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15.ガーデンでの詮索

Penulis: 神木セイユ
last update Tanggal publikasi: 2026-02-19 17:00:00

 中庭に出るには、まず一階の闘技場があった場所まで階段を降りる。

 グレーチングの冷たい材質に京の履いた黒いブーツの靴底がガツガツと音を立てる。そして誰もがこの慣れた狭い世界の中で、この足音が誰の物か判別が付いている。

 しかし、ついつい振り返って見てしまうのは後ろにちょこちょこついて行く涼の姿だ。

 ふわふわした銀色の髪に、顔付きより幼く見える体付き。ここに来る者のほとんどは成人で、京と涼は互いに最年少クラスの幼年だ。

 それも一人は凶暴。一人は翡翠が目に掛けている、となれば自然と興味の対象になる。

「散歩かい ? 袋をやろうか ? 花瓶が割れちゃいかんだろ ?」

 それでもこういう者はいる。

「要らねぇよ ! 」

 京が呆れたように老人を睨む。

「涼、こういうの簡単に受け取るなよ ? じゃあ袋くださいなんて、今の話に乗ったら「代わりにそのナイフを寄越せ」とか言われるかんな ? 」

「おじいちゃん……」

「し、しねぇよ〜」

「いや、頻繁にやってんだろアンタ。とにかく、物の貸し借りとかマジで。俺、最初しか言わねぇかんな。

 その後で起きたトラブルでお前がどうなっても知らねぇから」

 そう言いつつ、京は涼がここへ来た時から世話を焼き続けている。そんな京の後ろ姿を追いながら、涼は平常心を装いながら内心ドキドキしていた。

 京の体に纏わり付く金色にも似た輝かしい色。『楽』の感情。

 房の中で涼の体に触れ、京は既に何かを感じ取っている。それからだ。この感情が吹き出すように大きく肥大して、中庭に誘われたのだから恐怖しかない。

 それでも涼は断ったら不自然と自身に言い聞かせ、行く他の選択肢がない。

 闘技場まで降りると、周辺にある商売房の中心に短い廊下があった。

 どう見ても先にあるのはエントランスルーム。その奥には大きな扉が見える。

 出口だ。

「なんか欲しいもんある ? 」

 商売房を親指でクイッと指しながら京は涼に尋ねた。

「それだけど、ここは金ってないんだよね ? あの店で買うのも物々交換だけなの ? 」

 すると、京は難しい顔をする。

「そうではねぇけど。例えばこれから外に行くだろ ? 花や木が採れる。そういうものを欲しがる奴もいるから。物々交換もやりようだな。

 まだ会ったことねぇと思うけど、生前生まれつき足が悪かった奴はここでもそのままなんだよ」

 エントランスへ向かいながら京と涼は歩き出す。

「生まれつきってのが納得いかねぇと思わねぇ ? だって事故で足がもげて死んだヤツと、生まれつき足が悪いやつ、二人いたとして、ここで与えられる人形の姿は事故でもげて死んだやつはカウントされねぇ。一方生まれつきのやつは足は『城』が与えてくれねぇの」

「確かに。融通の利かない話だね」

「だろ ? 金が絡んだ商売じゃねぇから、パーツ屋なんかは、そういう奴にはほぼ無償で取り付けしてやってんだ」

「……割と良い奴じゃん」

「その代わりオシャレ目的とかはすげぇボッタクられるぜ。ギャンブル用の紙幣か、ファイトで戦う事を強要するんだ」

「え !? 強要 !? 」

「あくまで、ファイトで出た破損パーツを集める権利者だからな。パーツを集めたいし、売るも売らねぇもそいつ次第なのさ。こだわりがねぇなら素体のままいた方が安全圏だ。

 さ、こっちだ」

 エントランスは宮殿のよう。

 ソファやピアノ等があってもおかしくない神殿のような造りで高い天井には絵が描いてある。

 床を見ると家具が動いた形跡がある。傷や日焼けの類だ。端には深紅の布の切れ端があった。恐らく絨毯もあったのだろう。

「もしかして、物があったけど盗まれた ? 」

「ははは ! 当然そうなるよなぁ ? 俺がきてからも2、3度、翡翠が何やら置いてたけど、半日で無くなったぜ」

「……」

 ろくでもないと言いたげに涼が頭を抱えた。

 その直後──ギィィ……──開け放たれた扉の先に広がる美しい花園に、開いた口が塞がらなかった。

「……うそ…… ? ちゃんと、花だ ! ……咲いてる ! 外じゃん ! 」

 喜ぶ涼の後ろを、扉を閉めた京がついて行く。

「うわぁ。すっごい。俺日本庭園好きなんだよね。この松とか最高。紅葉と桜が同時に咲いてるのは不思議だけど ! 」

 上機嫌になった涼をガーデンチェアに座らせ、京から早速切り出される。

「なぁ。翡翠に何を頼んだんだ ? 」

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