Mag-log in現在それぞれの二回戦の戦いが繰り広げられていた。
タイガは順調に勝っているし、イーグも勝ち残った。ハイエナ野郎はまた毒を使って勝っている。俺はこんなにもミリアが負けることを願う日があっただろうか。
ミリアが死んだあの日以来、ミリアには危険が迫らないように細心の注意を払ってきた。なのに何故、俺はこの大会に出るのを止めなかったのだろうか。
またミリアに何かあったら俺は────『それでは、最後の二回戦を開始いたしましょーー! キリンのリン選手対、注目のぉぉぉミリアァァァせんしゅぅぅぅぅぅ!』
「「「ミ・リ・ア! ミ・リ・ア!」」」
『凄まじい応援ですねぇ。しかし、私は心配です! これに勝ったら……。いえ、止めましょう。どうか。どうかっ! 両者に勝利の女神が微笑みますように!』
実況が言いたい事は観客達にも言わずもがな伝わる所があり、一部のものは涙ぐんでいた。
そんな雰囲気の中、俺達の気持ちを知ってか知らずか。ミリアはニコニコとリンに対峙してい現在それぞれの二回戦の戦いが繰り広げられていた。 タイガは順調に勝っているし、イーグも勝ち残った。ハイエナ野郎はまた毒を使って勝っている。 俺はこんなにもミリアが負けることを願う日があっただろうか。 ミリアが死んだあの日以来、ミリアには危険が迫らないように細心の注意を払ってきた。 なのに何故、俺はこの大会に出るのを止めなかったのだろうか。 またミリアに何かあったら俺は────『それでは、最後の二回戦を開始いたしましょーー! キリンのリン選手対、注目のぉぉぉミリアァァァせんしゅぅぅぅぅぅ!』「「「ミ・リ・ア! ミ・リ・ア!」」」『凄まじい応援ですねぇ。しかし、私は心配です! これに勝ったら……。いえ、止めましょう。どうか。どうかっ! 両者に勝利の女神が微笑みますように!』 実況が言いたい事は観客達にも言わずもがな伝わる所があり、一部のものは涙ぐんでいた。 そんな雰囲気の中、俺達の気持ちを知ってか知らずか。ミリアはニコニコとリンに対峙している。『それでは、始め!』 開始早々のリンの蹴りの速さは凄まじく、持ち前の長身からの叩きつけるような蹴りがミリアを襲う。 冷静に避けているが、これは一撃でも食らったらまずそうだ。 もう負けて欲しいんだか勝って欲しいんだか分からない心境になっている。 どうしたものか。このモヤモヤは。 ステージ上では激しい攻防が繰り広げられている。リンは蹴りが主体のようで、打ち下ろしの蹴りが次々とミリアを襲う。 少しずつ被弾していく。 だか、ミリアの目は諦めてはいない。 そんな厳しい状況にも関わらず、ミリアは笑顔だ。 あんな可愛い笑顔で攻撃されたら逆に恐ろしいのだが。 避けながらローキックを放っている。 それを一貫している。 また打ち下ろしの蹴りが放たれた時だった。 軸足を蹴り飛ばすとリンの膝がカクンと折れ、地面に膝を着いた。 ミリアは口角を上げると懐に入り込んだ。 ────ズドンッ
本戦に出場する選手たちはステージに並んでいた。 観客に見えるように丸く円を組み、外向きに並んでいる。 たまたまだろうが、ミリアは俺の正面だ。 小さく手を振っている。「おっ? 俺に手を振ってるのか? 参ったなぁ。よく見ると可愛いじゃないか」 「ばぁか。僕に振ってんだよ」 「ちげぇよ。俺っちだよ!」 何やら周りの者たちが勘違いしてしまったらしい。まぁ、こういう事よくあるよな。『それでは、獣人族部門本戦と行きましょう! 今回の注目されている選手をご紹介します! 昨年優勝した優勝候補! 虎の獣人族ぅぅ! タイガ選手ぅぅぅ!』 手を挙げて一礼をする。『続いて昨年の準優勝者の注目の選手ぅぅ! 鷲の獣人族ぅぅ! イーグ選手ぅぅぅ!』 背中の羽根をばたつかせながら一礼をする。 鳥人なのだが、まとめて獣人族に属されているらしい。 正確には獣人族 鳥人科みたいな感じに分類されるんだとか。『続いての注目選手ぅぅぅ! 目立ってしょうがない! 人を振り回して吹き飛ばすタイフーン娘ぇぇぇ! ミリアァァァァ選手ぅぅぅぅ!』 なんという紹介のされ方だろう。 めちゃくちゃインパクトあるな。 ミリアは両手をあげると会場にいる観客全員を見渡すように笑顔で手を振り一礼した。「俺はミリアちゃんを応援するぅぅぅ! ミ・リ・ア! ミ・リ・ア!」 「僕もだぁぁぁ! ミ・リ・ア! ミ・リ・ア!」 「俺っちも! ミ・リ・ア! ミ・リ・ア!」「「「ミ・リ・ア! ミ・リ・ア!」」」 今度は少し前に一歩踏み出すと手を振りながら一回転して手を口にあててなにか喋る気だ。「私も頑張るからぁぁぁー! ナイルも頑張ってねぇぇぇー!」 なんてことだろうか。 周りが一気に殺気で溢れた。 険しい目付きで周りを探し始める。「おい! ナイルってどいつだ!?」 「出て来いコノヤロー!」 「お前か!?」 皆が隣の人を疑う始末。
『さぁさぁ! 待ちに待った武闘大会がようやく開催されるぞぉぉぉ! 実況を担当するマースです! 今回は拡声魔道具にて実況させて頂きます!』「「「「ワアァァァァァァ!」」」」 地響きのような腹に来る歓声が鳴り響く。 娯楽がないこの世界だ。この大会を楽しみにしていた人は相当な数いたと思われる。『本日は、まずは獣人族部門からとなっており、明日が魔族部門となっております!』 実況が言った通り、今日は獣人族部門ということなので俺は観客としてこの大会を楽しんでいる。 もちろん、今日出るのはミリアだ。 ハッコツ家の人達は貴族専用の席で観ている。一緒に観ないかと言われたんだが、遠慮しておいた。貴族というのは俺には合わない気がする。『それではAブロックから行きましょう! まずは本戦の出場を決めるバトルロイヤルです! Aブロックの方は中央のステージに集まってください!』 この会場は円形になっていて外側には観客席が階段状に高くなっている構造であり、内側には中央に円形のステージ。直径百メートル程の円だと思われる。 そこに今、ゾロゾロと選手が出てきた。 ざっと三十人程といった所であろうか。 犬、猫、虎、鷹、象と様々な獣人族が集まっている。なんだか動物園で行われているイベントを観ているような感覚になってくる。 そんな中にミリアが出てくるのかと思うと、目立つのだろうなと考えてしまう。 一体何ブロックになったのか。ちゃんと見てこなかったからいつ出てくるのか分からないのだ。 何せ皆が割り振りの紙を見るのに必死で張り出されている場所が大変な朝の満員電車の様相を呈していた。 俺はあそこに入っていく気には到底ならなかった。『あーーーっとぉぉぉ! このブロックは虎の獣人族に決まりましたぁぁぁ!』「「「「ワアァァァァァァ!」」」」 次々とブロックごとのバトルロイヤルが終わっていく中、次のブロックの人達が出てきた。ある人が出てきた時に突如会場がザワついた。「おい! 人族の女の子がいるぞ!?」「あの子は
『それでは、早速登録に行きましょうか!』 ホワイトさんに連れられて武闘大会が開かれている事になっている会場に選手登録をする為に向かっていた。「ねぇ? 私も登録していいんだよね?」『いいんじゃないか?』 俺が適当にそう言うと前を歩いていたトウカお嬢様が後ろを振り向いた。『ミリアは絶対獣人部門で出ても勝てるわ! 私に勝ったんだもの!』 それから詳しく話を聞くと、トウカお嬢様は魔族学校でトップレベルの成績なんだとか。それに獣人族が勝つのはかなり難しいとのこと。 このトイロの常識では、魔力で運用されている身体の魔族の方が体力は無尽蔵だし魔法の使い方にも優れているから強い。というのが常識的な認識とのこと。 そこから考えるとミリアはやはり凄いらしい。しかも、ミリアは実は十九歳だ。まだ若い人族なのに凄いとのこと。 実はこれまでに蓄積したミリアのレベルは74である。人族でここまでレベルが上げることが出来るのはひと握りの人だけなのだ。 テイマーはテイムモンスターの倒した魔素も吸収するということだから、それだけ俺がモンスターを倒してきたということだ。 この世界の人族は魔族よりレベルが上がりにくいらしい。 だから、人族が進化出来たらけっこう凄いことなのである。「そう? ふふん! やっぱり私は出るべきという事ね!」『ミリア、あんまり調子に乗ると足元掬われるぞ?』「うぅぅ。なんでそんな意地悪言うのよぉ」 眉をへの字に曲げて眉間に皺を寄せ、その顔をこちらに向ける。『ミリアは大丈夫ですわ! ナイルさんもお強いんでしょうけど、ミリアには及ばないのでは無いですか?』『はははっ。確かに戦った事はないからわからないねぇ』 トウカお嬢様は自分に勝ったミリアが相当強いと、そう思っているのだろう。実際、戦ったことはないからどちらが強いのかはわからない。「あははははっ!」 ミリアが大きな声で笑いだした。『なんで笑うのよ?』 トウカは腕を組んで胸を張って
決闘が終わってすぐ、トウカお嬢様の両親に話を聞くべく屋敷の中にいた。『こちらへどうぞ』 爺やに案内された俺達は客間のような所に通され、ソファーに腰掛けていた。「どんな人なんだろうね?」『どんな人って、骨とゾンビだろ?』 そもそも人族じゃないから話が通じるのかどうかも分からない。 話してみないとどんな人達かも分からないしな。 ───コンコンッ『失礼致します。この度はトウカがご迷惑をお掛けしたようで、申し訳ありませんでした。私はハッコツ家当主のホワイトです』『妻のシロンです。この度は誠に申し訳ありませんでした』 深々と謝られてしまった。 両親が共に九十度のお辞儀をしながら入ってくる。「そんなことないです! 私も楽しかったですから!」 ミリアは迷惑をかけられたなんて思っていない。 純粋に勝負を楽しんだのだから。『ありがとうございます。何かお話があるとか』 話をゆっくり聞いてくれるようで二人とも向かいのソファーに腰を落とした。「実は、今回の事態になったのは───」 今までの経緯を両親に説明した。 街でトウカお嬢様が暴漢に襲われ、そこを救ったこと。 ナイルに惚れたようで結婚を迫られたこと。 トウカお嬢様はリビングアーマー族との婚約が嫌だということ。『ふぅぅぅ。そうですか。まさかそこまで嫌がっていたなんて。どうしたものか』「婚約破棄はできないんですか?」『トウカの代はリビングアーマー族と結ばれる事になっているんです。実は───』 ホワイトさんの口から語られたのはこの国ならではの文化であった。 魔族は強さを求める種族であって、色んな種族と結ばれる事で全体的な能力が底上げされると言われているそうだ。 確かに何かに特化した種族同士が結ばれれば、苦手な部分を補って生まれてきた子は高い水準の能力になるのかもしれない。 そういった風習があるから、リビングアーマー族の方も
二本目を取られたミリアは頭を抱えてしゃがんでいる。「くぅぅ。惜しかったのになぁ。もう少し早く出来るようになってたら良かったのに! もう! ナイル! アドバイスが遅い!」『はははっ。仕方ないだろ? 次頑張ろー!』「はぁぁぁ。これで勝てたら楽だったのに! くぅぅぅ。やってやるぞぉぉ!」 腕を天に突き上げて立ち上がりながら意気込みを叫ぶ。『ふんっ! 次も私が勝ってギャフンと言わせてやるわ!』 トウカお嬢様は腕を組んで勝ち誇っている。『では、次の勝負はメダル奪取にしましょう』「メダル?」『聞くのは初めてですかな?』 聞いたことがないと言うと勝負の説明をしてくれた。 これもトイロではメジャーなトレーニング方法でそうだ。 まず、メダルを背中に特殊な植物から抽出した液体で張るんだそう。それを両者に貼って奪われた者の負けということだった。「ふーん。スピード勝負ね」 ミリアは勝負の本質を分かっていないようだ。 これはスピード勝負に見せかけたフェイント、もしくは錯覚を利用するために意識を培う鍛錬といったところだろう。 右に行くと思わせて左に行く。 相手が誘いに乗れば背中ががら空きという訳だ。 いつそれに気がつくか。 そもそもそれを意識して鍛錬しているであろうトウカお嬢様に勝てるのかは疑問だ。『それでは背中に貼ります』 両者の背中に銅貨が貼られた。 この鍛錬では取るという意欲も掻き立てるために一番手頃な銅貨を使用するそうだ。 ただの金属よりは硬貨の方が意欲が上がるとのこと。『それでは、両者向かい合って。行きますよ。始め!』 トウカお嬢様が先に動いた。 右に移動しようと見せかける揺さぶりをかけている。ミリアが初めてだから引っかかると思ったようだ。 案の定、ミリアは引っかかった。 体が右に傾いた。 それを見たトウカお嬢様は左に回り込んでくる。