 対する席に座っているのは、異形の魔物――サッドだ。 狼のような顔に水牛の角を生やし、深い青いの毛並みを持つ、悪魔族の上位に当たる高位魔族『グレーターデーモン』である。「サッドのその姿を見るのは久しぶりだね」「勇者様……いや、魔王様の鎧以外の姿を見るのは初めてです」「そりゃあボクだって女の子だもの、オシャレくらいはするよ」 サッドの言葉にボクは肩をすくめてみせた。 かつて勇者と呼ばれたボクは、今や魔王としてここにいる。「上手くやっているかな」「ガルアの他にも、ゼイク氏もいるのです。ご安心下さい」「ダミアン……彼は強く、優しかった」「昔のお仲間のことですか」 ボクの昔の仲間だった戦士ダミアン・ヒバート。 彼のことを思い出すと、自然と懐かしさが込み上げてくる。「ああ……彼は頼もしい仲間だった」*** まだ、ボクが勇者としての使命に燃えていた頃のことだ。 ――武闘家シンイー・イェン。 ――賢者クロノ・マクスウェル。 そして――戦士ダミアン・ヒバート。 彼らと共にパーティを組み、冒険していた時のことだった。

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