Partager

第三話

Auteur: 百瀬 三月
last update Date de publication: 2026-06-10 10:46:56

「今日、隣のクラスのさっちゃん、休みらしいよ」

「噂の『夢』のせいで……」

「ちょっとやめなよ、転校生くんもいるんだし」

「そんな気軽に夢の話題出さないでよね」

その話題が聞こえた一瞬、教室の空気が乾いた気がした。

その渇きはすぐに元通りになる。

窓側の席に座りながら、窓の外を見る。

しかし、目前の桜並木には興味が行かない。

耳にだけ、意識が持っていかれている。

盗み聞きのようであまり良くない気もするが。

先の反応といい、どう考えてもただの都市伝説では片付けられない何かがある。

ダメ元で、隣に座ってスマホをいじっている男子生徒に声をかけてみた。

「なあ、突然悪いんだけど……この町の『夢』って、何かわかる?」

男子生徒はスマホから顔を上げ、面倒くさそうな表情を浮かべた。

「あんた、転校生だろ」

「ごめん、その質問には答えられない。他を当たってくれ」

「…って言っても、誰も答えてくれないと思うけど」

予想通り、はぐらかされた。

男子生徒はすぐに視線をスマホに戻し、それ以上話す気はないようだった。

諦めて自分の席に戻って数秒後、担任らしき男性教師が教室に入ってきた。

三十代半ばくらいの、穏やかそうな印象の男性だ。

教壇の前まで歩くと、ファイルのようなものを置いた。

「はい、週番の人、号令かけて」

「起立」「礼」「着席」

号令が終わると黒板の前に立ち、にこやかに自己紹介を始めた。

「私がこのクラスを一年間担任する木俵(きだわら)です」

「担当教科は数学ね。よろしくな」

「今日の日程だけど、始業式が体育館で行われた後、即下校になります」

「下校が早いからってハメを外しすぎないようにね」

「あ、それと…」

木俵(きだわら)がこちらに向けて手招きをしてきた。

それに釣られるように、教壇の前へと出る。

「この春から、転入生が来ました」

「自己紹介、お願いね」

少し挙動不審になりながらも、簡単な自己紹介を始めた。

「東京から越してきました。枝先(えださき)黎慈(れいじ)です」

「仲良くしてくれると、嬉しいなって思います」

当たり障りのない自己紹介を済まし、自分の席へと戻る。

拍手が教室内に響くが、本心でやっている者はいないだろう。

田舎とは、そういうところだ。

短いホームルームはあっという間に終わり、クラスメイトたちがざわつき始めた。

まだこのクラスに自分の居場所を見つけられず、少し居心地の悪さを感じていた。

始業式が始まる前に、せめて亮(りょう)のクラスに顔を出してみようかと席を立つ。

教室を出て廊下を歩いていると、突然後ろから声をかけられた。

「君、転校生だろ」

「ちょっとこっち来て」

振り返ると、身長が高めで制服を少し着崩した男子生徒が立っていた。

近寄りがたい雰囲気はあるが、その目だけは妙に真っ直ぐだった。

言われるがまま、手を掴まれて人の少ないC棟の空き教室へ連れていかれた。

ドアを閉めると、男子生徒はすぐに本題を切り出した。

「この町の『夢』について、気になってるんだろ?」

まさかの話に度肝を抜かれた。

軽く頷くと、彼はそのまま話を続ける。

「いいか、首を突っ込むのはおすすめしない」

「……けど、そんなに気になるなら、教えてやるよ」

「ただ、今は始業式が始まるから詳しくは話せない」

「放課後、またこの教室に来てくれ」

そう言い残すと、男子生徒は軽く手を挙げて教室を出て行った。

階段を登る足音が遠ざかっていく。

空き教室に一人残され、複雑な思いで自分の教室があるD棟へ戻った。

始業式開始5分前のチャイムが鳴った。

体育館へと着くと、先生や生徒が揃っていた。 

自分も例外ではないが、新入生たちが少し緊張した面持ちで着席している。

中央には、おそらく生徒会であろう面々が整列指導を行なっていた。

その中に、衣百合(いゆり)の姿も見えた。

彼女は生徒たちをてきぱきと誘導しながら、時折こちらに視線を向けて小さく手を振ってきた。

指定された場所――右から六番目の列――に並ぶ。

しばらくすると、全校生徒が集まったようで、始業式が始まった。

生徒代表の挨拶の後、校長が壇上に上がった。

「えー、みなさんお久しぶりかと思いますが……」

校長の話は長く、ほとんどの生徒が寝たり、こっそりスマホをいじったり、友達と小声で話したりしていた。

それを教師陣は指摘することもない。

そんな雑音が多い中、頭の中には男子生徒が言っていた言葉がチラついて仕方がない。

校長の話など気にする暇もなかった。

このモヤモヤを消すためにも、あの空き教室に行くことを心に決めた。

始業式が終わると、生徒たちはそれぞれの教室へ戻っていった。

教室に戻るとすぐに帰りのホームルームが始まり、木俵(きだわら)担任が短く締めくくった。

「今日はこれで終わりです」

「明日からは通常授業なので、休まないように」

「以上、解散!」

その声と共に、教室が一気に賑やかになった。

友達同士で帰りの予定を話し合う声があちこちから聞こえる。

机の横にかけてあったカバンを手に取り、C棟の空き教室へ向かった。

教室のドアを開けると、すでに男子生徒が窓際に立ってこちらを見ていた。

彼はこちらを見るなり、口元を少し緩めて笑った。

「本当に来たんだな……」

Continuez à lire ce livre gratuitement
Scanner le code pour télécharger l'application

Dernier chapitre

  • 夢幻の旅路と二つの世界 〜『夢』に喰われる街で、能力“ブラム”で世界を救う〜   第四十二話

    「では、とりあえず夢の核まで向かいましょう」四人は夢の核に向かって歩き出して行った。「とりあえず着いたが…」ただならぬ雰囲気が出ている。空気も先ほどとは打って変わって、どこか甘ったるくなっている。頭がクラクラするくらいだ。屋敷の外周にあった城壁も、ほぼ半壊で無くなっている。「黎慈さん。ここからは一人行動でお願いします」「ああ、分かった」黎慈は深く深呼吸をした。そして、景佑の方を見て一言。「生きてたら、また会おう」「縁起でもないな」二人は冗談混じりで笑った。「朱音を現実に返したら、俺もすぐに向かう。それまでくたばるなよ?」「フッ、どうかな…」「待ってるぞ」黎慈はそう言うと、夢の核の中に向かって行った。半壊していた城壁の内部に入ると、中は化け物が無数にいた。ただ、襲ってくる様子はない。まるで感情を失い、無気力になったような状態で彷徨っている。黎慈はそれを横目に、中に入れそうな場所を探し始めた。屋敷の外側を色々と見ていると、壁が豪快に破壊されている場所があった。「ここからなら…」黎慈はその穴から、屋敷の内部に入って行った。幸い、穴の先は小さな部屋になっていた。ただ、誰かの話し声が聞こえる。「こんな事態は初めてだぞ!主人はなんと?」「…まだ情報が回ってこない。しばらくは待機だろうな…」二人が話している様子だ。壁越しから聞こえてくる。「あーもう!むしゃくしゃする!ちょっと行ってくるわ!」「ば、ばか!待て!」二人は動揺しているように感じた。『今しかない!』黎慈は部屋の扉を最速で開けた。扉を開けると、案の定兵士のような格好をした化け物がいた。「だ、誰だおま…」声を出させる間もなく、一人を倒す。もう一人も、連鎖反応の如く始末する。あまりに早い身動きに、自分でも困惑していた。「いつもより、体が軽いな…」手を何度か握りしめる。ブラムを使っても、全く疲れない。『これも、不安定が故の影響なのか?』とにかく、黎慈は先を急ぐ事にした。黎慈と別れた頃。「それで、これから向かうところなのですが…」黎慈が夢の核に向かったのを確認し、夢の住人が話し始める。「景佑さん、前に夢の主人である和寿の記憶を見た場所って、覚えてますか?」現実だと、あの大きな公園だ。ここからそう遠くないことも覚えていた。「もち

  • 夢幻の旅路と二つの世界 〜『夢』に喰われる街で、能力“ブラム”で世界を救う〜   第四十一話

    その後は特に何もなく、夢の中に向かうことにした。「どうやらやってくれたようですね」聞き覚えのある声が聞こえてきた。目を開けると、いつもの少女が座っていた。「あなた方のおかげで、今はかなり不安定な状態です」「すでに相方さんはいらっしゃいます」「夢の住人も迷い込んだ人も一緒にいるようです」「そこまでお送りしますか?」「頼んだ」少女が立ち上がり、歩いて行った。黎慈はそれについてくように歩いていく。「そう言えば、お前の夢の住人ってやつなのか?」黎慈が歩きながら少女に聞く。少女が立ち止まる。「ん~、少し違うかも知れません」少女が歩きながら説明を始める。「認識の違い、ですかね」黎慈はよく分からなかった。「現実の人間と、夢の住人と言う二つの括りで決めるなら、そこの違いはあります」「ですが、ブラムの適性などは夢の住人の方が圧倒的に上です」「夢の世界の適性も高いと言えます」「最初から夢の住人か、そうでないかの違いです」少女は黎慈の方を見た。まだ分からないという顔をしていた。「…まあ、少し難しい話だったかも知れません」話しながら歩いていると、光っている扉が見えた。「ここです」黎慈が入ろうとすると、少女が呼び止めた。「一つだけご忠告を」「不安定な状態で夢の世界に入ると、安定化するまで出られなくなります」「不安定な状態で戦闘不能となると、最悪の場合死ぬ可能性もございます」黎慈は覚悟を決め、固唾を飲み込む。「くれぐれもご注意ください」「あぁ」黎慈は少女の言うことを了承し、扉を開けて中に入った。「ご武運を」そう言葉が聞こえると、視界がパッと明るくなった。意識がどんどん薄れていった。「よっ、遅かったな」目を開けると、そこには景佑と夢の住人がいた。二人はいたが、もう一人いるはず。周りを見渡しても、朱音が見当たらない。「朱音はどこに?」「この中にいるよ」景佑が指を刺した先は、なんの変哲もない住宅街に佇む一軒の家だった。「安全のために、夢の核からはかなり遠い場所に隔離しました」「ここなら、化け物に襲われる心配もないかと思いまして」確かに、化け物たちの気配が全くしない。夢の中のはずだが、妙に現実味が強い場所だ。「呼んできます」夢の住人が家の中に入って行った。すぐに家の中からは朱音と夢の住人が出てきた。

  • 夢幻の旅路と二つの世界 〜『夢』に喰われる街で、能力“ブラム”で世界を救う〜   第四十話

    黎慈は開きっぱなしだった寮のドアを閉め、二階にある空き部屋へと向かうことにした。空き部屋の前についた。部屋の扉を開けようとするが、びくともしないくらいガッチリと閉められていた。「和寿、帰ったよ」黎慈がそう声掛けをすると、ゆっくりと扉が開く。 扉が開くと、衣百合が立っていた。衣百合は廊下を見渡して確認していた。「大丈夫…だよね?」「もちろん」「良かった…」衣百合は気が抜けたように椅子に寄りかかっていた。「大丈夫か?」黎慈が衣百合にそう問いかけると、今の状況に慌てて立ち上がった。「ああごめん…」「気にしてないよ」黎慈の声に安心したのか、表情が緩んだ。「もしなにかあったらって思ったら、とても気が気じゃなくてさ…」黎慈は照れくさそうに笑いかける。だが、黎慈の中にある感情が爆発しそうになっていた。しかし、今のこの状況で恋愛などにしている場合ではないことは明白だった。「ありがとね…でも大丈夫だよ」 胸の鼓動が飛び出しそうなほど高揚している。「これからは、心配させないようにするよ」「約束ね?」 二人は指切りをした。二人が感傷に浸っていると、ロビーのドアが開いた音がした。「おーい、二人ともいるんだろ?」聞こえてきた声は亮のだった。二人は触れ合っていた手を瞬時に離す。「上にいるよ~」衣百合が大きな声で亮を呼んだ。「部屋に戻ってるね」黎慈は衣百合にそう伝え、亮が来る前に自室に戻った。そうして思いに耽っていると、夕飯の時間なのに気がついた。黎慈は部屋着に着替え、一階へと向かう。一階に降りると、音で気がついていたのか衣百合がこっちを見ていた。少し気まずさもあるが、そのままキッチンへ向かう。衣百合はまだ夕飯の準備をしていた。「手伝えること、ある?」今までよりもぎこちなく衣百合に聞く。「もう終わるから大丈夫だよ」「あ、出来上がったのをダイニングに持って行ってくれる?」黎慈は言われた通り夕飯を持って行った。夕飯を置いてくるついでに寮を見てみたが、いつもいるはずの亮の姿が見当たらない。「あれ、亮はどこ行ったの?」ダイニングにいる衣百合に向かって声をかける。「ああ、まだ自室にいるってさ」なんとなく理由は察せる。これもあいつなりの配慮なのだろう。「二人ってことか…」 衣百合に聞こえないくらいの小声で独

  • 夢幻の旅路と二つの世界 〜『夢』に喰われる街で、能力“ブラム”で世界を救う〜   第三十九話

    そして次の日になった。黎慈は制服に着替え、ロビーに向かった。ロビーにはすでに衣百合がいた。そのままソファーに座った。そうしていると、黎慈のもとに衣百合が朝食を運んできた。「今日はよろしくね?」衣百合はそう言った。「まあ、俺ができることはないけど…」「祈ってくれてるだけで充分だよ」衣百合は優しく微笑んだ。「じゃあ、全力で祈ってるよ」昼休みになった。黎慈と景佑は空き教室に向かった。衣百合はまだ来ていなかった。「黎慈は色々と聞いてるんだよな?」「まあ、昨日聞いたけど…」黎慈は昨日のことを言うのか渋った。だが、景佑の為にも言うことにした。「かなり緊張してそうだったぞ」立ちながら話す黎慈に、景佑が椅子を用意しながら話す。「そりゃあ、そんだけのことをするんだからな…」「逆に緊張感持ってもらわないとな」冗談混じりで景佑が言う。そんなことを話していると、衣百合が教室にやってきた。「じゃあ、早速話していこうか」衣百合がスマホの画面を見せ、詳細を話し始めた。「なるほどねえ…」「まあ良いんじゃない?学内の雰囲気も一気に変わるだろうし」景佑は曖昧な感じを出しつつも、了承していた。「じゃあこれで行こうか」黎慈が最後にまとめるように話し始めた。「景佑の行動はどうする?」黎慈がそう言うと、衣百合が『うーん』と唸った。「私とグルだとバレたらめんどくさいから、そのまま帰って大丈夫だよ」「帰宅後は一旦黎慈に連絡してもらう感じで良いかな?」「うん。了解」そのまま三人は解散した。6時限目が終わった。正念場がやってくる。『頼む』黎慈は心の中で祈った。「キーンコーンカーンコーン」放送のチャイムが鳴る。どうやら始まったようだ。「全校生徒、並びに職員にお知らせです」周りにいる生徒たちは唖然としていた。「二年主任の夏樹 和寿に告ぐ」「お前は生徒たちに傍若無人の限りをつくし、生徒に対して事実上の殺人を犯した!」「学校に来なくなっている生徒がいるのはこれが原因である」「これは紛れもない事実であり、お前の犯した罪は絶対に」「これは我々からの宣戦布告だ!」「生徒諸君、教師諸君も忘れるでない」黎慈は放送が終わるとすぐに教室を出て行った。廊下はほぼパニック状態だった。生徒たちは『なにあれ!?』など阿鼻叫喚の様子だった。

  • 夢幻の旅路と二つの世界 〜『夢』に喰われる街で、能力“ブラム”で世界を救う〜   第三十八話

    黎慈と衣百合は二人で帰ることにした。ある程度の距離感を保っていた。身長差はありつつも、側から見ればカップルのそれだっただろう。「実はさ、ちょっと緊張してるんだよね」衣百合が、この謎の空気感を変えるために話し始めた。黎慈は、自分にしか見せない衣百合の一面になんとも言えない感情を抱いていた。信頼の証ではあるのだが、その一面にどう接したらいいか分からなくなっていた。学校などではしっかり者のイメージがついており、この一面を知っていること自体になぜか動悸がする。「衣百合も緊張するんだな」黎慈は一言だけ口から漏れる。黎慈は衣百合を見ようとはせず、帰り道の道路の奥を見ていた。よく顔は見えなかったが、顔はぷすくれていた。「人をなんだと思ってるのさ…」衣百合は肩をガクッと落としていた。衣百合は冗談混じりでそう言いつつも、緊張は止まらないようだった。少し視線を落とすと、手が震えていた。『何かをしてあげたい。言葉をかけたい』そうは感じていた。だが、何を言えばいいか分からない。手を近づけようとしたが、結局触れ合う直前に手を離した。「まあ、疲弊しすぎて倒れんなよ」気持ちを悟らないように、なるべくいつも通り返した。声の震えも抑えたつもりだった。必死に普段通りを装う。「ありがとね」衣百合のその言葉には、様々な感情が乗っているのを感じた。これが恋愛的な感情なのかは分からない。二人は緊張しながらも、寮に帰った。寮につくと、ロビーにはすでに亮がいた。亮は二人で帰ってきたのを見て察したのか、すかさずニヤリと笑った。「ごゆっくり~」亮はそう言うと、2階にある自分の部屋に上がっていった。「あいつ…」黎慈は亮の言葉に少し苦笑いをしながら、軽くため息をついた。茶化してくる分、これが亮なりの気遣いなのだろう。「はあ…あいつ…」衣百合も黎慈に続いてため息をついた。「亮って昔からあんな感じなのか?」黎慈はロビーにあるソファに座った。「高校より前の亮は知らないけど、一年生の時とは変わってないよ」「…まあ、そう簡単に変わりはしないだろな…」「でも、今日はなんかありがとね」「聞いてもらってスッキリしたよ」黎慈は少し微笑んだ。「別に大したことはしてないよ」肩をすくめた。「そんなことないよ」「黎慈くんは誰かの支えになってると思うよ。

  • 夢幻の旅路と二つの世界 〜『夢』に喰われる街で、能力“ブラム”で世界を救う〜   第三十七話

    「まず、私に具体的な説明貰える?」黎慈と景佑は具体的な説明を衣百合にし始めた。「簡単な内容は黎慈くんから聞いてたけど、やっぱり不思議な話だね」「まあ今さら驚かないけど…」ここまで驚きの連続が続いている。三人とも今更驚かない。「ここからが本題だ」「どうやって注意を引くかだけど…」黎慈は頭を抱えた。これと言って特に思いつかない。ここまで安全にやってきているからこそ、この最後で危険な目に遭わせる人を増やしたくはない。思考を巡らせていると、衣百合が話し始めた。「夢の核がある場所は、現実のこの学校なんだよね?」衣百合がそう聞いてきた。二人は頷く。「なら、あの人はこの学校全体を自分の居城だと思ってるわけでしょ?」「だったら、この学校のあの人が考えている認知自体を変えれば良いんじゃないかな?」黎慈は衣百合の話に希望が見えた。「具体的にはどうするんだ?」景佑が衣百合にそう聞く。「学校全体で“そういう雰囲気“を出せば良いんじゃないかな?」なんだか曖昧な内容だ。ただ、可能性としては捨てきれない。「具体的な内容はあるのか?」黎慈がそう聞く。「ん~、例えばだけど、全校生徒の和寿の認知を変えるとか?」「あの人、表ではものすごく善人だから、そのギャップを利用すれば良いんじゃない?」「少なからず和寿に被害を受けた生徒は存在するわけだから、その人たちを使えば…」「…その作戦、俺ら以外の協力者にものすごくリスクがないか?」景佑が考え込んでいて下がっていた頭をあげ、衣百合に言った。「あ…」衣百合は気づいてなかったようだ。口がポカーンとなっている。「俺ら以外の協力者はやめよう、危険すぎる」黎慈がそう言うと、二人は了承したかのように頷く。「でも、協力者がいないとこの作戦は厳しいと思うよ?」衣百合がそう言う。確かに、一理ある考えだ。「…良い考えがある」景佑は何かが閃いたようだ。そう話していると、昼休みが終わるチャイムが聞こえてきた。「昼はここまでだな。放課後、またここに集合でいいか?」黎慈が言う。「問題ないよ」「大丈夫だ」二人はそう言い、その場は解散した。授業が午後に移り変わり、終わろうとしていた5時限目が終わった。「あ~ねむ」眠い目をなんとか起こしながら迎えた6時限目。教科は数学だった。いつもなら手厳しい

  • 夢幻の旅路と二つの世界 〜『夢』に喰われる街で、能力“ブラム”で世界を救う〜   第七話

    黎慈(れいじ)は夢の中で覚醒した力の余韻が、まだ体に残っている気がした。体が気怠い気がするが、無理やり頭と体を起こす。昨日の出来事を共有するためにも、いつもより早く寮を出た。衣百合(いゆり)も亮(りょう)もまだ眠っている早朝だった。学校に着くと、教室も廊下も無人だった。静まり返った朝の廊下を歩きながら、黎慈(れいじ)は昨夜の混沌とした夢の世界を思い出していた。体に流れ込んだ熱い奔流、あの声、そして化け物を殴り飛ばした時の衝撃。

  • 夢幻の旅路と二つの世界 〜『夢』に喰われる街で、能力“ブラム”で世界を救う〜   第六話 もう一つの世界

    時間は7時半、衣百合(いゆり)が食器を洗いながら、ロビーの椅子に座っている黎慈(れいじ)に話しかけてきた。「黎慈(れいじ)くんは、今日の学校はどうだった?」「まあ、楽しそうな雰囲気でしたよ。一年間、楽しみです」「なら良かった。私、こう見えても生徒会の人間だからさ。そう思ってもらえて嬉しいよ」 衣百合(いゆり)は笑顔で黎慈(れいじ)を見ており、また衣百合(いゆり)が話しかけてきた。「黎慈(れいじ)くんはさ、部活動とか入る予定はある?」「今は

  • 夢幻の旅路と二つの世界 〜『夢』に喰われる街で、能力“ブラム”で世界を救う〜   第五話

    学生寮に戻ったのは、午後4時を少し回った頃だった。部屋に入るなりベッドに腰を下ろし、鞄を床へと放り投げる。空き教室での会話が、まだ耳を占領している共通夢。夢の中で落ち合う。にわかには信じがたい話だ。普通だったら、興味も湧かなかっただろう。しかし、夜になるまで何を考えても空回りするだろう。一度深く息を吐き、スマホで夕食前の時間にアラームを設定した。まだ時間はある。余計な考えが脳を占領するよりも、一度寝てリセットした方が良いと考えた。部屋の電気を消し、制服のままベッドの上で目を閉じる。意識はすぐに沈んでいった。また、妙な違和感を感じた。目をゆっくりと開ける。──青白い

  • 夢幻の旅路と二つの世界 〜『夢』に喰われる街で、能力“ブラム”で世界を救う〜   第四話

    「そこまでして知りたいんだな。この町について」男子生徒の声は、静まり返った空き教室の中でやけに重く響いた。放課後の校舎は人気が少なく、窓の外から聞こえてくるのは、遠くのグラウンドで続く部活動の掛け声だけだ。古びた時計の秒針が、やけに大きな音を立てて時を刻んでいる。「当たり前だ」迷いなくそう答えた。「この街に一生住む可能性もあるんだ」「少しでも、自分の中の疑問は晴らしておきたい」できるだけ平静を装ってそう答えた。しかし、自分でも感じるほど強い興味に動かされている。無理もないのだろう。妙なことの連続で、「……そっか。分かった」彼は一度目を伏せ、小さく息を吐いた。その仕草

Plus de chapitres
Découvrez et lisez de bons romans gratuitement
Accédez gratuitement à un grand nombre de bons romans sur GoodNovel. Téléchargez les livres que vous aimez et lisez où et quand vous voulez.
Lisez des livres gratuitement sur l'APP
Scanner le code pour lire sur l'application
DMCA.com Protection Status