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第103話

Auteur: 小円満
淑江の顔色が一気に曇った。私が余計なことを言い出すのを恐れているのだろう、そばの女を連れて別の場所へ移動していった。

その女に優子が親しげに「お母さん」と呼びかけるのを聞くまで、私はその人の正体に気づかなかった。

ちょうどそのとき、入口のほうがざわついた。

振り返ると、優子の兄が入ってくるところで、隣には理沙がいた。

「うわ、あれって研究界の若手エースじゃない?すごすぎる、津賀家の兄妹って!妹は芸能界でトップクラス、兄は若くしてあんな成果出して…!」

「隣の人、彼女?はぁ……いい男にはもう大抵相手がいるのよね」

「優子さんって本当に恵まれてるわ。優秀すぎる兄に、あそこまで甘やかしてくれる旦那さんまでいるなんて。ほんと、神様って優子さんにどれだけ味方してるのかしら」

「……」

この華やかなだけの社交の場が、ますます偽りと欲ばかりに見えて、気分が悪くなる。

理沙は怖いのか、こちらを見ようとしなかった。

無理もない。

彼女は優子に言われるまま、私を「差し出す」ことで、ようやく明彦のそばに立つ資格を得たのだから。

きっと後ろめたいのだろう。

周囲のグラスの触れ合う音も、上辺だけの笑い声も、すべてが息苦しい。

こんな場所から離れるのも、悪くないかもしれない。

私は晴人に尋ねた。「高司さんは?コートを返したら、もう帰るつもりなの」

晴人は一瞬驚いて、言った。「もう帰るのか?」

「ここに来た目的は、それだけだから」

そう説明すると、晴人は会場をぐるりと見回し、言った。「澄江様の主催だから、彼女も忙しいだろう……じゃあ、先に休憩スペースで何か食べてて。俺が探してくる」

「うん」

私は頷いて休憩区へ向かった。

ここで話せる相手といえば、晴人と紗奈くらい。

なのに、招待状を受け取っていたはずの紗奈は、今になっても姿を見せない。

私はひとり、退屈しながら時間をつぶすしかなかった。

そのとき、少し離れた場所から女二人の会話が聞こえた。

ひとりは私の義母だった。「ねえ、明彦のそばにいたあの女、何者?見た目は普通よね。家は何してるの?」

明彦の母が答える。「ああ、あれね!あれはあざとい女よ。家は本当に何もなくて、うちの明彦に何年もまとわりついてるの。図々しくて、追い出しても戻ってくるのよ!」

義母は鼻で笑って、言った。「うちの嫁も同じよ。身
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