LOGIN黎慈(れいじ)は夢の中で覚醒した力の余韻が、まだ体に残っている気がした。
体が気怠い気がするが、無理やり頭と体を起こす。
昨日の出来事を共有するためにも、いつもより早く寮を出た。
衣百合(いゆり)も亮(りょう)もまだ眠っている早朝だった。
学校に着くと、教室も廊下も無人だった。
静まり返った朝の廊下を歩きながら、黎慈(れいじ)は昨夜の混沌とした夢の世界を思い出していた。
体に流れ込んだ熱い奔流、あの声、そして化け物を殴り飛ばした時の衝撃。
まだ現実感が薄く、夢だったのかさえ曖昧に感じる。
昨日景佑(けいすけ)に呼ばれた空き教室のドアを開けると、景佑(けいすけ)が窓際に座って難しい顔で外を眺めていた。
黎慈(れいじ)が入っても気づかず、肩を軽く叩いて初めて顔を上げた。
「景佑(けいすけ)…?」
ビクッと肩を震わした。
「っ……黎慈(れいじ)! 来てくれたか」
景佑の声には、わずかな安堵が混じっていた。
そっと胸を撫で下ろしていた。
二人はすぐに昨夜の出来事を整理し始めた。
「ヘッドフォンをかけた瞬間、どうだった?」
「何か得体の知れない熱いものが、体の中に一気に流れ込んでくる感覚があった」
「心臓が爆発しそうなくらい鼓動が速くなって、頭の中に直接声が響いてきたんだ」
「『汝、夢の探究者……』って」
黎慈(れいじ)は頷いた。
「俺も全く同じだったな」
「あの声が聞こえた瞬間、体が勝手に動いて、化け物を殴り飛ばせた」
「あの瞬間だけ、まるで自分じゃなかったみたいだった」
「拳が熱くなって、力が溢れ出すような……まだうまく制御できないけど、確かに『何か』が目覚めた気がする」
景佑(けいすけ)が拳を軽く握りしめ、声を落とした。
「不思議な体験だったな。ただ、あの力…」
「得体の知れない力だが、これを信用しなきゃいけないんだよな…」
「絶対に他人には話すなよ。他人を巻き込みたくない」
「お前もな、黎慈(れいじ)」
黎慈(れいじ)がそう言うと、景佑(けいすけ)が右手を差し出した。
黎慈(れいじ)は迷わずそれを深く握り返した。
その握手には、昨夜の戦いを共有した者同士の、静かな固い絆のようなものが感じられた。
その瞬間、教室の扉がゆっくりと開いた。
振り返ると、そこに衣百合(いゆり)が立っていた。
ボブカットの髪を軽く揺らし、いつもの先輩らしい柔らかい笑顔を浮かべているが、目は真剣だった。
景佑(けいすけ)が小声で聞いてくる。
「誰だ?お前の知り合いか?」
「同じ寮の先輩」
「でも……寝てたはずじゃ…?」
衣百合は少し申し訳なさそうに頭を下げ、静かに教室に入ってきた。
「ごめんね。寮の玄関から誰かが出ていく音がしたから、不思議に思ってついてきちゃった」
「悪趣味だとは自分でも思うけど……今の話、最初から聞いていたの」
「二人とも、この街の『夢』の真相を知りたいんだよね?」
彼女は一歩近づき、声を低くした。
「正直、かなり危ないと思う。町で広まっている噂通りなら、命に関わるかもしれない」
「だから、できればこれ以上首を突っ込まないでほしいんだけど…」
「それを止める権利は私にはない」
「でも、真実を求めるなら、私にも手伝わせてほしい。もちろん、無理にとは言わない」
衣百合(いゆり)はそこで一度言葉を切り、二人を交互に見つめた。
「放課後までに返事をしてくれる?同じこの教室で待ってるから」
そう言い残すと、衣百合(いゆり)は静かに教室を出て行った。
残された空気は、急に重くなった。
黎慈(れいじ)と景佑(けいすけ)はしばらく沈黙した後、顔を見合わせた。
「俺はさっき言った通り、他人を巻き込みたくないって気持ちは変わらない」
「あの世界で何が起きているのかもわからないんだ」
「衣百合(いゆり)さんを危険な目に合わせるのは……」
「でも、話を聞かれた以上、放っておくのも危ないだろ」
「もし変な噂を流されたら面倒になるし、むしろ監視される可能性もある」
「あの人は確かは生徒会だろ?色んな人に顔が効くだろうし、情報源としては悪くないと思うけど?」
黎慈(れいじ)は腕を組んで考え込んだ。
「あの人はそんな陰湿なことしないと思うが……確かに一理あるな」
「ただ、彼女が本気で手伝いたいと言っているなら、理由もちゃんと聞かないと」
外が徐々に騒がしくなり始めた。
電車通学の生徒たちが登校し始めている。
二人は一旦昼休みに結論を先送りし、空き教室を後にした。
再び自分の教室に戻ると、衣百合(いゆり)がすでに扉の近くに立っていた。
手には小さな布の袋を持っている。
黎慈(れいじ)が近づくと、衣百合(いゆり)は袋を差し出した。
「これ、お弁当。届けに来たの」
黎慈(れいじ)が困惑していると、衣百合(いゆり)は小さく微笑み、耳元でそっと囁いた。
「さっきの件、考えておいてね。生徒会として、色々と解決したいと思ってるから」
そう言い残し、彼女は自分の教室の方へ歩いて行った。
教室に戻ると、クラスメイトたちの視線が一斉に集まった。
どうやら黎慈(れいじ)と衣百合(いゆり)の関係について、すでに妙な勘違いが広がっているらしい。
黎慈(れいじ)は気にせず自分の席に着いた。
ほどなくして担任の木俵(きだわら)が入ってきた。
「はい、号令」
短い朝のホームルームが終わり、黎慈(れいじ)は木俵(きだわら)に呼び止められた。
「枝先(えださき)だっけ?今日の放課後、二年主任の和寿(かずとし)先生が話したいことがあるそうだ」
「先生のところまで行ってくれ」
木俵(きだわら)は声を落として続けた。
「転校して間もないんだから、あまり変な行動はするなよ」
「特に高杉(たかすぎ)や寮に住んでいる生徒と仲が良いみたいだが、十分気をつけろ」
去り際、木俵(きだわら)は小さく吐き捨てるように呟いた。
「……何か起こしたら仕事が増えるだろ、クソが」
その一言に、黎慈(れいじ)は背筋が冷たくなった。
生徒を金稼ぎの道具としか見ていないような、冷たい裏の顔だった。
チャイムが鳴り、授業が始まる。
黎慈(れいじ)は窓の外の桜並木をぼんやり見ながら、胸の内で考えを巡らせた。
空き教室に着くと、衣百合の他に小柄な女子生徒が座っていた。一年生くらいだろうか。黎慈が入っていくと、衣百合がすぐに声をかけてきた。「お! 結構早かったね」「さっさと抜けてきたからね」「で、話ってのは?」「あと、そちらの方は?」衣百合は立ち上がり、小柄な女子を紹介した。「この子は一年生の子」「名前はちょっと伏せるんだけど、何やら『夢』について知っているらしくてね」「それで、私に放課後連絡くれたんだ」女子生徒が緊張した様子で頭を下げた。「は、初めまして、黎慈さん」「先ほど、衣百合さんから説明はもらいました。転校生の方なんですよね?」「ちゃんと説明してもらえたみたいだね」「そうだよ、今年からこの街に来た枝先黎慈です」黎慈は軽く会釈をして、用意されていた椅子に座った。衣百合も座り、真剣な表情になった。「じゃあ、早速本題に」女子生徒が少し震える声で話し始めた。「昨日、夢を見たんです」「今、目の前にいる黎慈さんと衣百合さんが出てくる夢を」「……!」黎慈が息を呑むと、衣百合が落ち着いた声で一般論を挟んだ。「そう、一般的に夢には自分が会ったことがある」「見たことがある人が出てくると言われている」「私は生徒会とかで見るかもしれないけど、黎慈くんは違うよね」一度も見たことない人が夢に出てくるのは変な話だ。『もしかしたら一度会っているのかも…?』と思って黎慈は記憶を巡らした。だが、見た記憶はない。「でも、実際に俺を見たのは今、この時間が初めて」女子生徒は目を伏せた。「ほ、本当になんでもないかもしれないんですけど……その夢の内容が肝心で……」一同が息を呑む中、女子生徒は震える声で続けた。「衣百合さんが……死んで……」その子の目が潤んでいる。衣百合は優しくその子の背中をさすった。「どういう内容だったか、言える?」「はい……」女子生徒は深く息を吸い、ゆっくりと話し始めた。「なんだか大きい広場のような所にいたんです。まるで公園のような……空はなんだか異様で、赤黒く、月よりも数十倍ある何かが浮かんでいました。周りには形容しがたい化け物が溢れかえっていて……その化け物に衣百合さんが体を真っ二つに……そこに黎慈さんもいて……」体が小刻みに震えていた。衣百合は背中をさすりながら穏やかに言った。「言ってくれて
黎慈は少し早めに目を覚ました。寝巻きのままロビーへ降りていくと、衣百合が朝食の準備をしていた。階段を下りる音に気づいた衣百合が、こちらに手を振ってきた。「おはよう」「今日は起きてくるの早いね?大丈夫?」黎慈はまだ睡魔の残る目を擦りながら頷いた。「何か手伝えること、ある?」「大丈夫だよ。ロビーに座ってて」言われるがまま、黎慈はロビーの机に向かった。ほどなくして亮が部屋から降りてきて、向かいの席に座った。「おはよう」「……おはよう」亮はまだ寝足りない顔で、座ったままうつらうつらとしていた。しばらくすると、衣百合が朝食を運んできた。寝ている亮の頭を軽く叩く。「ほら、子供じゃないんだから。あ、身長は子供かも?」「え、キレそう」三人は朝から小さく笑い合った。学校に着くと、すぐに朝のホームルームが始まった。「え~、今日は放課後に部活動編成があるから、部活に所属してるやつはちゃんと行けよ」担任はそう言い、部活動ごとの集合教室が書かれた紙を黒板に貼った。黎慈は陸上部の件を詳しく聞くため、昼休みに衣百合の教室へ向かった。教室の前まで来ると、衣百合は友達らしき女子生徒と昼食を食べているところだった。邪魔になるのを懸念して少し迷っていると、衣百合がこちらに気づき、わざわざ出てきた。「黎慈くん、どうしたの?」「いや~、今日の部活動編成、どうしようかなって」「あー、なるほどね。ちょっと待ってて」衣百合は友達に断りを入れ、昼食を持ってきた。「ここじゃ話しづらいでしょ?あの空き教室で食べよ?」「じゃあ、先に行ってて。教室から持ってくる」「うん、わかった」黎慈は自分の教室から弁当を持って空き教室へ向かった。そこにはすでに衣百合が机と椅子を用意してくれていた。対面に座り、「いただきます」と弁当を開ける。「で、部活の件を私に相談したいと」黎慈は口に物を入れながら頷いた。「なるほどね。まあ、結構緩めの部活だし。入ってもいいと思うけどね」「そんな感じの部活なの?一回しか見学行ってないからあんまり分かってないんだけど」「めっちゃフランクだよ? とりあえず入ってみるのはいいと思うよ?」「そうなんだ。とりあえず入ってみようかな」「うん。部長と話したと思うんだけど、良い人だから」衣百合は弁当箱を仕舞いながら続けた。「ところで、そ
放課後になると、衣百合が教室に迎えに来た。堂々と教室に入ってきた彼女は、迷わず黎慈の席の前まで歩いてきた。「ほら、行くよ!」黎慈は席を立ち、衣百合とともに教室を出た。下駄箱で靴を履き替えた後、黎慈はふと聞いた。「で、どこに行く予定なの?」「まあまあ、とりあえず気にしないでついて来てよ」「きっと楽しめると思うからさ」黎慈は言われるがまま、衣百合と他愛のない話をしながら目的地へ向かった。数分歩くと、衣百合がおしゃれなカフェの前で足を止めた。「もしかして、ここ?」「そうだよ!おしゃれなカフェでしょ?」衣百合が店内に入っていくのを見て、黎慈も後を追った。「いらっしゃいませ~。お二人様ですか?」「あれ、衣百合じゃん!久しぶりだね!」「うん、久しぶり。ごめんね、あんまり来れなくて」「いいよいいよ。気にしてないから」衣百合と楽しそうに談笑していた女性店員が、黎慈の方を見た。「あれ? 衣百合、もしかして……?」「違うから!ただの友達!」黎慈は軽く会釈をした。「初めまして」「衣百合さんのお友達をさせてもらってます、枝先黎慈です」「お二人はどういうご関係で?」衣百合は優しく笑う。「ただの友人だよ」「奥の席にご案内しますね」暖簾をくぐると、落ち着いた雰囲気の個室のような空間が広がっていた。四人掛けのテーブルに、黎慈と衣百合は向かい合って座った。「では、ごゆっくり~」女性店員が去った後、衣百合が少し照れくさそうに言った。「久しぶりの休みだったからさ、ちょっとここに顔を出そうかなって」「ごめんね? 付き合ってもらって」「気にしてな
鳥のさえずりが聞こえ、黎慈は眠たい目を擦りながら起き上がった。スマホを確認すると、午前七時半。月曜日の朝だ。制服に着替え、ロビーへ降りると、亮がすでに朝食を食べていた。「おはよう」「おー、おはよう黎慈。今日から学校だぜ?月曜日が一番きついわ」黎慈は辺りを見回し、衣百合の姿がないことに気づいた。「あれ? 亮、衣百合は?」「俺が起きた時にはいなかったな」「てか、最近お前ら二人仲良いよな。どう、いい感じ?」「ただの友達としての付き合いだよ。朝食はどこに置いてある?」「キッチンに置いてあるよ」亮はため息を吐いた。「しっかし、衣百合も大変だな。こんな鈍感な奴だとは……」黎慈はキッチンへ行き、皿をロビーへ運ぼうとしたところで、皿の下に手紙が挟まっているのに気づいた。『先に学校に行ってます』『黎慈くんも早めにきてね。夢について、結果を聞きたいから』黎慈は急いで朝食を済ませ、亮より先に寮を出た。学校に着くと、空き教室にはすでに景佑と衣百合が待っていた。「待たせたな、二人とも」「遅いぞ」黎慈は教室の隅から椅子を引き、衣百合の前に座った。そして、夢の世界で起きた出来事を詳しく話し始めた。「あの扉の中には、誰かの記憶が入っていたんだ」「どんな内容の記憶だったんだ?」教室内で女子生徒にいじめのようなことを言われていた事。男子生徒にもいじめられていたこと。親にも嫌味を言われていたこと。見たことをできるだけ鮮明に話した。景佑と衣百合が驚きの表情を隠せない。黎慈は淡々と続けた。「あの出来事が、本当に夢の主人の記憶だとしたら…
目を開けると、先日離脱した場所に立っていた。景佑もすでにそこにいて、すぐに作戦の最終確認に入った。「いいか景佑。お前は最初に扉の近くまで行って、化け物をできるだけ引き連れてくれ」「その間に俺が扉に入る」「大丈夫、ちゃんと覚えてる」「あくまで俺は陽動だな。無理に全部倒さなくていい」「そうだ。扉の中の記憶を見たら、公園の中央の休憩所で合流しよう」黎慈は公園の中心にある小さな建物の方を指差した。景佑は頷き、二人は扉が見える位置まで慎重に近づいた。景佑が先陣を切って走り出す。彼は振り返り、黎慈に向かって軽く手を振った。「お前らの相手は俺だ!追ってこい!」大量の化け物が一斉に景佑を追いかけ、公園の外へと流れていく。黎慈はタイミングを見計らい、残った数匹の化け物に備えながら扉へ急いだ。残った化け物たちが黎慈に気づき、迫ってくる。黎慈はブラムを起動させた。彼の力は、対象に触れた部分を爆発させる能力――力を込めれば込めるほど爆発範囲が広がる。化け物が直線上に重なった瞬間、黎慈は力を発動した。爆発が連鎖し、化け物たちが次々と灰のように崩れ落ちた。「やっぱり……この力、思った以上に汎用性があるぞ」戦闘を終えた黎慈は、禍々しい赤い光を放つ扉の前に立った。中から、くぐもった声が聞こえてくる。『俺は……俺は!』黎慈は深く息を吸い、扉を開けて中へ踏み込んだ。──そこは見慣れた教室だった。「お前、キモいよ? w」数人の女子高校生が、面と向かって嘲笑う。黎慈は何か言おうとしたが、声が出ない。まるで他人の体の中に閉じ込められたような感覚で、身動きすら取れなかった。女子たちは
「ようこそお越しくださいました」黎慈はゆっくりと瞼を開けた。目の前に、いつもの少女が立っている。「お連れ様の場所にお連れしましょうか?」「ああ、頼む」少女は何かを小さく唱え始めた。数秒後、視界が一気に明るくなった。目を開けると、景佑が複数の化け物に囲まれ、苦戦している最中だった。黎慈は即座にブラムを起動させ、助太刀に入る。二人の連携で化け物を一掃すると、景佑が息を弾ませながら笑った。「やっと来たな、黎慈」「悪い、遅くなった」「じゃあ、早速向かうか。謎の扉の場所に」景佑が先頭に立ち、二人は公園を目指して走り始めた。道中、何度か化け物と遭遇したが、特に苦戦することもなく目的地に到着した。公園の広場に、赤く光る扉がはっきりと見えた。その周囲には、異常な数の化け物がうごめいている。「あれが例の扉だ」「確かに……化け物が多すぎるな」景佑が黎慈を見た。「判断は黎慈に任せる」黎慈は少し考え、首を振った。「俺も扉の存在をしっかり認知できた」「一度現実に戻って、衣百合を交えて作戦を立てるべきだ」景佑は素直に頷き、二人はその場を後にした。黎慈が目を覚ましたのは午前九時だった。ロビーへ降りると、衣百合がすでに朝食を食べ始めていた。机には三人分の食事が用意されている。「いただきます」黎慈が向かいの席に座って食べ始めると、衣百合が明るく声をかけてきた。「なんか夢の中での進捗はあった? 行ったんでしょ?」「景佑を交えて話すことになってるから、その時に話そう」「わかっ
時間は7時半、衣百合(いゆり)が食器を洗いながら、ロビーの椅子に座っている黎慈(れいじ)に話しかけてきた。「黎慈(れいじ)くんは、今日の学校はどうだった?」「まあ、楽しそうな雰囲気でしたよ。一年間、楽しみです」「なら良かった。私、こう見えても生徒会の人間だからさ。そう思ってもらえて嬉しいよ」 衣百合(いゆり)は笑顔で黎慈(れいじ)を見ており、また衣百合(いゆり)が話しかけてきた。「黎慈(れいじ)くんはさ、部活動とか入る予定はある?」「今は
学生寮に戻ったのは、午後4時を少し回った頃だった。部屋に入るなりベッドに腰を下ろし、鞄を床へと放り投げる。空き教室での会話が、まだ耳を占領している共通夢。夢の中で落ち合う。にわかには信じがたい話だ。普通だったら、興味も湧かなかっただろう。しかし、夜になるまで何を考えても空回りするだろう。一度深く息を吐き、スマホで夕食前の時間にアラームを設定した。まだ時間はある。余計な考えが脳を占領するよりも、一度寝てリセットした方が良いと考えた。部屋の電気を消し、制服のままベッドの上で目を閉じる。意識はすぐに沈んでいった。また、妙な違和感を感じた。目をゆっくりと開ける。──青白い
「そこまでして知りたいんだな。この町について」男子生徒の声は、静まり返った空き教室の中でやけに重く響いた。放課後の校舎は人気が少なく、窓の外から聞こえてくるのは、遠くのグラウンドで続く部活動の掛け声だけだ。古びた時計の秒針が、やけに大きな音を立てて時を刻んでいる。「当たり前だ」迷いなくそう答えた。「この街に一生住む可能性もあるんだ」「少しでも、自分の中の疑問は晴らしておきたい」できるだけ平静を装ってそう答えた。しかし、自分でも感じるほど強い興味に動かされている。無理もないのだろう。妙なことの連続で、「……そっか。分かった」彼は一度目を伏せ、小さく息を吐いた。その仕草
「今日、隣のクラスのさっちゃん、休みらしいよ」「噂の『夢』のせいで……」「ちょっとやめなよ、転校生くんもいるんだし」「そんな気軽に夢の話題出さないでよね」その話題が聞こえた一瞬、教室の空気が乾いた気がした。その渇きはすぐに元通りになる。窓側の席に座りながら、窓の外を見る。しかし、目前の桜並木には興味が行かない。耳にだけ、意識が持っていかれている。盗み聞きのようであまり良くない気もするが。先の反応といい、どう考えてもただの都市伝説では片付けられない何かがある。ダメ元で、隣に座ってスマホをいじっている男子生徒に声をかけてみた。「なあ、突然悪いんだけど……この町の『夢』って、