LOGIN宝石店を出てからミーナはカレンに案内されながら色んな店に寄り、手には買った服や旅に必要な生活必需品などが入った袋を持っている。
重くなった荷物を持っているミーナを見て微笑ましく思ったカレン。 笑いながらミーナに声をかけた。 「うふふ、いっぱい買い物できて良かったね。ミーナちゃん。」 「はい!本当にありがとうございます、カレンさん。」 「いいのよ。仕事の休みは私1人で買い物してるからあなたみたいな女の子と買い物できて楽しかったわ。」 「えへへっ。そういえばカレンさんは何の仕事してるんですか?」 「私?私は……」 「おーい、カレーン!」 カレンが答えようとした時、2人の後ろの方からカレンを呼ぶ声が聞こえてきた。 誰だろうと振り返ると手を振りながらやってくるのは男の人だった。 一瞬彼氏かなと思うミーナだが数秒後その人が誰なのか一瞬で分かった。 その人とは。 「え、エバルフさん!?」 この人はこの前までグレンを殺そうとしていた騎士団の1人のエバルフさんだった。 向こうもミーナとカレンが一緒にいる事に驚いていた。 「君は、紅の悪魔祓いと一緒にいたお嬢ちゃんじゃないか!?なぜカレンと?」 「あら、あなた達2人とも知り合いだったの?」 「ああ。この子はこの前団長に報告した悪魔祓いと一緒に旅してる子だ。…この子がいるって事はまさかこの国に紅の悪魔祓いがいるのか?」 ミーナを見てグレンの事を思い出したエバルフ。 焦っているのか額から汗が流れ落ちていた。 それに気づいたミーナはエバルフを気遣うように返した。 「大丈夫ですよ。この国に来てからグレンと私は別々に行動してるますから。」 「ホッ……そうかそうか。じゃああいつは今いないんだね?」 一瞬だけ安心したため息を吐くエバルフを見てカレンは笑いながら馬鹿にするように。 「あはははっ!何ビビってるのよ。ほんっとに情けないわねぇ。」 「うっ、うるさい!お前はあの化け物を見てないからそう言えるんだ!」 「あんたと一緒にしないで欲しいわね。どんな敵がいても私は負けずに挑むわ。あんたと違ってね!」 「何だとー!」 2人が言い争ってるとそこに割り込むようにミーナが口を出した。 「あのー。カレンさんの仕事ってもしかして…魔法騎士団の騎士ですか?」 「ええ、そうよ。ちなみに私は10騎士長でこの人(エバルフ)よりも上の位よ。」 指を差しながらエバルフを見下するカレン。本当の事を言われたエバルフは何も言い返すことが出来なかった。 「えぇー!エバルフさんよりも上の人なの!?…すごいですね。女性なのに戦う騎士ってカッコいいです!」 「確かに戦ってるよな。何度も何度も懲りずに合コンに参加しては男の取り合い合戦で敗ぼ…いだだだだ!!」 エバルフが余計なことを言ったためカレンはハイヒールの踵でグリグリとエバルフのつま先を強く踏んだ。 「あれは!…ただの…!遊びでしょ!私だって本気出せば……あっ、ごめんねミーナちゃん。こんなはしたない所見しちゃって。」 ミーナに喧嘩してるところを見られてる事にハッと気づき我にかえるカレン。 「あははっ、2人は仲が良いんですね。」 「「誰がこんな人(こんな奴)!!」」 ミーナ達3人が会った時と同じ時間に事件は起ころうとしていた。 彼女達は今この国の東地区にいるのだが事件のきっかけはこの国の西地区だった。 普段通りの街の風景の中に1人だけ不自然な行動をする男がいた。 その男の体はガクガク震えていて今にも倒れそうに歩いていた。 「あのー、大丈夫ですか?何だか具合悪そうですけど。」 「……」 通りすがりの親切な人が声をかけてもピクリとも反応しないその男。 すると急に震えるのをやめピタッとその場に立ち止まった。 「…せ…め…」 「え?」 そして数秒後、道路のど真ん中で親切な人の胴体に大きな穴が開いていた事を周りは気づく。 そして次々に発狂の声が聞こえ始め、人々は混乱状態になりながら逃げようとした。 「せ…めつ。…せんめつ………殲滅だ。」 そして男は胴体に刺した大きな爪を抜き取り付いた血を振り払った。 そう、こいつの正体は悪魔。 これがイフリーク史上最大の事件へと繋がるのだった。 突然、平和なイフリークに鳴るはずのない緊急のサイレンが鳴った。 イフリークの周りからは魔法で出来た防壁が展開され、街は避難体制に入ろうとしていた。 『国民の人たちは速やかに避難してください!そして、魔法騎士団は直ちに出動せよ!場所は西地区の商店街だ!』 このサイレンを聞いていたミーナ達。 「急にどうしたんだろう…さっきまであんなに平和だったのに!」 「確かに…!この国でサイレンが鳴る事はた滅多に無い…。カレン…いや、10騎士長!急いで西地区に行くぞ!」 「分かってるわ!…ミーナちゃんはここで待ってなさい!」 するとカレンは服のポケットからペンダントを取り出し開くと魔法で騎士団の鎧に一瞬で着替えた。 そして2人はエバルフの風で2人を包みこむと高速で移動し、ミーナは声をかける前に置いて行かれた。 「私…また何にも役に立たない…」 仕方が無いのでミーナは人が逃げていくところに紛れて走った。 すると前から来た1人の男にぶつかり後ろに倒れた。 「いたた、君大丈夫かい?」 ミーナの前にいた男の人は、二刀の長刀を腰にぶら下げ騎士団の鎧を纏っていたが黒髪で幼い顔だったのでとても騎士には見えなかった。 「ごめんなさい、僕怪我は無い!?」 完全に少年と思っているミーナ。男は少しムッとなったが急いでいたのでスルーした。 「僕?…まあいいや。とりあえず君はどこかに逃げるんだ…っとすまない。」 すると男は腕に付けてる通信機とやりとりし始めた。そして再びミーナを見ると。 「…今情報が入ったが西地区には悪魔が暴れてるそうだから早く避難しなさい。ここは騎士団に任せ…」 「悪魔…ですか?」 「え?」 するとミーナはその男の肩を握ると慌ただしく揺さぶりながら言った。 「早く行かないと!あそこには騎士団のエバルフさんとカレンさんがいるの!早く行かないと殺されてしまう!」 「…君は、2人を知ってるのか……分かった、君も一緒に来なさい。僕が連れてってやるよ。」 「え、ありがとうございます!僕は優しいね。」 「僕って言うなー!僕のことは(カイル)と呼んでくれ。」 カイルは僕と言われるのが嫌だったので本名を名乗ったがミーナは構わず。 「分かった。カイル君。」 「…もういいや、来なさい。早く12騎士長と10騎士長を助けに行くぞ!」 「はい!」 そして突然出会ったカイルとミーナは今現在悪魔がいると連絡があった西地区に向かい始めた。 この時ミーナは気づいていなかった。 今横にいるのはこの国で一番強く、そして騎士団の団長だという事を。 その頃、西地区では1人の男(悪魔)による大量殺戮が始まっていた。 悪魔に殺された人間は再び蘇るので新たな悪魔となって他の人間を殺し、悪魔は数を増やしていく。 「ひぃ……おかぁしゃん…僕だよ…僕の事忘れたの…?」 「グルルル…」 母親を殺された子供は悪魔として蘇った母親の姿に惑わされ、あっけなく殺されていく。 もちろん、人間としての感情は一切無い。 ただの食料として食い殺されるだけだった。 風の移動系魔法でやっと到着したエバルフとカレンは地獄と化した西地区の光景を目にした。 人の血によって赤く染まった町にいる人々と悪魔の姿はまるで地獄をイメージしたみたいだ。 「なんて光景だ…まるであの時を見てるみたいじゃねーか……。」 エバルフは目の前の状況と自分の住んでいた町が重なって見えた。 ーあの時の悪夢がまた襲ってくる。 「エバルフ!悪魔が襲ってくるわよ!」 カレンの声で我に返ると目の前から人間の姿をした悪魔が猛スピードで襲ってきた。 エバルフは間一髪でかわし、体制を整えると剣を抜いて構えた。 「すまん、カレン!」 「しっかりしなさい!油断して殺されたら許さないわよ!…っく!」 悪魔は鉄の棒を上から思いっきり振り下ろしたがカレンは剣で弾くと十分な距離を取った。 「なんて力なの?ちょっと弾いただけで手の痛みが…」 そして悪魔はもう一度カレンに接近し、鉄の棒を振り下ろした。 今度はカレンはそれを見切ったのか左にかわして悪魔の右腹を斬りつけた。 「ウガァァァ…ァァ…」 悪魔はもがき苦しみ、そのまま絶命した。 「さすがだな、10騎士長。」 「なめないで。…それよりも何よ、あの大群は…。」 カレンとエバルフの目の前には悪魔の集団がゾロゾロと歩いてきた。 その1番先頭には今回西地区で通りすがりの人を殺し、大量殺戮のきっかけを作った男性の悪魔だった。 「おい、10騎士長。あの先頭にいる奴、他の悪魔とは違う雰囲気だぞ。」 「そうね。いかにも強いぞってオーラが出てるわ。」 悪魔の集団を引き連れた男性の悪魔は10メートルくらい離れたところで立ち止まると後ろの悪魔の集団もそれに合わせて立ち止まった。 先頭の悪魔は服装だけ見たらどこにでも居そうな青年だが顔には黒いひび割れ線が所々に入っていた。 「これは参ったな…騎士長2人が組んでやがる。…うっとうしい、消えな。」 最後にそう付け加えると後ろにいた悪魔たちが一斉に襲いかかった。 とても2人では相手しきれない悪魔の数を剣で立ち向かうがやられるのは時間の問題だった。 あまりにも悪魔の数が多すぎたのでエバルフは魔法を使用した。 「消えろ!悪魔どもめ!」 エバルフは風を纏った剣を振ると突風の斬撃が悪魔達を次々に薙ぎ払った。 しかし、戦闘しながらの魔法は体への負担が大きいため持久戦には向いていない。 エバルフは魔法を使用したことでさっきよりも苦しそうな顔をしている。 「はぁ、はぁ、早くこいつらを殺さないと俺たちが危ない…」 すると突然エバルフの背中に激痛が走った。 「ぐっ…ヤバイ!…背中を斬られた……」 悪魔の爪がエバルフの背中を引っかき、背中からはおびただしい量の血が流れていた。 一方、カレンは少しだけ魔法で身体強化はしてるものの悪魔をスムーズに斬り倒していくがこちらも体力の限界が目に見えていた。 「なんでこんなにも多いのよ!これじゃ切りがないわ!」 「全くだ!…他の騎士長や騎士達はまだ来ないのかよ!」 エバルフは愚痴を吐きながら剣を構えている。 するとさっきから戦いに参加しないヒビ割れの悪魔が引き笑い気味で笑いながらとんでもない事を言った。 「他の騎士達なら多分来ないと思うよ。確かさっき南地区に現れた謎の悪魔をなんとかせねばとか言うてたかなー?」 南地区にも悪魔が?どうなってるんだ。 この事件はこのヒビ割れの悪魔が東地区で起こし人間を殺してるから悪魔が誕生しこの西地区で悪魔が出現するのは分かる それに悪魔が発生したこの西地区は事件が発生してから他の地区に侵入しないように閉鎖していて進入は不可能。 万が一を除いてもありえないが、その万が一があるとすれば。 「……まさか、お前以外にもう1人悪魔がいるのか?」 「アハハハ!その通りだ。俺がこの事件の元凶?馬鹿め!その時点でお前らは負け決定なんだよ!」 「そ…そんな…嘘だろ…」 今回の騎士団への命令はこの西地区にいる悪魔を駆除するのみ。 戦力はほとんど西地区にとられてるのに南地区にいきなり現れたら多くの人達の命を失うことになる。 そう考えるとエバルフは再び妹の事を考えてしまい、頭を抱えた。 「フハハハハッ!人間は馬鹿な生き物だ!わざわざ死にに来てくれるんだからな。さあ、お前ら今の内だ!その醜い人間を斬り殺せ!」 悪魔達はそう指示されるとエバルフに爪を向け、その多数の爪がエバルフめがけて伸びた。 カキィィン! もう少しで斬られそうになったエバルフの目の前でカレンは爪の攻撃をすべて剣で受け流した。 「何っ?」 カレンは攻撃の手を止めず、今度は両手に発生させた雷の魔力を3秒ほど溜めて悪魔達に目掛けて放った。 落雷の如く一直線に突き進み、悪魔達の3分の2程度が原型を留めることなく消滅していった。 「この女…なんて威力だ!」 ヒビ割れの悪魔はあまりの威力で砂ぼこりが舞い、思わず腕で顔を隠した。 「ウア"ッ!…あがっ…あぁ…ああぁ!…」 バタッ カレンはさっきの魔法が体にきたのか体を疼くませながら横向きに倒れた。 エバルフは慌ててカレンのそばにしゃがみ込んで体を揺さぶった。 「カレン!おい、大丈夫か!?…なんであの魔法を…あれは体への負担が大きすぎて使うなって団長に言われただろ!?」 するとカレンの口元からかすれるくらいの小さな声が聞こえた。 「…悔しい…」 「えっ?」 「悔しい…悔しいよ、エバルフ…。この国を愛する人たちがどうして人を殺しているの?しかもそれを守れない私たち騎士団はもっと悔しいよ!」 カレンの目からは涙が流れていた。 周りをよく見ると人々は悪魔に襲われ、逃げ惑っていた。 襲ってる悪魔のほとんどが元々この国の市民。 だったがこいつらのせいで殆どの人が悪魔化し、普段なら自分の子供、仲の良い友人、恋人だったはずの人たちを容赦なく殺していく。 こんな地獄、もう体験したくない! 変えなければ…これ以上、悲劇を生んではならない! 「10騎士長…いや、カレン。あとは俺に任せろ。こんな地獄、さっさと終わらせてやる。」 エバルフはカレンの体を持ち上げ、戦いに巻き込まれないよう隅っこに寝かせた。 「さあ、覚悟しろ害虫(悪魔)ども!今から纏めて駆除してやる!」 それを聞いたヒビ割れの悪魔は眉を吊り上げながら。 「ハァ?何言ってんだよ、お前。駆除されんのはお前ら人間の方だよ!」 それと同時に悪魔たちは一斉にエバルフを襲った。 ビュッ! 一瞬の風が悪魔の集団の間を吹き抜ける。 エバルフの周りから輝かしい風が竜巻の様に発生していた。 「吹き抜けろ、逆境をも覆す神の風ー」 そう唱えた直後、悪魔の体から徐々に斬り傷が入りそして一気に上半身が吹き飛んだ。 それは全ての悪魔だけに同じ反応が起こり、それ以外の人間は何ともなかった。 「なっ!?…ば、バカな!」 ヒビ割れの男はどういう訳かその攻撃をかわしていたので助かっていたがそれ以外の悪魔がやられたのを見て驚きを隠せなかった。 「次はお前の番だ。」 「くそ!人間如きが呪文を唱えやがって!」 「人間如き?…1つ教えてやろうか、悪魔野郎。」 「何だ!」 「俺はお前らと違って、大切な誰かを護る時にとてつもない力を発揮する。そして…この大切な国を潰そうとするお前は俺の敵だ!消えろ!!」 エバルフは風魔法で一気に詰め寄ると、剣を下から斜め上に斬りつけ、ヒビ割れの悪魔から大量の血が吹き出て、その場に倒れた。 エバルフは息を切らしながら隅っこに置いたカレンのそばに行った。 寝てるカレンにエバルフは笑顔でこう言った。 「はぁ、はぁ、カレン…護ってやったぞ…あとは、団長に任せよう。」 そしてエバルフもその場に倒れこんだ。瞬く間に特攻部隊は部隊長であるボルケニアと副部隊長であるガロウが倒された。特攻部隊の副部隊長は残り2人。その内の1人が報告を聞いて驚いていた。「何だと!ボルケニア部隊長とガロウがやられたと!?」「はい!やったのは八握剣(やつかのつるぎ)の奴らです!その他にも多数の死者が!」「奴らめ!バラけて動くのでは無く、纏って各個撃破を狙ってるのか?…だが、戦場で戦力を分散させないのは逆に言えば守りが手薄になってるという事。」「皆の者!このままノーム王が居る城に向かう!八握剣以外の侍は大した事は無いから、狙うなら今だ!」「「ハッ!!」」2人目の副部隊長であるエンジュは部下の軍人に向けて命令を下すと、それにより部下達の士気が上がり走り出す。手薄になった防御網を突破するのは今の内だと言わんばかりに。しかし、その考えは大誤算であった。北の大国は東の大国の戦力を八握剣(やつかのつるぎ)と裏切ったネルだけだと思っており、それ以外の戦力については考えていなかった。当然、カイル達が居る事なんて想像すらしていなかった。突撃していた部下達。すると突然、バタバタと部下達が倒れていった。「な、何事だ!?」副部隊長のエンジュは目の前で突如倒れ出した部下達を見て言った。「エンジュ副部隊長!前方に2人の影が見えます!」「何!?」目で確認すると部下が言った様に、そこには2人の人影が見えた。1人は身長が低いが2本の黒い刀を持った黒髪の男。もう1人は黒いタンクトップとショートパンツを履いた水色髪の女性であった。そう、カイルとエミル。2人は一緒に行動しており、先ほど部下達が急に倒れたのはカイルの影の円展開で、影に入った部下達を斬ったからだ。エンジュは目の前のカイルの服装を見て気付いた。「そのマントと黒い服。間違いない、お前はイフリークの騎士団団長!カイル・エリオン!」「何故イフリークの騎士団が東の大国側に!?」全く想定していない状況に理解が追いつかないエンジュ。それに対してカイルは答えた。「この戦争でこの国の被害を減らす為だよ。」「悪いけど、君達をノーム王の所へは行かせない!」そう言ってカイルは2本の黒い刀である暗影蛇と黒纏蛇を構えた。「お前ら!撃て!撃てぇ!!」エンジュは部下に発砲命令を下し、即座に部下達は銃でカイルとエミル達を撃ち始める。しかし、
魔導砲・アステリアにより、火の海と化したノームの街。大都会の象徴であった何十階もある建物はその威力によって高い部分は消失した。燃えた瓦礫が辺りに散らばった地面は、平和な国から地獄の戦場へと一気に変えられる。上空の魔導戦艦はその変わり果てたノームを見下す様に宙に浮いていた。そして魔導戦艦から放たれた無数の戦闘機は地上に向かって急下降し、機関銃の様な物を地上に撃ち放つ。ズドドドドドドド!!!!機関銃の様な物から放たれるのは1発1発が魔力の籠ったエネルギー弾であり、地上に撃ち込まれた部分からは爆発が連鎖的に起きる。徹底的にこのノームを潰そうとしているのが分かる。小国など武力の低い国はこの攻撃で大半が機能不全に陥るだろう。しかし、この東の大国ノームは違う。魔力で動かす機械や医療など、他国よりも繊細な技術面が発展している先進国である。当然、軍事に関する機械も最先端の技術が搭載されているのだ。東の大国には風狼機巧工房(ふうろうきこうこうぼう)と呼ばれる、飛行艇や四輪駆動車を製造する機巧工房が存在する。(第31話参照)性能重視で機械が造られている東の大国が誇る技術の叡智(えいち)がこの場所に保管されている。その機巧工房から東の大国が造り出した戦闘機が上空へ飛び立ち、北の大国の戦闘機へ向かって行く。北の大国の戦闘機が100機を超える戦闘機に対し、東の大国側の戦闘機は40機程度。圧倒的に戦力の差は北の大国が上である。しかし、それはあくまで戦力差の話。最新の技術を搭載された戦闘機はその戦力差すらものともしなかった。東の大国の戦闘機はステルス機能が搭載されており、その機能によって戦闘機は透明化する事が可能。それにより、視覚的に見えなくなったところで東の大国側の戦闘機が反撃を開始する。エネルギー弾も北の大国の戦闘機とは違い自動(オート)で狙いを定める為、どれだけ戦闘機を速く操縦してても狙いがブレる事は無い。透明化した状態のまま自動で相手の狙いを確実に定め、一方的に攻撃を仕掛ける事で数の戦力差を埋める。これが、技術力の高い東の大国の戦闘機の力。数の量産は難しくも、その機能性は北の大国の戦闘機を遥かに上回っていた。視覚的に確認出来ず、例え戦闘機に乗った操縦士の魔力を感知したところで、気付いた時には既に撃ち落とされてしまうのだ。そして全ての北
一方、魔導戦艦を撃破した東の大国側は更なる北の大国の攻撃に備えて避難誘導が行われていた。次も都市部を襲撃してくるであろう北の大国の動向を予想し、国民達は総面積20㎢あるノーム王の城の城壁内へと誘導される。勿論全員を城壁内に誘導は出来ない。そこでグロードやネルが持つ空間移動の力で、子供を優先して他国へ転移させる事にした。行き先は西の大国イフリークと南の大国シルフ。両国は復興作業が順調に進んでおり、既に避難の受け入れが整っている状態であった。カイルはイフリークの騎士団に。そしてシルフの王の証を継承したフィナは大国に連絡した事によりスムーズに避難誘導が行えている。そしてカイルの両親と妹のレイアはグロードに空間転移でイフリークに転移させられる予定であった。「父上、母上。レイア。戦争が終わったら必ず迎えに行くから。」「うむ。カイル、無事を祈る…。」「カイル…絶対に生きて帰って来てね。」小さく返事するカイルの父親であるが、やはり心配なのか表情は暗かった。母親のカルラはやはり心配であり、涙を流しながら言った。そしてレイアはカイルに抱きついた。「…お兄ちゃん」強く抱きしめるレイアはカイルの胸に顔を埋める。「…大丈夫。大丈夫だから。」そんなレイアに優しく頭を撫でながらそう言うと、レイアはゆっくりとカイルから離れた。そして視線を後ろに居るミーナ、エミル、ライク、ニケルに向ける。「ミーナちゃん。エミルお姉ちゃん。」まずはミーナとエミルに向かって言う。「レイアちゃん。…また戻ったら一緒にお話ししよ!」両手を膝に付き、少ししゃがんだ姿勢のまま笑顔で言うミーナ。「そうね。レイアちゃんも、気をつけるのよ。」レイアの頭をポンポンと撫でてあげるエミル。「うん!またいっぱいお話ししよ!」そして今度はライクに向けて言った。「ライクお兄ちゃん!無茶な事は絶対にしないでね!」「…無茶な事しねーと勝てねえんだよ。」相変わらず、レイアに対してもぶっきらぼうに返事するライクであるがその返事に泣きそうになりながら。「だって、ライクお兄ちゃん1人で突撃して行きそうで怖いんだもん!」「わ、悪かった!ちゃんと気を付けるって!」泣きそうになるレイアを慌てて宥めるライク。そして最後にニケルに向いた。「ニケル様…。」「レイアちゃん…。」レイアとニケルはし
他国への軍事侵攻と併合を繰り返すことで領土を拡大している巨大な大国。ここは北の大国ウンディーネ。魔力資源と軍事拡張を国家存続の核とする極端な軍事国家であり、その統治思想は「戦果こそが存在価値」という歪んだ成果主義で統一されている。戦争で功績を挙げた者は地位・富・名誉を得る権利が与えられ、失敗者や非戦闘員には価値がほぼ与えられない。戦争で功績を挙げられなくとも、国家の軍事力拡大に繋がる軍資金を納めれば国から認められる。この仕組みを国民達に徹底させる為、この国では目に見える形で国民を上級、中級、下級という風に位置付け差別化した。どういう事か?その位置付けは国民の居住地域で分けられた。上級は名前の通り、貴族や戦争功労者など富裕層を指す。中級の国民は主に庶民の人達であるが、この者達は努力次第では軍に入隊し功績を上げる事で上級へと位を上げる事が出来る。そして下級は名前の通り、国の中でも最下層の人間の事を指す。大抵の下級国民が暮らす場所は政府の目に届かない場所に位置している為、治安が悪く劣悪な環境。ここには国に対する反逆行為を行った者、犯罪を行った者、北の大国の軍事侵攻により領土を奪われたその土地の人達が住んでいた。以前ライクとニケル、グロードが北の大国に訪れた際に出会った孤児の兄弟も下級国民であった。(第24話参照)下級国民は全てにおいて最底辺であり、人権というものは殆ど存在しない。これは領土を奪った他国の人間が自国に対して反撃しない為の抑止力にもなるが、それだけでは無い。先程説明した様に中級国民も犯罪や反逆行為を行う事で下級国民に成り下がる可能性があり、国民はそれを恐れていた。ーーこんな底辺の人間にはなりたく無い。こうして劣悪な環境の中で過ごす最底辺に自分もなる可能性がある事を知らしめる。それにより、国民全員に危機感を持たせながら国の為に必死で働かせられるのだ。また、人間とは自分より下を見て優越感に浸る生き物。自分達よりも底辺の人間が居る事により優越感に浸らせれば、国民のストレスの捌け口は自然と下級国民へと移る。この「働き蟻の法則」にも似た様な差別化の仕組みが、北の大国という巨大な軍事国家を成り立たせていた。「軍事の為に働かざる者、人としての権利を得るべからず。」北の大国にはその様な言葉が昔からあった。この国民の差別化。一見
魔導戦艦。それは北の大国が保有する、空中を駆ける全長200m、全幅80m、全高75mを誇る巨大飛行戦艦である。戦艦の全方位には大量の巨大な大砲が敷き詰められてある。それら全て、[魔導砲・アステリア]と呼ばれる以前グレンが魔導兵器であるレイクと戦った時に使用されていた大砲が搭載されている。(第36話参照)軍事大国である北の大国ウンディーネ軍の技術開発局が開発したこの戦艦。実は東の大国ノームにとって因縁のある存在であった。「魔導戦艦。我ら東の大国の技術を盗んでそれを軍事転用した巨大飛行戦艦か。」バンジョウの言う通り、この魔導戦艦は約100年前に東の大国が開発した魔力式四輪駆動車の技術を改良されて作られた。100年前、東の大国ノームにやってきた北の大国ウンディーネ出身の亡命者が居た。ウンディーネは諸国周辺の国に戦争を仕掛けては勝利して自国の領土を拡大していく軍事国家であり、戦争は絶対正義であるかの様に指導される。戦争、又は軍事に反対的な意見を持つ人間は処罰の対象となる為、それが嫌で亡命する北の大国の人間は当時珍しく無かった。ノームはそのウンディーネからやってきた亡命者に仕事を与え、彼は元々軍の整備士の仕事をしていた為、機械的な物を作る仕事を与えた。しかし、これは大きな間違いに繋がるのであった。数年後、その亡命者は突如ノームから居なくなり、その数年後にウンディーネ軍がノームに対して戦争を仕掛けてきた。当時ウンディーネの魔導戦艦が、ノームで作られていた魔力式四輪駆動車と全く同じ技術を使用して作られていた為、それに気付いたノームの国民は怒った。ーー亡命してきたあの男は、我々の技術を盗む為のウンディーネ軍が遣わせたスパイだったのだと。そして100年前、この事がきっかけで北と東の大国は規模は小さいが戦争に発展しており、戦争が終結してからその後4大国間同士で不可侵条約は結ばれているが未だ北と東の関係性は悪いままである。(第16話参照)今までは嫌がらせの様な北の大国のミサイルを東の大国近辺に放っていたが、今回の様な魔導戦艦で領空に入ってきた事は一度も無かった。明らかな領空侵犯(りょうくうしんぱん)であり、東の大国ノームに対する威圧行為だ。到底許される事では無い。「このままでは国民が危険だ!一刻も早く迎え撃つ準備を!」ギンジは八握剣(やつかのつるぎ)
カイルの影の斬撃によって舞い上がった黒い魔力が引いていく。「…ミーナちゃん!大丈夫か?」幾ら本気の勝負だとしても、あれだけの攻撃をまともに喰らえばただでは済まない。心配になったカイルはすぐに影の円展開を解除し、ミーナの方に駆け付けた。しかし、ミーナは何事も無く立っていた。「…あれ?私、確かにカイル君の攻撃を喰らった筈だけど?」傷一つ付いていないミーナは自分自身でも何が起きたのか分かっていない表情をしていた。するとバンジョウが終了の合図と一緒にその理由を説明した。「勝負あり!カイル殿の勝ち!…2人とも、中々凄い戦いだった。」「この道場は今日だけ特別な"結界"を張ってるんだ。安全にテストが出来るように、[この中では如何なる理由があっても他者を殺す事が出来ない]という条件を付け加えて。」「結界?」初めて聞く用語に首を傾げるミーナ。するとグロードがバンジョウに聞いた。「結界術を扱えるのですか?」結界術。それは魔法とは違い、魔力では無く条件を成立させる事により一定範囲の空間に結界を張る術である。「ええ。まあ我は簡単な結界術しか扱えないですけど。条件が厳しくなるとそれだけ術者に掛かるリスクも高くなるから。」リスク。それを聞いてグロードは少し疑問に思った。もしかすると、ベリエルが使った呪いというのはこの結界術がベースなのかと。しかし確証がない為、思っていても皆んなには言わなかった。「では、気を取り直して。今度は…」バンジョウは他の人のテストを行う為に仕切り直そうとするが、その時であった。バンジョウの腕に付けていた腕時計から大きな音が鳴り始める。ピリリリリリリリ!!!あまりにもうるさい音にびっくりするカイル達であるが、八握剣(やつかのつるぎ)のメンバーだけは全員緊張感のある顔になっていた。何故ならこの音は彼らにとっての緊急事態を意味するからだ。バンジョウは腕時計に付いてるボタンを押してその音を止めると、腕時計のレンズから人の姿が現れる。「こちらスイゲツ!た、大変です!バンジョウさん!」ホログラムで映し出された人物は今日はこの場に来ていなかったスイゲツであった。声の感じからして物凄く慌てているのが分かる。「どうしたんだ、スイゲツ?何故緊急連絡用の通信に繋いだ?」バンジョウとその他の八握剣(やつかのつるぎ)のメンバーは、慌て
これは愛を知らずに育ってきた男の話。彼はこれまでの人生の中で物心ついた頃から愛という物に触れる事なく生きてきた。ネル・ナイトフォース。彼は5歳まで北の大国の中心都市部にある貴族の家で奴隷として過ごしてきた。物心付く前から奴隷として仕えていたが、そこでは人権というものが存在しなかった。「おい、ゴミ!さっさとこの食器片付けろよ!」その屋敷の主である中年男は仕える奴隷に向けて済んだ食器を片付ける様に命令した。「…はい。」命令を受けて出てきたのは当時4歳のネル・ナイトフォースだった。彼は肌着同然の薄い半袖の服にヨレヨレのズボンを履いていた見窄(みすぼ)らしい少年だった。身体を洗わせ
時は少し遡り、場面はミーナとイフリークの国民達に変わる。現在、彼女らはティラーデザートとは別の場所で窮地に立たされていた。大量の悪魔達が周囲を取り囲み、エミルと騎士団の人達が応戦している。それを何もできないまま只々見ているだけのミーナとイフリークの国民達。国民の中には、騎士達が守らず心臓を取られてしまう者もいた。何故、この様な事になったのか。どうしてティラーデザートから離れた場所にいるのか。現在に至るまで更に30分程、時間を遡る。シルフを目指し、猛暑の中を歩き続けるイフリークの国民達は途中で大きなクレーターを発見した。「何だ、この大きなクレーターは。隕石でも落ちたのか?」「
この時の俺はどんな人だったのか、今でも鮮明に覚えている。しかし、どうしても思い出せない事が1つある。自分の本当の名前だ。名前は悪魔祓いになったと同時に捨てたからだ。今も過去の記憶は覚えてても、自分の名前に関する記憶だけはどうしても思い出せない。覚えているのは、楽しかった日常が一夜にして地獄に変わってしまった事。そして…あの時俺を逃してくれた俺の兄の最後を、俺は今でも覚えている。11年前ーキュアリーハート。それは(癒しの心)という意味を込められた平和の国。この国は東西南北にある四大国の中心に位置している。四大国に比べて経済力があるとか、規模が特別大きいなどそういった事はなく
「月の民殲滅は確かにシルフの国王が提案し、様々な国の魔道士達を招集させて殲滅していく、というのが一般的に知られている事です。」 「はい、俺もそういう風に聞きました。」 「でも本当は違うの。シルフの国王は元々平和主義を心掛けていた心の優しい人で当時も月の民殲滅には反対していたのです。けど、あの男が来てからシルフの国王は変わりました。」 「それは、さっき言っていた思考を操る魔法か?」 フィナの口ぶりで何を言いたいのか察したグレンが口を挟んだ。 「はい。12年前に突然やって来たハイド・スペクターが原因だと思います。彼は何故なのか分かりませんが会った当初から国王に気に入られ、その日






