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第2話

Penulis: ちょうどいい
ウェディングプランニング会社を出たそのすぐあと、陽向から何の前触れもなくメッセージが届いた。

【美蘭は今夜八時半に駅に着く。早めに迎えに行っておいて】

喧嘩してから、陽向が初めて自分から連絡をよこした。

いつもの私なら、この小さなきっかけを見逃さず、すぐに機嫌を取って、彼の妹を迎えに駅まで走って行っただろう。

けれど今の私は、その文面を二秒ほど見つめただけで、車を走らせて去った。

夜、陽向の家に戻ると、床には脱ぎ散らした靴とスーツケース。

トイレの方から早瀬美蘭(はやせ みらん)が顔をのぞかせ、あからさまに白い目を向けてきた。

「高坂初音、どこ行ってたの?駅で散々待たされたんだけど。タクシーで帰らなきゃならなかったんだから。もし途中で何かあったら、お兄さんが許さないからね!

お腹すいた。デリバリー頼んで、早く!」

私は黙って美蘭を見つめる。視線は自然と足元へ落ちる。彼女が履いているのは、私が入学祝いに贈った五万円台のスニーカー。身に着けている服もそこそこのブランド物。

決して贅沢というほどではないが、少なくとも私よりはずっといい格好をしている。

私は彼女を実の妹のように扱ってきた。

なのに、まともな笑顔で接してもらったことはほとんどない。

何か買ってやれば、「お義姉さん」と甘える。

気に入らないことがあると、途端に「高坂初音」と呼び捨てになる。

そんな日々を、私は十年も黙って飲み込んできたのだ。

私は彼女の前でスマホを取り出し、陽向にメッセージを送る。

「あなたに食事代がないことは、もうあなたの兄に伝えてある。あっちは海外だし、時差もある。待てるなら待っていればいい」

美蘭は目を見開いて固まった。

私はそれ以上何も言わず、寝室に入った。

翌朝。

私は外のガタガタした音で目が覚める。

キッチンもリビングも、美蘭が散らかし放題。

トイレからあふれた水が床のタイルをびしょぬれにして、足の踏み場ももうない。

私が出ていくと、美蘭は悪びれもせず、洗剤の泡をわざと床に弾かせて挑発する。

私はその様子を黙って見ていた。止めもしない。以前のようにまじめにモップを手にして後始末することもせず、ただ黙って寝室へ戻り、残りの荷物をまとめる。

滑稽だ。ここは私の家でもないのに、なんで私が必死に片づけなきゃいけないの?

残りの荷物をまとめ終えると、私はスーツケースを引いて玄関へ向かう。

「どこ行くの?」

美蘭が私の前に立ちふさがる。

私は気のない返事をする。

「半月ほど出張。荷物を会社に運ぶだけ」

美蘭は唇を尖らせ、腕を組んでふんぞり返った。

「世の中にはね、海外で学術交流するエリートもいれば、徹夜で出張する社畜もいるの。どう違うか分かる?生まれつき、運が悪いのよ。

午後、友だちとごはん行くから、お金ちょうだい。くれないならお兄さんに言いつける。あなたにいじめられたって」

美蘭は、私が逆らえないと思い込んでいて、偉そうにまくしたてていた。

笑ってしまう。

私は十年、陽向の顔色をうかがって尽くしてきた。

彼のために、彼の家族にまで同じことをしてきた。

いざ私がそれをやめると、逆に彼らが慌て出す。

思わず吹き出し、私は彼女を上から下まで見て指さす。

「あなたの母親の治療費は私が立て替えた。あなたの兄の学費も私が払った。あなたの大学の費用も私が全部負担した。あなたたち三人、私の金で生きてるのよ。今着てるその服だって、私が買ったもの。

これから無礼を言う前に、自分がこれまでどれほど私の金に頼ってきたか、その分を返せる力があるのか、よく考えなさい」

美蘭は顔を真っ赤にして言葉を失い、部屋へ駆け込んだ。そして、バタンと勢いよく扉を閉めた。

新居で荷をほどき、ようやく腰を落ち着けたとき、スマホに新しい通知が届いた。

開いてみると、陽向の母の治療費支払いの案内だった。

病院から「支払い期限はあと五日」との通知が届き、口座に十分な残高を入金するよう促されていた。

陽向と付き合い始めてから、彼が働きながら学び、さらに寝たきりの母と幼い妹の世話までしているのを見ていられず、私はその負担を分け合うことにした。

人には誠実に向き合えば、きっと同じだけ返ってくる。私はそう信じていた。けれど、結局のところ、相手はただの恩知らずだ。

そう思った瞬間、もう迷いはなかった。

自動引き落としを停止し、口座の紐付けを解除する。

このお人好しの財布役、やりたい人がやればいい。私は、もう降りる。
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