로그인でなければ、どうして何年もの間、彼女は再婚しなかったのか。だから鈴は、ずっと夜を最大の敵と見なしていた。夜には三人の子どもがいる。手札が良すぎるのだ。何か策を使わなければ、とても勝ち目はない。正道とともに戻ってきて以来、夜と正道の溝は日を追うごとに深まり、もはや修復不能なところまで来ていた。離婚の話まで出ている。だが、まだ正式に離婚していない限り、鈴はどうしても安心できなかった。なぜなら時折、正道が夜を見る目の中に、どこか違う色を感じ取っていたからだ。男が女を征服したいという欲を抱くのは、その女に興味を持ち始めた証でもある。正道の夜への感情は、やはり特別だった。彼女は、二人を完全に決裂させなければならなかった。だからこそ、思い切って大勝負に出たのだ。だが、まさか夜がここまで容赦ないとは。鈴は、正道の目に浮かぶ疑念を見て、全身の血が冷えるようだった。これだけ長い年月、彼のそばで寄り添い、世話をしてきたのに。それでも夜が現れた途端、正道の関心は少しずつ夜へ引き寄せられていった。夜の言った通りだった。正道は、自分の三人の子どもに特別な愛情があるわけでもないのに、一人たりとも夜へ渡したくない。それはつまり、子どもを口実に離婚を拒んでいるだけなのだ。あるいは――子どもを口実に、まだ夜と何らかのつながりを持っていたいのかもしれない。あの三人は、夜が自ら育て上げた子だ。彼女が簡単に手放すはずがない。たとえ手放したとしても、頻繁に会いに来るだろう。そうなれば、正道は堂々と夜に接触できる。しかも最近、正道が鈴のもとに滞在する時間は、どんどん短くなっていた。何か小さな理由を見つけては、家に帰って夜に文句をつける。最初の頃は、鈴も内心ほくそ笑んでいた。自分のために怒ってくれているのだと思っていたからだ。だが次第に、違和感が芽生えた。もしかすると、それは正道が夜に会いたいがための口実ではないのか。男にとって、身体と心はやはり別物なのだ。口では、自分だけを妻だと言う。だが、どれだけ激しく愛し合っても、彼は毎回きちんと避妊する。彼は最初から、自分に子どもを産ませる気がないのだ。こんなことなら――漁村にいたあの頃に、先に正道の子を身ごもっておけばよかった。子どもを後ろ盾に、
誰も口を開かなかった。正道の味方をする者は、誰一人いなかった。彼の選択は、彼らの利益を損なう。たとえ正道派の者であっても、今この場で彼の側に立つ気などなかった。正道は、そんな周囲の表情を見渡して、そこで初めて、夜がなぜ「たとえトップでも何でもできるわけじゃない」と言ったのかを理解した。彼は、株主たちに縛られる立場なのだ。そしてその瞬間、ある考えが不意に頭をよぎった。――この数年、夜はどうやって一人で雲井グループを支えてきたのか。――どうやって、この利害しか見ない株主たちに、自分の決定を支持させてきたのか。鈴はまだ彼らの手中にある。ここで真っ向からぶつかるわけにはいかない。正道は、声の調子を少しだけ和らげた。「今回の件は、俺の落ち度だ」深く息を吸い込み、続けた。「だが、夜と離婚するつもりはない」すると、夜派の株主が皮肉っぽく言った。「離婚するつもりはない?なのに外で愛人を囲って、本妻の前で好き放題やっていたわけか。いったい誰が、あの女をそこまでつけ上がらせたんだ?夜の前で好き勝手に振る舞うなんて」別の株主も声を上げた。「とにかく、その女は始末しろ!夜は、家には正妻、外には愛人なんていう男を許すような女じゃない!」「そうだ、早くその漁村女と縁を切れ!たとえ夜が許しても、俺たちは許さない!」株主たちは口々に、漁村女を処分しろと迫った。この場には、平気で人を消しかねないような冷酷な者も少なくない。正道は今、会社を握ったばかりで足元がまだ固まっていない。彼らと正面から対立できる状況ではなかった。彼は言った。「何があろうと、鈴は俺の命の恩人だ。長年、夫婦として暮らしてきた。恩を仇で返すような真似はできない。もし本当に鈴を消せば、後々この件が明るみに出たとき、世間は俺を恩知らずで卑劣な男だと叩くだろう。今回のスキャンダルより、さらに悪質だ。個人的な感情を抜きにしても、会社の利益を考えなければならない」それを聞いて、株主たちはそれぞれ考え込むような顔になった。そこで正道は、さらに言葉を重ねる。「鈴をどうするかについては……夜と相談する」正道は、今の雲井グループのトップではある。株主たちも、彼をあまり追い詰めすぎることはできなかった。彼が譲歩したのを見て、株主の一人がようや
だが、それでも夜を支持する人間はかなり残っていた。しかもその中には、少なくない数の株主も含まれている。夜は笑った。「一つ、いい言葉を教えてあげる。自業自得よ。もしあの人が、あなたたちの寝室での情事をわざわざ私に聞かせるような真似をしていなければ、こんなに早く攫われることもなかったでしょうね。そんなふうに、怒りをぶつけるような目で私を見ないで。人はみんな、自分で選んだものの代償を払うの。私もそう。あなたも、鈴も同じよ。正道、あなたって見る目がないわね。選んだ女は、賢そうに見えて、実際は全然賢くない」正道が何か言い返そうとしたその瞬間、再び携帯が鳴った。鈴がまだ株主たちの手にあると思うと、彼は焦燥に駆られた。ここで夜とやり合っている暇などない。彼は携帯を握りしめたまま、大股で部屋を出ていった。……雲井グループ会議室。それまでは派閥争いで分かれていた株主たちが、このときばかりは驚くほど足並みをそろえていた。夜派の株主の一人が、皮肉っぽく言った。「愛人を囲うなら、せめてこっそりやればいいものを。ここまで盛大に世間に知らしめるとは、いやはや前代未聞だな。相手がとんでもない美女とか、名家の令嬢とかなら、まだ何も言わなかったさ。だが、お前の愛人は夜より容姿も劣る。後ろ盾もない漁村女で、頭も良くない。そんな見っともない女のために妻子を捨てるとはな。記憶を失っていたとき、本当に頭に水でも入りすぎたんじゃないか?今じゃ脳みそが海になってるぞ」正道派の株主たちですら、困惑した顔で彼を見ていた。「正道、どうしてこんな愚かな真似をしたんだ?本当にあの漁村女に心でも奪われたのか?」「まさか、あの女は競合会社が送り込んだスパイなんじゃないのか?」「催眠でもかけられたんじゃないか?でなきゃ、あれほど優秀で綺麗で、おまけに三人も子を産んでくれた妻を差し置いて、どうして夜のどこを取っても劣る漁村女なんか選ぶ?」「そうだよな。昔あれほど夜を好きだったじゃないか。あの人を手に入れるためなら、心臓まで差し出しそうだった。星野家に問題が起きたときだって、自分から手を差し伸べたくせに。今になって愛していないだなんて?」短気なある株主は、ついに机を叩いて怒鳴った。「正道、お前があの女のために本当に離婚なんかしたら、俺は今す
夜は部屋で本を読んでいた。そのとき、部屋の扉が乱暴に開け放たれた。怒りをあらわにした男を見て、夜は淡々と言う。「想い人のいる男が、別の女の部屋に入るなら、礼儀としてノックくらいするものよ。こんなふうに押し入るんじゃなくてね」だが、正道の耳にそんな言葉は入らない。彼は夜の顎を乱暴につかみ、その目には冷たい霧のような寒々しさが宿っていた。「――あのニュースとトレンド、全部お前の仕業か?」夜はまばたきひとつせず答えた。「私じゃないわ」正道は高みから見下ろすように彼女を見つめた。その視線には、濃い嫌悪がにじんでいる。「お前にも怖いものがあるとはな。やることはやっておいて、認める勇気もないらしい」夜は嫌悪を隠さず、彼の手を払いのけた。そして傍らにあった除菌シートを取り、ゆっくりと自分の顎を拭く。彼女は鼻で笑った。「私があなたたちのベッドの下にでも潜り込んで、こっそり録音したとでも?それとも、あなたたちに薬でも盛って、勝手に盛り上がるよう仕向けた?正道、前に言ったはずよ。私を怒らせるなって。それなのに、平穏な日々を大事にせず、わざわざ私を不快にさせに来たのはあなたたちでしょう。なら、私が容赦しなくても文句は言えないわ」そこで、夜は底知れない笑みを浮かべた。「本当に残念。鈴が動画まで送ってくれていたら、世界中の野次馬がもっと楽しめたのにね」その朝早くから、ネットはこのニュースで大騒ぎになっていた。各大手メディアのトップにも、この件がずらりと並んでいる。あれほど扇情的な音声だ。野次馬たちは一秒単位で内容を分析したくてたまらない。音声だけとはいえ、人には不思議な心理がある。謎めいていればいるほど、真実を知りたくなるものだ。しかもこの時代は、娯楽がまだ少ない。人々は暇を持て余していた。だからニュースが出た途端、鈴と正道の個人情報は、ネット中の人間に徹底的に掘り起こされた。たった一晩で、二人の素性は完全に晒されたのだ。夜は正道を見た。「普通、人の夫を奪ったり浮気したりするなら、隠れるものでしょう。こそこそして、知られないようにするものよ。まさかあなたたち、誰にも知られたくないどころか、むしろ私の前で見せつけに来るなんてね」そこまで言うと、夜の声はさらに凍りついた。「私を、好きに扱え
仲を裂こうとしている、ね。ええ、その通りよ。わざわざあの二人を心地よくさせてやる必要なんて、どこにもないでしょう。……その夜。風呂を終え、そろそろ眠ろうかと思ったとき、突然携帯が震えた。夜が手に取ると、画面に表示されていたのは鈴からの着信だった。彼女は数秒だけ画面を見つめ、それでも通話を取った。だが、何か言うより先に、受話口の向こうから甘く湿った喘ぎ声が流れてきた。男と女の声だった。その瞬間、夜はすべてを察した。胃の奥がひっくり返るような嫌悪がこみ上げる。すぐに切ろうとした、そのとき。向こうの鈴が、通話がつながったことに気づいたのか、甘えるような声で言った。「正道さん、夜さんってすごく綺麗で、雰囲気もあって……本当に少しも心が動かないの?」正道の呼吸は乱れ、声も掠れていた。「鈴、あいつがどれほど美しかろうと、俺の心の中ではお前の1万分の1にも及ばない」鈴はまだ不安そうだった。「でも……」「でも、じゃない」正道はその言葉を断ち切った。「もう調べた。俺とあいつは最初から政略結婚だった。俺は最初からあいつを愛していない。俺にとって大事なのは、お前だけだ」鈴は言う。「信じられない」正道は低く答えた。「なら、今すぐ行動で証明してやる」そのあとに続いたのは、到底言葉にできないような音だった。夜は吐き気で、本当に吐きそうになった。それでも、彼女は通話を切らなかった。こみ上げる嫌悪を無理やり押し込み、鈴と正道の会話をすべて録音した。鈴がいつ電話を切ったのか、夜は知らない。録音を始めたあとは、もうその通話に意識を向けなかったからだ。一時間ほど本を読んでから、ふと携帯に目をやると、すでに通話は終わっていた。夜の唇に、冷たい笑みが浮かぶ。本来なら、鈴のような不快な女にかまうつもりはなかった。男の浮気の多くは、女に原因があるのではない。問題なのは、そういう男だということだ。今日、鈴がいなくても、明日には別の誰かが現れるだけだ。それに、鈴がどれほど腹黒かろうと、実際に正道の命を救ったことだけは事実だった。だから最初、正道が鈴を漁村から連れ戻したとき、夜は止めなかった。今のように正道と険悪になってからも、鈴が裏であざとい小細工をしていても、彼女は鈴を本気で潰す気にはな
鈴の瞳に、たちまち涙が滲んだ。「夜さん、どれだけ説明しても、きっと信じてもらえないと思う。でも……私たちの漁村はすごく貧しくて、外とも隔絶されていたの。本当に、あの捜索広告もニュースも見ていなかったの」夜の視線が、鈴の顔に落ちた。この女は、たしかに少しばかり見栄えがよかった。漁村から正道と戻ってきてから、彼に隠されるように丁重に囲われてきたせいで、もう田舎の土臭さはどこにもない。環境への馴染みも驚くほど早かった。夜は言った。「当時は見ていなかった。そこは、一応信じてあげる。でも、今はもう知ったわよね?なら、純粋で善良な鈴なら、どうすべきかは分かっているはずよね?」鈴は無意識に唇を噛み、声を落とした。「夜さん、私と正道さんは、本気で愛し合っているの……お二人に過去があることは分かっている。でも、過去はもう過去のことよ。もし正道さんがあなたを選ぶなら、私はもう二度と、お二人の生活を邪魔しない。でも今、正道さんはあなたと一緒にいたいと思っていない」鈴は真っすぐ夜を見た。「夜さん、お二人の結婚は、最初から政略結婚だったんですよね。そこに愛情なんてなかったはずです」夜は問い返した。「愛情がなかった?どうして、私たちに愛情がなかったと分かるの?」鈴は答えた。「もし正道さんが本当にそこまで夜さんを愛していたなら、たとえ記憶を失っても、あなたを忘れるはずがない。仮に忘れたとしても、ほかの誰かを愛したりはしないはずよ。夜さんも、そう思いませんか?」夜は数秒だけ考え込み、それから小さく笑った。「たしかに、一理あるかもしれないわね」鈴は誠実そうな顔で言った。「夜さんほどの人なら、どんな男性だって選べるはず。どうして、愛してくれない相手にそこまで執着するの?もし……もし財産を少し多めに分けてほしいだけなら、私から正道さんに、財産を多めに分けるよう頼んでみます。夜さんは一人で子どもたちを何年も育ててきたんですもの。正道さんだって、その苦労は分かってくれるはずよ」夜は笑みを浮かべた。「その言い方だと、まるであなたが正道の正式な妻で、彼が何でもあなたの言うことを聞くみたいね」鈴は慌てて言い訳した。「夜さん、違うんです。そういう意味では……」夜は遮るように言った。「あなたのためなら、会社も、親も







