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第一章:見えない争いの始まり

Auteur: Kaya
last update Dernière mise à jour: 2025-09-19 18:29:00
この計画を成功させるための第1のポイント。

それは《ルイスが私を助けた理由》だ。

つまりルイスがエルミニオに反逆心を持っていると疑われることもなく、禁忌の力を使っても仕方なかったと厳罰を免れる最もな理由。

考え抜いて二人で出した答えは、国王のロジータへの寵愛を利用することだった。

「俺がロジータ・スカルラッティを助けたのは、父上への忠誠心からでした。」

ルイスが透き通るような声で言うと、マルツィオの表情から怒りが引いていくのが分かった。

「何だと?私への忠誠心?お前が?」

「はい。私は父上がいかにスカルラッティ家を大切に思っておられるかを知っています。

それはロジータ・スカルラッティに関しても同じこと。

そのロジータを兄さんが暗殺したとなれば、王室は大損害を被ることになったでしょう。

手に入るはずだった権力はおろか、豊かな軍事力までも失っていたはずです。

最悪、スカルラッティ家との戦争まで視野に入れなければならなかったでしょう。

今の兄さんはリーア・ジェルミにのめり込んでおり、浅はかにもロジータを暗殺しようとしました。

ですから俺はそれを阻止したのです。父上のために。」

淡々とルイスが打ち合わせ通りに言葉を紡いでいく。

ルイス、台詞が書いてある台本があるわけでもないのに違和感もなくこうもスラスラと。

さすがはこの世界のスパダリ(私限定)だわ!

「陛下。私はエルミニオ様に殺されかけましたが、ご覧の通り生きています。

しかしあの時私はエルミニオ様に剣で心臓を突き刺され、瀕死の重症を負っていました。

そのためルイス様はやむを得ず禁忌の力を使ってくれたのです。

ーー私のために!」

ますます私も演技に力を入れる。

胸に手を押し当て悲壮感を強く表情に押し出す。

こうすればルイスが私=ロジータという価値のある人間を救った、というシナリオが出来上がる。

禁忌の力を使った理由がやむを得なかったと言えば、さすがのマルツィオも罪には問えないはずだ。

「ロジータの言う通りです、父上。

あの時ロジータは瀕死の状態で、禁忌の治癒力を使うしかなかったのです。」

後に続くようルイスが畳みかける。

「それは本当か?ーーあの治癒力を。

しかし、それが本当なら今回ばかりは不問にするしかないな。

それにしても、エルミニオの奴め!

出自の怪しい女に入れ上げるなとあれ
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