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第2話

Penulis: 歓乃
梓は、凛が研究と自分の夫のこと以外に興味を示すのが珍しかったから、ブランド品のノベルティに関する裏ルールを夢中で話した。

しかし、凛は上の空だった。頭の中は、昨夜智也が帰ってこなかったこと、そして今朝、ポケットから突然、包装もされていないスカーフを出したことでいっぱいだった。

彼女はもう一度、柚葉が去っていった方向を見つめ、考え込むように言った。「小林さんのカバン、新品みたいだったわね」

「当たり前ですよ。昨日の夜に買ったばっかりなんですから」と、梓はすぐに言葉を返した。

凛は彼女の方を見た。

克哉も尋ねた。「どうして知ってるんだい?」

「お昼にちょうど松田さんが小林さんと話しているところに居合わせたんです。松田さんも彼女のバッグに気づいて、服装に気をつけるよう注意したら、小林さんは昨夜親友からもらったものだから、無駄にはできないって……数千万円もするバッグをくれる親友なんて、どこにいますか!」と梓はため息をついた。

凛は、「親友」という言葉を口の中でそっと繰り返した。今朝、智也も同じことを言っていた。

彼女はさらに尋ねた。「そのカバンを買うと、スカーフもついてくるの?」

「それだけじゃないですよ、他にもたくさんついてきます。スカーフはその中の一つでしかありません。まあ、こういうスカーフは単品で買う人もいますけどね」と梓は言った。

凛の心は、梓の言葉に浮き沈みした。

「佐野先生、すみません、今夜の食事会は欠席します。家に用事ができましたので」

克哉はためらいがちに尋ねた。「大変なことか?」

「はい、大変なことです」

世界が崩れ落ちるくらいには。

克哉は凛を気遣った。「それなら仕方ないな。小林さんにはこっちから話しておくよ。家のことに集中して。プロジェクトも終盤だから、前ほど忙しくはない。これからは毎日研究所に来なくてもいいし、大事なことがあれば連絡するから」

「はい」凛はマスクをつけて、一人でその場を去った。

彼女は家には帰らず、タクシーでホシゾラ・テクノロジーのビルの前に来た。そこで、思いがけず智也と顔を合わせた。

でも、智也は凛に気づかなかった。

彼女がマスクをしていたからか、この時間は退勤する人が多すぎたからか、それとも智也が電話で忙しかったからか。

でも、二人は4年も夫婦なのに……

智也は凛の前を通り過ぎて行った。

凛は振り返って後を追い、少し近づくと、彼の電話の内容が聞こえてきた。

「食事会があるから、迎えに来なくていいって?」智也は立ち止まった。

凛もそれに合わせて立ち止まった。

「わかった。終わったら連絡して。迎えに行くから」智也は振り返り、再び凛のそばを通り過ぎて行った。

エレベーターの前に着いたとき、智也はふと足を止め、脳裏にかすかな人影がよぎった。

彼は振り返った。

「社長、何かお探しですか?」と秘書の田中浩(たなか ひろし)が尋ねた。

智也は首を振った。見間違いだろう。凛はこの時間、家のキッチンにいるはずで、自分の会社の前に現れるはずがない。

今夜は家で食事をしないから、凛には少なめに作るよう、メッセージを送っておくか。

ピロン。

凛はメッセージを受け取り、そこに表示された短い一行を、無言で見つめた。

彼女は家に帰らず、智也が再びビルから出てくるのを待ち、後を追うようにタクシーを拾った。

車が止まると、凛は道路の向かいに立った。回転ドアから出てきた柚葉が、ごく自然に智也の腕に絡みつき、楽しそうに話しながら車に乗り込むのを見ていた。

夫は自ら他の女のために車のドアを開け、その頭を庇うように手を添える。その仕草はあまりに優しく、甘い眼差しは、愛情に満ちていた。

凛は智也の優しい姿を見たことはあった。けれど、こんなにも愛情のこもった目は見たことがなかった。まるで溶けた砂糖のように、一人の女性にまとわりついて離れようとしない。

車は彼女の前を、土煙を上げて走り去った。

車内の智也はまた眉をひそめ、窓の外に目をやった。

「智也、何を見てるの?」と柚葉が尋ねた。

「いや、なんでもない」きっと疲れているのだろうと智也は思った。でなければ、何度も凛の幻を見るはずがない。

凛は一人でちゃんとご飯を食べているだろうか、と彼は少しぼんやり考えた。

道端に立ち尽くしていた凛は、バッグから数万円もするそのスカーフを取り出した。

結婚して4年、これは智也がくれた中で一番高価なプレゼントだった。

それなのに、ただのノベルティだなんて。

柚葉に買った、数千万円のバッグのおまけの一つでしかないのだ。

凛はスカーフの上から、手のひらに爪が食い込むほど強く握りしめた。そうすれば、心の痛みが少しは和らぐような気がした。

悲しみに浸る間もなく、電話がけたたましく鳴り響いた。

夫の妹である谷口胡桃(たにぐち くるみ)からだった。

電話に出ると、向こうから泣きじゃくる声が聞こえてきた。「凛さん、うわあああああん……」

谷口家の人々は、凛がみなしご出身であることを見下していた。特に智也の事業が成功してからは、誰もが凛と智也は釣り合わないと思っていた。

義理の妹の胡桃に至っては、凛を顎で使っていた。

ただ、問題を起こして兄に言えない時だけ、「凛さん」と呼ぶのだった。

「また何かしでかしたの?」凛は平坦な声で尋ねた。

胡桃は車で事故を起こし、相手に賠償金と治療費を払わなければならなかった。彼女自身も怪我をしてベッドに寝ているという。

電話口で胡桃は、絶対に家族には言わないでと何度も念を押した。

凛は承諾し、急いで病院へ向かった。

「何でこんなに遅いのよ!こっちは痛くて死にそうなのに!トロくて、本当にノロマね!」

親切心で駆けつけたのに、開口一番浴びせられたのは文句の嵐だった。凛は一瞬表情を抑えきれなくなり、冷たい視線で胡桃を見つめた。

すると、胡桃はきょとんとした。

いつも一家の言うことを何でも聞いていた凛が、どうして変わってしまったのだろう?こんな目つきで自分を見るなんて。

「何よ、その目。お兄ちゃんに、いじめられたって言いつけてやるんだから!」

兄が味方についてくれると思うと、胡桃はまた威張り散らし始めた。

周りの人間は皆、凛が智也を命がけで愛し、彼のためなら何でもして、どんなことでも我慢することを知っていた。

「お兄ちゃんに言いつけられたくなかったら……」胡桃は目をぱちくりさせ、突然にこやかに笑った。「凛さん、お腹すいちゃった。高級店のお寿司が食べたいな。買ってきてよ」

一人前が4万円もして、しかも予約が必要なお寿司だ。

以前はいつも凛が自分のお金で胡桃に買っていた。でも、もうそんな気にはなれなかった。

これまで智也のために節約してきたお金は、すべて柚葉の懐に入っていたのだ。

凛の心は冷え切っていくばかりだった。

「今すぐ彼に言えばいいわ」

凛は気にも留めず、背を向けて部屋を出て、看護師に智也へ電話をかけるよう頼んだ。

被害者の家族もかなり騒いでいた。以前なら、凛が間に入ってなだめただろう。

しかし今回は何もしなかった。まるで傍観者のように、少し冷めた視線でただ見つめ、智也の両親が慌てて駆けつけてくるのを待った。

被害者家族は、加害者の両親だと知ると、すぐに群がって説明と賠償を求めた。

身なりの良い智也の両親は、人が近寄るのを嫌がりながらも、娘を探そうと必死につま先立ちで辺りを見回していた。そして嫁である凛を見つけると、まず睨みつけ、それから被害者家族を彼女に押し付けようとした。

凛は二人の意図を察し、人混みをかき分けて言った。「お父さん、お母さん、胡桃のところに案内します」

そして被害者家族に向き直り言った。「皆さんご安心ください。あの子の兄はホシゾラ・テクノロジーの社長です。世間的にも名の知れた人物ですから、決して責任逃れは致しません。負うべき責任はきちんと負わせていただきます」

彼女の誠意ある言葉に、向こうの興奮も少しだけ収まった。

しかし被害者の兄が要点を掴んだ。「ホシゾラ・テクノロジーだな。もし責任逃れするようなことがあれば、会社に乗り込むからな!」

智也の両親は、凛が息子の会社名と役職を勝手に名乗ったことにひどく不満だった。彼らが田舎者と見下す連中に息子がつきまとわれる可能性が出てきたことで、二人揃って凛をキッと睨みつけた。

騒ぎ立てる人々が去っていくのを見届けると、智也の父親・谷口健吾(たにぐち けんご)は冷ややかに皮肉を言った。「いつからそんなに口が達者になったんだ」

智也の母親・谷口梨花(たにぐち りか)はショールを直しながら、まくしたてた。「凛、大したもんね。お金は稼げない、子供は産めない、挙句の果てには胡桃の面倒も見れないなんて。あの子の顔に傷が残ったり、足に後遺症でも残ったりしたら、これからどうやって人前に出るの?お嫁にいけなくなるじゃないの?さっきは自分の夫まで巻き込もうとして。あなたは妻としてどうなの?

本当に、バカで根性悪いわ!」

「根性悪い?」

智也と結婚して以来、胡桃の世話は自分の責任だった。胡桃が少し擦りむいただけでも、この二人は自分を罵った。

4年間、自分は文句も言わずに尽くしてきたのに、尊敬されるどころか、返ってきたのは、「根性悪い」という一言?

凛は指の関節が白くなるほど拳を握りしめ、鼻で笑いたかった。

「胡桃の責任は、あなたたちの責任です。智也の責任でもあります。でも、私の責任では決してありません」

いつも黙って罵られていた人間が突然言い返してきたので、谷口夫婦は一瞬呆気にとられたが、すぐに怒りの炎はさらに燃え上がった。

自分たちは年長者だ。凛は目下のくせに口答えするなんて。

「智也と一緒にいる限り、谷口家の問題はお前の問題だ!」健吾は大声で怒鳴った。「そこで突っ立って何をしている!さっさと金を出して賠償してこい!事が大きくなったら、智也の将来に響くんだぞ!」

「私にお金はありません」凛は背筋を伸ばした。

「お金がない?」それを聞くと梨花は腹が立って仕方がなかった。「智也の数億円の資産は全部あなたが持ってるんでしょ。よくもまあ、お金がないなんて言えたものね?」

息子が事業で成功して家を買い、使用人を雇ってくれるようになってから、彼らは世界旅行に行こうと考えていた。

しかし、その度に息子に金を無心しても、「ない」の一点張り。「もう少し待ってくれ」と繰り返すばかり。

金がどこに行ったのかと尋ねると、また黙り込んでしまう。

二人は考えた。金はきっと凛ががっちり管理しているに違いないと。ここ数年の息子の暮らしぶりを見ても、なんと質素な生活をしていることか。

良い服はほんの数着しか持っていない。見ていられないほど哀れだった。

「智也が、お金は私が持っていると言ったんですか?」凛の冷え切った心は、さらに深く沈んでいった。「彼が毎月くれるのは6万円だけです。記録をお見せすることもできます」

「何よ、そんなのどうせ偽造したものでしょ」梨花は全く信じようとしなかった。

健吾は眉をひそめて凛をじろじろ見た。「智也の金で株に手を出して、全部スッたってわけじゃないだろうな?」

凛は怒りで顔をこわばらせた。「信じようと信じまいと、私にお金はありません。智也のお金も、私が持っているわけではありません」

言い終えて、その場を去ろうと振り返った、その時だった。

智也がやって来た。

だが今回は一人ではなかった。柚葉も一緒だった。

凛は動きを止め、視線が交わった。

智也もわずかに表情をこわばらせ、彼女たちの方へ歩み寄り、ここで何をしているのかと冷たく尋ねた。

隣にいた梨花は一目で柚葉だと気づいた。さっきまでの険しい形相が嘘のように、途端に愛想良くなり、彼女の手を取ってしきりに話しかけた。

「柚葉ちゃんじゃないの。何年も会ってないわね、外国では元気にしていた?向こうの食事は口に合わなかったんじゃない?まあ、痩せちゃって。でも、相変わらず綺麗ね」

「お二人とも相変わらずお元気で、昔と全然変わりませんね」柚葉は褒め言葉を返した後、申し訳なさそうな表情を見せた。

「電話で胡桃ちゃんが事故に遭われたと聞いて、急いで来たものですから、お二人への手土産も用意できなくて、日を改めて、またご挨拶に伺ってもよろしいですか?」

「もちろんよ!」と梨花は待ってましたとばかりに言った。

柚葉は微笑むと、ふと彼女たちのほうへ歩み寄った。「智也、紹介してくれないの?」

智也の眼差しが優しくなる。「柚葉、こちらは俺の……妻の谷口凛だ。

そしてこちらは大学時代の友人の小林柚葉だ。小林さんと呼んでくれ。彼女はとても優秀な女性なんだ」

「谷口凛というお名前なんですか?」

柚葉は赤い唇の端を吊り上げ、目の前の女を上から下まで値踏みするように見た。その目には、隠しきれない軽蔑の色が浮かんでいた。

「奇遇ですね。私が担当しているプロジェクトにも、同じ名前の方がいるんです」

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Komen (3)
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ウエダチエ
ムカつく旦那に高慢無礼な義父母、妹、おまけに旦那の財産を食い散らかす金食い虫の彼女、役者揃ったね、やっちゃえ
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厚子
支援が幾ら以上とかあるの?
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厚子
17話からはどうやって見れるの?
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