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壊しに行ったパーティーの主役は俺だった
壊しに行ったパーティーの主役は俺だった
Autor: 黒紅嵐柏

第1話

Autor: 黒紅嵐柏
ある日、母の手違いで「幸せな家族」っていうライングループに招待されちゃった。

グループのメンバーは三人だけ。母と父、それから「いつき」っていう名前の見知らぬ男の子。

両親はその子の誕生日パーティーの準備ですごく盛り上がってた。でも本当は、明日は俺の誕生日なんだ。もう10年も、ずっと忘れられてる日。

母は言った。【会場はとびきり華やかにして、彼を本当の王子様にしてあげるの】

【お金はいくらでも出すよ。ただ、竜也(たつや)には知られないようにね。うるさいから】父も言った。

俺は黙ってそのやり取りをスクショした。いつか、全部ぶちまけてやろうって思った。

その時、優等生の妹・千葉千佳(ちば ちか)から個人メッセージが届いた。送られてきたのは、母とのやり取りのスクショだった。

【母さん、お兄ちゃんのサプライズ誕生日パーティー、準備はもう終わった?お兄ちゃんを騙すのはこれが最後だって、私と約束したよね】

千佳が送ってきたスクショを見て、俺の心は完全に冷え切ってしまった。

サプライズ、だって?

俺を騙すのが、これが最後?

そうだよな。毎年の誕生日、両親はいつも適当な言い訳で俺をはぐらかしてきた。

「竜也、ごめんね、お母さんの会社で急用ができちゃって」

「竜也、お父さんは仕事の付き合いがあるから、何か出前でも頼んでおいてくれ」

それが今年はたいしたもんだ。ごまかすどころか、息子をすり替えるとはね。

俺はスマホを放り投げた。胸に何かが詰まったみたいに苦しかった。

また千佳からメッセージが来た。【お兄ちゃん、考えすぎないで。お父さんたちは……】

俺はただ【わかった】とだけ返した。

考えすぎ?

これ以上、何を考えろって言うんだ?

事実はもう目の前にある。あの「いつき」の誕生日パーティーこそ、彼らが俺を騙すための「サプライズ」だったんだ。

実の息子の俺は、あかの他人の男の子の幸せを引き立てるための、ただの引き立て役でしかないってことか。

リビングから、母が声を潜めて電話する声が聞こえてきた。

「ええ、青い風船がいいわ。一番大きくて、キラキラしてるものでお願い。

樹くんは青が一番好きだから。あの子が喜ぶようにしてあげてね」

樹。

なるほど、あの男の子の名前は武田樹(たけだ いつき)か。

俺はスマホを手に取り、SNSでその名前を検索してみた。

すぐに、洗練されたアイコンの男の子のアカウントが見つかった。タイムラインには、世界中を旅行している綺麗な写真がずらりと並んでいた。

最新の投稿は、中年の夫婦とのスリーショットだった。背景は、うちのリビングだ。

その二人こそが、俺の両親だった。

写真の中の両親は、慈愛に満ちた顔で笑っていた。母は親しげに樹の肩に手を回し、父はその隣で、彼を溺愛するような眼差しを向けている。

二人とも、俺には一度も見せたことのない表情をしていた。

写真には、【おじさん、おばさん、ありがとうございます。明日のパーティー、楽しみにしています!】というコメントが添えられていた。

その下に母が、【バカね、私たちに遠慮なんていらないのよ】とコメントしていた。

父は、「いいね」を押していた。

ふん、「家族」か。

俺はその写真を保存し、グループチャットのスクショと一緒に、鍵付きのフォルダにしまった。

これこそ、彼らに贈る明日の「サプライズ」プレゼントだ。

夕食の時、母は作ったスープを、やけに丁寧によそってくれた。

「竜也、ほら食べて。あなたのために特別に作ったんだから」

俺は目の前のスープを見つめた。喉が詰まって、吐き気がこみ上げてくる。

「樹くんの誕生日パーティーを盛り上げるため?」

俺は、わざと軽く尋ねた。

母の顔から笑顔が消え、こわばった。

彼女が父に視線を送ると、父はすぐさま顔を曇らせて言った。「何を馬鹿なことを言ってるんだ!樹くんって誰のことだ?」

「へぇ?父さんは忙しいから、都合の悪いことはすぐ忘れちゃうんだね」

俺はスマホを取り出し、あのスリーショットの写真を見せた。

「この子こそ、あなたたちの『大切な子』なんだろ?」

父の顔は、みるみるうちに真っ青になった。

母が慌ててとりなした。「竜也、誤解よ。この子はお母さんの大事な取引先の息子で、誕生日のお手伝いをしてるだけなの」

「取引先の息子?」

俺は鼻で笑った。「ライングループまで作って、大金を送るほど大事な?

実の息子の俺の誕生日は放っておくほど、大事なわけだ?」

一瞬にして、リビングは静まり返り、息遣いだけが聞こえた。

千佳が部屋から飛び出してきて、俺の腕を掴んだ。「お兄ちゃん、もうやめて!」

俺は彼女の手を振り払った。「なんだよ、お前も母さん達の味方して、俺を騙すつもりか?」

千佳は顔を青くして、唇を震わせた。でも、何も言えなかった。

そして翌日、俺の誕生日。家には誰もいなかった。

テーブルの上には5000円札と、母の字で書かれたメモが置かれていた。【竜也へ。お金はテーブルに置いとくから、何か美味しいものでも食べて】
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