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第七話

ผู้เขียน: 麻木香豆
last update ปรับปรุงล่าสุด: 2025-11-02 03:21:33

「じつはさー、恋人から家追い出されちゃってさ。好きな人ができたから出ていけって。ありえないよねー」

 一護はそう言いながら、まるで自分の部屋のように手際よくゴミをまとめ、床に落ちた雑誌を拾っていく。

 話の内容は重いのに、口調は妙に軽やかで、冗談を言うようなトーンだった。

 寧人は机に向かいながら、パソコンの画面から目を離せずにいたが、耳はしっかりその言葉を拾っていた。

「恋人……そりゃ、かっこいいからモテるよな」

 寧人がぼそっと呟くと、一護は手を止めてこちらを振り返った。

「そう? かっこいいかなー。ありがとう。でもさ、ひどくない? あっという間に“出ていけ”って言われてさ。僕、仕事で忙しいのに、荷物勝手にまとめられてポイだよ? お店の一室に泊めてもらってるけど……家電とか全部取られちゃった。ほんと、泣けるよねー」

 笑いながら言っているが、その奥にはほんの少しの寂しさが滲んでいた。

 寧人は思わず手を止めてしまう。

「……ひどいやつだな。最低だよ、それは。ありえない」

「でしょでしょ? まぁでも今夜は、なんとかなりそう……助かるぅー!」

 一護はわざとらしく両手を合わせてお礼ポーズを取る。

 その人懐っこさに、寧人は完全には信用しきれないながらも、心のどこかで“この明るさは悪意じゃない”と思っていた。

 結局、寧人は「今夜だけな」と念を押して、一護を泊めることにした。

 荷物はリュック一つ。貴重品と最低限の着替えだけ。

 「今度、元恋人の家に乗り込んで荷物取り返してくる」なんて軽く言っていたが、きっとそれも強がりだろう。

 しかし、片付けの腕前は本物だった。

 床もテーブルもピカピカに磨かれ、流し台の水垢もきれいに落ちている。

 短時間でここまでやるのかと、寧人はただ感心するばかりだった。

「ふぅー。やりがいがあったなー」

 一護が伸びをすると、シャツの裾から覗く腹筋がチラリと見えた。

 寧人は慌てて視線を逸らす。

「……ジュースくらいしかなくて、ごめん。なにか出前取ろうか」

「んー、僕がなんか買ってくるよ」

 二人の視線がふと交差する。

 その瞬間、まるで示し合わせたように同時に口を開いた。

「麻婆丼!」

 思わず笑ってしまう。

 互いに苦笑しながら、息がぴたりと合ったことに気づく。

「ラジャー! では、お待ちくださいませ、お客様!」

 軽快な敬礼ポーズを取ると、一護はフードジャンゴのジャンバーを羽織り、キャップをかぶって颯爽と出ていった。

 その後ろ姿は、まるでモデルのようにすらりとしていて、思わず寧人の心臓が跳ねた。

(……あいつ、スタイルいいな。ロン毛なのに爽やかだし)

 ふと、自分の髪を触ってみる。

 伸びっぱなしで、パサパサ。指が引っかかる。

 頭皮を指で擦ってみると、なんとなく匂う気がして、情けなくなった。

「あいつとは、天と地の差だな……」

 そう呟きながら、寧人はシャワー室へ向かう。

 せっかく一護がきれいにしてくれた風呂場。湯気が柔らかく立ち上り、鏡がうっすら曇っている。

 服を脱ぎ、久しぶりに全裸で湯を浴びると、じわっと身体が温まっていく。

 だが、すぐに問題が発覚した。

「……シャンプー、切れてるのかよ」

 仕方なく、ボディソープで頭を洗う。

 泡立ちは悪いし、香りもいまいち。

 それでも「頭皮臭いのは嫌だ」と思いながら念入りに洗い流した。

 濡れた髪をタオルで包み、顔の髭を剃る。

 剃り終わった肌に指を滑らせると、なんだか少しだけ若返ったような気がした。

 ちょうどそのとき、玄関のチャイムが鳴った。

 一護が帰ってきたのだ。

「おかえ──」

 と声をかけた瞬間、寧人は自分の腰に巻いていたタオルがふっと緩んだのに気づいた。

 次の瞬間、タオルが床に落ちる。

「あ、ああああっ!」

 一護はとっさに両手で顔を覆う。

 寧人は慌てて荷物で前を隠し、そのまま台所に逃げ込んだ。

「ご、ごめん、見るつもりはなかった!」

 一護は苦笑いしながら言ったが、耳の先まで赤くなっている。

 寧人の方は、言葉にならない声を漏らしながら、慌てて下着を履いた。

 台所のカウンターには、麻婆丼の入った袋と、もう一つの紙袋。

 中にはハサミとコーム、そして新品のシャンプーとトリートメントの詰め合わせが入っていた。

「さっき掃除してたとき、なかったから買ってきたんだ。……あ、もう洗っちゃった? しかもボディソープででしょ?」

「な、なんでわかる……」

「そりゃ、髪の触り心地でわかるよ。あ、ドライヤーある?」

 一護はタオルを取って、優しく寧人の髪を包み込んだ。

 その手つきは驚くほど丁寧で、温かい。

 ドライヤーの風がふわりと頬を撫で、指が髪を梳くたびに、頭の中がぼんやりしていく。

(美容師の手って……こんなに優しいのか)

「んー、このまま切っちゃおうか。ご飯はそのあとでいい?」

「お、お腹すいた……」

「ちゃっちゃとやるから。はい、新聞紙敷いて、その椅子に座って!」

 言われるがまま、寧人は椅子を出して腰を下ろす。

 一護はハサミを持ち、軽く笑った。

「じゃあ、切りますね──お客様」

 その声が不思議と柔らかく響く。

 寧人の心臓が、どくりと鳴った。

「……お、お願いします……」

「かしこまりましたっ。お任せあれ!」

 軽やかな声とともに、ハサミの刃が“シャキン”と鳴る。

 寧人は目を閉じた。

 ――いつのまにか、その時間が心地よく感じていた。

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