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第19話

Author: 緋色の追憶
ある日、薄い色のシャツを着た、穏やかで品のある男性が、何冊もの本を抱えてその本屋にやって来た。

その男はどうやら深雪と知り合いらしかった。二人が言葉を交わすと、深雪は笑った。

その笑顔は明るく自然で、曇りがひとつもなかった。

男が帰り際、二人は週末に新しくオープンした美術展に一緒に行く約束をした。

春樹の魂はたちまち歪み、嫉妬と狂おしいほどの独占欲が、まるで毒蛇のように彼に絡みついた。

「あいつは誰だ!よくも!寧々は俺のものだ!俺の妻なんだ!」

彼は壁にぶつかろうとしたが、またしても無情に跳ね返された。

ただ深雪が笑みを浮かべ、その男を見送るのを、指をくわえて見ていることしかできなかった。

彼女の目には、久しぶりの、人と交わることの喜びが輝いていた。

それからの日々、その男が現れる頻度はますます高くなっていった。

彼の名は広瀬幸平(ひろせ こうへい)、フリーのイラストレーターで、本屋の常連でもあった。

彼は深雪の物静かさと、時折見せるセンスの良さに惹かれていた。

彼女が焼くお菓子を気に入り、本や絵の話を交わし、一緒に海を見に行ったり、スケッチに出かけたりした。

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