로그인終わった。私の人生のエンドロールが、脳内で高速再生されている。
築30年のボロアパートの玄関。そこに立っていたのは、この世で最も出会ってはいけない2人組だった。
1人は派手なオレンジ髪の青年、遊馬ハルくん。バラエティ番組で見せる無邪気な笑顔だが、その手にはしっかりとスマホが握られている。いつでも証拠写真を撮れる構えだ。
もう1人。こちらが問題だ。完璧な仕立てのスーツを着こなした、銀縁眼鏡の美青年。国民的アイドルグループ『Noix(ノア)』のリーダー、葛城セナ。彼は穏やかな笑みを浮かべていた。唇の端は優雅に上がり、非の打ち所のない「アイドルの笑顔」だ。
けれど眼鏡の奥にある瞳だけが、笑っていない。そこにあるのは感情の一切を排除した、絶対零度の冷たい光だった。獲物を追い詰めた捕食者のような、あるいは害虫を駆除しようとする業者のような、底知れない冷たさが私を射抜いている。
そんな2人を前に「俺の女」宣言をされて、私の人生は完全に終わった。
ああ、これからどうなるのだろう。 腹黒ドS策士(※ファンの間の解釈です)と名高いセナさんになぶり殺しにされるのだろうか。 それとも無邪気なハルくんに、写真を撮られて公開処刑されるのだろうか。 どっちみち終わった。と。
私の前に立つレンくんの背中から、殺気めいたものが立ち上る。 ちらりと見えた横顔は、愛する者を守ろうとする雄の顔だった。――かっこいい。
語彙力が死滅するほどかっこいい。
それでも私の乏しい言葉で表現するのなら。すっと伸びた背筋と、陶器のように滑らかな横顔。長い睫毛の下から覗くアイスブルーの瞳は宝石のように美しく、見る者の心臓を凍らせるほど冷酷な光をたたえて2人を見下ろしていた。
呼吸をするのと同じように周囲を支配する、圧倒的なオーラ。それはまさに、テレビの向こうで数万人の観衆を熱狂させ、ひれ伏させてきた「氷の絶対王者」の姿そのものだった。
あまりに美しく神々しいまでの威圧感。彼になら守られてもいい、いや、むしろ支配されたいと思わせるほどのカリスマ性――の
ペントハウスで国宝級イケメン3人と暮らす、夢のような――いや、戦場のような生活にも少し慣れてきた頃。 私には広くて豪華な客室が与えられている。 ふかふかのダブルサイズベッド、広々としたウォークインクローゼット、専用のバスルーム付き。 至れり尽くせりの環境だが、私は毎晩、深刻な顔でドアノブを見つめるのが日課になっていた。 夜、寝る前。「……鍵、かけたよね?」 ガチャリ。金属音を確認し、さらにチェーンロックをかける。 ここは男3人と女1人のシェアハウスだ。しかも相手は距離感のバグったアイドルたち。私はただのスタッフで、いわば寮母さんみたいな立場である。仕事が終わればただの一個人だ。 レンくんとは……もしかしたら、恋人未満くらいの関係と言えるかもしれないけれど。いややっぱり言えないかもしれない。 とにかくプライベートという聖域は、何としても死守しなければならないのだ。「よし。これで誰も入れない」 明日も早くから朝食を作らねばならない。 私は安心してベッドに潜り込んだ。◇ 22時。うとうとし始めた頃、ドアノブがガチャガチャと回る音がした。当然、鍵がかかっているから開かない。(ふふん、残念でした。もう営業時間外ですよ) 私が勝ち誇った気分で布団をかぶり直した時。カチャカチャという何かが擦れる音がして、コトン。解錠される音が響いた。「え?」 私の思考が追いつく前にドアが開く。オレンジ色の頭が入ってきた。「おーい紬ちゃん、高級アイスあるけど食う?」「なんで開くんですか!?」 私は飛び起きて叫んだ。ハルくんは悪びれもなく、片手にアイス、片手に細いヘアピンを持っている。「え? 鍵かかってたから、リビングにあったヘアピンでちょいちょいってやったら開いた。俺、手先器用だからさ」「器用の使い方が間違ってます! 不法侵入です!」「固いこと言うなってー。
「んん~ッ!!」 テーブルをバンバンと叩く。「やばい! 下手な店よりよっぽど旨い。肉汁で溺れる! ご飯が進みすぎて怖い!」 猛獣のような食欲で、ガーリックライスと共にハンバーグをお腹に収めていく。「……これは確かに、抗いがたい暴力的な味ですね」 セナさんも、「ジャンクフードは敵」と言いたげな顔をしつつ、ナイフとフォークが止まらないようだった。 あらかた食べ終えて満腹になったハルくんが、うっとりとした目で私を見上げた。「あー幸せ……。胃袋掴まれるってこういうことかぁ」 彼は頬杖をつき、とろけるような笑顔を向けた。「ねえ紬ちゃん、俺のお嫁さんになってよ」「……はい?」 あまりに唐突な言葉に私がきょとんとしていると、ハルくんは悪びれもせずに続けた。「毎日こういうの食わせてくれるなら、俺、浮気しない自信あるよ? 一生大事にする」 軽いノリだ。いつもの冗談だろう。けれどキラキラした瞳の奥は、妙に据わっているように見えた。 ガタンッ!! 乾いた音が響いた。レンくんが勢いよく椅子を蹴って立ち上がっていた。「……てめぇ」 レンくんがハルくんのTシャツ(食事前にようやく着た)の胸ぐらを掴み上げる。「冗談でも殺すぞ」 アイスブルーの瞳孔が開いている。本気で殺気立っていた。 ハルくんはケラケラと笑い、両手を挙げて降参のポーズをする。「冗談だよ、怖いなー。……ま、レンくんがボサっとしてたら、本当に奪っちゃうけどね?」「……ッ!」 一触即発。ハルくん特有の食えない笑顔は単なる挑発なのか、それとも本音が混じっているのか。「やめなさい、2人とも」 セナさんが冷静に仲裁に入り、その場はどうにか収まった。◇
「ぶべっ!?」「……近い。離れろ、オレンジ頭」 リビングの入り口に、不機嫌オーラを纏ったレンくんが立っていた。寝起きなのか髪は少し跳ねているが、その瞳は零度以下に冷え切っている。「朝から暑苦しいんだよ。服を着ろ」「痛ってぇ……。レンくん嫉妬? 俺と紬ちゃんのナイスコンビネーションが羨ましい?」「殺すぞ」 レンくんの口調は冗談に聞こえない。殺気がこもっている。◇ その時のこと。『グゥゥゥゥゥ~~~~ッ!!』 地響きのような音がハルくんのお腹から鳴り響いた。「あー、腹減った! ボス倒したらエネルギー切れた!」 ハルくんが大の字になって床に転がる。「ジャンクなのが食いたい。ピザ、コーラ、油! カロリーの塊をよこせ!」「……君は本当に欲望に忠実ですね」 書斎から出てきたセナさんが、散らかったお菓子の袋を見て眉をひそめた。「少しは野菜も摂取しなさい。肌が荒れますよ」「うるせー! 今日はオフだ。俺はジャンクフードの海で溺れたいんだ!」 駄々っ子のように手足をバタつかせる、オレンジ色の猛獣。私は苦笑してエプロンの紐を締め直した。「ピザの出前は時間がかかりますよ。どうせなら、特製ハンバーグにしませんか? とびきりジャンクで、栄養もあるやつ」 ハルくんがガバッと起き上がった。「乗った。チーズ入れて! 致死量くらい入れて!」◇ 30分後になると、キッチンからは、食欲を刺激する暴力的な香りが漂っていた。 私は合い挽き肉を粘りが出るまでこねる。その中心にこれでもかというほどチーズを詰め込んだ。 フライパンで表面をカリッと焼き固めて、肉汁を閉じ込める。そこへ赤ワイン、ケチャップ、中濃ソースを合わせた特製デミグラスソースを投入し、蓋をしてじっくりと煮込む。
Noix(ノア)の休日は静けさや穏やかさとは無縁だった。 私が掃除機をかけようと、広いリビングのドアを開けた時だ。目の前に広がっていたのは、高級ペントハウスにあるまじき光景だった。「うおおおお! 死ぬ! そこ右! 右だってば!」 100インチはある巨大モニターの前で、あぐらをかいて絶叫している男がいる。遊馬ハルくんだ。 周囲にはスナック菓子の袋と、飲みかけのコーラの缶が散乱している。そして何より問題なのは――。「……ハルくん」 私は掃除機のスイッチを切らずに、彼の背後に立った。「服を着てください。そして掃除の邪魔です」 彼はパンツ一丁だった。それも派手な柄のボクサーパンツ一枚。鍛え上げられた背中の筋肉が露わになっているが、今の彼からはアイドルのオーラなど微塵も感じられない。完全に「休日のダメ親父」である。 これだけの引き締まった肉体美とS級の顔面があって、どうしてここまでダメになれるのか。逆に不思議だ。「んあー? 今いいとこ! ラスボス戦! 紬ちゃん、ちょっとどいて!」 彼は私の声をスルーした。コントローラーをガチャガチャと操作し続けている。私はため息をつき、彼を避けて掃除機をかけ始めた。我ながら賢いロボット掃除機のような動きである。「あーもう! こいつ強すぎ! 回復が間に合わない!」 ハルくんが頭を抱えて叫んだ。次の瞬間、私の足首がガシッと掴まれる。「わっ!?」「紬ちゃん、ここ座って。緊急協力プレイ!」 強引に腕を引かれて、私は彼の隣に座らされた。問答無用でサブのコントローラーを握らされる。「え、私ゲームなんて……」「いいから! 普段はマネージャー補佐の斉藤くんに付き合ってもらうんだけどさ。彼、今は用事でいないから。ほら、この緑のボタン連打して! 俺が攻撃する隙を作るんだ!」 ハルくんは画面に食い入るように前傾姿勢になりながら、私の肩にぐいっと体重をかけてきた。近い。汗ばんだ肌の熱気が伝わってくる距離だ。彼は熱中すると、パーソナルスペースという概念が消滅するらしい。
セナさんはしばらく無言で食べ続けた。私は少し離れたところで見守る。「……僕は、完璧でなければならない」 雑炊を啜りながら、セナさんがポツリと漏らした。「僕が止まれば、Noixも、事務所の社員も路頭に迷う。……だから休むのが怖いんです」「魔王」としての鎧の内側にある、思い詰めたような責任感だった。彼はこの若さで、あまりにも多くのものを背負いすぎている。 トップアイドルとしての役割だけでも大変だろうに。マネジメントも事務所の指揮もしているのだ。 私は、彼の背中にそっと手を置いた。触れるか触れないかの距離で。「機械じゃないんですから。人間は、食べて、寝ないと壊れます」「…………」「壊れたら、レンくんやハルくんが悲しみますよ」 セナさんはレンゲを止め、ふっと小さく息を吐いた。「君は生意気な管理官ですね」 ◇ 完食して数分後。満腹感と温かさに誘われ、強烈な睡魔に襲われたらしいセナさんは、ソファに沈み込むようにして寝落ちてしまった。規則正しい寝息が聞こえる。泥のように深い眠りだ。 私がタオルケットを掛けようとした時、背後から気配がした。「……紬、なにセナの寝顔見てんだよ」 不機嫌そうな声。レンくんだ。私の気配がないことに気づいて起きてきたらしい。「シッ。やっと寝れたみたいだから、静かに」「ちぇっ」 レンくんは不満そうに首を振ったが、無防備に口を開けて眠るセナさんを見て、呆れたように溜息をついた。「こいつがこんなバカみたいな顔して寝るの、久しぶりに見た」 レンくんは私からタオルケットを受け取ると、それを放り投げ、代わりにセナさんの体を軽々と持ち上げた。 セナさんは細身とはいえ上背のある成人男性だ。それをあんなに軽く抱き上げるとは。「運んでやるよ。ここで寝ると体が痛くなるからな」「レンくん、優しい」「うるさい。今回だけだ」 文句を言いながらも、レン
「それ、人参が3本分入ってます」「…………なっ」 セナさんが目を見開き、フリーズした。 バターでじっくり炒めて人参特有の青臭さを消し、ブイヨンで煮込んでからミキサーにかけ、たっぷりの牛乳と生クリームで伸ばした特製ポタージュだ。人参の甘みと旨味をしっかり引き出した自信がある。「ぶはっ! セナくんチョロい! 気付かずに完食してる!」「紬の勝ちだな」 ハルくんとレンくんが腹を抱えて笑っている。セナさんは悔しそうに口元を拭ったが、その表情はどこか満足げだった。「一本取られましたね。認めましょう、君の勝利です」 ◇ 深夜2時。喉の渇きを覚えて私が部屋を出ると、暗いリビングの方から微かな光が漏れていた。 そっと覗くと、ソファにセナさんが座っていた。膝の上にノートPCを広げ、鬼気迫る表情でキーボードを叩いている。 モニターのブルーライトに照らされた横顔は、昼間の覇気が嘘のように青白く、疲れ切っていた。「……セナさん? 寝ないんですか?」 声をかけると、彼はビクリと肩を震わせ、バタンとPCを閉じた。「紬さんか。いえ、少しトラブルがありまして。それに、寝ている時間は生産性がゼロです」 強がっているが、声がかすれている。目の下には濃いクマがあり、コーヒーカップを持つ指先が少し震えていた。カフェインの摂りすぎだ。「生産性ゼロでも、メンテナンスは必要です」 私は彼を無視してキッチンに立った。 土鍋に残っていた冷やご飯を取り出し、小鍋に移す。カツオと昆布の合わせ出汁を温め、ご飯をことこと煮込む。味付けは薄口醤油と塩のみ。最後に溶き卵を回し入れ、蓋をして蒸らすこと1分。仕上げに、体を温めるおろし生姜と、青ネギを散らした。「はい、夜食です。消化にいいので胃もたれしませんよ」 湯気を立てる卵雑炊を差し出すと、セナさんは眉をひそめた。「僕は夜21時以降、固形物を摂らない主義なんですが」 抗議しようとした瞬間、出汁の優しい香りに反応して、彼







