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第7話

작가: ハル
退院の日、あまりの陽射しの強さに、青葉は思わず目を細めた。

基地の宿舎の入り口に差し掛かったとき、紗枝が爪先立ちになって手を振る姿が見えた。「青葉さん!やっと来てくれましたね!」

「上野さん?」青葉は乱れたおくれ毛を整えたが、まだ火傷の残る右腕がジンジンと痛んだ。

「賀川隊長の方が全て手配してくださって、明日の朝一番の船で出発することになりました」紗枝は声を潜め、懐から乗船券を取り出した。「荷物はあまり多くしないでほしいとおっしゃっていました。あちらの離島に、何でも揃っているそうですから」

青葉は慌ててポケットからポチ袋を取り出し、彼女に渡した。「わざわざお知らせいただき、ありがとうございます」

「あら、仲介の手数料は賀川隊長からすでにいただいているのに!」

「これは別のお礼です」青葉はそれを紗枝の手に押し込み、かすかに微笑んだ。「私の新しい生活への第一歩ですから」

紗枝はきょとんとした顔になり、すぐに嬉しそうに言った。「そうですね、お祝いしなくちゃ。亡くなった旦那さんのことなんか忘れて、もうこれから先のことを考えろってことですよ……」

そう。世間の人たちにとって、拓海はもう死んだことになっている。

任務の失敗で、血に染まった部隊章と共に消えたことになっているのだ。

けれど青葉だけは知っていた。拓海は平気な顔をして、今でも別の女性と睦み合っているのだ。

青葉が話し出そうとした時、いきなり玄関のドアが乱暴に蹴破られた。

拓海が、不機嫌そうな顔をしてそこに立っていた。制服が汗でぐっしょり濡れている様子からして、大急ぎで戻ってきたに違いない。

「もう青葉さんに再婚の相手を連れてくるなと言ったはずでしょう!」拓海は紗枝の手から包みを奪い取った。「彼女は俺が養うから、再婚など認めません!」

紗枝は体がビクッとするほど怯えた。「でも、もう青葉さんは……」

「上野さん、お引き取りください」青葉はそっと遮り、紗枝に目で帰るよう促した。

紗枝が慌てて帰ろうとすると、家に入ろうとしていた雪乃とぶつかりそうになった。

雪乃は青葉を守るような姿勢の拓海を見上げ、その目は鋭く光った。

……

夜遅く、青葉が黙々と身の回りの整理をしていると、いきなりドアが開いた。

雪乃がわざとらしく、目立たない腹を抱え、鼻で笑った。「まだ前のお仕置きが堪えていないのね。また拓真をそそのかすつもり?」

青葉は顔も上げず、黙々と服を畳み続けた。「私は明日には出ていきます、だから……」

言葉の途中で雪乃が「きゃあ!」と声をあげて倒れ込み、お腹を抱えながら泣き叫んだ。「私の子が!」

叫び声とほぼ同時に、外から拓海が駆け込んできた。「雪乃!」

彼は青葉に目もくれず、すぐに雪乃を横抱きにして外へ走り去った。

ひとりその場に取り残された青葉の耳に、廊下から雪乃のすすり泣く声が聞こえてきた。「青葉さんが押したの……拓真、私たちの赤ちゃんどうなっちゃうの……」

なんてくだらない小芝居。

青葉は笑いたかったが、目からは涙がこぼれ、しょっぱい味がした。

夜が明ける頃。青葉がトランクを手に玄関へ向かうと、そこへ帰宅したばかりの拓海に出くわした。

拓海の目の下にはひどいクマがあり、あごにはうっすらと髭が無精に伸び、その瞳は充血して真っ赤だった。

「なぜ何度も雪乃に嫌がらせばかりするんですか?」拓海は青葉の手首を力任せに掴んだ。「一晩中そばに付き添っていたんですよ。あやうくお腹の子を失うところだったんです!」

青葉はその手を振り払い、黙ったまま一歩を踏み出した。

やっと荷物に気づいたのか、拓海は言った。「どうして追い出されると分かったんですか?荷物までまとめておくなんて」

青葉はそこで立ち止まり、振り向いた。「私を追い出すのですか?」

拓海は、その凛々しい顔を疲弊にゆがませつつも、冷たい口調を変えなかった。「そうです。雪乃は青葉さんの姿を見るのが嫌だそうです。しばらく実家に帰って、大人しくしていてください」

彼は無理やりトランクを奪い取った。「駅まで送ります」

「結構です」青葉はケースを奪い返した。「一人で行けます」

けれど拓海は強引に後を追ってきて、まるで早く追い払いたいとでも言うように、しつこく駅までついてきた。

「しばらくの間、あちらで大人しくしていてください。雪乃のお腹の子が無事に生まれたら、迎えに行きますから。

改札の先までは送りませんから、自分で切符を買ってください。雪乃が病院で俺の帰りを待っているので」

それだけを冷淡に告げると、拓海は踵を返して急ぎ足で立ち去った。

切符売り場の前に立ち、青葉は不意にクスリと笑った。

拓海。あなたは一生、その雪乃のお世話でもしてればいいわ。

霧の中に拓海の車が消え去るのを確認すると、青葉はゆっくりと向き直り、駅とは正反対の方角に向かって歩き出した。

その先には、港へと続く直行便があり、青葉の到着を待ち焦がれている隆平がいて、全く新しい暮らしが待っている。

青葉は朝の光の中で、一度だけ基地を振り返った。

さようなら、拓海。今度こそ本当にお別れよ。

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