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第3話

Author: こし餡
結婚したばかりの頃、悦子は希望に胸を膨らませ、ただひたすら家庭を築こうと努力していた。

彼女は純粋に、努力を重ねれば凌の心もいつか自分と娘に向くと信じて疑わなかった。

しかし、月日は容赦なく過ぎ、五年という歳月はあっという間だった。

悦子の情熱は、日ごとに深まる冷淡と無視にすり減らされ、彼女の一方的な想いは、むなしく空を切るだけだった。

そして今、ついに――その幻想に終止符を打つ時が来たのだ。

悦子は会社のロビーに立ち、凌と若葉が連れ立って歩いてくる姿を見つめていた。

異様なまでに冷静でいる自分に気づきながらも、内心では苦笑いが込み上げてくる。

――かつて深見家の支援を受け、会社で深見グループとの窓口役を務めてきた立場として、辞職を伝えるのが礼儀だろうと一歩を踏み出したそのとき。

彼女の目に映ったのは、凌の冷たく突き放すような視線だった。

「……どうされました?柳沢さん、何かご要件でも?」

その声は低く、冷ややかで、どこか牽制めいた響きを帯びていた。

まるで悦子が何か余計なことを口にして、若葉との時間を乱すのではと、警戒しているかのようだった。

悦子はぎこちない笑みを浮かべ、言葉を呑み込む。

「失礼しました、深見社長。人違いでした」

凌は満足げに頷き、若葉の腕を取ると、目を合わせることすらなく、すれ違っていった。

法的には、彼の妻であり、美々の母親であるはずの悦子を、凌はまるで関係のない他人のように振る舞っていた。

娘と共に家を出ることになっても、一言の報告があって然るべきだが、彼女たちがどこへ行こうと、戻ってこようと、凌にとってはどうでもいいことなのだ。

悦子は深く息を吸い込み、冷ややかに笑みを浮かべて気持ちを切り替えると、会社をあとにした。

その足で車に乗り、自宅へ戻ると、手際よく荷物をまとめた。

時刻を見計らい、いつも通り幼稚園へと美々を迎えに行った。

遠くから、おさげ髪が揺れる小さな姿が「ママ!」と元気よく駆け寄ってくる。

だが、車内に凌の姿がないことに気づいた途端、美々の笑顔はふっと消え、頬を膨らませて口を尖らせた。

「おじさんは?来てないの?誕生日、一緒に過ごしてくれるって約束したのに……また残業?

それとも……やっぱり、私の誕生日のこと忘れちゃったの?」

悦子は、胸の奥に沈むようなため息をひとつついた。

――おそらくこれが、美々にとって、凌と過ごす最後の誕生日になる。

「おじさんは、きっとまた残業なんだと思うよ。ママから連絡しておくね。おうちで待っていようか」

美々は笑顔を取り戻し、期待に目を輝かせながら力強く頷いた。

「うん!」

悦子は車内で凌にLINEを送り、そのまま美々を連れて帰宅した。

約三十分後、返信が届く。

「美々、おじさんがちょっと遅れて、家に来るって」

「やったー!」

美々は歓喜の声を上げ、ソファの上で飛び跳ねた。

「ママ、おじさん、きっと私のことちょっと好きなんだと思う!だから誕生日に来てくれるんだよ!」

その無垢な笑顔を見つめながら、悦子は黙って娘の頭を撫でた。

美々が父親の愛を渇望しているからこそ、あんなにも希望を抱いてることを、母親として痛いほど分かっていた。

そして、自分自身もまた……

ほんのわずかな、奇跡のような希望を抱きながら、凌が今度こそ約束を守るのを願っていた。

だが過去の傷跡は冷たく、凌が振り返る可能性は低いと彼女に警告する。

悦子は無言で微笑み、美々がクローゼットの前で服を選んでいる姿を静かに見つめていた。

この日は、美々の四歳の誕生日だった。

一歳から三歳まで、凌は一度もその場に現れたことがなかった。

今回が初めて、誕生日に付き合うと言ってくれたのだ。

しかし、約束の時間はとうに過ぎ、夕暮れが訪れる中、凌は現れず連絡もつかなかった。

窓の外では街灯が一つまた一つと灯り、リビングに暖かな光が差し込む。

美々は涙ぐみ、悦子の首にしがみつき、泣きながら訴える。

「ママ、おじさんに何かあったのかな?電話してみようよ」

悦子は娘の願いに応え、スマホを手渡す。

美々は大事にスマホを握り、慣れた手つきで番号を押した。

そして、すぐさま受話口から聞こえてきたのは、思いもよらぬ幼い声だった。

「もしもし、どなたですか?何かご用ですか?」
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