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第715話

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雪乃の口から語られるあの荒唐無稽な夜の記憶が、次第に輪郭を持ち始めた。

一ヶ月ほど前のこと。

仕事で酷く怒られるようなミスをしてしまい、腹の虫が収まらなかった雪乃は、魔が差したように陸が経営するバーへと足を踏み入れた。

陸という男の性格はともかく、彼が経営するバーのセンスは認めざるを得なかった。雰囲気、音楽、ワインとカクテルのラインナップ、そのすべてが雪乃の好みにドンピシャで、彼女は機嫌が悪い時によくそこへ飲みに行っていたのだ。

雪乃はカウンターの隅に座り、一人で黙々と酒をあおっていた。

その時、個室にいた友人たちを見送るために出てきた陸は、ラフな黒いシャツの胸元を少しはだけさせ、眉間には酒のせいか少し気怠げな色気を漂わせていた。

ふと視線を向けた先に雪乃の姿を認めた彼は、足を止め、その目には悪戯っぽい光を宿した。

彼は真っ直ぐに雪乃の元へ歩み寄り、彼女の隣の高いスツールに腰掛けると、人を苛立たせるような口調でからかった。

「どうした?雪乃お嬢様。またお見合いに失敗して、うちの店にやけ酒でも飲みに来たのか?」

ただでさえイライラしていた雪乃は、その一言で完全に火がつい
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