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第912話

Autor: 歓乃
茂は、まさか将希が自ら美雪をかばいに来るとは思っていなかった。

俯いたままの美雪を一度見てから、険しい顔をしている将希へ視線を戻す。

「美雪と何か取引でもしました?それとも、何か弱みでも握られてるんですか?」

将希という人間を、茂はよく知っている。何よりも神谷家の利益を優先し、損得で物事を判断する男。そんな将希がわざわざ出向いて美雪をかばい、神谷家に残そうとするからには、絶対に何か理由があるはずだ。利益になる何かがあるか、さもなければ弱みを握られているか……

茂がそう言った瞬間、将希だけでなく美雪まで驚いたように顔を上げた。

どうして茂がここまで冷たくなれるのか、美雪には理解できなかった。28年間「お父さん」と呼び続け、28年間、そばで娘として寄り添ってきたのは自分なのに。本当の娘が現れただけで、これまで積み重ねてきた親子の情をすべて切り捨て、ここまで容赦なく自分を追い詰められるものなのだろうか?

胸の奥に重苦しいものが溜まっていく。

一方、将希は眉をひそめていた。先日ここへ来たときのことを思い出す。茂が神谷家を離れようとしていることを彰菜に伝えたあと、美雪が見送りに出て
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Rims
すごい!これが本来の茂なのかも! 凛が一人で今の地位や人脈を築けたように、 茂も元々家や妻に振り回されなければ、 相応の地位を築いていたかも!
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    茂は、まさか将希が自ら美雪をかばいに来るとは思っていなかった。俯いたままの美雪を一度見てから、険しい顔をしている将希へ視線を戻す。「美雪と何か取引でもしました?それとも、何か弱みでも握られてるんですか?」将希という人間を、茂はよく知っている。何よりも神谷家の利益を優先し、損得で物事を判断する男。そんな将希がわざわざ出向いて美雪をかばい、神谷家に残そうとするからには、絶対に何か理由があるはずだ。利益になる何かがあるか、さもなければ弱みを握られているか……茂がそう言った瞬間、将希だけでなく美雪まで驚いたように顔を上げた。どうして茂がここまで冷たくなれるのか、美雪には理解できなかった。28年間「お父さん」と呼び続け、28年間、そばで娘として寄り添ってきたのは自分なのに。本当の娘が現れただけで、これまで積み重ねてきた親子の情をすべて切り捨て、ここまで容赦なく自分を追い詰められるものなのだろうか?胸の奥に重苦しいものが溜まっていく。一方、将希は眉をひそめていた。先日ここへ来たときのことを思い出す。茂が神谷家を離れようとしていることを彰菜に伝えたあと、美雪が見送りに出てきて、28年前の真相をすでに知っていると、将希に明かした。しかも、彰菜が生まれたばかりの凛を捨て、それをきっかけに茂が公職を離れたことまで、全て知っていたのだ。そして、この秘密を外に漏らさない代わりに、一つだけ条件を出した美雪。その条件とは――自分をこれからも神谷家の人間として扱い、誰にも追い出させず、神谷家との縁も切らせないこと。28年間隠し続けてきたスキャンダルを守るため、将希はその条件を呑んだ。そして今日、美雪から「父に家を追い出される」と連絡を受け、慌てて止めに来たのだ。だが茂には、すでに見抜かれている。将希は茂を見据えた。「わしがしていることは、すべて神谷家のためだ」「将希さんには将希さんの考えがある。それはわかっています」茂も真っ向から答えた。「でも、俺にも俺の考えがあります。俺は美雪をこの家から出すだけですから、将希さんが神谷家に残したいなら、好きにしてください。どこに住まわせようが、どう扱おうが俺には関係ない。ただし今後、俺の養女を名乗ることだけは許しませんので」美雪が目を見開いた。「お父さん、それ……どういう意味?」「黙れ」茂は冷え

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