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第1027話

Author: 夜月 アヤメ
「......何を聞きたいんだ?」

西也は花をじっと見つめながら、ふっと眉をひそめた。

「まさか、お前......妊娠でもしたのか?誰かと変なことしてないだろうな?」

「ち、違うよっ!」

花は慌てて手を振った。

「そんなことじゃないよ。私は、お兄ちゃんに聞きたいことがあって......!」

「俺に?」

西也は少し怪訝そうな顔をした。

「なんだ?」

花は少し言い淀んでから、思い切って言った。

「......お兄ちゃん、若子と......その、そういう関係に......」

西也の眉がピクリと動いた。

「......お前、何を言ってる?」

花はびくっと震えた。

これでも十分に遠回しに聞いたつもりだったのに。

「だ、だって......」

「お兄ちゃんたち、もう結婚してるし、子どもも生まれてるんだし......その、当然......その......」

バシッ!

唐突に、花の頭に軽く手が振り下ろされた。

しかも結構、痛かった。

「いたっ!」

花は頭を押さえて、涙目になりながら兄を見上げた。

「なんで叩くの!?」

「......その話は、二度と口にするな」

西也は顔をしかめ、厳しい表情を浮かべた。

その顔を見て、花はピンときた。

―まさか、本当に何もない......?

そう思うと、花の胸はふわっと軽くなった。

「......花、子どもを抱いてくれ」

西也はそう言いながら、そっと赤ん坊を花に渡した。

花は嬉しそうに子どもを抱きしめた。

「わぁ......ふわふわしてる」

胸の中の小さな命は、まるでぬいぐるみみたいに柔らかくて。

思わず、ぎゅっと優しく抱きしめたくなる可愛さだった。

そんな花を見ながら、西也は立ち上がる。

「ちょっとの間、子どもを見ててくれ」

「え?お兄ちゃん、どこ行くの?」

花は不安そうに尋ねた。

「お父さんのところに行ってくる。

会社のこと、聞きたいことがあってな」

「そっか......わかった!」

花は元気よく頷いた。

「子どもは任せて!わたし、ちゃんとお世話するから!」

赤ん坊を抱きながら、花はウキウキと微笑んだ。

―初めての子守り、なんだかすごく新鮮。

しかもこんなに可愛い子なら、
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Comments (6)
goodnovel comment avatar
えみ
飽きた。引き伸ばしすぎ
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むーちゃん
西也どんどん闇落ちしていますね。 赤ちゃんに修が悪い。敵取れなんて吹き込むなんて。 0歳児に呪いの様な言葉を事あるごとに吐くなんて、有り得ません。 西也帰国したし、又ノラが出てきて引っ掻き回して話が進まないとかですかねぇ…。 復活した冴島が影から若子を守り、他の方も言っていますが、花が近親婚を若子に伝えて離婚を促したり、修に偽装結婚と暁の事を伝えてと動けばテンポ良くていいなぁ。 西也父は冴島が対処してくれそう。 ノラも若子のサポートに付いて欲しいけど、修が不幸になるように仕向けてる感じがするし何か因縁がありそうな感じだから難しいかなぁ。
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hayelow488
西也と西也父、怖すぎます。 ここは、花が若子の味方になるしかない! 花が若子に近親婚のこと伝えて、若子に離婚を決意させる。そして、暁ちゃんを西也から奪ってアメリカへ逃亡。修にも偽装結婚のこと伝えて、裏切ったのは若子ではなく、修であることを分からせる。そして、修は遠藤家から若子を守る。 ・・・なんて。これくらいポンポン話が進んてくれると嬉しいなぁ。 そもそも、西也と修の兄弟関係、修と暁の親子関係等、隠し事が多すぎます。それで話が全然進まない。イライラします。
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