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第2話

Penulis: ASAMI
last update Tanggal publikasi: 2026-06-30 08:12:40

あまりにも分かりやすい悪意だった。

生まれてから今まで味わってきた理不尽のほとんどは、蓮と、その周囲の人間によるものだった。

それでも、これ以上、彼の誕生日を台無しにしたくない。

彼女の嫌味に応えることなく、私はただ礼儀正しく頭を下げた。

「使用人だと思わせてしまったのね。誤解させてしまってごめんなさい」

震える手で、一週間徹夜して書き上げた楽譜を蓮に差し出す。

「これから毎日、よく眠れますように」

蓮は無言でそれを受け取り見下ろした。

そして、ふっと笑う。

「……これがお前の音楽か?」

「……え?」

「この程度で玲奈の楽譜と並ぼうとしているのか。図々しい」

……違う。

今までの曲も、私が作ったもの。

あの女が描いたものじゃない!

蓮は誤解してる!

全部、私のっ……!

言葉にできない叫びを飲み込んだ、その時。

蓮がポケットからライターを取り出し、カチリと、乾いた音が響いた。

「あ……やめてっ!」

あっという間に炎が紙を飲みこみ、一瞬で燃え上がった。

「こんなゴミが音楽だと?こんなものしか描けない価値のないおまえの手は、これからも床を拭いていればいい」

嘲笑が広がる中、私は動けなかった。

私の音も、想いも、三年間費やした時間も、全て灰になっていく。

どれだけ努力しても結局、この人との関係が変わることはないのだ。

その時。

「きゃっ!」

短い悲鳴が上がった。

見ると、玲奈が床に倒れ込んでいる。

その手から溢れたスープが床に広がっていた。

「今、この子がわざと私にぶつかって、スープを……」

玲奈は涙を浮かべ、私を指さした。

「え……違……」

「何をしている」

私の否定の言葉を遮るように、短い声が空気を切り裂いた。

蓮は私を一瞥もせず、玲奈に駆け寄ってその身体を抱き上げた。

「大丈夫か?」

「スープが熱くて、少し火傷を……」

震える玲奈の声を聞いた瞬間、蓮の目が据わった。

「謝れ。今すぐ、謝れ」

冷徹な命令。

「謝れないのか」

その一言に、胸が締め付けられる。

違うと言っても信じてもらえない。

心の奥で、何かが静かに切れた。

――もともと、この場所は私のものではなかったんだから。

玲奈が勝ち誇った目を隠し、善意のふりをして蓮の胸に縋る。

「蓮、もういいわ。彼女も悪気はなかったのよ。私、少し驚いてしまって……。ここから、離れたいの」

蓮は私を見捨てるように、二度と振り返ることなく歩き出した。

置いていかれる。

実際に火傷のような痛みを抱えているのは、私の方なのに。

「やっぱり、あの子が本命なんだ」

「婚約者なんて、すぐに終わりでしょ」

背後からの囁き声は、もう私の耳には届かなかった。

足元に落ちた灰を見つめ

――もう、いいや。

心の中で、そう呟いた。

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