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Ep14:林間学校の暗号(2日目の衝撃)

Author: ちばぢぃ
last update Last Updated: 2025-06-23 11:00:47

~2日目の朝と事件の発生~

林間学校2日目の朝、森の自然の家の空気は清々しく、紅葉に染まった森から鳥のさえずりが聞こえてきた。

星見小学校の5年生は、前夜のキャンプファイヤーの興奮が残る中、2日目の予定は自然体験学習とクラフト作りを楽しみにしていた。

「星見キッズ」も、宿舎の食堂で朝食のパンとスープを食べながら談笑していた。

「シュウ、今日のクラフト作り、楽しそうじゃない? 木工細工とか作ってみたい!」カナエがパンにバターを塗りながら笑顔で言った。

「うん、僕も楽しみだよ。自然の中で何か作るの、初めてかもしれない」

シュウはメガネをクイッと直し、ノートをカバンにしまった。

「俺、弓矢みたいなの作って、サッカーよりカッコいい遊びをしたいな」

ケンタがスープを飲んで元気よく言った。

「紅葉の葉で絵を描くの、いいアイデアかも。スケッチに活かせそう」

リナがスケッチブックを手に持って微笑んだ。

「Wi-Fiないけど、写真で記録しておこう。自然の家のデータ、面白いかもしれない」

タクミがタブレットをいじりながら呟いた。

その時、食堂のドアが勢いよく開き、クラスメイトの山口くんが青ざめた顔で飛び込んできた。

「大変だ! 大浴場で…! 田村が死んでる!」

部屋に一瞬静寂が広がり、シュウたちは立ち上がった。

「田村くんが…? 行くよ、みんな!」

シュウが先頭に立ち、大浴場へ急いだ。

カナエが後ろで震えながら言った。

「シュウ、こんな朝に何が…?」

大浴場に着くと、朝の清掃のために湯気を抜いたばかりの空間に、田村悠斗(ゆうと)くんが全裸のまま浴槽の隅に横たわっていた。

首には赤い絞め跡があり、目は見開かれたままだった。

血は流れていなかったが、明らかに命を落としている。

シュウは冷静に状況を確認した。

「首に絞められた痕がある…。殺人事件だ」

「田村くん、昨日まで一緒に笑ってたのに…」

リナがスケッチブックを握りしめ、涙声で呟いた。

「まずは先生を呼ぼう。タクミ、写真を撮って。リナ、状況をスケッチして」

シュウが指示を出し、ケンタが田中先生を呼びに行った。

田中先生と自然の家のスタッフが駆けつけ、すぐに警察に連絡した。

「みんな、ホールに戻って! 警察が来るまで近づくな!」

田中先生が慌てて言った。

大浴場は封鎖され、子供たちは宿舎のホールに集められた。

シュウたちは田村くんの遺体が運ばれるのを遠くから見つめ、信じられない気持ちでいっぱいだった。

「シュウ、犯人は誰なんだろう…? この中にいるの?」

ケンタが不安そうに尋ねた。

「分からないけど、大浴場は男の子しか入れない。犯人は同級生かスタッフの誰かだ。状況を整理しよう」

シュウがノートを開き、メモを取り始めた。

「2日目の朝6時頃、発見。昨夜9時から自由時間で、田村くんは入浴中だった可能性が高い」

~現場検証と最初の疑問~

警察が到着するまでの間、シュウたちは田中先生の許可を得て大浴場の周辺を軽く調べることができた。

湯気は消え、冷たいタイルの床に田村くんの足跡が残っていた。

シュウが懐中電灯で照らすと、浴槽の隅に小さな水たまりと、タオルの切れ端が見つかった。

「この水たまり、湯船の水とは違う。薄くて透明だ。どこかで水をかけた痕跡かも」

シュウが膝をついて調べた。

「タオルが破れてるね…。田村くんが抵抗した証拠かな?」

リナがスケッチブックに状況を書き込んだ。

「うん、でも絞め跡だけじゃなく、体に打撲痕がないのが不思議だ。抵抗すれば傷がつくはず」

シュウが首をかしげた。

ケンタが浴槽の縁を叩きながら言った。

「シュウ、湯船の水、変じゃない? 少し白っぽい気がする」

「白っぽい…? タクミ、水を分析できる?」

シュウが目を細めた。

タクミがタブレットの簡易センサーで水を調べ、結果を表示した。

「驚いた! 塩素濃度が高い。消毒液が混ざってるみたいだ」

「消毒液? なぜ湯船に?」

カナエが目を丸くした。

「犯人が証拠を消そうとしたのかも。血やDNAを隠すために、消毒液を入れた可能性がある」

シュウがノートに書き込んだ。

しかし、消毒液が混ざっただけでは絞め跡が消えない。

シュウはさらに現場を観察し、浴槽の排水口に何か引っかかっているのに気づいた。

手を伸ばすと、小さなプラスチックの破片が出てきた。

「これは…注射器の先っぽだ。消毒液を入れた証拠かもしれない」

「注射器? 誰かが水を汚したってこと?」

ケンタが驚いた。

「うん、でもこれだけじゃトリックが分からない。もっと手がかりが必要だ」

シュウが破片をビニール袋に入れた。

巧妙なトリックの探求警察が現場検証を始めると、シュウたちはホールの片隅で作戦を立てた。

窓の外からは朝日が差し込み、紅葉の森が静かに佇んでいた。シュウはノートを広げ、推理を始めた。

「田村くんは絞められて死んだ。でも、抵抗の痕跡が少ない。消毒液や注射器が絡むなら、犯人は計画的だ」

「計画的…。でも、なぜ大浴場で? 見られるリスクが高いよね」

カナエが首をかしげた。

「そこがポイントだ。犯人は見られにくいタイミングを選んだ。昨夜9時から自由時間で、男の子は入浴か部屋に戻る時間帯だった」

シュウが考え込んだ。

タクミがタブレットで時間割を確認した。

「9時から10時頃は、キャンプファイヤー後の自由時間。浴場にいたのは田村くんと数人だけ。山口くんが証言してたけど、詳しく聞こう」

山口くんに再び話を聞くと、彼は緊張した声で言った。

「9時頃、僕と田村くんが一緒に入った。ほかに2、3人いたけど、すぐ出てった。田村くんが一人になった時、誰かが入ってきたみたいで…その後、朝になって発見された」

「誰かが入ってきた…。顔は見えた?」

シュウが冷静に尋ねた。

「暗くて分からなかった。背が高くて、黒い服着てた気がする」

山口くんが震えながら答えた。

「黒い服…。トリックがまだ分からない。絞め跡だけじゃなく、なぜ抵抗が少ないのか」

シュウがノートを叩いた。

~ヒントの収集~

午後、警察の検証が一段落した後、シュウたちは自然の家の周辺を調べる許可を得た。

森の中を歩きながら、ケンタが木の枝を拾って言った。

「シュウ、森に手がかりあるかな?」

「分からないけど、犯人が逃げた可能性がある。足跡とか落ちてないか見てみよう」

シュウが懐中電灯で地面を照らした。

宿舎の裏手に小さな足跡と、プラスチックの破片がもう一つ見つかった。

シュウが拾い上げて言った。

「これも注射器の一部だ。犯人が消毒液を捨てた跡かも」

「2つも注射器? 計画的な犯行だね…」

カナエが不安そうに言った。

タクミがタブレットで分析した。

「この破片、医療用の注射器だ。自然の家にない種類だよ。誰かが持ち込んだ可能性が高い」

「持ち込んだ…。犯人は準備を重ねてたんだ。トリックは消毒液だけじゃない気がする」

シュウが考え込んだ。

リナがスケッチブックを広げて言った。

「シュウ、浴場のスケッチをもう一度見て。湯船の水面が変なんだ。波紋が不自然に残ってる」

「波紋? タクミ、水の動きを再現できる?」

シュウが目を輝かせた。

タクミがタブレットでシミュレーションを試み、言った。

「水面の波紋、普通の入浴じゃこうならない。何か重いものが沈んだか、引き上げられた痕跡だ」

「重いもの…。田村くんを沈めた?」

ケンタが驚いた。

「いや、沈めただけじゃ絞め跡が説明できない。引き上げられたなら…犯人が体を動かした可能性がある」

シュウがノートに書き込んだ。

トリックの仮説と次の手がかり夜、宿舎の部屋で星見キッズは再び会議を開いた。

窓の外からは星が輝き、森の静寂が部屋を包んだ。

シュウはホワイトボードに状況を書き、推理をまとめた。

「仮説を立てるよ。犯人は田村くんを絞めて殺し、証拠を隠すために消毒液を入れた。注射器で水を汚し、DNAを消した。でも、抵抗が少ないのはなぜ?」

「麻酔を使ったとか?」

カナエが提案した。

「あり得る。注射器が2つ見つかったのは、麻酔と消毒液の両方を使った証拠かもしれない。だが、麻酔をどこで手に入れた?」

シュウが首をかしげた。

「自然の家に医務室があるよ。麻酔薬が置いてある可能性はある」

タクミがタブレットで調べた。

「よし、明日医務室を調べよう。トリックは麻酔で抵抗をなくし、絞めて殺し、消毒液で証拠を消したって線だ。でも、なぜ大浴場で? 見られにくい時間を選んだのは分かるけど…」

シュウが考えを深めた。

リナがスケッチブックを見せながら言った。

「浴場の換気口、気づいた? 少し開いてた。誰かが外から見張ってたかも」

「換気口…。犯人が逃げ道か監視に使った可能性がある。タクミ、換気口の外を確認できる?」

シュウが目を細めた。

「うん、明日の朝、カメラでチェックするよ」

タクミが頷いた。

~夜の決意~

月明かりが窓から差し込み、部屋に静寂が訪れた。

シュウはノートを閉じ、仲間たちを見回した。

「トリックは麻酔と消毒液が鍵だ。3日目に医務室と換気口を調べ、証拠を固める。田村くんのためにも、絶対に真相に近づこう」

「シュウ、怖いけど…一緒に頑張ろう」

カナエが手を握った。

「うん、星見キッズならできる。明日、真相に一歩近づこう」

リナがスケッチブックを閉じた。

「俺、力になるよ! 田村くんのことを忘れない」

ケンタが拳を握った。

「データでサポートする。トリックを解くよ」

タクミがタブレットを手に持った。

シュウは月を見上げ、決意を新たにした。

巧妙なトリックが隠された事件は、星見キッズの知恵と勇気を試すものだった。

3日目、さらなる手がかりが明らかになることを信じて、彼らは眠りについた。

(Ep14 完)

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