Share

12. 副作用

last update publish date: 2026-02-19 17:00:00

「つまり、『相手の感情が視える』。その中でも『負の感情だけを吸い取ることが出来る』というわけか……」

「多分。貴方みたいなお堅い人は自分の心なんて覗かれたくないだろうけど、でも見た感じ……今は『好奇心』の色が強いです。合ってますか ?

    ……薄い橙色で『楽』に似てるけど、違う。けど、そんな感じに視えたりするんです。

 どっか触っていいですか ? 」

 翡翠が返事をする前に涼は肩に手を置く。

「どうですか ? 『好奇心』は消えた ? 消えてないと思うんです。

    多分、人の持つ感情の中で、『吸えるものと吸えないものがある』んだ」

 翡翠は眉を寄せると思わず涼の肩を揺さぶる。

「俺から吸った負の感情ってなんだ ? 俺には別にそんなものは !! 」

 突然取り乱した翡翠に驚きながらも、涼は一度深呼吸をして翡翠の手を握り返す。

「はっきり言えば、貴方からは深い『哀しみ』を感じたから。

 普段はそんな事を吐き出せない立場なのは分かるけど、俺も分かってしまうんです。

 だから……」

 言いかけた涼の言葉が途中で止まり、自分が握り返した翡翠の手の違和感に気付く。

「…… ??? 」

 白い手袋の下。

 温もりこそ感じるものの、人の手の感触では無いと気付いてしまった。

(義手…… ? なんか硬すぎた気が…… ? )

 思わずパッと手を離し、不味いものを見てしまったと翡翠を見上げた。

 だが、それには翡翠は冷静だった。

「そうか。つまり……お前には詰まらん意地や虚勢は見え透いてしまうということか」

「……そ……言う事……ではありますが……。別に俺も悪意は……」

「ああ。『城』で生き残るために自分の感情を視る力の補正を望んだお前に、『核』はその力を『相手の負の感情を吸う』所までバージョンアップさせたわけだ」

「でも……。こんな力で……どうやって……。本当に話は終わってなかったのに……」

「それが本当なら『城』がお前に与えた正しい能力なはずだ」

「そんな……」

 嘆き続ける涼を、翡翠はソッと頬に触れる。

 涼はその感覚を敏感に受け取った。

「き、急になに ! あの、俺 ! パーソナルスペースが狭いというか ! 」

「お前の過去は『城』から聞いている。取り繕わなくていい俺にもそんな趣味はない。

    教えてくれ。俺の『哀しみ』と言ったな。そんなに強く視えたか ? 」

「……うん。深くて、絶望と哀しみや後悔の色だよ。

 でも、さっき俺が吸い取った時より、少し色味が戻って来てるような気がするんです。って事は、感情を吸っても、また吹き出すって事なのかも」

 翡翠は涼の肩を抱くと、少しの力で自分の胸に倒れこませる。

 ふらふらの腕で押しのけようともするが、涼はまだ万全に力が入らない。唯一安心なのは、翡翠は生前自分を玩具にしたような下品な感情を抱いていないのが視えて安心した事だ。

 翡翠は涼をグッと引き上げ、後ろから抱き上げるようにして首筋に顔を埋めた。

「ああ。確かに。

 不思議だ。お前に触れていると、今までの焦燥感が消えるようだ。とても……幸福な気がする……」

「はぁ……はぁ…… ! 急には無理です ! 俺が吸い上げた感情に酔う…… ! 」

「そうだったな。すまない」

 そう言いながら、翡翠は何故か涼を離さなかった。

『悪意』 ? 『楽しんでいる』 ? 

 違った。

 純粋に翡翠は『癒し』を得ていた。

『無害』だと知ると、涼もなんだかどうでも良くなって、グルグル回る脳裏の中、深く考えず口をついて出る言葉だけをお喋りし始める。

「手袋しててこのくらいだと、素手で触られたらやばいかもしれないです……」

「あまり人に言わんことだな。しかしお前の同居人は野生の勘が強い奴だ」

「あは。京のこと ? 」

「……。

    そんなことより、天井の大時計は見たか ? 」

 あの不思議に光る藤紫色の時計だ。突然、話題が変わった ? と、涼はキョトンと翡翠を見上げた。

「あれ、時刻を見るんじゃないんですか ? 」

「そうか……気付いていなかったか。白い針はお前の死の時刻を現している。そしてそこに重なるもう一対の黒い針。それがどこまでカウントされるのかは知らんが、黒い針が『城の定めた時』まで動けば、この場所から解放されるらしい」

「それって !! ここから出る方法 !? 」

 涼にとっては喉から手が出るほど欲しい情報だった。いや、ここにいる全員が欲しい情報だ。

「一応、ここに来た囚人全員には話している。だが、俺の知る限り……今まであの黒い針が動いたところを見たことはない」

「…… ? それが天国行き ? 黒い針が動かないとこのままってこと ? どうすれば動くの ? 」

「全く分からない。この執務室にも正確な情報はないんだ」

「……なにかの条件次第か……。

 他に方法は無いのか ? ここから出る方法」

 涼は頭を翡翠の肩に預け、仰け反って翡翠を見上げる。

 その翡翠の絶望の色が一瞬で戻りそうになるのを感じた。足元からザワザワと涼の身体を侵食するように這い上がってくる、冷たい植物が巻き付くような感触だ。

「ある。もう一つだけ」

「え !? 」

「一ノ瀬  涼。この力を上手く使い、囚人生活を上手く送る方法を教えよう。

 その代わり、調べて欲しいことがある。この『城』からの脱獄に関する事だ」

「 !? 分かった ! 聞くよ ! 」

 翡翠はソッと涼を抱えあげると、デスクのそばの椅子に座らせる。革張りでリクライニング用に置かれた物だ。

 翡翠はその側、仕事用の椅子に座ると、机の鍵を開け、引き出しを開けると更に二重底になっている場所から小さな桐の箱を取り出した。

「何が入っていると思う ? 」

「知らない。そういうオカルトな能力は持ってないから」

 翡翠がそっと箱を開けると、そこには人形の瞳、『ドールアイ』の片目が入っていた。

Continue to read this book for free
Scan code to download App

Latest chapter

  • 強制狂葬 狂眼ドール   12.それぞれの論理

     半年。 たった半年で澄子は手順を済ませ必要な物資を揃え、知り合いのツテで協力者を海久寺へ呼び出していた。 そこには国籍、年齢関係なく、普段は神職者としての皮を被った呪術師ばかりだった。呪い屋や霊媒師も存在した。「本当にありがとうございます」 澄子が深々と三指を付き丁寧に頭を下げ礼を言う。「なに……我々も、自分たちの集大成としては興味がありますゆえ」 一人の老人が人の良さそうな笑みを浮かべて澄子に理解を示していた。 他の者も頷く。「俺は完全に実験ですね。『城』が作動するまではお願いします。そのあとの『海久さんがもし管理人の席を強奪されるようなことがあったら、貴女のご遺体を人柱として『呪いの城』へ変化させる』。これは俺の専門分野なんで、ワクワクしますね」「これこれ、それでは海久さんが殺されると言っているようではないか」「……でも、霊視では見えてるんですよね ? 」 呪術師の男が霊能者へ話を振る。「ええ。申し上げ憎いのですが……恐らく、翠さんは今より攻撃的になるかと。それが更生として本当に正しいのか……」「更生云々は今の話でしょう ? 今、しっかりお仕事されて頑張ってるんですよね ? 」「はい。近くのアパートに住むと……今朝方出ていってしまって。知人伝いに連絡が取れる範囲ですし、保護司が肯定的で止めきれなくて」 翠は結局、その日の朝出ていった。 この客人の面子と、自分の死後の話に懐疑的だった翠は遂に癇癪を起こして出ていってしまった。小一時間程してから、保護司の連絡で話し合い、許可せざるをえなかった。「二十二歳でしょう ? そりゃあ前科があったとしても、海久さんが毒親になってません ? 普通に実家出る年だし」「まずは様子を見て、我々は死後の事を考えましょう。根本は彼の地獄行きを食い止め、地獄行きになる魂の安住の地を創る事が目的です」「それは同意で

  • 強制狂葬 狂眼ドール   11.自立の阻害

    『海久、出鱈目な事を言うものではないよ』 海久(かいきゅう)は澄子の僧名である。澄子は師である本尊の住職に己が見た白昼夢を告げた。 だが住職から返ってきた言葉は澄子の望んだものではなかった。「はい……取り乱しまして……申し訳ございませんでした」『……。そりゃあ、こんな仕事だ。何か不思議な体験をする事もあるだろうけれどね。でも多くの日本の寺院はオカルト事の面倒を受け入れたがらない。一部には需要があっても、檀家さんなんかは安住の地としてお墓を買うだろう ? そんな場所で悪い憑き物を祓っているなんて聞いたら、その悪い気が留まるんじゃないかと疑ってしまう。 貴女を信用した者程、僧侶としての信用を失う』 寺でどうこうという問題ではない。「翠…… ! 」 死後の運命を変える。捻じ曲げるその手法の手掛かり一つでも掴めればと思っていたが、何も得られず頭を抱える。 そこへ仕事を終えた翠が戻って来た。「ただいま。 あのさ、少し話があるんだけど」 澄子はぐったりしたまま翠へ向かって振り返る。「店長の知り合いの工場の寮で、空きがあるんだって。人が住まないと傷んじゃうし、しばらく一人暮らししないかって話が出てて」「駄目よ」 澄子がキッパリと答えた事に翠は多少気が立ったが耐える。「保護司の田村さんにも同席してもらったし、大丈夫だって言われて……」「田村さん !? あんた、そんな大事な話。先に自分だけで決めてきたの !? 」「……普通なら皆、大学卒業の年だし。合わせて自立してもいいんじゃないかって」「駄目だよ ! あんたね、そんなお気楽にやっていけると思ったら大間違いだよ。徳を積むんだ今以上に ! 」「別にここを出たいとかそういうんではなくて、一度外に……」「いいかい ? 一度し

  • 強制狂葬 狂眼ドール   10.海久寺での償い

     平成元年──天音 翠は澄子に連れられ、海久寺へやって来た。 師である住職から告げられた条件があった。 この海久寺の管理である。 澄子は髪を纏め、御本尊から離れ、翠と共に移り住むことになった。 朝早く起き、経を上げ、子供たちの様子を見ながら作業を割り振り話を聞いては説法を続ける。 下は十歳、上は成人もいた。この時、翠も成人を迎えていた。「翠、玄関のサッシに砂が沢山残っているよ。箒ではいておいで」「やったはずなんだけどなぁ……」 翠の肌はすっかり綺麗になり、身長も驚く程伸びた。染髪した金色の髪が揺れるのを後ろから見た澄子は、翠が年相応の生活をしている事に安堵していた。 寺の清掃が終わり次第、翠は提携先の就職先へと働きに行く。 子供たちもその姿を見ながら更生出来るのだと信じて生活を送るようになる。 成人のように刑を受けることも必要な場合もあるが、刑罰を与えたからと言って全員が反省後悔をする訳では無い。 翠も今は不便もあるだろうが、それは過去の罪は消せはしないのだから……。 澄子はいつも、その当時の事ばかりを思い出していた。 本堂に入ると、何気なく経を上げ始めた。(どうか……何事もなく、天寿を真っ当出来れば……) そう思い思わず木魚を叩く手に力が入る。 その時だった。 澄子の脳裏に見知らぬ土地の風景が突然押し込まれるように視えた。 轟々と燃え盛る炎に細い道。その地面に散らばる剣と釘の山。 息を吸えば喉が焼ける。至る所から人の叫びが聞こえるが姿は見えない。後にも先にもこの足の踏み場もない道の上を先に行かなければならない。 その先に何者かの背が見えた。 澄子は手で火の粉を払いながら先へ進もうとするが、とてもじゃないが横からも容赦なく噴き出す炎に目を細める。 前を行くその者も恐る恐る歩いて、皮膚を焦がしながらフラフラと立っていた。

  • 強制狂葬 狂眼ドール   9.天音 澄子と翡翠の過去

    「……彼女か」「うん。初代管理人……」「おい、これ」 京が頭蓋を見るよう二人を呼ぶ。 彼女の頭には外傷を受けたと思われる大きな凹みがあり、頭骨が割れていた。「酷い……」「……」「京 ? 」 京はその骸をもう一度見た時、絶句してしまった。「白骨化してるし臭いもねぇ。けど、火葬されてねぇよな ? 」 涼も目を丸くして柩の中を覗く。「う、うん。髪が残ってるもんね」「しかし、魔法の棺桶って訳じゃないだろう ? 直後からここは腐敗臭に侵されたはずだねぇ」「普通の神経じゃねぇ。一度壁に埋めて隠し通す奴はいるが、この蝋燭を見る限りじゃ丁寧に取り扱ってるようだしな」「……。翡翠なら……やるかもね」 ミイラ化したその頭のそばに、小さなメモ帳が置いてあった。「これ、何か書いてあるんじゃないのかい ? 」「見せて」 涼がそっと手を伸ばし中を開いた。「日記だ……。「十一月二十二日、今日は久々に実家へ帰る。甥と姪も正月休みを前倒ししてくれて、二年ぶりに会えることに期待を……」。甥って……」「翡翠だよな ? 」「続けるね」 涼は再び初代管理人の日記へ視線を落とした。 □□□ 十一月二十二日。 澄子はその日、都会の喧騒の中に再び向かっていた。久々に実家へ帰るのだ。 天音 澄子──翡翠の伯母でこの時五十代後半だった。自身の育児を終え、夫と死別した事を境に、仏門へと歩みだした。 師となった寺の住職は厳しい人ではあったが、中年女性である澄子の意思が強いことを見ると、ある条件を提示し澄子

  • 強制狂葬 狂眼ドール   8.翡翠の隠し部屋

     プライドが翡翠を連れ出した頃──  看守ドールの消えたドアの前で、涼と京、フェンランはおかしな現象を目の当たりにしていた。「……鍵が……」 囚人塔から執務室のある塔へ向かう渡り廊下の扉。厳重に鍵のかかった三枚の扉全ての鍵が開いていた。「これは……。  あの看守達には不手際という物がない。  つまり、『城』が望んで開けたのか……」「正確に言うと、涼に来て欲しいってところだな。  お前、なんともないのか ? 」 京がそばにいる涼を見ると、手にいていた布を下ろしドールアイをペタペタと触っていた。「紫の……止まった……」 ドールアイから染みていた藤紫のドロリとした液体。今は出ていなかった。  しかし涼の眼は恐ろしいほど深い紫に変色していた。「……大丈夫。行こう。  プライドの奴、思ったよりまずい時間稼ぎしてる」「まずい ? 」「囚人達に初代管理人の事も全部バラす気でいる」「……プライドに言ったのは間違いだったか……」 フェンランが眉間を抑えるが、涼はなんでもない顔で首を振る。「大丈夫。もう止まらない。『城』が動き始めてる」『城』が動く──それが何を意味するのか、恐ろしくて京もフェンランも聞き返すことが出来なかった。 涼は執務室の前まで来ると、ドアノブに手をかける。 キィ…… 執務室も同じく。  鍵はかかっていなかった。「翡翠がこっちの塔にいるうちは鍵かけて出るのにな」「『核』が開けてくれたんだろうね。そこまでして俺に何か見せたいみたい」「見たら余計呪いが進みんじゃねぇの ? 」「見ずに進むなら、見ておきたいもん」 スンっと返事を返す涼に京は少し呆れた顔で一緒に執務室へ入った。 紙の匂いと古い木材の匂い。決して新しくない部屋の持つ独特なカビ臭さ。「懐かしい……わたしはここへは『城』に来た時以来、来てないんだ」

  • 強制狂葬 狂眼ドール   7.傲慢

    「さぁ、始めようか」 プライドは夜間、涼たちが房から抜け出したのを最上階から見下ろしながら手摺から離れる。 房に戻りソファへ沈むと、使いに行かせた部下を待つ。 プライドのそばには涼の服を着たルストが壁を向くように疼くまっていた。頭を隠すようにプライドの足元に、ロープで縛られて。 そのうち、あの革靴の音が響き出す。 妙に取り乱したように早足で歩くその男は、プライドの房の前で止まった。「プライド……何をしている」「何って……見た通りさ。 管理人。君は涼を特別視してるらしいね。この通り、涼は俺の手中に落ちた」「監禁が、か ? 」 今、足元にいるのはルストだ。涼ではない。 だが翡翠にその後ろ姿の判別は出来なかった。「……その割に焦ってる」「なんだ ? どういうことだ。涼を解放してもらおうか」「……いいよ」 プライドは足元にいるルストをトントンと叩く。翡翠は起き上がったルストの姿にすぐプライドが自分を騙したと気づいたが、それほど事の重大さを感じていなかった。 バンッ !!「 ! 」 他の手下がプライドの房に翡翠を閉じ込めた。 警棒を掴みかかる手をプライドが捻りあげた。「ああ、本当だこの感触。管理人、貴方もやはり人形だ」 ルストが巻かれていたロープを解き、翡翠を縛り上げていく。「少し話したいなって思ったんだけどさ。都合の悪い話になったら貴方は恐らく逃げる。 だからこんな方法をとったんだけど……やっぱり、涼は特別なんだね」「特定の囚人を特定視はしない」「貴方はしてたでしょう ? 京の話じゃ、逆に彼の方が貴方に警告していたと聞いたけど」「なるほど。さてはサタンの火事はお前が首謀者か ? その地位を手に入れるために」「まさか

  • 強制狂葬 狂眼ドール   5.嵐の前

     朝。 涼が目を覚ますと、京は隣のベッドにいなかった。 体を起こしてベッドの端に座り、涼は記憶を遡る。 人形の自分の細い膝の上で組んだ手の指先に、傷が付いていた。 昨晩、京の口の中のドールアイに触れようと……その瞬間に牙を向けられた。 一度翡翠に相談してしまいたい。 全て話してしまいたいと願う。 しかしそれは自分の終わりを意味するような気がして出来なかった。何より、囚人二日目にして管理人に泣きつくことは許されないだろう。 一度立ち上がるが、何をしていいか

  • 強制狂葬 狂眼ドール   3.裏切り者の尻尾

    「食事が終わったら自由時間。と言っても昼のような作業は禁止。一階のパーツ屋も閉まってるし、畑も駄目。各自なるべく自分の部屋にいるかシャワー浴びるかだな」 房に戻った涼は京から流れを聞いていた。「その後、翡翠が就寝の合図に来る。看守役の人形が房の鍵を締めて就寝だ」「看守役の人形って ? 囚人じゃないのか ? 」「ああ。初代管理人が死んだ時、同じく看守達も姿を消したんだ。だから今は『核』が看守役の人形を創ったってわけ人形ってよりロボットに近いな」「確かにこの房の鍵を翡翠さんだけでしめるなんて無茶だもんな……」

  • 強制狂葬 狂眼ドール   2.棲み分け

     食事は朝晩二回。 体感時間で皆、なんとなく食堂へ向かうだけだ。 涼と京は二人向かい合って座る。 食べるものは選べない。 食堂にいるシェフ姿の人形が勝手に囚人のトレイに皿を置く。乱雑で、無言。目も合わない。 実に作業的な流れだ。 しかし、その皿に乗った食事に涼は言葉を失っていた。「食べねぇの ? 」 京が固まったままの涼を不思議そうに見た。「いや……監獄的なイメージがあったから……もっと自由度の少ない飯が出てく

  • 強制狂葬 狂眼ドール   5.グルーミングルーム

     執務室へ来るまでの囚人たちの視線に堪えた。涼はドアが閉まると大きく息をはいた。「大丈夫か ? 」「……はい。まだ、自分の……なんて言うか、無害さを分かって貰えないんだと思います。それに一日に癒せる人数もままならなくて」「成程。しかし貴重なものほど供給は薄いものだ。期待を持たせる程度で、人々は感謝し、抑制が効くと思うが ? 」「そんなものですかね ?  あと、俺の眼。癒しの力を使うごとに濃くなってるんです」「力を使うごとに ? ……見せてご覧」 白い手袋がスっと涼の前髪を

More Chapters
Explore and read good novels for free
Free access to a vast number of good novels on GoodNovel app. Download the books you like and read anywhere & anytime.
Read books for free on the app
SCAN CODE TO READ ON APP
DMCA.com Protection Status