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6.レモンティとアイスコーヒーのときめき

last update Huling Na-update: 2025-11-13 16:00:39

「うわぁー !! 凄い ! 綺麗〜 ! 」

 ヒロミと呼ばれた少女はウォーターサーバーでグラスを握りながら八本軒の店内を満面の笑みで見回す。

「外観普通の食堂かなって思ったけど、中は高級中華じゃん〜 ! 」

「そう言っていただくと嬉しいです」

 何も聞いてこない紫麻にヘヨンは遂に痺れを切らして、自ら話し出した。

「あの、リカコには言わないんで欲しいんですけど……」

「勿論です。お客様の個人情報を誰かにお話することはございません。

 ですが、一つ疑問が」

「なんです ? 」

(お名前はどうお呼びすれば ? わたしは黒月 紫麻と申します)

「紫麻さんですね。大丈夫ですよ小声じゃなくても。

 俺は……木村 祐介……です。 本当は日本人なんです」

「気が付きませんでした。人は皆同じに見えます」

「いや、でもおじいちゃんは韓国人なんですよ。だから全く嘘では……。

 いや、リカコには嘘ついてますね」

「彼女様は ? 」

 紫麻はセルフサービスにいるヒロミを見る。

「あいつは……妹です。宏美って言います」

「まあ、そうでしたか。宏美さん。可愛らしいです事 」

 宏美が焙じ茶を持って戻ってきた。カウンターで話す二人の会話に混じる。

「宏美です ! よろしくです ! 」

「紫麻です。ご兄妹でお買い物とは仲がよろしいのですね」

「……。いーや全然〜。今日はユウ君がどうしてもって言うから様子見に来たの ! すぐなんだから」

「いや、うん。でも今回のは頼まれてたしね」

「とにかくあたしもそんなお金無いからね ! もうさぁ、弁護士とか相談しなよ ! 」

 突然、毛色の変わった会話に変わる。

 オーダーも入らないため、紫麻もついついそのまま話し込む。

「なにかトラブル事でしょうか ? 」

「聞いてよ紫麻さん。ユウ君の彼女って市役所にいるらしいんだけど、今日のオクトパックスのイベントとかさぁ。こういうグッズ凄い好きなの」

「……わたしも人の事は言えませんが……」

 宏美は紫麻のTシャツを見てニヤリと笑う。

「紫麻さんは全身から推し活オーラ出てますもんね ! 」

「い、いつもは制服を……」

「それも聞きました ! ユウ君が隠れ家的名店見つけたーって言ってきた時に。

 紫麻さん、普段は凄い綺麗なチャイナドレス着てるんでしょー ? いいなぁ〜わたしも着てみたいあなぁ〜」

 宏美の明るさとは裏腹に兄の祐介は緊張した様子で紫麻を伺う。

「なんだか……お休みだったのに、本当にありがとうございます紫麻さん」

「いいえ。宏美さんに目的のものを譲っていただいたので、とても上機嫌です。嬉しいです ! 」

「ちーがーう ! 紫麻さぁん !! あたしはそんなこと言ってんじゃないのぉ〜〜〜 !

 グッズが好きなら自分で並べばいいじゃないですか !? でも仕事が忙しいからって理由でユウ君を並ばすし、現物が手に入らなかったら罰金とるんですよ !? 」

「罰金……ですか。彼女さんの欲しい物が買えないと『罰』なのですか ? 」

「知らないけど。それヤバくないですか ? 普通、そんな事する ? って聞いたんですよ !

 そしたらなんかユウ君の話が、なんだかおかしくて ! 」

 繋がらない状況と会話内容。

「祐介さん、詳しくお聞きしても ? 」

 祐介は観念したように両手を上げた。

「いや、はい……。でも内密にお願いします。

 ええと……何から話せばいいかな……」

 □□□□

 ──今から三年前──

「初めまして♪ミスターヘヨンかっこいいわねぇ〜 ! 」

「こちらこそ今日はよろしく。リカコさん、何頼む ? 」

「リカコでいいよ。わたしは……レモンティーかな」

「僕はアイスコーヒーです。オーダー入れますね」

 駅前で待ち合わせした祐介と梨花子は目の前のファミレスで交流した。

 初めは祐介から。

『韓国から旅行に行きます。親の仕事の都合で夜は帰宅しますが、一人のランチで寂しいです』

 こんな文面をSNSにアップロードした。

 そこへメッセージを送ってきたのが梨花子だった。

『ヘヨンさん、そこなら地元です ! わたしで良ければ、是非 ! 』

 祐介は送られてきた梨花子のアイコンの写真を見ると、しめた ! とばかりに舌なめずりをしたのだった。

 それもそのはず。

 祐介はテレビのリモコンを握りながらふと考えた日の事。

「韓国人男性多いよなぁ……」

 圧倒的なKーPOPのヒットにぼんやり別れたばかりの恋人の事を考える。元の彼女もKーPOPが好きだった。

「俺の母方の爺ちゃんは韓国人だし……俺も少し韓国人じゃんな ? 」

 祐介の独り言を聞いていた宏美がキッチンからプフッと笑う。

「全然、薄まってるんじゃない !? もう完全に日本人だよ〜。国籍も名前も日本人なのに、図々しいなぁ〜。ユウ君があんな男性アイドルと自分を比べるなんて ! 」

「うるせぇよ。でも、顔面偏差値は違くても、韓国人はやや本当じゃない ? 」

「いや、それもおかしいから。妙な事言ってないで早く寝なよ。

 おやすみ〜」

「……」

 祐介は亡き母方の祖父 ヘヨンを思い出すと、偽りのアカウントを作成した。

『ヘヨン(27歳)韓国在住。親の仕事の都合で時々日本。以前のアカウント迷子中』

「あとはそれらしい写真か……去年丁度お土産で貰った乾麺とか……そうだ、AIで背景を加工しよう」

 見知らぬ韓国人男性や観光客のデータに自分を貼り付ける。

 なんの思い出もないその作業は徹夜で続いた。その画像をヘヨンのアカウントとし、まずは1ヶ月かけてゆっくり流して行った。

 それがヘヨンの誕生である。

 そしてそれに釣られてきた女子の中に梨花子がいた。

「親の仕事で来てるんだよね ? 何系 ? 」

 地味で重たい皮のバッグを椅子に下ろすとカッターシャツの肩を手でも見ながら席に付く。

 祐介はドキドキしながらも頭にあるテンプレを引っ張り出す。

「あー、営業だよ。そんな大それたものじゃなくて、地元で売ってるものを……」

「バイヤーさんに売り込み ? 大変だね ! 」

「そうそう」

「そうなんだ。でもそれで海外行けるのっていいね。わたしそんな余裕ないからなぁ」

 余裕が無い、という雰囲気。これは祐介も感じた。

 大抵の女性はいざ会合するとなると、それなりの姿で着飾ってくるものだが、梨花子はカッチリとしたスーツ姿。多少の芋臭さはあるが、その素朴さがなんとも愛らしく見えるものだ。

 要は隙のある女性だった。

 食事が終わると口元を拭きながら、名残惜しげに梨花子はヘヨンに微笑む。

「あ〜あ。もっと一緒にいたかったよ〜。この後も仕事山積み ! 」

「でも市役所勤務なんて凄いよ」

「色んな人が来るからねぇ。微妙 ! 書類も細かいし多いし。

 ま、お互い頑張ろ。ヘヨンはお父さんの会社に勤めてるの ? 」

「あ、うん。そんなとこ。このメーカーなんだけど、見た事ある ? 」

 祐介は自宅にあった輸入品の韓国海苔とキムチのラベルを撮影しただけの画像を梨花子に見せた。

「ふーん。ごめん。知らないわ」

「だ、だよねぇ ! 」

 手早く帰り支度を始める梨花子に、ヘヨンは焦りの表情を浮かべた。

「あの、また会える ? 」

「え ? 」

 梨花子はそんなことも考えていなかったように、驚いて振り返る。

 ヘヨンは引くに引けなかった。

 傲慢。

 選ぶのは自分なのだという、曲がってしまった価値観。

「いいけど……えっと、いつまで日本にいれるの ? 」

「来週までは ! 」

「ん〜」

 梨花子はスケジュール帳を捲ると、名残惜しい表情を見せるものの首を縦には振らなかった。

「ごめん。次の休み、予定あるんだ」

「そう。無理言ってごめん」

 この食事も自分持ちだと言うのに、と奥歯を噛み締めたところ、梨花子は自分の食事代だけをテーブルの隅、他人から見えないような場所へ置いた。

「良かったら、予定ない時にまた会わない ? タイミングいつになるか分かんないけどさ」

「いいの ? 会う会う ! 」

 しょげた犬のような顔をしていたヘヨンの方が、パッと明るい顔に戻る。

 梨花子もそれを見逃さなかった。

 恐らく年齢は自分より少し下だそのせいねんが懐いた犬のように自分の出方一つで一喜一憂していると感じたのだ。消して不快なわけが無い。

「わたしで良ければ ! じゃあまた連絡するね」

「うんまた ! 」

 それから数日、何度メッセージを見ても梨花子からの返信はなかった。

 そして祐介が痺れを切らした頃、ようやく梨花子から連絡が来た。

 その度、祐介はヘヨンと名乗り、複雑な気持ちで、梨花子のパーソナルスペースへ踏み込むことになったのだ。

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