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3. コミュニケーション

last update تاريخ النشر: 2026-05-11 17:49:01

数カ月後

 桑島君は大分仕事を覚えてくれた。

 きちんと自分の考えを説明できるし私が思いつかない発想があったりして面白い。

 わからないことをちゃんと質問できるのも良いことだ。

「先輩、これ発注お願いします」

「……どうしてこの納期なの?」

「え、発注先が提示してきたのがこの納期だったので」

「この納期で間に合うのか他部署に確認は?」

「すみません、してませんでした」

「ならすぐする」

「はい」

 だいぶ考えられるようになったけどたまに抜けている。

 どういう所で抜けやすいか纏めて注意するポイントとして教えてあげよう。

 ポイントをまとめるついでにちょっと休憩もしようかな。

 そう思い休憩室に行くとちょうど同期がお茶を飲んでいた。

「頑張ってるね」

「うん、いろいろ努力してるのが伝わってくるよ」

「奈美もね」

「私はそこまで……」

 私は褒められるほどのことはしていない。

 頑張っているのは桑島君だ。

 言われたことを理解して自分なりに行動している。

「ただちょっと指導が厳しいって声も聞こえるよ」

「そこまで厳しいつもりはないんだけど」

「まあ、奈美は上司が厳しかったからね」

 言い方は注意しているつもりだけどもっとポイントを絞って要点だけを指摘しないといけない。

 相手の感情否定とか人格批判にならないようにしないと。

「まあ、コミュニケーションは取ったほうが良いよ」

「ありがとう、頑張ってみる」

 コミュニケーションか。

 といっても仕事中に雑談する訳にもいかないしどうしても定時後になるよね。

 となるとご飯を食べにいくぐらいかな?

 でも上司とご飯って楽しいんだろうか……。

 休憩所から戻ると桑島君が一生懸命働いている。

 よく頑張ってるよね。

 下手に話しかけて邪魔しちゃいけないけどこれもコミュニケーションの一環かな。

「どうかな?」

「あ、先輩、順調ですよ」

「それはよかった」

「何かありました?」

 私の態度を見て何か言いたそうなのを察したみたいだ。

 ここまで来たら勇気を出すしかない。

「本当に気が向いたらで良いんだけど定時後一緒にご飯行く?」

「いいんですか?」

「無理しなくていいからね」

「今日で考えておけばいいですか?」

「え、あ、うん」

「楽しみにしています」

 よかった、思いのほか食いつきがよかった。

 上司とのご飯なんて気を使うだろうし少しでも楽しくいてもらえるように頑張らないと。

 あ、上司がご飯誘うんだからおごるぐらいは当たり前よね。

 後でお金下ろしておかないと。

定時後

 あっという間に帰宅準備が終わってしまった。

 どこかいいお店ってあるのかな。

 外食なんて全然しないし事前に調べる時間もなかったし……。

「先輩、お店決まりました?」

「ごめん、まだ……」

 あああ、どうしよう。

 せっかく誘ったのに待たせてしまってる。

 こんなのじゃ気分を悪くするだけだ。

 あまり慣れない作業で混乱していると桑島君が声をかけてきた。

「先輩、僕のお勧めのお店行きませんか?」

「でも、私が誘ったのに……」

「先輩が誘ってくれた、僕はお店を紹介した、ほらWin-Win」

「ふふっ、何に勝つのよ」

 普段と違う桑島君の態度を見て気が楽になった。

 本人がそういうなら構わないよね。

 案内されたのはけっこう大きな居酒屋だった。

「ここ、僕の知り合いがやっているお店なんですよ」

「すごいね、繁盛してる」

 席に着くと早速お通しが出てきた。

 これだけのお客がいるのによくテンポよく提供できるなぁと思う。

「何頼みます?」

「好きなの頼んでいいよ」

「ならこれとこれと……お酒はどうします?」

「私お酒飲めないんだよね、すぐ酔っちゃって」

「すぐ酔えるなら安上がりでいいじゃないですか」

「駄目駄目、前後不覚になるから」

 さすがに酔って恥ずかしい所は見せられないので、飲み物はウーロン茶をお願いした。

 桑島君も私に付き合ってソフトドリンクを頼んでいる。

 さあ、注文が来るまでの時間に何か話さないと。

 でも桑島君が話したくなるような楽しい話題って何だろう。

 仕事の話は楽しくないだろうし……。

 何を話すか悩んでいると桑島君の方から話し始めた。

「先輩は長いんですか?」

「え、あ、そうだね、もう10年目かな」

「え!? でも若いですよね?」

 若い、かぁ。

 改めて年齢を考えるともう28。

 時間がたつのは早いなぁ。

「28だからそこまで若くもないよ」

「全然そうは見えないです」

 お世辞かな?

 そんなに気を使わなくてもいいのに。

 この話をきっかけに、ある程度プライベートなことも話した。

 いろいろ多趣味なようでスノボのために海外にも行くとか。

 行動力がすごいなぁ。

「今日はご馳走様でした、楽しかったです」

「うん、それならよかった」

「また誘ってくださいね、今度は割り勘で」

「そうだね、また今度」

 なんとか円満にコミュニケーション出来たと思う。

 でも「今度」か。

 きっと社交辞令だろうし、無理して誘わない方が良いよね。

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