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第874話

作者: かおる
国際大会を前に、彩香は一度、仁志の自宅を訪ねた。

しかし家には誰もおらず、留守のままだった。

彩香はそのことを星に伝えた。

「星、かなり長いことドアを叩いたのに、返事がなかったの。

仁志、ずっと帰ってないみたい。

......まさか、挨拶もせずに行っちゃったんじゃないでしょうね?

管理人さんにも聞いたけど、仁志はおとといの早朝に出ていったきり、戻ってきてないって」

彩香は、もう一度仁志を引き留めるつもりで来ていた。

まさか、こんなふうにいなくなるとは思わなかった。

星は言った。

「記憶が戻ったばかりで、向こうでやらなきゃいけないことが沢山あるんだと思う。

だから急いで帰ったんじゃないかな。

仁志の性格なら、何も言わずに消えるようなことはしないはず」

この数ヶ月、皆と仁志の関係は良好だった。

彩香は引き留めたい気持ちが強かったが、強要するつもりはなかった。

「はあ......仁志に、こんなふうにいなくなってほしくなかったのに」

その時、星のスマホが鳴った。

画面を見た瞬間、彼女の目がかすかに揺れた。

――仁志。

通話を取る。

「星」

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