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第3話

작가: 水城悠々
私は電話を耳に当てたまま、庭で抱き合っている二人から目を離せずにいた。

遥は満面の笑みで和真にちょっかいをかけていたが、彼はただその落ち着きのない手をつかむだけで、振りほどこうとはしなかった。

花火が激しく打ち上がるほど、この胸は音もなく氷の底へと沈んでいくようだった。

「少し眠れなくて……だから、あなたと話したかったの。

和真……少しだけ、私に付き合ってくれない?」

和真が何か言いかけた、そのときだった。

電話の向こうから、甘ったるい「きゃっ」という声が聞こえた。

すると和真は慌てたように電話を切った。言い訳のひと言すらなかった。

こんなことは、これまで一度もなかった。

以前なら、どれほど急な用事があっても、和真は必ず先に私にひと言伝えてくれた。

私が心配するのを知っていたから、面倒くさがることもなく、いつも何度も言い聞かせるように説明してくれていたのに。

私は体をこわばらせたままスマホを持ち、外から二人を見つめていた。

和真は何の迷いもなくスマホをズボンのポケットにしまい、突然地面に座り込んだ遥の前にしゃがみこんだ。

その顔には、はっきりと焦りが浮かんでいた。

遥は思いどおりになったとでも言いたげに、和真へ向かって両腕を伸ばした。

「抱っこして?」

甘えるような声でそう言った。

和真は怒るどころか、困ったように首を振っただけで、遥をそのまま横抱きに抱え上げ、芝生の上に置かれたクッションチェアへそっと下ろした。

それからようやくスマホを取り出し、私に折り返してきた。

「朱里ちゃん、さっきは秘書がぶつかって、スマホを落としたんだ。変なふうに誤解するなよ。

こっちはまだ大事な会議があるんだ。早く片づければ、そのぶん早く帰ってお前のところに行けるから。

もう遅い時間だし、早く休め。そうしないと、俺が心配するぞ」

和真の言葉の端々には、弁解と気遣いがにじんでいた。

けれど、もう以前のような甘さは、私の中に少しも残っていなかった。

私は淡々と「うん」とだけ返し、それから和真に問いかけた。

「和真、あなた……私を騙したりしない?」

和真は一瞬、言葉に詰まった。

その隙をついて、遥が和真の唇に軽く口づけた。

和真は不満げな表情を浮かべたが、遥のほうは物怖じする気配すら見せなかった。

ふだんから、和真にどれほど甘やかされているのかがよく分かった。

長い沈黙のあと、和真はようやくゆっくりと口を開いた。

「もちろん、そんなわけないだろ。早く寝ろ」

そう言うと、私の返事も待たずに、慌ただしく電話を切ってしまった。

私は指にはめた指輪にそっと触れた。

それは、システムが去る前にくれた、新婚祝いの贈り物だった。

あのときシステムは言った。

「もし、いつか和真があなたを裏切ったら、この指輪を使って、いつでもここを離れられます」

あの頃の私は、自信たっぷりに、考えすぎだとシステムをからかった。

それが今になって、容赦なく現実として返ってくることになるなんて。

指先で指輪を回すと、システムの残像が再び私の前に現れた。

「こんにちは、マスター。どのような形で離れるか、お決まりですか?」

私は庭で並んで座る二人を淡く見やった。

「大晦日の夜、心臓発作で」

私はそれ以上そこにとどまらず、その日のうちに帰国便の航空券を買った。

私が戻ると、執事も使用人たちも、みなほっとしたような顔を見せた。

そのあとの数日間、和真は少しでも時間が空けば、電話やメッセージで連絡を寄こし、きちんと報告してきた。

そこだけ見れば、以前と何ひとつ変わらなかった。

ただ一つ違っていたのは、私のスマホに毎日、遥から見せびらかすようなメッセージが届くようになったことだった。

【私、ステーキが好きなの。そしたら和真、いちばん高級なレストランに連れて行ってくれたの】

【この帽子、かわいいでしょ?和真がわざわざ私のために選んでくれたのよ。ピンクがいちばん似合うって言ってた】

【あのクルーザー、見える?あれ、和真が私の誕生日にくれたプレゼントなの。しかも名前は『Love』なんだから!】

写真だけではなく、必ず言葉まで添えられていた。

彼女からのメッセージは、毎日きっかり決まったように届いた。

私は一度も返事をしなかった。

それでも彼女は飽きることなく、自分たちの幸せを誇示し続けた。

日付を確かめると、大晦日まであと十日しかなかった。

それなのに私は、もう和真がいつ帰国するのか尋ねることすらしなかった。

ただ静かに、自分が去るその時を待っていた。

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