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第890話

Autor: かおる
優芽利は、壁に掛けられた絵画を見つめた。

驚いたことに、それらの署名はすべてサマーと記されていた。

その中の二枚は──

かつて彼女が司馬家にいた頃、兄の書斎で何度も目にしたものだ。

記憶では、もう何年も飾られていた。

優芽利は絵には興味がなかったため、当時は軽く目を向けただけで、深く気に留めていなかった。

だが今回は、怜央の書斎で、明日香とのオークションで見た『夜の色』を目にし、思わずじっくりと見入ってしまった。

まさか──

怜央が、司馬家に飾ってあった絵までここへ持ってきているとは。

それだけ、これらの絵を大切にしているということだ。

興味のあるものに話題が及ぶと、普段は寡黙な怜央の口数は、珍しく増えていた。

その表情にも、いつもの陰鬱さがいくらか薄れていた。

「最初にサマーの絵を見た時、すぐに分かった。

この画家は、いずれ大成する──とな。

あの頃、サマーは新人で、絵は高くなかった。

だが俺もまだ司馬家の当主になる前で、手持ちの金などたかが知れていた。

高名な画家の作品なんて、とても買えなかった」

絵を愛する者で、絵を集めたいと思わない者は少ない。
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