LOGIN宝石店を出てからミーナはカレンに案内されながら色んな店に寄り、手には買った服や旅に必要な生活必需品などが入った袋を持っている。
重くなった荷物を持っているミーナを見て微笑ましく思ったカレン。 笑いながらミーナに声をかけた。 「うふふ、いっぱい買い物できて良かったね。ミーナちゃん。」 「はい!本当にありがとうございます、カレンさん。」 「いいのよ。仕事の休みは私1人で買い物してるからあなたみたいな女の子と買い物できて楽しかったわ。」 「えへへっ。そういえばカレンさんは何の仕事してるんですか?」 「私?私は……」 「おーい、カレーン!」 カレンが答えようとした時、2人の後ろの方からカレンを呼ぶ声が聞こえてきた。 誰だろうと振り返ると手を振りながらやってくるのは男の人だった。 一瞬彼氏かなと思うミーナだが数秒後その人が誰なのか一瞬で分かった。 その人とは。 「え、エバルフさん!?」 この人はこの前までグレンを殺そうとしていた騎士団の1人のエバルフさんだった。 向こうもミーナとカレンが一緒にいる事に驚いていた。 「君は、紅の悪魔祓いと一緒にいたお嬢ちゃんじゃないか!?なぜカレンと?」 「あら、あなた達2人とも知り合いだったの?」 「ああ。この子はこの前団長に報告した悪魔祓いと一緒に旅してる子だ。…この子がいるって事はまさかこの国に紅の悪魔祓いがいるのか?」 ミーナを見てグレンの事を思い出したエバルフ。 焦っているのか額から汗が流れ落ちていた。 それに気づいたミーナはエバルフを気遣うように返した。 「大丈夫ですよ。この国に来てからグレンと私は別々に行動してるますから。」 「ホッ……そうかそうか。じゃああいつは今いないんだね?」 一瞬だけ安心したため息を吐くエバルフを見てカレンは笑いながら馬鹿にするように。 「あはははっ!何ビビってるのよ。ほんっとに情けないわねぇ。」 「うっ、うるさい!お前はあの化け物を見てないからそう言えるんだ!」 「あんたと一緒にしないで欲しいわね。どんな敵がいても私は負けずに挑むわ。あんたと違ってね!」 「何だとー!」 2人が言い争ってるとそこに割り込むようにミーナが口を出した。 「あのー。カレンさんの仕事ってもしかして…魔法騎士団の騎士ですか?」 「ええ、そうよ。ちなみに私は10騎士長でこの人(エバルフ)よりも上の位よ。」 指を差しながらエバルフを見下するカレン。本当の事を言われたエバルフは何も言い返すことが出来なかった。 「えぇー!エバルフさんよりも上の人なの!?…すごいですね。女性なのに戦う騎士ってカッコいいです!」 「確かに戦ってるよな。何度も何度も懲りずに合コンに参加しては男の取り合い合戦で敗ぼ…いだだだだ!!」 エバルフが余計なことを言ったためカレンはハイヒールの踵でグリグリとエバルフのつま先を強く踏んだ。 「あれは!…ただの…!遊びでしょ!私だって本気出せば……あっ、ごめんねミーナちゃん。こんなはしたない所見しちゃって。」 ミーナに喧嘩してるところを見られてる事にハッと気づき我にかえるカレン。 「あははっ、2人は仲が良いんですね。」 「「誰がこんな人(こんな奴)!!」」 ミーナ達3人が会った時と同じ時間に事件は起ころうとしていた。 彼女達は今この国の東地区にいるのだが事件のきっかけはこの国の西地区だった。 普段通りの街の風景の中に1人だけ不自然な行動をする男がいた。 その男の体はガクガク震えていて今にも倒れそうに歩いていた。 「あのー、大丈夫ですか?何だか具合悪そうですけど。」 「……」 通りすがりの親切な人が声をかけてもピクリとも反応しないその男。 すると急に震えるのをやめピタッとその場に立ち止まった。 「…せ…め…」 「え?」 そして数秒後、道路のど真ん中で親切な人の胴体に大きな穴が開いていた事を周りは気づく。 そして次々に発狂の声が聞こえ始め、人々は混乱状態になりながら逃げようとした。 「せ…めつ。…せんめつ………殲滅だ。」 そして男は胴体に刺した大きな爪を抜き取り付いた血を振り払った。 そう、こいつの正体は悪魔。 これがイフリーク史上最大の事件へと繋がるのだった。 突然、平和なイフリークに鳴るはずのない緊急のサイレンが鳴った。 イフリークの周りからは魔法で出来た防壁が展開され、街は避難体制に入ろうとしていた。 『国民の人たちは速やかに避難してください!そして、魔法騎士団は直ちに出動せよ!場所は西地区の商店街だ!』 このサイレンを聞いていたミーナ達。 「急にどうしたんだろう…さっきまであんなに平和だったのに!」 「確かに…!この国でサイレンが鳴る事はた滅多に無い…。カレン…いや、10騎士長!急いで西地区に行くぞ!」 「分かってるわ!…ミーナちゃんはここで待ってなさい!」 するとカレンは服のポケットからペンダントを取り出し開くと魔法で騎士団の鎧に一瞬で着替えた。 そして2人はエバルフの風で2人を包みこむと高速で移動し、ミーナは声をかける前に置いて行かれた。 「私…また何にも役に立たない…」 仕方が無いのでミーナは人が逃げていくところに紛れて走った。 すると前から来た1人の男にぶつかり後ろに倒れた。 「いたた、君大丈夫かい?」 ミーナの前にいた男の人は、二刀の長刀を腰にぶら下げ騎士団の鎧を纏っていたが黒髪で幼い顔だったのでとても騎士には見えなかった。 「ごめんなさい、僕怪我は無い!?」 完全に少年と思っているミーナ。男は少しムッとなったが急いでいたのでスルーした。 「僕?…まあいいや。とりあえず君はどこかに逃げるんだ…っとすまない。」 すると男は腕に付けてる通信機とやりとりし始めた。そして再びミーナを見ると。 「…今情報が入ったが西地区には悪魔が暴れてるそうだから早く避難しなさい。ここは騎士団に任せ…」 「悪魔…ですか?」 「え?」 するとミーナはその男の肩を握ると慌ただしく揺さぶりながら言った。 「早く行かないと!あそこには騎士団のエバルフさんとカレンさんがいるの!早く行かないと殺されてしまう!」 「…君は、2人を知ってるのか……分かった、君も一緒に来なさい。僕が連れてってやるよ。」 「え、ありがとうございます!僕は優しいね。」 「僕って言うなー!僕のことは(カイル)と呼んでくれ。」 カイルは僕と言われるのが嫌だったので本名を名乗ったがミーナは構わず。 「分かった。カイル君。」 「…もういいや、来なさい。早く12騎士長と10騎士長を助けに行くぞ!」 「はい!」 そして突然出会ったカイルとミーナは今現在悪魔がいると連絡があった西地区に向かい始めた。 この時ミーナは気づいていなかった。 今横にいるのはこの国で一番強く、そして騎士団の団長だという事を。 その頃、西地区では1人の男(悪魔)による大量殺戮が始まっていた。 悪魔に殺された人間は再び蘇るので新たな悪魔となって他の人間を殺し、悪魔は数を増やしていく。 「ひぃ……おかぁしゃん…僕だよ…僕の事忘れたの…?」 「グルルル…」 母親を殺された子供は悪魔として蘇った母親の姿に惑わされ、あっけなく殺されていく。 もちろん、人間としての感情は一切無い。 ただの食料として食い殺されるだけだった。 風の移動系魔法でやっと到着したエバルフとカレンは地獄と化した西地区の光景を目にした。 人の血によって赤く染まった町にいる人々と悪魔の姿はまるで地獄をイメージしたみたいだ。 「なんて光景だ…まるであの時を見てるみたいじゃねーか……。」 エバルフは目の前の状況と自分の住んでいた町が重なって見えた。 ーあの時の悪夢がまた襲ってくる。 「エバルフ!悪魔が襲ってくるわよ!」 カレンの声で我に返ると目の前から人間の姿をした悪魔が猛スピードで襲ってきた。 エバルフは間一髪でかわし、体制を整えると剣を抜いて構えた。 「すまん、カレン!」 「しっかりしなさい!油断して殺されたら許さないわよ!…っく!」 悪魔は鉄の棒を上から思いっきり振り下ろしたがカレンは剣で弾くと十分な距離を取った。 「なんて力なの?ちょっと弾いただけで手の痛みが…」 そして悪魔はもう一度カレンに接近し、鉄の棒を振り下ろした。 今度はカレンはそれを見切ったのか左にかわして悪魔の右腹を斬りつけた。 「ウガァァァ…ァァ…」 悪魔はもがき苦しみ、そのまま絶命した。 「さすがだな、10騎士長。」 「なめないで。…それよりも何よ、あの大群は…。」 カレンとエバルフの目の前には悪魔の集団がゾロゾロと歩いてきた。 その1番先頭には今回西地区で通りすがりの人を殺し、大量殺戮のきっかけを作った男性の悪魔だった。 「おい、10騎士長。あの先頭にいる奴、他の悪魔とは違う雰囲気だぞ。」 「そうね。いかにも強いぞってオーラが出てるわ。」 悪魔の集団を引き連れた男性の悪魔は10メートルくらい離れたところで立ち止まると後ろの悪魔の集団もそれに合わせて立ち止まった。 先頭の悪魔は服装だけ見たらどこにでも居そうな青年だが顔には黒いひび割れ線が所々に入っていた。 「これは参ったな…騎士長2人が組んでやがる。…うっとうしい、消えな。」 最後にそう付け加えると後ろにいた悪魔たちが一斉に襲いかかった。 とても2人では相手しきれない悪魔の数を剣で立ち向かうがやられるのは時間の問題だった。 あまりにも悪魔の数が多すぎたのでエバルフは魔法を使用した。 「消えろ!悪魔どもめ!」 エバルフは風を纏った剣を振ると突風の斬撃が悪魔達を次々に薙ぎ払った。 しかし、戦闘しながらの魔法は体への負担が大きいため持久戦には向いていない。 エバルフは魔法を使用したことでさっきよりも苦しそうな顔をしている。 「はぁ、はぁ、早くこいつらを殺さないと俺たちが危ない…」 すると突然エバルフの背中に激痛が走った。 「ぐっ…ヤバイ!…背中を斬られた……」 悪魔の爪がエバルフの背中を引っかき、背中からはおびただしい量の血が流れていた。 一方、カレンは少しだけ魔法で身体強化はしてるものの悪魔をスムーズに斬り倒していくがこちらも体力の限界が目に見えていた。 「なんでこんなにも多いのよ!これじゃ切りがないわ!」 「全くだ!…他の騎士長や騎士達はまだ来ないのかよ!」 エバルフは愚痴を吐きながら剣を構えている。 するとさっきから戦いに参加しないヒビ割れの悪魔が引き笑い気味で笑いながらとんでもない事を言った。 「他の騎士達なら多分来ないと思うよ。確かさっき南地区に現れた謎の悪魔をなんとかせねばとか言うてたかなー?」 南地区にも悪魔が?どうなってるんだ。 この事件はこのヒビ割れの悪魔が東地区で起こし人間を殺してるから悪魔が誕生しこの西地区で悪魔が出現するのは分かる それに悪魔が発生したこの西地区は事件が発生してから他の地区に侵入しないように閉鎖していて進入は不可能。 万が一を除いてもありえないが、その万が一があるとすれば。 「……まさか、お前以外にもう1人悪魔がいるのか?」 「アハハハ!その通りだ。俺がこの事件の元凶?馬鹿め!その時点でお前らは負け決定なんだよ!」 「そ…そんな…嘘だろ…」 今回の騎士団への命令はこの西地区にいる悪魔を駆除するのみ。 戦力はほとんど西地区にとられてるのに南地区にいきなり現れたら多くの人達の命を失うことになる。 そう考えるとエバルフは再び妹の事を考えてしまい、頭を抱えた。 「フハハハハッ!人間は馬鹿な生き物だ!わざわざ死にに来てくれるんだからな。さあ、お前ら今の内だ!その醜い人間を斬り殺せ!」 悪魔達はそう指示されるとエバルフに爪を向け、その多数の爪がエバルフめがけて伸びた。 カキィィン! もう少しで斬られそうになったエバルフの目の前でカレンは爪の攻撃をすべて剣で受け流した。 「何っ?」 カレンは攻撃の手を止めず、今度は両手に発生させた雷の魔力を3秒ほど溜めて悪魔達に目掛けて放った。 落雷の如く一直線に突き進み、悪魔達の3分の2程度が原型を留めることなく消滅していった。 「この女…なんて威力だ!」 ヒビ割れの悪魔はあまりの威力で砂ぼこりが舞い、思わず腕で顔を隠した。 「ウア"ッ!…あがっ…あぁ…ああぁ!…」 バタッ カレンはさっきの魔法が体にきたのか体を疼くませながら横向きに倒れた。 エバルフは慌ててカレンのそばにしゃがみ込んで体を揺さぶった。 「カレン!おい、大丈夫か!?…なんであの魔法を…あれは体への負担が大きすぎて使うなって団長に言われただろ!?」 するとカレンの口元からかすれるくらいの小さな声が聞こえた。 「…悔しい…」 「えっ?」 「悔しい…悔しいよ、エバルフ…。この国を愛する人たちがどうして人を殺しているの?しかもそれを守れない私たち騎士団はもっと悔しいよ!」 カレンの目からは涙が流れていた。 周りをよく見ると人々は悪魔に襲われ、逃げ惑っていた。 襲ってる悪魔のほとんどが元々この国の市民。 だったがこいつらのせいで殆どの人が悪魔化し、普段なら自分の子供、仲の良い友人、恋人だったはずの人たちを容赦なく殺していく。 こんな地獄、もう体験したくない! 変えなければ…これ以上、悲劇を生んではならない! 「10騎士長…いや、カレン。あとは俺に任せろ。こんな地獄、さっさと終わらせてやる。」 エバルフはカレンの体を持ち上げ、戦いに巻き込まれないよう隅っこに寝かせた。 「さあ、覚悟しろ害虫(悪魔)ども!今から纏めて駆除してやる!」 それを聞いたヒビ割れの悪魔は眉を吊り上げながら。 「ハァ?何言ってんだよ、お前。駆除されんのはお前ら人間の方だよ!」 それと同時に悪魔たちは一斉にエバルフを襲った。 ビュッ! 一瞬の風が悪魔の集団の間を吹き抜ける。 エバルフの周りから輝かしい風が竜巻の様に発生していた。 「吹き抜けろ、逆境をも覆す神の風ー」 そう唱えた直後、悪魔の体から徐々に斬り傷が入りそして一気に上半身が吹き飛んだ。 それは全ての悪魔だけに同じ反応が起こり、それ以外の人間は何ともなかった。 「なっ!?…ば、バカな!」 ヒビ割れの男はどういう訳かその攻撃をかわしていたので助かっていたがそれ以外の悪魔がやられたのを見て驚きを隠せなかった。 「次はお前の番だ。」 「くそ!人間如きが呪文を唱えやがって!」 「人間如き?…1つ教えてやろうか、悪魔野郎。」 「何だ!」 「俺はお前らと違って、大切な誰かを護る時にとてつもない力を発揮する。そして…この大切な国を潰そうとするお前は俺の敵だ!消えろ!!」 エバルフは風魔法で一気に詰め寄ると、剣を下から斜め上に斬りつけ、ヒビ割れの悪魔から大量の血が吹き出て、その場に倒れた。 エバルフは息を切らしながら隅っこに置いたカレンのそばに行った。 寝てるカレンにエバルフは笑顔でこう言った。 「はぁ、はぁ、カレン…護ってやったぞ…あとは、団長に任せよう。」 そしてエバルフもその場に倒れこんだ。ドグマに言われた通り朝の4時半に起きたグレンは、龍技の真髄の修行をする為にドグマの後ろに付いて歩いていた。早朝に起こされたにも関わらずグレンは眠そうな素振り1つ見せなかった。「初日で眠くはないのか?」「ああ。普段からあまり睡眠を取らない方だ。昨日はゆっくり出来た。」グレンは旅をしてる時もそうであるが、いつ自分の身に危険が起きても対処出来る様に熟睡は基本的にしない。その為、グレンにとっては明朝4時半と早い時間に起こされても睡眠時間的には十分であった。「…そうか。この程度なら生意気な口も普通に叩けるのか。よかろう、遠慮はいらんという事だな。」ドグマは余裕そうなグレンに対し、そう脅しをかける。「(そういえば、昔アガレフに修行を付けてもらう時も同じ様な事を言われたな。)」……思い出すだけでゾッとし、血の気が引いていくのが分かる。あの時は毎日失神するまでボコボコにされていたなぁ。アガレフの修行は本当にキツかった。「よし、着いたぞ。」真っ暗だった為、到着するまでどこを歩いているのか分からなかったが数十分後、ドグマが連れてきた場所は竜の遺跡にある川の上流の方だった。「川で修行するのか?」「そうだな。修行と言えば修行かな。足の裾を捲(まく)れ。今から川で魚を捕まえる。」そしてドグマはズボンの裾を膝上まで捲り上げると片足ずつ川に入っていく。そして川の真ん中辺りまで行くと水面の上で手掴みする様な構えをした。…バシャッ!素早く水面に手を突っ込み一瞬で掬(すく)い上げる。手のひらからはみ出そうな大きさの魚がドグマの手に捉えられ、捉えた魚を竹と藁で編んだ肩掛けの魚籠に入れる。そして再び魚を捕まえる構えに戻った。「…何してる?お前もやらんか。」「あ、ああ。」グレンもドグマと同じ様にズボンを膝上まで捲り上げて川に入ろうと右足を水につける。「うっ!……」あまりの冷たさに声が出てしまうグレン。朝方の気温の低い山奥の川の水。冷たくない訳が無い。「冷たいだろ?因みに魔法は一切使うなよ。修行にならんからな。」「…いや、魔法使わないと見えねえよ。」只でさえ冷た過ぎる水に慣れない中、真っ暗な時間帯で水中の魚が見えない。しかも道具は一切使わず難易度の高い手掴み漁。目を凝らして水面を見るが当然見える訳が無い。グレンは困惑してる中、隣でドグマは流れ
時は遡る事3日前。この日はカイル、エミル、ミーナが東の大国に到着したばかりの日であった。しかし、ここは北の大国と東の大国よりも更に北東部の奥にある場所。そこは一般の人が立ち入ると必ず道に迷うとされる竜爪の錯林(りゅうそうのさくりん)]と呼ばれる森林があった。その森林の中にある地面は深い裂け目や溝が幾筋も走り、獣道や細い道がそれに沿って複雑に分岐している。道はまるで生き物のように折れ曲がり、進んだはずの者を同じ場所へ戻し、方角の感覚を狂わせる。異常な磁場がコンパスの指針も狂わせる為、人の五感や魔力の流れを読めない人が立ち入れば一瞬で迷路へと変わる場所。この森林の中に1人の男が歩いていた。彼の名前は紅の悪魔祓い(デビルブレイカー)グレン。彼はレミールでミーナ達と合流したのだが、そこの国民に国を守る様に提案される。しかし、それを拒否したグレンは国民に危害を加えられた挙句、抵抗すると悪魔と言われて非難された。そしてグレンは自分のせいでミーナに危害が加わると考え、自ら1人になる道を選んだのだ。では何故彼が今この森林に居るのか?(おい、いい加減にしろ!いつまで歩き続けるつもりだ?もうかれこれ3日は歩いてるぞ?)グレンの中に居る悪魔、リフェル。本名強欲のマモンが話し掛ける。グレンはこの竜爪の錯林(りゅうそうのさくりん)に立ち入ってからかれこれ3日は経っていたのだ。「……この森、まるで生きてるみたいに場所が変化してる。ずっと同じところをグルグル回らされているみたいだ。」木々に囲まれて複雑に分岐した細い道を辿っていくも、いつの間にか元来た道に戻っている。更に元来た道をよく確認すると木々の形や生え方、地面の裂け目の形が少し違っていた。(何回この道来るんだよ!もう100回くらいこの光景見てるぞ!)「……いや、違う。よく見てみろ。この地面と木の並び方。少し違って見えないか?」(は?そんなもん覚えてる訳ないだろ!)「最初来た時はこの地面の裂け目は3本だった。だが今は2本。木も1本1本捻れてたのが真っ直ぐになってる。」(…長い事同じ光景を見て疲れてんのか?…いや、待てよ…グレン、何が言いたい?)何かに気付いたリフェルはグレンの考えを聞く事にした。「多分だが俺達が前に進めば進む程、木や道の形が変化して最初来た時と同じ光景を見せられる。けど、地面
悪魔に襲撃されたクレーアタウン。 アスモディウス達との戦闘により、平和だった町の殆どの建物は半壊している。 今すぐ普通の生活に戻れそうには無かった。 ゴウシが東の大国ノームに救助を要請したお陰で、大型のバスの様な魔力式四輪駆動車が到着。 その中から現れたのはノームの救護隊員達であった。 救護隊員達は生き残ったクレーアタウンの人達を誘導し、自分たちが乗ってきた四輪駆動車の中に乗せていく。 クレーアタウンが復興するまでは東の大国が責任を持って町の人達を守るつもりだった。 アガレフという父親を失ったミーナと、母親のリーナ。 リーナはまだ立ち直れず座りながら俯いていた。 無理もない。17年間、愛して待ち続けた夫が目の前で跡形もなく消えたのだ。 簡単に立ち直れる筈が無い。 そんなリーナの側にミーナはつき、一緒に横に座っていた。 一方カイルはエミルの隣に立ち、目の前にはライク、ニケル、フィナが順に並んで2人と対面していた。 「改めてお久しぶりね、カイル君。」 フィナはカイルを見て挨拶した。 さっきはミーナの父親の件もあり、互いにそれどころでは無く再会の挨拶をする間が無かった。 「まさか、フィナさんが2人と一緒に居たなんて知りませんでした。」 カイルはシルフで別れた筈のフィナが、月の民である元盗賊のライクとニケル。2人と行動を共にしてる事に驚いていた。 するとフィナはエミルの方に視線を移す。 「あなたがライクとニケルが言ってたエミルさんね。私はフィナ・プロミネンス。宜しくね。」 「こちらこそです。エミル・ウォーマリンと言います。……ライクとニケルも、久しぶりね。」 少しよそよそしく2人に言うエミル。 一応、ティラーデザートでエミルはライク達に「裏切り者扱い」されて離れる事になった。 当然エミルも言われて当然だと思っている。 カイルと戦ってくれた時は必死だった事もあって、あまり気にしていなかった。 しかし今になって冷静になると、どんな顔をして2人を見れば良いのかエミルは分からなかった。 そんなエミルの悩みを掻き消すかのように2人は笑いながら。 「エミルも、元気そうで何よりだよ。」 「けっ!何辛気くせー顔してんだよ!」 ニケルは笑顔でそう言うと隣のライクは頭に手を組みな
場面は変わりミーナに会わせて欲しいと訴えるリーナを抱えながら、フィナはライク達の後を追っていた。フィナの"陽"の力は短距離で時間をコントロールして戦うのに向いている為、ライク達に比べると遠くへ移動するのはそれ程速くは無かった。それでもフィナの足は早く、時間のコントロールによってミーナ達とは10kmほど離れていたが5分くらいで近くの地点まで辿り着いていた。「リーナさん!もうすぐですからね!」「ありがとうございます!」フィナが走っていると、少し離れた場所で巨大な光の爆発が起こったのが見えた。「あの爆発は一体…」「…ミーナ。」その時は丁度、アスモディウスに魔力操作"極"の力によって光の爆発を起こした時だった。目の前で起きた光の爆発を見たフィナとリーナ。リーナはフィナの背中に抱えられたままミーナの無事を祈り、そのまま彼女達の戦場へと近づいていく。バタッ。ミーナはうつ伏せのまま地面に倒れ、持っていた刀が右手から離れる。刀の刀身が地面に当たると、当たった部分から刀身がバラバラに崩れていった。魔力操作"極"で刀に膨大な魔力を込めた事で、刀に大きな負担が掛かっていたからだ。ミーナのその姿を見たアスモディウスは先程まで息を切らして焦っていたが、この光景を見るや急にニヤケ始めた。「ミーナァァァ!!!」「ミーナちゃん!」エミルとカイルは走りながら倒れたミーナの方へと走る。しかし、魔力も使い果たし体力の限界だったエミルは早く走れない。「クソ!俺も身体が痛くて動けねぇ!」「まずい!あのままじゃ、あの子が殺されてしまう!」ライクとニケルも同様、雷神と風神の反動とカイルから受けたダメージにより今は動ける状態では無い。辛うじて生きながらえたアスモディウスがミーナの1番近くに居た事で、ミーナは絶対絶命のピンチに陥っていた。「…あれぇ?もしかして、動けない感じ?私、ヤバいと思ったけど。」するとアスモディウスは指をパチンと鳴らした。死者蘇生で蘇った死者達を操る合図だ。ミーナの消滅の光はアスモディウスのみを対象にしていた為、死者達はそのまま残っていた。「勝負では私に勝ってたのに、なんとまあ……残念だったね!小娘がぁ!戦場で気絶する方が悪いんだよ!恨むなら、自分の間抜けさを恨みなさい!」「おい、役立たずの屍(しかばね)共!この小娘をグチャグチャにし
するとベルゼバブが出てきた方とは逆の奥の方から別の足音が聞こえてくる。あの時は魔法が使えなかったから分からなかったけど、ただならぬ魔力を感じる。しかし、悪魔の様な不気味な魔力では無い。温かみのある優しい光の様な魔力。その魔力を持った人…人では無いが、ミーナとベルゼバブが居る方へ歩いてきた。「久しいのう。ミーナ。」その姿は以前ミーナと精神世界で対面した時に見せた、ミーナと全く同じ姿の状態のエル(ミカエル)が暗闇から現れた。「あなたはエル…」「な、何で!?何で君が居るの?大天使・ミカエル!」ベルゼバブはミーナの姿をしたミカエルを見て驚きを隠せなかった。普段無邪気に相手を挑発したりするベルゼバブが焦りを感じている。悪魔にとって天使という存在は、嫌悪を抱くと同時に恐怖の対象でもあった。ベルゼバブに視線を移すミカエル。「そなたはベルゼバブ。妾はこのミーナと共存してるのじゃ。…この姿じゃ、ややこしいな。」そう言うとミーナの姿をしたミカエルは変化していく。そしてミカエルは姿を見せた。白銀の長い髪を風に揺らし、透き通る青い瞳で静かに微笑む天使の翼の女性。白を基調とした和の装いには淡い金の煌めきが散り、腰紐と房飾りが上品に揺れる。大きな白い翼を広げたその姿は、神域の気配そのものだった。「それが本当のエルの姿…本当に天使みたいだ…」ミーナは天使の姿のミカエルに驚いていたが、その神々しい姿に見惚れいた。「天使みたいでは無い。妾は天使なのじゃ。」ニコリと微笑みながらミカエルは言った。柔らかいその表情と立ち姿はその名の通り天使と呼ぶに相応しく、一つ一つの言葉や所作が周囲をまるで温かく包み込むかの様である。その温もりは暗闇の精神世界が天国の様に思える程だ。「大天使がミーナの中に居たなんて…まさかとは思うけど、君の力を彼女に貸し与えてたりしないよね?」「妾の"恩恵"の力か?ええ、そうじゃ。妾の力を与えた事でミーナは力を使えるぞ。」何てこった…と言わんばかりの顔をしながらベルゼバブは手を頭に抱えた。何故ベルゼバブが頭を抱えてるのか分からないミーナ。「え、何か不都合な事でもあるの?」「不都合といえば、不都合かな…天使は僕達悪魔の魔力を凌駕するからね。何も対策しなければ、悪魔は天使によって一瞬で消されてしまう。」ベルゼバブの言う通り、一度
ミーナ達3人が戦っていたその頃。東の大国で元八握剣(やつかのつるぎ)であったギンジはミーナの母であるリーナを連れながら、他にも生き残ってるであろうクレーアタウンの市民を探していた。生き残っていた市民は結構居た為、全員助けに来てくれたギンジの後ろをゾロゾロと歩いて着いて行く。そんな中で思わぬ人物に出会った。その人はギンジにとってあまり会いたく無い人物。「ギンジ!お前、こっちに来てたのか!?」の太く低い声の主である彼の名前はゴウシ。八握剣(やつかのつるぎ)の土刃(どじん)と呼ばれる男である。見た目年齢が30代後半は過ぎてるであろうゴウシは、ベリーショートの茶髪に整えられた茶髭。八握剣のバンジョウやスイゲツと同じ侍の様な服装をしているが、体型はガタイが良いと言うよりも巨漢に近かった。丸太の様に太い腕に、武器は刀では無く斧を背中に担いでいた。「ゴウシ…そういえばスイゲツの奴が言ってたな。」ギンジはゴウシの事を嫌そうな目で見ながら東の大国ノームでスイゲツが言っていた事を思い出した。「はい!先程八握剣の土刃、ゴウシ様から連絡がありまして。最近東の近隣の国が悪魔に襲撃されているとの事です!」スイゲツがあの道場で報告した内容の発信源は確かゴウシであった。市民を助ける為の人手が足りない現状ではとても頼りになる存在であるが、国を出るつもりのギンジにとっては不都合でしか無かった。どうせこいつも八握剣(やつかのつるぎ)に戻れって言うに違いない。「お前が居てくれて良かった!ギンジ、俺もこの町の人達を助けたい!だから協力させてくれ!」しかし、ゴウシから出てきた発言はギンジの予想とは違っていた。「何だ、俺の事を引き留めようとしないのか?」「いや、今はそんな場合ではないだろう?そりゃ、お前には戻ってきて欲しいが、それよりも先に今はやるべき事があるだろ。」ゴウシは八握剣の中でも正義感が人一倍強く、真っ直ぐな性格であった。その正義感に加えて人々の為に今自分に何が出来るのか、常に考えて行動出来る人である。しかし、不可解な事が一つあった。「確かゴウシが居る場所はここよりも数km離れていた場所だ。どうやってここまで来た?」高速移動や転移魔法を使えないゴウシには一瞬でここまで来る移動手段が無かった筈だ。ーーどうやってここまで来た?こいつはこの町には居ないと思