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7話「マウント×マウント」

Author: 団紡るう
last update publish date: 2026-09-15 07:00:00

 地下の部屋で在庫の数を数えていると、イヤホンの向こうでジョフィが妙な声を出した。

「ちょっと伊依、面白いもの見つけた」

「何」

「非常階段の踊り場のカメラ、ハッキングして見てたんだけどさ。秀一と沙織、なんか喧嘩してる」

 伊依は段ボールを数える手を止めなかった。

「私に関係ある?」

「ちょっと待って、今映すから」

 スマホの画面に、粗い画質の映像が浮かぶ。踊り場の隅、秀一と沙織が向かい合って何やら言い合っていた。音声はない。だがジョフィが読唇のアルゴリズムを走らせているのか、字幕のようなテキストが下に流れ始めた。

「なんで愛美あいみちゃんにあんな優しくすんの」

 沙織の口の動きから、そう読み取られた文字が並ぶ。愛美というのは、伊依の後に派遣で入ってきた女性社員の名前だった。

「別に優しくしてねぇよ。普通にしてるだけだろ」

 秀一の口が動く。伊依はその映像を見ながら、ため息をついた。

「なにこれ」

「面白いでしょ。三角関係っぽい」

「興
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     深夜、伊依のスマホに国際便のメール通知が届いた。差出人はドバイの法律事務所、Angelusへの問い合わせを代理で扱っている窓口だった。 「ジョフィ、これ何」 「開けてみて」  伊依は画面をタップした。本文は英語で書かれていたが、依頼主の名前は伏せられている。代理人を通しての問い合わせだった。 「クライアントは、御ブランドのシルバーコレクションに強い関心を持っています。ただし、ニッケルおよび一般的な合金への重度のアレルギーがあり、既存の宝飾ブランドでは対応が難しいとのことです」  続く文章には、詳細な医療情報が添えられていた。金属アレルギーの検査結果、反応する成分のリスト。伊依はその内容を読みながら、少しずつ表情を変えていった。 「これ、結構重いアレルギーだね」 「うん。ニッケルだけじゃなくて、真鍮も銅も反応するみたい。ほとんどの宝飾品、着けられないんじゃないかな」  伊依は資料を最後まで読み終え、椅子にもたれた。窓のない部屋の空気が、いつもより重く感じられた。 「うちの純銀、この人でも大丈夫?」 「伊依が使ってる純度、九九・九パーセントの銀だから、理論上は反応しにくいはず。でも念のため、代理人に確認取った方がいいかも」 「取って」  数時間後、返信が届いた。過去に一度だけ、純度の高い銀製品を試したことがあり、その時は反応が出なかったという。だが、それ以来、好みのデザインのものを見つけられず、諦めていたという内容だった。 「好きなデザインを、諦めていた」  伊依はその一文を、何度か読み返した。誰かに何かを諦めさせる。伊依自身、身体の傷のせいで、多くのものを諦めてきた。恋人も、普通の生活も、人に肌を見せることも。だからこそ、この依頼主の言葉が、他人事とは思えなかった。     「デザイン、任せてもらえるって」  ジョフィが続けて伝えてきた。 「参考画像は特に指定なし。クライアントの好みとして、翼や鳥のモチーフが好きらしい。あと、色は控えめなものを希望」  伊依はタブレットを手に取り、白紙のキャンバスを開いた。翼、鳥。そこから連想を広げてい

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