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第618話

Author: かおる
雅臣は、「なぜ言ってくれなかった」と問いかけたかった。

だが、その言葉は喉まで出かかっていながら、最後まで口にすることができなかった。

星は、彼が言おうとしたことを察し、うっすらと笑った。

「どうしたの?

自分でも言えないって分かってるんでしょ?

私はちゃんとあなたに言ったわ。

でも、あなたは取り合わなかった。

私が拉致されて、一番絶望したとき、あなたに電話した。

そのとき、あなたは何て言ったか覚えてる?」

星は雅臣の目をまっすぐ見つめ、はっきりと言った。

「『星、俺は小さなことで騒ぐ女の手口が嫌いだ。

清子が今、救急処置を受けてる。

くだらないことで騒ぐな』

あなたはそう言ったのよ。

それに、あなたと勇が同じ病院で私を見たとき。

勇は、私があなたを追いかけてきたって言って、『芝居が上手い、まるで役者だ』って笑ってた。

あなたも、事情も確かめないまま私を責めてね、『これ以上、そんな手を使うな』って警告した」

星は少し間を置き、続けた。

「私が熱を出したときもそう。

あなたは清子と翔太を連れて出かけて、翔太を本家に送ったあとも家に戻らず、そのまま出張に行った。

結局、次の日になっても私が一度も階下に降りてこないのに気づいた田口さんが、すぐに病院に連れていってくれたの」

星は雅臣を見つめ、そっと首を振った。

「本当に馬鹿だったわ。

あなたに助けを求めるなんて」

今ならすぐ119番を呼ぶだろう。

あのとき電話したのは、ただ少しでも雅臣に気にかけてほしかったからに過ぎない。

雅臣は、一言だけ絞り出した。

「......すまなかった」

星の声は淡々としていた。

「もう離婚したんだし、謝る必要なんてないわ」

「すまなかった」の一言は、彼女が受けた痛みに比べれば、あまりにも軽かった。

星は分かっていた。

今夜の件は、簡単に片づくものではない。

まず、朝陽のブレーキがなぜ故障したのか。

そして明日香の怪我。

靖の、まるで天が崩れ落ちるように取り乱し方。

どれを取っても、それで済むはずがない。

朝陽、誠一、そして靖、三人とも厄介な相手だ。

一人で相手をするには分が悪すぎる。

時間を見ると、すでに夜の十一時を過ぎていた。

遅い時間だが、星は人を呼ぶことにした。

彩香に電話をかけようとしたとき、病室の扉が軽
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Comments (9)
goodnovel comment avatar
いわあや
雅臣、今こそ、これまでのクズっぷりを挽回すべく、星の擁護をしてくれ!ただ、どんだけ挽回しても、どうしようもないクズ男には変わりないけど…
goodnovel comment avatar
カナリア
あー ゴチャゴチャしてきた 毎日トラブル気が休まらない 星の敵はみんな残らず地獄に落として!
goodnovel comment avatar
rin
雅臣が同乗してたので 証人という意味ではまだまし しかし、朝陽も誠一も本当に腐った人間だね 思考がおかし過ぎて何言っても無駄な感じ 証拠もないのに決めつけ  殺意を持って先にぶつけて来たのは お前らだろうが! 本当にどうしようもない奴らだ
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