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第二章:エルミニオは不愉快な感情を知る

Author: Kaya
last update Last Updated: 2025-10-30 19:02:00

それに二人が結婚式を挙げた直後から、貴族たちの動きが慌ただしくなっている。

ユリには中央貴族たちを中心に、ダンテには地方の領主たちに不審な動きがないかを探ってもらっている。

スカルラッティ家の後ろ盾を失った今、四方八方に気を配っておかなければならない。

いつ弱点を狙われ、王太子の座を奪われてしまうか分からないからだ。

「やはり第二王子派の動きが活発になっているようですね。

ここぞとばかりに、ルイス様を王太子の座に押し上げようと狙っているようです。」

ユリが調査報告をしに執務室を訪れた。

その顔はどこか物憂げだ。

「やはりそうか。

今後も注意深く見張っていてくれ。

それで、ルイスやロジータに何か動きは?」

「いえ、今のところ特には。」

「変だな。そろそろルイスが本格的に何かしてきてもおかしくないのに。」

腹黒い俺の弟、ルイス。

これまで俺の後ろで従順なフリをしていたが、ついに本性を表した。

あいつは俺の婚約者であるロジータを奪ったのだ!

スカルラッティ家の後ろ盾を得るために!

だが……

予想に反してルイスが表立って何かを仕掛けてくるということはなかった。

「まさか本当に恋愛結婚だとでも言うのか……?

は!笑わせるな!」

俺は思わず、机の上にあった未記入の羊皮紙をグシャリと握りつぶした。

そんなはずない。

心臓を突き刺されたあの瞬間でさえ、ロジータは俺に愛を乞うていたじゃないか……!

「エルミニオ様。

今宮廷では、二人のラブロマンスが囁かれています。

“王太子”に裏切られたロジータ嬢、ルイス殿下によって真実の愛を知る。

または、ルイス第二王子とロジータ第二王子妃は初夜の日ずいぶんと激しく愛し合った……」

ドン!と俺は机を激しく叩いた。

「そんな話は聞きたくない!」

俺が不機嫌になるとユリは

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