LOGIN「俺が離婚する時は、舞美絵さんから離婚を切り出された時だけです」
「……四之宮、さん」
四之宮さんはこんなに私に優しくて、そんな不安も取り除いてくれた。
「夫婦になっても、俺は舞美絵さんが嫌がることはしない。 舞美絵さんが子供を望まないなら、子供は作らないし、寝室が別がいいならもちろん別にします」
そう言ってくれた四之宮さんの優しさが、私は嬉しかった。
「いえ!あの、そこまで言ってないので……安心してください。 私は四之宮さんに何かされても嫌だとは思いませんし、寝室も一緒で構いません。 四之宮さんと夫婦になるので、寝室は一緒の方がいいと思います」
寝室を別にした夫婦は離婚率が上がると言われているようだし、それに対して嫌なわけもない。
「本当?」
「はい」
ここまで言ってくれる人、きっといないと思う。
「……ちなみにですけど」
「ん?」
「私も、離婚するつもりであなたと結婚しませんので安心してください。 四之宮さんと幸せになるために、結婚すると決めたので」
「舞美絵さん……」
私たちは夫婦になって幸せになる。そして必ず、雪輝に後悔させてやるの。
私を捨てたことを後悔させてあげるんだ。「私は、あなたを信じます。 あなたの言葉を、あなたの温もりを、あなたの笑顔を信じます」
私は四之宮さんに微笑みかける。
「ん、俺を信じて。 俺は絶対に、あなたのことを悲しませないし、絶対に裏切らない」
そんな真剣な言葉をくれる四之宮さんに、私は心が惹かれていることに気付く。
「……もちろん、信じます。 四之宮さんは、私の旦那さんになる人、ですから」「ありがとう、舞美絵さん」
私は四之宮さんと幸せになるために、結婚する。 決して中途半端な気持ちなんかじゃない。
「あの、四之宮さんの家と私の家……結婚したら、どっちに住みますか?」
いや、でもな……私の家1LDKなんだけど、ちょっと寝室が三畳でちょっと狭いんだよね。
「ちなみに私の今住んでる家、1LDKなんですけど、寝室が三畳とちょっと狭いので、二人で寝るには狭いかもしれません。 一応ロフトはあるんですけど、ロフトは今物置みたいになってまして」
「なら、俺の家で一緒に暮らしますか? 俺の住んでるマンション、2LDKなので寝室も広いですし」
2LDKのマンションに住んでるんだ、四之宮さん。 一人で……住んでるんだ、よね?「安心してください。もちろん、一人暮らしですよ」
「あ、いえ!……その、広いマンションに住んでるんだなと思っただけです」
そんな、女性と一緒に住んでるんだなと思ってはないけど……。
「一緒に住むなら舞美絵さんの部屋も一つ用意しますよ。一部屋余っているので、そちらを使ってもらえたらと思います。そこは来客用なのですが、別に来客もないですし、自由に使ってください」
「あ、ありがとうございます」
確かに一人で2LDKって広いし、部屋余りそうだよね……。掃除とかも大変そうだし。
「……そういえば」
「はい?」
四之宮さんは「この後もし時間大丈夫なら……家、来ます?」と私に視線を向ける。
「あの……行ってもいいんですか?」
「もちろんです。 もし家が気に入っていただけないようであれば、二人で住むマンションを一緒に探すことも考えているので」
「えっ! そこまで、考えてるんですか……?」
さすがにそこまでするのは、ちょっと申し訳ない気が……。
「俺は、舞美絵さんと素敵な夫婦生活を送りたいので、そのためならなんだってしますよ」
素敵な、夫婦生活を……。その言葉を聞いて、キュンとしてしまった。
「……あの、気を遣わせたらすみません」
「気なんて遣ってませんよ。 二人で住む家なんですから、一緒に考えるのは当然のことです」
四之宮さんが私のことを考えてくれていると思うと、顔がほころんでしまう。
「ありがとうございます、四之宮さん」
「舞美絵さんが喜んでくれるなら、嬉しいです」
「……喜ばないわけ、ないじゃないですか」
私はアイスココアを飲み干すと、「あの、そろそろ出ませんか?」と声を掛ける。
「そうですね。では、俺の家の紹介しますよ」
「はい。お願い、します」
出会って一時間くらい経ったとは思うけど、まさかここに来て家に行くことになるとは……。
「あ、ここは俺が払います」
「いえ、自分の分くらいは自分で払います」
そう言ったけど「旦那になるんだから、ここは俺に奢らせてください」と言われてしまい、「あ、ありがとうございます」と返事をしてしまった。
「さ、行きましょうか」
「はい」
お会計を終えた四之宮さんと一緒にカフェを出ると、四之宮さんはスマートにタクシーを止め、目的地をドライバーさんに伝える。
「俺が離婚する時は、舞美絵さんから離婚を切り出された時だけです」「……四之宮、さん」四之宮さんはこんなに私に優しくて、そんな不安も取り除いてくれた。「夫婦になっても、俺は舞美絵さんが嫌がることはしない。 舞美絵さんが子供を望まないなら、子供は作らないし、寝室が別がいいならもちろん別にします」そう言ってくれた四之宮さんの優しさが、私は嬉しかった。「いえ!あの、そこまで言ってないので……安心してください。 私は四之宮さんに何かされても嫌だとは思いませんし、寝室も一緒で構いません。 四之宮さんと夫婦になるので、寝室は一緒の方がいいと思います」寝室を別にした夫婦は離婚率が上がると言われているようだし、それに対して嫌なわけもない。「本当?」「はい」ここまで言ってくれる人、きっといないと思う。「……ちなみにですけど」「ん?」「私も、離婚するつもりであなたと結婚しませんので安心してください。 四之宮さんと幸せになるために、結婚すると決めたので」「舞美絵さん……」私たちは夫婦になって幸せになる。そして必ず、雪輝に後悔させてやるの。 私を捨てたことを後悔させてあげるんだ。「私は、あなたを信じます。 あなたの言葉を、あなたの温もりを、あなたの笑顔を信じます」私は四之宮さんに微笑みかける。「ん、俺を信じて。 俺は絶対に、あなたのことを悲しませないし、絶対に裏切らない」そんな真剣な言葉をくれる四之宮さんに、私は心が惹かれていることに気付く。 「……もちろん、信じます。 四之宮さんは、私の旦那さんになる人、ですから」「ありがとう、舞美絵さん」私は四之宮さんと幸せになるために、結婚する。 決して中途半端な気持ちなんかじゃない。「あの、四之宮さんの家と私の家……結婚したら、どっちに住みますか?」いや、でもな……私の家1LDKなんだけど、ちょっと寝室が三畳でちょっと狭いんだよね。「ちなみに私の今住んでる家、1LDKなんですけど、寝室が三畳とちょっと狭いので、二人で寝るには狭いかもしれません。 一応ロフトはあるんですけど、ロフトは今物置みたいになってまして」「なら、俺の家で一緒に暮らしますか? 俺の住んでるマンション、2LDKなので寝室も広いですし」 2LDKのマンションに住んでるんだ、四之宮さん。 一人で……住んでるんだ、よね?
「改めまして、早瀬舞美絵です。よろしくお願いします」 「四之宮賢哉です。こちらこそ、末永くよろしくお願いします」 す、末永く……。なんだか改めて言われると、少しばかり照れる。「私、もうすぐ三十歳になります。一週間後が、三十歳の誕生日です」「え、本当に三十歳? 見えませんね。もっと若く見えます」「えっ、本当ですか?」もっと若く見えますと言われ、ちょっとばかし浮かれてしまいそうになる。「ちなみに俺も、三十です。今年三十一になります」「そうなんですね。 年齢近いんですね」「本当ですね」でも四之宮さんも三十一になるようには、どうも見えない。 年齢の割に大人びて見えるし、落ち着いているように見える。「ちなみに俺の好きな食べ物は、うどんにちくわの磯辺揚げとかしわ天乗せね」「いい組み合わせですね。美味しい組み合わせですもんね」うどんにちくわの磯辺揚げとかしわ天乗せて食べるというのは、ちょっと贅沢で美味しい。「舞美絵さんの好きな食べ物は?」「私の好きな食べ物は……わかめご飯と鶏の照り焼きですね」「わかめご飯好きなんだ」四之宮さんからそう聞かれたので、「はい。わかめご飯のおにぎりとかよく食べてます」と答える。「わかめご飯好きな女の子って、結構多いよね」「確かに。 あの塩気がたまらないんですよね」 特にお弁当用に売ってる混ぜ込みのヤツが好き。「俺も好きだよ」「……え?」「わかめご飯」な、なんだ、そっちか……。急に好きだと言われたので、びっくりしてしまった。「あと、照り焼きとかも好きかな。 照り焼きバーガーとかよく食べるし」「そ、そうなんですか?」四之宮さんはアイスコーヒーを口にしながら「照り焼きバーガー美味しくない? バーガーだと、あれが一番好きなんだよね」と言ってくる。「確かに、美味しいですね。 甘辛い照り焼きソースが最高ですね」「そうそう。あれをポテトに付けて食べるとなお美味しいしね」「確かに、あれは美味しいですね」「舞美絵さんもやったことある?」「はい。あります」まさか、照り焼きバーガーでこんなに盛り上がるとは思ってなかった。 「俺たち、意外と食の好み似てるのかもね。好きな食べ物の好み、近いし」「……確かに、そうですね」私もちくわの磯辺揚げ好きだし、かしわ天も好きだし、照り焼きも好きだし
「俺は至って本気ですよ」「でも……私たちまだ出会って数十分とかですよ? そんな私にプロポーズだなんて……四之宮さん、どうして?」私が四之宮さんにそう聞くと、四之宮さんは私の手を握る。そして「俺は、泣いているあなたの涙を見て、美しいと思ってしまったんです」と言ってくれた。「……え?」「そんなあなたの涙を、俺は守りたいと思ったんです。 あなたのことを俺が幸せにしたいと、そう思ったんです」こんなことを言われるとは、思ってなかった。 まだ出会って数十分の四之宮さんに、私は少し心が揺れてしまっている。「……四之宮さん」「俺は、結婚するならあなたがいい。舞美絵さん」そんな真剣な眼差しで、四之宮さんから見つめられる。「俺は浮気なんて絶対にしないし、ずっと舞美絵さんのことを守ると約束する。 悲しい思いもさせないし、裏切らないと約束する」「……どうして?」四之宮さんから受けたそのプロポーズは、正直に言うと嬉しかったんだと思う。だけど、素直に喜べない自分もいた。こんな風に結婚してしまって、いいのかな……?「さっき言いましたよね? 婚約破棄した彼を後悔させてあげるというのはどうですか?って」「そ、それは……」 確かにさっき、四之宮さんからそんな言葉を言われた。 確かに私を捨てたことを後悔させてやりたいし、自分だけ幸せになることは許せない。それなりに腹立つし、理不尽だなと思う。「彼に後悔させてあげられる方法は、一つしかないと思いませんか?」四之宮さんからそれを言われてピンときた。「それが……結婚って、ことですか?」「そうです。俺とあなたが結婚して幸せになればいいんです。 そうすれば、彼はきっとあなたを選ばなかったことを後悔するはずです」相手を後悔させることを思いつくことなんて、今までなかった。 後悔させられるなら、後悔させてやりたい。「私……幸せになりたいです。 雪輝との幸せをずっと考えてました。結婚して子供が出来て、そんな普通の幸せを望んでました」 どうして、こんなことになっちゃったのかな。神様は意地悪だ。普通の幸せを、私には与えてくれなかった。「舞美絵さん、だったらその普通の幸せ……俺と作りませんか?」そんな私に、四之宮さんは「俺と結婚して、そんな最低野郎を見返してやりましょう」と私の手を握りしめる。 「……そうですね。
「優しいんだな、あの人……」あの一瞬で、彼がすごく紳士的な人だと感じた。「お待たせしました。お水、飲んでください」すぐに戻ってきた男性は、私にお水を渡してくれる。「ありがとう、ございます」私はお水を身体の中に流し込む。「少し落ち着きましたか?」「はい。……ご迷惑をおかけして、すみません」その男性は「いえ、お気になさらず」と優しく微笑む。 少しの間沈黙が続くが、男性の方から「……あの、何かありましたか?」と声を掛けてくれる。「もちろん、答えたくないなら、答えなくて大丈夫です」そう言ってくれたその男性に、気付いたら私は「……実は、ついさっき婚約してた人と別れたんです」と伝えていた。「え……?」 「ついさっきまで、婚約者だったんですけど……彼が浮気した女性との間に子供が出来たから、結婚出来ないって言われたんです」そうやって愛想笑いしていると、急になんだか涙で視界が滲みだす。「あれっ……」私、泣いてる……?涙が溢れていると知った瞬間にはもう遅くて、両眼からボタボタと涙がこぼれ落ちてくる。「すみません……私、泣くつもりじゃっ……」その瞬間、隣の彼は私の身体をそっと抱き寄せる。「こういう時は、泣いていいんです。 むしろ、泣くべきです」私はそんなことを言われたせいか、涙が止まらなくて声を押し殺して泣いてしまった。「あなたは自分の人生をその彼に壊されたんです。 むしろ、もっと怒ってもいいくらいです」どうしてこの人は、初対面の私にこんなに優しくしてくれるのだろうか。妙にその優しさが、心にじんわりと染みていく。「でも……両親は私の結婚をすごく喜んでくれてるんです。 だから、余計に心苦しくてっ……」「……そうですよね。ご両親は、やっぱり嬉しいですよね」彼は私の話を真剣に聞いてくれた。「彼、雪輝って言うんですけど……彼の顔とかはまだ両親は知らなくて、婚約者を紹介したいとだけ言ってたんです。 彼を両親に紹介する日も、もう決めてたのに……まさか、こんなことになるなんて」本当に情けないし、もう両親に合わせる顔もない。「これから、幸せになるはずだったのにな……」そんな私の言葉に、彼は「あなたなら、幸せになれますよ、きっと」と言葉をくれる。「……私、男の見る目、なかったですね」「そんなこと、ないと思いますよ」「えっ……?」そ
「ごめん。俺、お前とは結婚出来なくなった」「えっ……?」その一言を告げられたのは、彼と婚約してから一ヶ月後のことだった。「ちょっと、待って……それどういう意味?」頭の中の理解が追いつかない。「本当にごめん。 俺……お前とは結婚、出来ないんだ」「え、結婚出来ない? どうして……?」今目の前にいる彼は、私の婚約者だ。 「俺、別の結婚相手が出来たんだ」「……は?」でももう、婚約者だった人に゙なりそゔな予感がする。「え、別の結婚相手ってなに? 雪輝の結婚相手は私だよね?」そう問いかけると、彼は申し訳なさそうな顔を見せ「……彼女が、妊娠したんだ」と私に告げた。「妊娠……? 雪輝、それ、どういうこと?相手は誰?」彼は、私の知らない相手を妊娠させたんだとわかった。 私という婚約者がいながら、別の女と関係を持って、挙げ句の果てに妊娠までさせた最低の男だった。「答えて。妊娠させた相手は誰?」「……高校の、同級生なんだ」「高校の同級生?」高校の同級生と聞いて、すぐにピンときた。 彼は数ヶ月前、同窓会がありそれに参加していた。「まさか、あの同窓会の日?」「本当に……ごめん。許してほしい」なるほど。彼はその同級生の誰かと関係を持ち、妊娠させてしまったんだ。 「……そのごめんって、なんのごめん?」「え?」「ごめんって言われても、許せるわけないでしょ? 私との結婚が決まっているのに同窓会にうつつを抜かして、他の女とセックスして妊娠したことを、許してほしいと?」何ふざけたことを言ってるのだろうか、彼は。 許してほしいとか、本気で言ってるの?「同窓会で再会した女と浮気したことを隠した挙句、妊娠したからその女と結婚するって? 何それ、なんの冗談?全然笑えない」「……本当に、悪いと思ってる」雪輝のことを、私は本当に愛していた。 こんなに人を愛したことは初めてで、雪輝とならずっと幸せに暮らしていけると、そう思っていたのに。私は彼に裏切られた。 何も知らずに彼を信じきって、彼のプロポーズまで受け入れて。「雪輝、あなたって……最低ね」「俺だって、まさかそんなことになるなんて、思ってなかったんだよ。 あの日しか関係を持ってなかったし、まさか妊娠するなんて……」え、なに? 今さら言い訳?「言い訳するとか……見苦しいよ、雪輝」