舞いし炎。飛ぶは空。Ⅱ~空と炎を紡ぐ者~

舞いし炎。飛ぶは空。Ⅱ~空と炎を紡ぐ者~

last updateLast Updated : 2026-07-22
By:  ふわりUpdated just now
Language: Japanese
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炎の巫女カタリナは、亡きロシェとの子ルーナと共に平穏な日々を過ごしていた。 ルーナの15歳の誕生日、カタリナはルーナに父親のことを教えるため、空の民に縁のある国ヤンガミへと連れていくことにする。 暗躍する組織。魔界。空の王。炎の巫女。そしてルーナ。 新たな戦いが始まる。

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空を知る街ヤンガミ編 EP1 悪夢の再来
創作の街(ヤンガミ)…。 神が地上に国を創造した時、まず作ったのが、ここ(ヤンガミ)と言わている。 太古の昔、空にあった大国と親交を深め、歴代の空の継承者を育てる場所だったとか……。 それもこれも全て、カタリナが地下神殿で知ったことであり、亡きロシェの口から聞いたわけではない。 しかし、神殿に残されていた空の物語が真実であるのならば、ロシェの血を引く娘のルーナには深く関わってくる。 15年間。そのことについて目を塞いで生きてきた。夫ロシェという大きな対価を払う形となってしまったが、この国は大きく変わった。 15年という月日で、かつて争いの絶えなかったスカーデッド王国は、平和と花の国アルフレアへと変貌を遂げている。 カタリナは(アルフレアの英雄)なんて呼ばれているが、正直そんなことはどうでも良くて。 今日!まさしくこの日に15歳の誕生日を迎える娘のルーナを…。 空の導き通りヤンガミへと連れていくかの岐路に立っていた。 「お母さんどうしたの?」 せっかくの誕生日に、ボーッと考え事をしている母に、ルーナは少し怪訝そうに聞いた。 「あ!ごめんごめん。ルーナ。お誕生日おめでとう。」 あまり料理は得意ではないが、お菓子屋のエミリに手伝ってもらいながら、ルーナの好物を並べた。 「お母さん。何か隠してるでしょ?」 ルーナは随分と母親似のようで、勘が鋭い上にズバッと聞いてくる。 「とりあえず食べましょ。話はそれからね。」 「わかった。いただきます。」 妙な緊張感が2人の食事を包んでいた。 ルーナは、とにかく自分の誕生日に集中してくれない母親に少しの不満を持っている。 カタリナは、娘を危険に晒すかもしれないヤンガミへの訪問が気がかりで仕方ない。 黙々と進む誕生日に救世主が訪れた。 「やっほー。ルーナちゃん!誕生日おめでとう!」 登場と同時にクラッカーを3発も打ち上げたのは、カタリナの親友エミリだった。 「エミリさん!!わぁ!綺麗!ありがとうございます。」 「ふふふ。どういたしまして!それより。せっかくの誕生日に何辛気臭い顔してんのよ2人とも!!」 「あぁ…。すまない。私が空気を作るのが苦手で…。」 カタリナがそう言うと、エミリは笑って答えた。 「ぶち壊す方が得意だもんね!!」
last updateLast Updated : 2026-06-30
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空を知る街ヤンガミ編 EP2 悪夢の再来Ⅱ
地下室には、ダイヤル式の大きな金庫がある。 ルーナもちょくちょく地下室には入っていたので、金庫の存在は認知していた。 しかしその中身に関しては、聞いても答えてくれないことを重々承知していた為、尋ねたことはない。 ……。 何も語られないまま、2人は自然と金庫前へと立った。 「ルーナ。今から(炎の巫女)と(空の王)について教えるわ。でもまずは見てもらう方が早いと思う。」 カタリナはそう言うと、金庫のダイヤルを回していく。 カチッ という音とともに、中から小箱と、封筒が出てきた。さらにカタリナは小箱の鍵を開ける。 「綺麗…。」 小箱の中から出てきた赤いリングに、ルーナは思わず声を漏らした。 「これは(フレアリング)。これこそが(炎の巫女)の力を引き出す特別な指輪なの。」 「よく…分からない…。」 ルーナの返答に、カタリナは軽く頷いてから、封筒の中から数枚の紙を取り出した。 「これって…。」 ルーナは1枚の写真を指さして聞いた。 「あなたのお父さんよ。」 カタリナは淡白に答えた。 「空を…飛んでる…?」 「あなたのお父さんはね。(空の王)と呼ばれた英雄なの。名前はロシェ。」 カタリナは少し俯きながら話を続ける。 「空を操る特別な力を持っていたの。この国の平和を、命をかけて取り戻した英雄よ。そして私は…。この(フレアリング)を使って、ロシェと共に戦った。(フレアリング)は特別な資質を持つ者に、炎を自在に操る力を与えてくれる。だから私は(炎の巫女)と呼ばれているの。」 あまりに唐突で、複雑な話に、ルーナの脳は追跡が追いついていない。 「少し落ち着きましょう。」 カタリナは話を止めて、地下室の椅子に腰掛けた。ルーナも横に座る。 ……。 20分ほど沈黙が続いた。 「お父さんとあ母さんがすごい人だというのは分かった。」 ルーナがそう言うと、カタリナは少し微笑む。 「私たちは守りたかっただけ。でも私自身は1番守りたかった人を守れなかった…。」 「お父さん…。」 「ずっと黙っててごめんね。」 カタリナはそう言うと、ルーナの頭を撫でた。 「お母さん…。私こそ、本当にツラいのお母さんなのに…。強く当たってごめんね。」 2人は束の間抱きしめあった。 本がぎ
last updateLast Updated : 2026-06-30
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空を知る街ヤンガミ編 EP3 グリンベールの未知
生まれてからアルフレアを一度も離れたことのないルーナにとってはワクワクとドキドキの共存だった。 対してカタリナは、幼い頃からあらゆる街を見てきた。他国の恐ろしさや、移動の危険性を全身で理解している。 アルフレアを出てから、馬車で丸2日が経過している。途中小さな集落で小休憩を挟んだりもしていたので、カタリナの予定よりも2日は遅れる見込みだ。 「おーい英雄さんよ。この先に少し大きい村があんだ!今日はそこで休まねぇか?」 運転手がそう言うと、カタリナはカーテンの隙間から外を見た。 (もうすぐグリンベールか…。) 「そうね。その村にお邪魔しましょう。」 カタリナは運転手にそう告げると、ルーナの方に顔を向ける。 「ルーナ。ここから先はアルフレアの領地ではなくなる。何が起きても私から離れてはダメよ!」 ルーナは静かに頷いた。眠たかったのだ。 (アルバレム村) 大陸最強と謳われる大国シュプルーン王国の領土であり、(霹靂の村)とも呼ばれている。 夜になると山賊が暴れ回っており、王国騎士団と激しい戦闘の音が常に響いていることからそう名付けられたとか…。 「英雄さん。嬢ちゃん。着いたぜ!オラは馬に水浴びせてくっから、また朝落ち合おう。」 運転手はそう言うと、馬車を走らせた。 「さて。ルーナ。宿で休みましょう。」 「そうね。」 2人は宿に向かった。村には小さな宿があった。 宿主は親切に部屋へと案内してくれた。 「旅のお方。夜になると騒がしくなりますが、騎士団様が守ってくださりますので、ご安心してお休み下さい。」 「わかりました。ありがとうございます。」 宿主の話にカタリナは例を告げた。 宿主は深々と頭を下げて、部屋を出ていく。 「ルーナ。今日はもう寝なさい。」 「お母さんもね。」 2人は寝床に着く。 母の横の安心感を久しぶりに感じることが出来て、ルーナはすぐに眠りについた。 カタリナは、その寝顔を見て少し微笑んだ後、小箱からフレアリングを取り出し自らの右手につける。 嫌な予感が拭えない。いつでも戦える準備を整えておいたのだ。 深夜2時を越えた頃。 外が騒がしい。激しくぶつかる金属音。さらに生身が焼けるような異臭。 (始まったか…。) カタリナはルーナを起こさな
last updateLast Updated : 2026-06-30
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空を知る街ヤンガミ編 EP4 グリンベールの未知Ⅱ
「もう1日ここにいるだって?英雄さんよ!あんたも昨日の夜の騒ぎ知ってんだろ?とっとと離れた方がいいと思うぜ?」 「運転手さん。どうしても確かめたいことがあるの!お願いします。」 カタリナは深々と頭を下げた。 「参ったなぁ…。英雄さんにそう言われちゃ断れねぇよ…。」 運転手は馬の首を撫でながら頭を掻いていた。 「お母さん。どうゆうこと?」 「ルーナ。少し私についてきて。」 カタリナは歩き出す。ルーナも後ろを追う。 村の防御柵はことごとく焼け焦げていた。 その横を2人は歩いていく。 「ルーナ。実は昨日ね。私も戦ったの。」 ルーナは想像以上に冷静に話を聞いていた。 「それで?」 「ここを攻めている山賊は、生身の人間だけじゃない。」 カタリナの言葉に、ルーナは首を傾げた。 「生身の人間だけじゃないってどうゆうこと?」 「私たちが昔、平和のために戦っていた相手は機械だったの。」 「機械って。紙芝居とかにでてくるロボットみたいなってこと?」 カタリナは被りを振った。 「人の身体に機械を埋め込んで作った人型の機械。その体は刃を通さず。銃弾を弾く。さらに人の何倍も強い力を持っている。」 「人と機械の融合…?」 カタリナは首を縦に振る。 「お母さんたちは、それらと戦って平和を勝ち取ったのね。それで?今回の山賊にそれが関係してるの?」 カタリナは重い口調で話す。 「15年前の戦いで、私たちは革命を成し遂げて平和を手に入れた。昼も夜もない国に、太陽と月を取り戻した。」 「なんとなく理解してるよ。続けて。」 カタリナは頷く。 「本来、太陽の光を浴びていないと活動できないはずの人型兵器の中に、その弱点を克服して逃げ出したものがいると聞いたことがある。」 「なるほど。」 ルーナは相当頭が良い。 「その人型兵器は、機械と融合される前は、優秀な科学者だったと聞いたわ。おそらくその科学力を使って、太陽問題を克服したのだと思う。しかもその力を使って今度は、自分の国を作ろうとしている。」 「そうゆうことね。」 ルーナは若い頃のカタリナにそっくりだ。 もしもロシェが生きていたら、あまりにも似過ぎていて腰を抜かしていただろう。 「グリンベール。それがその人型兵器が作ろうとし
last updateLast Updated : 2026-06-30
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空を知る街ヤンガミ編 EP5 シュプルーンの女騎士
シュプルーン王国。 宮殿フランベの第1会議室は朝から騒々しかった。その原因は、カタリナからの書簡。 (シュプルーン国王殿。今宵。グリンベールの大軍がアルバレム村へと進行してくるでしょう。おそらく組織のリーダー直々に出向いてくる。数によっては、私だけでは対応しきれないと思われる。軍の派遣をお願いしたい。炎の巫女カタリナ。) 「かの有名な炎の巫女殿から直々に送られてきた書簡。無視は出来ない。」 国王の言葉に、公爵を筆頭に伯爵等も頭を抱える。 というのも、シュプルーン王国は広大な敷地を持っており、南の大国との睨み合いを長年続けている。 そこの人員に、騎士団長級の大半は派遣している。大戦が今夜の場合、呼び戻しているだけの時間はない。 「陛下。かのスカーデット王国の革命は、空の王と炎の巫女。たった2人で成し得たと聞いております。アルバレム村に、その炎の巫女がいるのであれば、何の心配もないと思われますが…。」 伯爵の1人がそう告げると、周りからは有象無象の小声が飛び交う。 「そちの意見もその通りではあるが…。その炎の巫女からの直々の書簡。無視すれば国として如何なるものか…。」 国王がそう呟いた時、木製机を叩く音がドンッと鳴り響いた。 「私たちの国で起きる戦争に。私たちが出向かない。そんなことがまかり通るとお思いですか?」 シュプルーン王国第2王女。カダイン。声の主だ。 「姫。しかし。現状では戦地に向かわせる隊長級の騎士がいないのも事実でございます。」 「私が行く。」 カダインの言葉に、周囲の雑音は消えた。 「お父様。いや!国王陛下。シュプルーン騎士団の代表として、私カダインが軍を率いて、アルバレムの平定へと向かいます!」 「カダイン…。」 国王は上手く言葉が整理できていない。 「姫。あまりにも危険です!」 伯爵の1人がそう言うと、カダインは鋭い眼光で見据えた。 「そこに住まう民の危険には目を伏せて、王宮に住まう我々の危険は案ずる。そんな国で良いはずがないのでは?」 返す言葉もなかった。 「国王陛下。適任は私しかおりませぬ。どうかご命令を!」 ……。 少し沈黙が続いた。 ……。 国王の声。 「カダイン。シュプルーン騎士団の代表として、1万の軍を率い。アルバレムへと向かっ
last updateLast Updated : 2026-06-30
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空を知る街ヤンガミ編 EP6 15年の継ぎ接ぎ
20:00…。 まだ何も動かない。 少し強い風が吹いていて。不気味さを幾分にも掻き立てる。 カダインは村の各方面に、1万の大軍を配置させている。動きがあればすぐに知らせが届くはずだ。 「炎の巫女殿。敵が来ない可能性もあるのではないか?」 カダインの問いかけに、カタリナは被りを振る。 「必ず来るわ。私がここにいる限りね。15年の因縁は…お互いに深いものなのよ…。」 「だといいのだが…。」 カダインは何も起きない戦場に、少し焦りを見せている。 「隊長殿。敵はもう眼前にいるものと考えた方がいい。」 「眼前?」 カダインが聞くと、カタリナは頷いた。 「相手は山賊。奇襲は得意中の得意。さらに率いるのは人型機械。人知の範囲で測るのはリスクが高いってことよ。」 その時、東の方から赤い火が昇った。 「来たか!」 カダインはすぐに近衛を率いて東へ向かおうとする。 「隊長殿。待って。」 カタリナが止める。 「どうされた?」 「妙だわ。」 「何がです?」 カダインの問いかけに、カタリナは冷静に答える。 「この村に来てから、色々と詮索していのだけれど…。いつも被害が大きかったのは南と西。東はただでさえ防護柵が強固な上、外部から侵入が難しい立地。」 「そこをあえて突いたのでは?」 カダインの問いに、被りを振る。 「この大軍は均等に配備されている。それは向こうも事前に調べているはずよ。どこを突いても敵の数が同じなら、あえて消耗するルートを選ぶ理由があるかしら?」 カタリナの言う通り、東の地理が最も頑丈である。 「ならば。東は囮?」 「その可能性が高いわね。隊長殿。各場に配備した騎士団の指示役には、どうご命令されています?」 「戦況に応じて対応せよ!…と。」 「その騎士たちの実戦経験は?」 「猛者は皆、大国との睨み合いに出陣している。ここにいるのは経験の浅い者ばかりだ。」 カタリナは考えた。 「その情報も敵に漏れてるとしたら…。私たちはもう手のひらの上…。」 「我が軍に裏切り者がいると?」 「相手は人型機械です。1度視界にいれれば、相手の経験値など容易く解像できる。」 「ならば…。まさか…。」 「その通り。向こうの狙いはただ1つ。ここ!本陣よ!」
last updateLast Updated : 2026-06-30
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空を知る街ヤンガミ編 EP7 歯車
カタリナは遠のく意識の中、フレアリングに祈りを込めた。 造られた炎の剣が、ルーナの手元に納まる。 振り下ろされた闇の剣を、ルーナは懸命に炎で受け止めた。 「うぅ…。」 感じたことの無い衝撃に、全身の筋肉が悲鳴を上げる。 重力に引っ張られるかのような重たさに、剣術の心得のないルーナの身体は耐える術を知らない。 (お母さん…。こんな思いをずっとしてきたんだ…。) ルーナの膝が崩れ落ちた。 「継ぎ接ぎの女!相手は私だ!」 肋骨が折れたカダインが、長弓を構えて言った。 継ぎ接ぎの女は、すぐにルーナとの押し合いを辞めて、離れようとする。しかし炎が紐状になって脚を捉えている。 「くっ…。炎の巫女か…。」 カタリナの意識は無い。 カダインは矢を放った。その矢は光を放って、継ぎ接ぎの女の腹部を正確に貫いた。 「うぅ…。」 継ぎ接ぎの女の腹から血が流れ出す。 「貴殿も一応は人間なのだな。」 カダインはすぐさま2発目を放つ。 今度は右の太ももを貫いた。 「くくくくくくっ。ははははは。」 継ぎ接ぎの女は高笑いをする。 「なんだ?」 カダインとルーナの声が揃う。 「目的なんて忘れてしまおう。うん。忘れよう。全部消してしまえばいい。ははははは。」 (目的…?) ルーナはその言葉に引っかかった。対してカダインは、目の前の精神の壊れた化け物への対処法を模索する。 「まずはおまえからだ。」 闇の剣はあっという間にカダインの前にいた。 「舐めるな!化け物が!」 カダインは長弓を背中へと背負い、2つの短剣で応戦する。 「シュプルーン騎士を舐めるな!!」 カダインの剣技はどんどん速くなり、ついに継ぎ接ぎの女の剣速に追いついた。 「そこだぁ!!」 カダインの渾身の一撃を、継ぎ接ぎの女は右手で受け止める。と言うよりは右手を貫かせて動きを止めたと言う方が正しい。 滴る血が不気味な時間を生み出している。 「闇に沈むと良い。」 継ぎ接ぎ女とカダインの周りを闇が包み込む。 「なんだ?」 カダインは咄嗟に離れようとするが、短剣が右手から抜けずに離れられない。 「奥義。底闇のナーガ!」 取り巻く闇の渦は蛇の形になってカダインを縛り付ける。さらに地面に闇が現れて、
last updateLast Updated : 2026-07-01
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空を知る街ヤンガミ編 EP8 失ったモノ
「いったい…何がどうなっている…。」 仮面の男は、虫の息だった継ぎ接ぎ女とカタリナを抱えて消えた。 「目的は果たした。と言っていました。」 ルーナが静かに呟く。 「目的とはなんなんだ…。」 カダインは空に向かって小さく呟く。 「そんなの…。決まってるでしょ!お母さん…。炎の巫女の捕獲。」 ルーナは冷静だった。 「おまえの母が連れ去られたんだぞ?どうしてそんなに沈着でいられる?」 「殺すことが目的なら、連れ去る必要はないですから。必ず生かすはずです。ならば救い出せば良いだけ…。」 「分からん。私ならすぐにでも駆け出す。」 カダインの言葉で、ルーナの表情が変わった。 「それで…。それでいったい何ができる!無力だったから奪われた!」 感情的な言葉に、カダインも少し反省をする。 「すまなかった。おまえの言う通りだ。誇り高きシュプルーン騎士団である我々が不甲斐ないばかりに。」 「いいえ。無力だったのは私です。」 ……。 沈黙が続いている中。各地に配備された騎士たちが傷だらけで集まってきた。 「私たちは一度王宮に戻り、炎の巫女が連れ去られた件を国王に報告する。そして早急に捜索部隊の編成を要請するつもりだ。おまえはこの後どうする?」 カダインがそう言うと、ルーナは空を見上げた。 「私は…。ヤンガミへと向かいます。」 「ヤンガミ?辺境の地に何かあるのか?」 カダインが聞くと、ルーナは振り返った。 「私は空の王と炎の巫女の血を引く子。騎士団様方には申し訳ないですが、お母さんは私の手で救い出す。」 そう言うと、ポツポツと歩き始めた。 その後ろ姿を見て、カダインは1つ確信したことがある。 (ルーナ…か…。あの子は強くなる。) ⋯アルバレム村⋯ カダインは傷ついた騎士の手当と村の修復のため、2週間滞在をした。 五体満足な者には崩れ去った村の復興を手伝わせている。次第に戻ってくる村人たちも騎士団の存命と復興の兆しを見て、表情が和らいだ。 カダインから、山賊との決着は着いた。と聞いてからは、元々の活気が戻っているように思える。 「騎士団長様!英雄様はどちらへ?」 村長が問いかけると、カダインは笑顔を見せた。 「案ずるな。この地の平穏を掴み取り、新たな地へと旅に出た
last updateLast Updated : 2026-07-05
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空を知る街ヤンガミ編 EP9 饗
「お母さん。あそこの団子屋行こう!」「いいわよ。ちょうどお腹も空いてきたものね。」2人は3色の団子と温かい茶を口に含みながら、空を見上げて笑っていた。.........。(.........。夢.........?)「おぉ。ようやく目が覚めたかい?」見知らぬ婆さんがいる。どうやら気を失っていたルーナを連れて帰り、看病をしてくれていたようだ。「ありがとうございます。ところで...。ここはどこですか?」「どこって?あたしの家だよ!」「そうではなくて...。」「そういうことかい。ここはヤンガミ領の小さな村だよ。あんた見るからに旅人さんだけぇな。若いのに1人かい?」ルーナは黙って頷いた。頭の中では仮面の男を思い浮かべている。(仮面の男。あいつの狙いは。私にいち早く空の力を目覚めさせて、自分たちに協力させること。そのために遥かヤンガミまでワープさせたってこと。つくづく気分の悪いヤツだわ。)「おまえさん。どこに行くさ?」「目的地はヤンガミの街です。」(まぁおかげでだいぶ時間短縮出来た。)「ヤンガミの街かえ。あそこは絵師の街だ。世界でも有数の絵画の国。でもなぁ、立地の悪さで観光客なんて来やしねぇ。」「絵師…。ですか?」「そうだ!そんなことも知らんとヤンガミの街に行こうとしてたのか?」「えぇ…。まぁ。」「まぁ存分に楽しんどいで。」「あ!お金…!」ルーナがカバンからお金を出そうとすると、婆さんは止める。「ヤンガミの街で土産代にでもしてやんな。」「ありがとうございます!」ルーナは深々と頭を下げた。「気をつけてな!」婆さんは馬車まで呼んでくれており、ルーナはそれに乗った。見えなくなるまで手を振ってくれる婆さんに、ルーナは少し照れくさそうに手を振り返す。2時間ほどが経った。運転手が声をかける。「お客さん。もう間もなくヤンガミの街で
last updateLast Updated : 2026-07-08
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空を知る街ヤンガミ編 EP10 裏街
街の中央に聳える巨大樹。使者のうちの1人が、その巨大樹に右手を当てた。そしてブツブツと何やら呟いている。(この3人·····。どこまで信用していいのかしら。)ルーナの中にある懐疑心は拭えない。しかし他にアテもないのでついてきたに過ぎない。使者が巨大樹から手を離した途端。まるで口を開くかのように、幹に裂け目ができた。「どうぞ。」使者に案内されるままに、ルーナはついて行く。「ここはヤンガミでも一部の人間しか知らない裏街です。」「裏街?」ルーナが聞き返すと、使者の1人が答える。「そうです。裏街は、太古の昔。空の国との交流を実際に行っていたヤンガミ人の純血の子孫しかおりません。」「ここが本当のヤンガミの歴史ってことね。」「その通りです。ヤンガミは今でこそ、アートの街なんかと持て囃されておりますが、本来は空の国の歴史を知る古き伝統の街でございます。その気持ちを失わぬように、表街と裏街に分けているのです。」そんな話をしながら、巨大樹の中の螺旋階段を登っていく。しばらく歩いていると、広間が見えてきた。「ルーナ様。お待たせしました。こちらへどうぞ。」使者の1人が、ルーナを広間の真ん中の席に座らせた。「何が始まるのですか?」ルーナが聞くと、使者は答えた。「空について。知っていただきます。」ルーナは辺りを見渡した。人数は15人ほど。自分の真正面には、明らかに威厳がある年寄りが3人。きっと彼らがここを統括しているのだろう。そして、その3人の後ろには、大きな壁画がある。空に向かって絵を描いている男性と、空に浮かぶ島?のような壁画。ルーナは先程の本を思い出す。(あれが宝具!)壁画の下に、ガラスケースで保管されている、羽のようなデザインの筆が目に入った。よく目を凝らすと、ケースの下に名が掘られている。(風書きの筆·····
last updateLast Updated : 2026-07-12
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