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15話

last update Zuletzt aktualisiert: 28.12.2025 17:10:03

「なんでもいいけど、おもちゃで小雪を釣るような真似はしないでちょうだい」

「違う。お前たちがいるだなんて、知らなかったんだ。ただ、神宮寺家には小さい子がいるって聞いたから、ご機嫌取りのためにおもちゃを持ってきたってだけで……」

「相手の子供にまで取り入ろうって? ご立派ね」

「なぁ、やっぱりあの子、小雪は俺の子じゃないのか? 目元なんて俺にそっくりだ」

「違うって言ったじゃない。仕事で疲れてるの。兄さんには私から言っておくから、もう帰って」

「兄さん、だと?」

 成也は目を丸くする。驚愕の顔は徐々に破顔していき、明里を混乱させた。

「なんで嬉しそうなの?」

「俺はてっきり、お前があの男と再婚したのかと……。そうか、兄妹なのか……」

 安堵した顔は、お次に疑惑の顔に変わる。忙しい顔だと、明里は眺めるだけ。

「どういうことだ? 何故神宮寺涼が、お前の兄なんだ? お前の旧姓は確か……」

 成也は眉間にシワを寄せる思い出そうとしているのだろう。

「篠崎」

「そうだ、篠崎だ。神宮寺じゃない。なのに何故、お前は神宮寺にいる?」

「あなたには関係ない。それと、お前呼ばわりはやめてくれませんか? もう他人なので」

「お前呼ばわりしたのは悪かった。けど、そんなに冷たく当たらないでくれ。俺達夫婦だったじゃないか」

「いい加減にして!」

 明里が声を荒げると、成也は固まる。驚いているのは彼だけではない。明里自身も、自分がこんな大声を出せたことに驚く。

「私達を夫婦じゃなくしたのは、あなたでしょ!? あなたが私の願いを叶えたことあった!? 同居は嫌って言った時も、榎本ミアが家に来るの嫌って言った時も、あなたは聞き入れてくれなかった。自分がなんて言ったか覚えてる? 『嫁なら従え』って言ったの。それだけじゃない。私が義両親やミアに嫌がらせをされても、あなたは黙って見てるか、一緒になって私を責めて苦しめただけ! そんな人が、夫婦を語らないで!」

 今まで押さえてきた感情が、言葉が、次から次へと溢れかえる。軽い目眩がして座り込むと、成也が手を伸ばしてくる。明里はその手を反射的に叩き落とした。

「気安く触らないで」

「本当に、ごめん。君を苦しめてしまったこと、後悔してる。だから、償わせてほしいんだ」

「今日はもう帰って。兄さんだって、いつ帰ってくるか分からないし、子守役はもういらない」

「けど……
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