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十年の愛、今宵にて散る
十年の愛、今宵にて散る
作者: あの頃の月を愛す

第1話

作者: あの頃の月を愛す
結婚式の前夜、睡眠薬の効き目が切れた頃、私、涼風澄玲(すずかぜ すみれ)は屋敷の主寝室に響き渡る大きな笑い声で目を覚ました。

目を開けると、私のオートクチュールのウェディングドレスが、御堂玲司(みどう れいじ)の幼馴染である清野夕乃(せいの ゆうの)によって、ハサミでズタズタに切り裂かれているところだった。

彼女はハサミを弄りながら、スマートフォンに向かってライブ配信を行い、面白おかしく茶化していた。

「何が名家の奥様よ。意識がなきゃ、好き勝手に弄ばれるただの人形も同然じゃない?」

傍らでは、玲司の友達たちも大声で囃し立てている。

「玲司さんが自分でミルクに睡眠薬を入れたんだからな。誰だって爆睡するに決まってる」

画面は名家に嫁ぐ哀れな女である私を嘲笑するコメントで埋め尽くされている。それなのに玲司はただ夕乃を甘やかすようにその頭を撫でるだけだった。

「これで気は済んだか?いい子だから配信は切れ。彼女が起きて騒ぎ出したら、明日の式が収拾つかなくなる」

友達たちが部屋を出て行った後、玲司はベッドのそばに腰を下ろし、私の掛け布団を直した。

「夕乃はうつ病で刺激に弱いんだ。この件は後で必ず埋め合わせる。

ドレスなら、プライベートジェットで予備のものを夜通しで空輸させている。実のところ、お前にはあのドレスが似合うよ。

俺に意地を張るな。俺の妻はこの先も永遠にお前だけだ」

玲司の低い声が寝室に響いた。

彼は布団越しに私の肩を軽く叩き、なだめようとしてきた。

私は目を閉じたまま呼吸を平穏に保ち、わずかな震えすら漏らさないようにした。

足音が次第に遠ざかる。

寝室のドアがカチャリと閉まると、部屋は静寂に包まれた。

目を開け、ベッドの縁越しに床の上の切れ端へと視線を落とした。

それは二年の歳月をかけ、私が直接国外へ飛んで決めたオートクチュールだった。この十年間育んできた恋への幻想がその一着にはすべて詰まっていた。

今、その切れ端が絨毯の上に踏みつけられている。

布団をめくってベッドから降り、裸足で床に立った。

ナイトテーブルの前に歩み寄ると、そこには一つのグラスが置かれ、底にはミルクの跡が残っていた。

二時間前、玲司はこのグラスを持って、私が飲み干すのを見届けていた。

「澄玲、最近は式の準備で疲れているだろう。温かいミルクでも飲んで、ゆっくり休むといい。明日は世界で一番綺麗な花嫁になるんだから」

あの時の彼の声はひどく愛情深かった。だからこそ、今グラスの底に残る睡眠薬の苦味がこれ以上なく皮肉に感じられた。

涙は出なかったし、目頭すら熱くならなかった。ただ胃のむかつきを感じるだけだった。

それは元々、マリッジブルーによる不眠を和らげるため、彼が自ら医者に頼んで処方してもらった薬だった。

しかし彼は私が無防備に深く眠っていることを、重度のうつ病を患う幼馴染のわがままを許す口実に使ったのだ。

夕乃が私をひどく憎んでいることを知っていながら、彼は夕乃が主寝室に足を踏み入れ、私のドレスを切り裂くのを放置した。

しゃがみ込み、その布の切れ端をかき集める。

そして少しの躊躇もなく、部屋の隅のゴミ箱に押し込んだ。

全てを終えると、私は枕元のスマートフォンを手に取り、メッセージアプリの連絡先を開いた。

指で下へスクロールし続け、三年間ブロックしていたアイコンで指を止めた。

表示名は「蓮夜」だった。

三年前、玲司は私のために婚約パーティーの準備に奔走し、連日の不眠不休がたたって胃出血を起こし、ICUに担ぎ込まれた。

私は病室の外で泣き崩れた。

そしてその日、私はずっと私を好きでいてくれ、私のためにその高貴な身分を捨てることさえ厭わなかった九条蓮夜(くじょう れんや)をブロックした。

命を懸けて私を愛してくれる玲司を裏切ることなんてできない。あの時は本気でそう信じていた。

今思えば、本当に荒唐無稽な笑い話だ。私はそのアイコンを長い間見つめていた。

突然、ドアの外から笑い声が聞こえてきた。

「玲司、さっきはひどいよ。あんな女のために私を怒鳴るなんて」ドアの隙間から、夕乃の甘ったるい声が入り込んできた。

「いい加減にしろ、夕乃。服の一着くらいなら好きにさせてやるが、澄玲の一線を越えようとするな。俺の妻の座は彼女だけのものだ」

「じゃあ、私、明日もまた騒ぎたいって言ったら?」

「言ったはずだ。彼女こそが俺の妻だ。次にあんな真似をしたら、たとえお前であろうと容赦はしない」

「ふん、あの女の淑女ぶった態度が気に食わないだけよ。私の玲司を奪ったんだから」

私は冷ややかに口角を吊り上げた。玲司の強欲な本性がここで完全に露呈している。

彼は私が必ず自分に嫁ぐという確信を盾に取り、私の尊厳を平気で踏みにじって、夕乃の理不尽な要求を満たしているのだ。

私はスマートフォンのブロック設定を開き、あのアイコンをリストから解除した。

トーク画面は、三年前の一言で止まったままだ。

蓮夜からの最後のメッセージ。【澄玲、君が振り向いてくれるなら、俺はずっとここにいる】

私はスマートフォンを伏せて机の上に置いた。

振り返ってバスルームへと向かい、シャワーの蛇口を捻った。頭上から降り注ぐ熱い湯に、ただ身を任せた。

肌に染み付いた玲司の香水の匂いを洗い流した。

明日は結婚式だ。玲司がどうしても両方を手に入れたいと望むなら、その願いを叶えてあげよう。

バスルームから出た後、私は清潔なパジャマに着替えた。

ドレッサーの前に座り、淡々とスキンケア用品を肌に馴染ませた。

鏡に映る私はひどく青ざめていたが、その瞳だけは冴え渡るように澄み切っていた。

再びドアが押し開かれ、玲司が白湯の入ったグラスを手に歩み寄ってきた。

私がドレッサーの前にいるのを見て、彼は明らかに一瞬戸惑い、無意識にウェディングドレスが置かれていたはずの部屋の隅へと目をやった。

そこには何もなく、ただゴミ箱の縁からわずかにレースの端が覗いているだけだ。

「澄玲、起きていたのか?」彼は足早に近づき、グラスを机の上に置いた。

「ええ、喉が渇いて」私はグラスを手に取り、静かに一口飲んだ。

玲司は背後から私の肩を抱きすくめ、首筋に顎を預けてきた。

「どうしてもう少し寝ていないんだ?さっき俺が入ってきたせいで起こしてしまったかな」

彼の声に滲む気遣いはひどく自然で、昨夜の睡眠薬も、あの馬鹿げたライブ配信も、まるで最初から存在しなかったかのようだ。

「ううん、よく眠れたわ」鏡越しの彼の顔を見つめながら、私は穏やかな声で答えた。

玲司は安堵したように息を吐き、私の頬に軽く唇を落とした。

「ウェディングドレスなら、海外からプライベートジェットで空輸させている。お前が以前、少し気にかけていたあのメインドレスだよ。

明日は大人しく俺の花嫁になってくれ。彼女のことで俺に腹を立てたりするなよ、いいな?」

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